四季賞とアフタヌーンの関係性変化問題

 前回に引き続き、四季賞について。以下の作品の共通点、何だかおわかりになるでしょうか?

『無限の住人』沙村広明氏
『ヨコハマ買い出し紀行』芦奈野ひとし氏
『BLAME!』弐瓶勉氏
『蟲師』漆原友紀氏
『ラブロマ』とよ田みのる氏
『臨死!!江古田ちゃん』瀧波ユカリ氏

 上にあげた作品はいずれも、四季賞投稿作がそのままアフタヌーンで連載され、大ヒット作になったものです。他誌にも例があるでしょうが、90年代から2000年代初頭にかけて四季賞からそのままヒット連載化する作品数の多さは、四季賞とアフタヌーンの特徴の一つだったと言えるでしょう。
 僕の講談社入社は1994年。配属はモーニング編集部。その頃まだアフタヌーンはモーニングから機構上独立しておらず、四季賞の選考はモーニングとアフタヌーン両編集部で行っていました。新入社員として初めて参加した1994年四季賞春のコンテストの選考会で、芦奈野ひとしさんの『ヨコハマ買い出し紀行』が大賞を受賞しましたが、その時、ナベキョーさんという偉大な先輩編集者が「この作品は世界観が独自で確立されているから、このまま連載にしましょう」と提案し、本当にそのまま連載になったことをよく覚えています。ナベキョーさんは『BLAME!』の初代担当でもあります。余談ですがナベキョーさんは僕の代の新入社員研修に講師としていらして、「マンガ編集者は3日連続徹夜とかは当たり前」と講義され、ダメだ勤まる気が全然しねえと絶望したのもよく覚えています。
 投稿作がそのまま連載化、という流れが確かにあった四季賞ですが、この流れもある時を境にピタリと止まります。やはり、市川春子さんの『虫の歌』が2006年四季賞春のコンテストで大賞を受賞したときが分水嶺だったように思います。市川さんはその後読み切りを何作も描き、大賞受賞作と同名の『虫と歌 市川春子作品集』と『25時のバカンス 市川春子作品集』の2つの短編集を刊行されています。その後も受賞作がそのまま連載化という作品がまったくないわけではないのですが、残念ながら大ヒットには至りませんでした。市川春子さん以前と以後では、四季賞とアフタヌーン編集部の関係性が違うのです。
 市川さん以前のアフタヌーン編集部員には、目利きの才能が求められていました。誰もまだ見たことがない投稿作を「これだ!」と先物買いして、そのまま連載化する。貴族的パトロンの素養を当時のアフタヌーンの編集者は必要としていたように思います。今60代以上のオタクの先輩方は皆どこか気位が高く、オタク貴族と言っていい方が大勢いました。SFオタクだったら最低1000冊は作品を読んでからじゃないと何も語れない、みたいな風潮がありました。そうした貴族的なオタク風土とアフタヌーンと当時の四季賞の雰囲気が見事にうまくはまったのだと思います。投稿するほうも、描き出したい世界観を最初から丸ごと携えた方がたくさんいたのです。
 2000年代後半からこの風潮はなくなっていきます。おそらく四季賞だけではなく、世のマンガ新人賞が総じて変化したのだと思いますが、新人賞は新人漫画家が「腕前を披露し、才能をプレゼンする場」であると同時に、編集者とのマッチングを行う場という側面が強くなったように思います。編集者に求められる役割が、パトロンからプロデューサーにシフトしていったとも言えるでしょう。アフタヌーンではこの傾向がほかの編集部に比べてより強かったように思います。この頃からマンガ家と編集者はより二人三脚で作品に携わるようになり、同時に編集者の「TO DO LIST」が加速度的に増えていったのです。

 さて、マンガ業界の歴史的変遷の考察はさておき、今、僕が四季賞投稿作を読む際、どこに注目して読むか、この点をお伝えしておきます。
①絵の丁寧さ
 絵はうまいに越したことはありません。最初はヘタッピでもその後上達すればよいのですが、絵ってなまじっかでは上達しません。では上達しそうな絵ってどんな絵か。雑な印象をもたらす絵柄の方は、なかなかうまくなりません。たとえ拙くても、丁寧な絵を描く方は伸びます。森薫さんが昨年の四季賞選考会で「線と線に隙間ができないように、ちゃんと閉じた線を描きましょう」と至言を仰っていました。描線を1本1本くっつけて描くと、それだけで丁寧な印象をもたらし、上達速度があがるはずです。

②やってくれそうな表情
 描かれる人物の表情にはもちろん注目します。特に「何かやってくれそう!」という表情を描ける方には期待します。決断力・実行力のある表情は、それだけで魅力的です。決め手は、目だと思います。

③ストーリーよりキャラクター
 ストーリーが少々破綻していても気になりません。ですが、登場人物の行動が、そのキャラクターの心情と合っていないとすごく気になります。心情と行動が一貫しているかどうか、この点は常々気にかけて読みます。

④作者の考える「かっこいい」「かわいい」が存分に伝わってくるか
 この点が最も重要です。なんですが、長くなりそうなので次回に回そうと思います。

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