今も鮮明に脳裏に焼き付く光景がある。山口県警捜査2課長だった29歳のときのことだ。暴力団組員による拳銃使用立てこもり事件を現場で指揮した。銃撃戦となり、捜査員2人が負傷。捜査員はこめかみに弾が当たり道路に倒れ込んだ。
事態が収束したとき、「辞表はどう書くのか」と考えた。幸いにも捜査員はすぐに職場復帰できたが、「強い使命感を持った2人の捜査員には今も尊敬の念を持っている」。修羅場での指揮官のありようを身をもって学んだ。
警備部門の経験が長い。前任の警察庁警備局長では伊勢志摩サミット、オバマ米大統領広島訪問の警備を指揮。「百点満点の警備」(政府関係者)と評価は高い。その警備で大事にしているのは「想定にこだわるな」だ。「事前に準備して、想定外をなくすことは大切だが、所詮は想定。想定にとらわれて目の前の現実を想定に当てはめてしまうことで、対処を誤ることがある」。29歳の若き指揮官のときの苦い経験が、その後の警備実施に生かされているのだろう。