パキスタンとは「一触即発」
仇敵であるパキスタンが中東紛争の機に国際的なプレゼンスを高めているからだ。
インドとパキスタンの武力衝突が起きて7日で1年が過ぎた。
4日間の戦闘はインド優位で進んだものの、パキスタン軍が中国から購入した戦闘機「J10C」で自軍のフランス製戦闘機「ラファール」を撃墜したことはインド軍にとって屈辱だった。
パキスタンはその後も中国から武器調達を進めている。
パキスタン空軍は7日、「中国が独自に開発した第5世代ステルス戦闘機『J35』導入のための初期協力協定を締結した」と発表した。
中国国防省は9日「長時間の潜航が可能な通常動力型の潜水艦をパキスタン軍に引き渡した」ことを明らかにしている。
パキスタンは米国製武器の調達も進める構えだ。
これに対し、インド側も兵器の最新化など軍拡にまい進しており、核保有国であるインド・パキスタンは「一触即発」の状態が続いたままだ。
インドとパキスタンの緊張が続く中、筆者が注目したのは、水を巡る両国の確執だ。
インド側は昨年5月の戦闘を機にインダス川水利条約の履行停止を宣言した。
同条約は世界銀行の仲介で1960年に結ばれた。インダス川本流と西側の支流2本をパキスタンに、東側の支流3本をインドに割り当てることが主な内容だ。条約締結後も両国は幾度か戦火を交えたが、条約は維持されてきた。
だが現在、上流に位置するインドは自国の取水量を増やし、パキスタン側の水量を減らす可能性が現実味を帯びている。
パキスタンは国連で「インドの行為は違法だ」と訴えているが、インド側は「戦闘の原因となったテロ問題が先決だ」としており、両国の主張はかみ合わない。
「20世紀が石油の戦争の時代だとしたら、21世紀は水の戦争の時代だ」と言われてきたが、この警告が南インドで現実になるのではないかとの不安が頭をよぎる。
日本企業の進出が加速するインドの動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。