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ADHD


「診断結果:発達障害」

診断書の端の方に、ポツンとそう書いてあった。
こうも自然に書かれていると笑ってしまう。
もはや爆笑。
満点大笑い。

「ということで、わちさん、あなたは所謂ADHDです。」
医者が淡々とした口調でボクに告げた。
別に勿体ぶってほしかったわけではないが
あっさりと言われたので少し驚いた。

医者の隣で臨床心理士が心配そうにボクの顔を伺っていた。
居たたまれないといった表情だ。
「申し訳ないねえ…」みたいな顔が腹たった。
朝のニュースの占いでアナウンサーが
「12位は…ごめんなさーい魚座のあなた」という時と同じ顔をしていた。
しかし美人である。
数時間前、何もない無機質な部屋で
この美人によって診断テストが実施された。
臨床心理テストというものだ。

内容はいたって簡単で

・この絵と同じ組み合わせのものをこの中から選んでください
・今から数字をいくつか言うので復唱してください
・「春」と聞いてどんな言葉を思い浮かべますか?

そんなテストだった。

少し頭のいいボノボなら
クリアできてしまいそうな課題だったが、私は躓いた。

数字の復唱ができなかったのだ。

「57485412」

おそらく美人が適当に選んだ数字を復唱できなかった。

「57…なんでしたっけ?」

美人の顔を見ると「12位は…」顔で私を見ていた。

診断結果を知ったとき、私は何故だかホッとした。

日常生活を送っている上で生じた、違和感の答え合わせが
今ここでできたからだろうか。

「あー、よかったよかった。これでなんでもADHDのせいにできるわ」

そう思った。

同時に「申し訳ない」という気持ちにもなった。

物忘れが酷く、時間を守れず
カバンや机の中がゴチャゴチャで、集中力がなく
人の話が聞けず、落ち着きがなく、周りに迷惑をかけた。
特に母親に迷惑をかけた。何度も泣かせた。
泣かせるたび反省をしたが治らなかった。
どうしてもできなかった。
そのどうしてもが「これ」で、「申し訳ない」だ。

小学5年生の時、私は忘れ物グループなるものに所属していた。
そのグループはクラスの中で忘れ物が多い者によって構成されていた。
精鋭たち。ならず者集団。幻影旅団である。
私はそのグループの団長であった。
団長は夏休みの宿題を踏み倒したことがある。
逸材だ。


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忘れ物グループは何かを忘れるたびにその場に立たされ
忘れた理由を発表させられた。
その場しのぎのどうしようもない理由の発表が終わると
「なんでわちくんは忘れ物をしちゃうのかな?みんなで考えてみよう」
先生が言い、クラスのみんなから意見という名の罵詈雑言を浴びせられた。
団長は泣いていた。団長もなんで忘れ物をしちゃうのか知りたかった。

数字の復唱の話に戻る。

ADHDの障害の一つに「ワーキングメモリの低さ」がある。
ワーキングメモリってなんだ?かっこいい。
ワーキングメモリとは、短期記憶のことだ。
私が美人の選んだ適当な数字を覚えられなかったのも
この短期記憶のなさからくる。
短期記憶が弱いと、会話の流れを追ったり、物事を順序立てて覚えたりすることが難しく、それが忘れっぽさに繋がる。

ええ
もうそれって日常生活にかなり支障をきたさないですか?

きたす。きたしにきたす。

学生時代は板書ができない。友達との約束が守れない。
時間や日付が覚えられないから提出期限が守れない。
複数の指示に対応できない。計画が立てられない…等々。

「私もそれあるよ。みんな一緒だよ😊」思う人もいるだろう。

その言葉が発達障害者を苦しめる。
みんな一緒ですか。じゃあ日常生活に支障をきたしてますか?
きたしてないでしょう。きたしてから来い。
きたしてんなら心療内科いけ。

じゃあそもそもADHDってなんだろ?
ADHDとは脳の神経伝達物質の機能不全だと言われている。は?
なんですかそれは。
人は集中すると「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」という神経伝達物質を出し、集中力や注意力を向上させる(脳汁ってやつ)。しかしADHDの脳はこの神経伝達物質を出したり、出さなかったりする調整が、弁が、蛇口がぶっ壊れている。だから集中できない。逆に集中しなくていい時に過敏に集中する。ちなみに私は医者でもなんでもないので間違ってるかもしれない。気になる人はググったり本読んだりして欲しい。

「なんでわちくんは忘れ物をしちゃうのかな?みんなで考えてみよう」

「はい。主な原因は、脳の機能に生まれつき偏りがあることと考えられています。具体的には、思考や行動のコントロールを司る「前頭葉」の機能低下や、神経伝達物質である「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」の不足・機能不全が関わっているとされています。これらは「しつけ」や「養育環境」の問題ではなく、遺伝的・環境的な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。」

当時の団長はこう答えないといけなかった。
なのにそう答えなかった。だから団長が悪い。

「だからってなんでもADHDのせいにするのかよ😡」
「先生だって友達だってお前の被害者なんだぞ😡」

その通りだ。
これは誰のせいでもない。私のせいでもなければ周りのせいでもない。
叱った先生のせいでもない。頭を叩いた母親のせいでも、離れて行った友達のせいでもない。自民党のせいでもない。保育園落ちた、日本死ね。

