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2026年5月16日

【授業料値上げ】停学処分取り消し訴訟の口頭弁論 裁判所「東大の主張不明確」

 2024年に授業料引き上げをめぐる「総長対話」が行われた夜に安田講堂に無断で立ち入り、今年停学処分を受けた東大の学生のうち1人が、処分の無効と賠償を求めて東大を提訴している。5月15日、東京地裁で第1回口頭弁論があった。

 

 原告の八十島士希(やそじま・しき)さん(農・4年)は、①現行の懲戒処分制度が無効②仮に現行制度が有効だとしても処分理由にあたらない③手続きが適正でなかった──などを主張している。

 

 被告の東大側については、裁判所が東大の答弁書の「主張が不明確」で、「事実認定や停学処分の理由などが明らかにされていない」とし、第2回口頭弁論に持ち越して提出を待つ形となった。原告側は、八十島さんの在学期間を理由に「なるべく早くしてほしい」とした。

 

 第2回口頭弁論は7月10日午後3時からの予定。

 

14日の記者会見で話す原告の八十島さん(撮影・宮下葵羽)

 

「懲戒制度そのものが無効」

 

 原告の八十島さん側は2005年からの現行の学生懲戒制度自体が無効だと主張。大学側・学生側が「相互で検討」することなく制定された懲戒制度は、1969年に東大と学生側代表との間で結ばれた確認書(東大確認書)に反するとした。

 

 東大確認書は「学生・院生の正当な自治活動への規制となる処分は行なわない」とも定める。八十島さん側は、授業料引き上げの検討について総長らに「平和裏に」要望書を提出しようとするのは「正当な自治活動」にあたり、それに対する東大の処分は自治活動を規制、委縮させ、確認書に反すると主張。実際、旧・駒場寮の廃寮をめぐり学部長室を数日間占拠した学生などにも処分はなかったとし、今回の安田講堂への3分程度の立ち入りで停学とするのは処分権限の乱用だと述べた。八十島さんは、初等・中等教育ではできるような「校長先生にお願いごとがあって校長室の前まで行き、その扉をノックして返事を待つ」ことがなぜ東大では許されないのかと問いかけた。

 

「懲戒制度が有効でも、処分の対象外」

 

 原告側は、仮に現行の懲戒制度が有効だとしても、処分理由として考えられる①犯罪行為②業務妨害──にはともにあたらなかったとしている。東大は、安田講堂への学生らの立ち入りを制止しようとした警備員が負傷したことで警察を呼んだと発表したが、八十島さんら4人が安田講堂に立ち入った際に八十島さんが接触したのは負傷した警備員とは異なると、東大自らでの事実認定があったと指摘。14日の記者会見で八十島さんは、安田講堂への立ち入り・警備員との接触について警察の捜査自体を受けていないと説明している。立ち入ったのは夜で、業務の妨害にもならなかったと語った。

 

 懲戒手続きの進行についても、①懲戒処分の決定にあたって東大は学部と大学本部の「二審制」にあたる仕組みをとるが、学部での審理を事実上本部が主導していたとみられる②学生による再審査請求の規定があるが、請求を根拠づけるために必要な情報(過去の処分例や事実認定など)の提供を求めても東大が応じていない──ことなどから適正でなかったと訴える。

 

 東大は立ち入り事案を受けた発表で、「事実に基づき必要な対応をと」るとしていた。安田講堂への入館者は常時管理しており、夜間に無許可で侵入するような行為は認められないという。

 

停学による不利益について

 

 八十島さんは長期履修制度により後期課程の2年を4年に延長して在学中。停学処分が下されていた2~3月に開講されたWタームの必修科目では、オンライン授業を「聴講」できたが試験への出席を認められず、実質的な再履修を迫られ、卒業に影響する可能性があるという。奨学金が停止になった一方で停学期間中の授業料も支払っているとも訴えた。会見では「(他にも処分を受けた学生がいるが)不利益が一層増大することから訴訟を断念したと聞いている」と補足した。

 


 

 今回の停学処分をめぐっては、教職員69人が藤井輝夫総長に対し、4月30日に再審査を要請。5月31日までの回答を求めている。学生2人の停学処分をめぐる支援団体は裁判の傍聴を呼びかけており、今回の口頭弁論には東大の学生・卒業生と教員を含む30~40人程度が集まった。

 

 東大確認書は、1968年に医学部の学生が受けた懲戒処分が誤りだったとして、これを発端に学生らの要求・加藤一郎総長代行(当時)の提案などを踏まえ、東大側と各学部の学生代表との間で1969年に結ばれたもの。学生側では学生大会や投票、東大側では評議会(当時)での審議を経ている。現在でも、教養学部学生自治会と教養学部が「『東大確認書』の精神に基づく」と例年確認した上で、前期課程の学生の要求について「学部交渉」を実施している。

 

 懲戒処分制度をめぐっては、東大確認書で①新しい処分制度を「今後相互で検討する」②「学生・院生の正当な自治活動への規制となる処分は行」わない③「一方的処分はしない」──などが合意されている。大学側・学生側の「相互で検討」した上での懲戒処分制度は現在も未確立。1981年に東大の評議会(当時)は「現行懲戒処分制度について」で、懲戒制度は「『確認書』の趣旨によって限定・修正」されているとした上で運用指針を定めている。東大の教育研究評議会は2004年、これを廃止して翌年から現行の「東京大学学生懲戒処分規程」を施行した。

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