コンテンツにスキップ

公道カート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
公道カートを楽しむ人達

公道カート(こうどうカート)は、公道を走行できるように改造が施されたレーシングカート、およびそれを運転して観光地を巡る観光ツアーである。日本では2010年代後半以降、特に外国人観光客の間で人気を集めている。

公道走行可能な仕様に改造されたレーシングカートを運転し、ガイドの先導の下、東京などの観光地を巡るツアーで、世界的に人気のあるゲーム「マリオカートシリーズ」の体験が現実でできることに加え、国際免許を持っていれば気軽に運転できることから、2010年代後半以降、外国人観光客を中心に人気を集めている[1]

また、カートに乗りながら着ぐるみを着て記念写真を撮るといった特別な体験ができ、「SNS映え」するアクティビティとしても注目されている[2]

日本では公道カートは道路運送車両法においては「原付1種」に相当するが、道路交通法では「ミニカー」(原付サイズの普通自動車)として運用されている。そのため、構造は原付だが、交通ルールは普通自動車という二重構造になっており、運転には普通自動車免許か日本で有効な国際運転免許証が必要である[3]

日本における公道カートの始まりは、2012年3月に、レンタル専門店「アキバカート」が東京・秋葉原に開業したこととされている[3]

公道カートの運用が始まった背景には、日本の観光産業の変化がある。2010年代以降、日本は円高状態だったことにより、「爆買い」に代表される訪日外国人による製品の購買が少なくなり、その代わりとして体験や宿泊にお金を使う「コト消費」に移行しつつあった[1]。このような中で、これまでと異なる体験を求める外国人観光客の増加にともない、従来の観光バス鉄道では提供できない「個別体験型観光」の需要が高まり、公道カートはそのニーズに応える形で登場した[2]

公道カートは当初、ミニバイクと同じ扱いを受けていたが、事故が多発したことを受けて、2018年国土交通省が保安基準を改正し[4]2020年4月からは、業者に対してシートベルトの装備[5]や1メートルの高さへの尾灯の装備、頭部の衝撃を和らげるヘッドレストや車輪が衣服を巻き込むのを防ぐフェンダーの設置を義務化した[6]

2020年には新型コロナウイルスの流行による訪日外国人観光客の激減に伴い消滅危機に陥ったが、2023年の制限緩和以降に再び人気を集めている[3]

知的財産権の侵害

[ソースを編集]

2017年、「マリカー」の商号で公道カートツアーを提供していた業者が知的財産権の侵害行為を理由に任天堂から提訴された。裁判では、運営会社がマリオなどのキャラクターのコスチュームを貸し出し、これらを着て公道を走るカートの画像をSNSに投稿することで、料金を無料にしたり、割引したりしていたことなどが問題視された[7]。2018年9月、東京地方裁判所は任天堂側の訴えを概ね認め、運営会社に対して、任天堂へ損害賠償として1000万円を支払うことなどを命じた。運営会社は控訴した一方で任天堂も控訴審で賠償請求額を5000万円に引き上げた。2020年1月、知的財産高等裁判所は運営会社に対して、任天堂へ損害賠償として5000万円を支払うことを命じ、営業や広告に「マリカー」を使うことも禁じる判決を言い渡した。運営会社側は最高裁判所に上告したが同年12月24日に棄却され、判決が確定した[8]

悪質な運転・事故

[ソースを編集]

公道カートはインバウンド需要が見込める一方、交通ルールを十分に理解していない外国人の悪質な運転による事故も発生している。2023年には警視庁交通総務課に対し、公道カートに関する100件以上の苦情が寄せられており、事業者に安全対策を求めている[9]。同課によると、利用者が先導車からはぐれるのを嫌がって信号無視をしたり、誤って高速道路に進入しようとしたりした事例もあるという[9]

違法営業

[ソースを編集]

利用客の問題だけでなく、運営業者の違法行為も問題視されている。

2024年10月、日本で有効な国際運転免許証を持たない外国人2名にそれぞれカートを貸して公道で運転させたとして、東京都大田区のカート事業者が書類送検された。

また、「訪日外国人安全運転支援機構」の調査で、全国31ある公道カート事業者のうち、19事業者で公道カートの保安基準、シートベルト未装着など複数の違法行為が行われていることが判明した[10]

  1. 以下の位置に戻る: 1 2 なぜ「マリカー」は訪日客を惹きつけるのか?東京の街を疾走するマリカー 体験してわかったインバウンドに刺さる理由【現地レポート】”. 訪日ラボ. 株式会社mov (2018年7月13日). 2026年5月15日閲覧。
  2. 以下の位置に戻る: 1 2 彼氏が「公道カート」で爆走していました(汗) しかもインバウンドより大はしゃぎ……片手を上げて「イェーイ!」って……いろいろと大丈夫でしょうか?”. Merkmal. メディア・ヴァーグ (2025年2月6日). 2026年5月15日閲覧。
  3. 以下の位置に戻る: 1 2 3 「公道カート」を乗り回す外国人が再び増加…無免許運転、違法車両のキケンな実態とは?”. ダイヤモンド・オンライン. ダイヤモンド社 (2026年5月1日). 2026年5月15日閲覧。
  4. 公道を走行するカートの安全基準を強化します ー道路運送車両の保安基準等の一部改正についてー』(プレスリリース)国土交通省自動車局技術政策課、2018年4月27日2026年5月15日閲覧
  5. シートベルトを義務化 公道カート、20年4月から」『日本経済新聞』2018年4月28日。2026年5月15日閲覧。
  6. 訪日外国人に人気の「公道カート」 ヒヤリ防げるか」『日本経済新聞』2017年12月11日。2026年5月15日閲覧。
  7. 任天堂「マリカー裁判」勝訴が示す大きな意味 キャラクターの価値は死守せねばならない”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社 (2018年9月29日). 2026年5月15日閲覧。
  8. マリカー訴訟、任天堂勝訴 5000万円賠償命令確定」『日本経済新聞』2020年12月25日。2026年5月15日閲覧。
  9. 以下の位置に戻る: 1 2 急増の外国人観光客に人気の公道カート 事故や苦情が増加 安全対策強化求める声も」『産経新聞』産業経済新聞社、2024年7月20日。2026年5月15日閲覧。
  10. 「街中に多いカートが危ないです。どうにかならないですか?」 訪日客に人気の「公道レンタルカート」 全国31社中19社が「違法営業」だった! 警視庁や都議会、観光庁も対策に動く【独自取材】”. くるまのニュース. メディア・ヴァーグ (2024年12月1日). 2026年5月15日閲覧。

外部リンク

[ソースを編集]
  • ウィキメディア・コモンズには、公道カートに関するカテゴリがあります。