話は美人臨床心理士の臨床心理テストに戻る。

美人は次にこんな質問をしてきた。
「春と聞いてどんな言葉を思い浮かべますか?」

なんだそれは。

そりゃ、まあ、
「暖かい、新芽、卒業、入学式、桜、つくし、たんぽぽ、モンシロチョウ、キャベツ、新じゃが、チューリップ、桜餅、鯉のぼり、サイクリング、ピクニック、春風、花見、別れ、出会い、新生活、新社会人、引っ越し、柔らかな日差し、雨、菜の花、桃の花、レンゲ、スミレ、ハナミズキ、木蓮、藤の花、若葉、つばめ、ひばり、うぐいす、メジロ、霞、黄砂、花粉症、マスク、目薬、雷、嵐、薄手のコート、春服、春分の日、入園式、新学期、黒板、ランドセル、新しいノート、制服、歓送迎会、別れ、出会い、電車のホーム、切符、満開、期待、不安、希望、初恋、柔らかい風、陽だまり、川のせせらぎ、散歩道、レジャーシート、公園、芝生、家族連れ、花壇、ガーデニング、家庭菜園、種まき、洗濯日和、日向ぼっこ、衣替え、森山直太朗、初心者マーク、たけのこ、新番組…」

美人「もう結構です」

私は一度聞いた話や言葉に対し
脳内で何十個もの言葉の選択肢が出現する。
早口になり、口が言葉についてこれずに噛み、よく話が脱線する。
学生時は本当に酷かった。
現在は常に渡部陽一の真似をして生活をしている。
日常生活でよく言葉が詰まることがある。
長年「自分は馬鹿だから(実際、馬鹿なのだが)話についていけてないんだ」と感じていた。しかし、ADHDと診断され逆だとわかった。
思い浮かぶ言葉が多すぎて選ぶのに時間がかかってしまう。

デトロイドビカムヒューマンというゲームをご存知だろうか。そのゲームはフローチャートシステムというものが採用されている。プレイヤーがどのような行動を取り、どのような選択をしたのかがフローチャートで視覚的に表示され、選択肢によってストーリーが大きく分岐 し、登場人物の運命や物語の結末が変化していく。どういうことかというと、例えばプレイヤーに何か危機的状況が訪れる。敵に銃口を突きつけられて「答えによってはお前の頭が吹き飛ぶぞ」と言われる。どうする?殺されるかもしれない。と言った状況だ。すると画面に4つ程選択肢が表示され、プレイヤーはそこから好きに言動を選べる(説明下手かよ)。その4つの選択肢が20個だったらどうだろう。その選択肢の中には危機的な状況を見事に切り抜ける相応しい回答から、意味不明な行動まである(全裸でボーリングの球を相手に投げつけて踊る)。私の障害はまさにこの状況だ。何かの質問に対し0.1秒で選択肢が脳内にバッと表示され、言葉に詰まり、悩み、大抵間違った選択肢を私は選ぶ。そして怒られる。だから言葉がさらに詰まるようになる。要は、頭の回転数が周りと違うのだ。インターステラーという映画でマン博士がエンデュランス号とドッキングするシーンがある。結局マン博士はドッキングに失敗し、爆死する(あのシーンマジわろ)。爆発の影響でエンデュランス号は高速回転をするが、その後来た主人公のクーパーはそのエンデュランス号の回転数に自分が乗っている船の回転数を合わせ、微調整を行い、見事ドッキングに成功する。普通の人は、クーパーと同じようにそれを自然とやっている。自分には微調整ができない。私はマン博士だ(爆死)。

これは言語能力が高いとも言える。

現にその臨床心理テストで、私は言語能力の数値(IQ)が高く
数的処理の数値(IQ)が低いと診断された。
(あと2項目くらいあったが忘れた。知覚推理だっけ)

ADHDの問題はこの各能力に偏りがあることだ。

健常者は能力が高いにしろ低いにしろ各能力の数値に偏りはない。
しかしADHDは違う。異常に数的処理が早かったり、私みたいに言語能力が高かったりする。車のタイヤに例えるとわかりやすい。4つのタイヤのうちどれかのタイヤだけが極端に摩耗していたり、空気が抜けていたりする状態、またはどれかのタイヤだけがデカい状態がADHDだ。車はまともに走れない。わかりにくいか?いや、わかりやすいだろ。

とにかくそんなこんなで私はADHDと認定された。
烙印を押された。ヤッホイ。

さて、ADHDだと言われたらどうすればいいのだろう。
ここで悩んでいる人が結構いると思う。
実際、インスタグラムのストーリーで
「俺はADHDなんだぜ」とカミングアウトしたら(痛すぎ)
多くの友人や知り合いから「私も」「ボクも」とDMが来た。
私が32年間この障がいと付き合ってきて導き出した
うまくADHDを操る方法を今から綴る。
ADHDは障がいだが、その障がいを逆手に取れば悪魔的効果を発揮する。
その傾向がある人はぜひ参考にしてほしい。
刮目せよ(平成教育委員会の時のユースケ・サンタマリア)。
あ、何度もいうが私は医者ではない。
だから鵜呑みにしないでほしい。あくまで参考に。

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わちさん、はじめまして。デコと申します。 診断を受けた日の、あの不思議な安堵感と申し訳なさが入り混じる心境、あまりにも「かつての僕」すぎて、一気に読んでしまいました。 わちさんの言葉が、きっと暗闇の中にいる多くの仲間の光になるはずです。次回、楽しみにしています。

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わち

デコさん、初めまして。読んでくれてありがとうございます。 今まで自分がやったことを追記しました。 光になれるよう頑張ります。

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