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キャリア・教育 #無敵化する若者たち

理想の上司は「塾講師」!? 今の若者は「仕事は、とにかく全部わかりやすく教えてほしい」と思っている

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  • 金間 大介 金沢大学融合研究域教授、北海道医療大学客員教授

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昨今の若者の間で人気なのは「とにかくわかりやすく教えてくれる」上司だ(写真:polkadot/PIXTA)
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やたら自己評価が高い、微妙に失礼、嫌われることを気にしない……。最近、あなたの周りにこんな若者が増えていないだろうか。あるいは、上の世代がためらうような権利主張を平気でするとか、そもそも仕事に対する熱意や欲求がない若手はいないだろうか。
2022年に出版した『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』で現代の若者像をリアルに描き話題となった金間大介氏は、最新刊『無敵化する若者たち』で再び若者心理の謎に迫っている。
金間氏によると、今の若者たちの行動原理や心理的特徴は『無敵化』というキーワードで説明できるというのだが――。

「無敵化」と「無敵の人」は異なる

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最初にお断りしておくが、僕の言う無敵化とは「無敵の人」とはまったく意味が異なる。

ネット上で「無敵の人」というと、守るものがなく、社会から見捨てられたと感じ自暴自棄になって犯罪をしてしまうような人たちのことを指す。

そうではなくて、若いというだけで勝ち組と思えるような恵まれた環境が与えられ、自己評価が高く、かつその権利主張をしっかりするような存在を指して「無敵化する若者たち」と表現している。

僕が考える「無敵化」の特徴には以下のようなものがある。

・安定志向が強く、仕事に対する熱意や欲求がない
上の世代がためらうような権利主張を平気でする
・自己評価が高い
・いつでも親が味方に
他世代に比べ恵まれた労働環境
先輩世代から守られ、大切にされる
仕事がうまくいかなくても上司や先輩の責任
・自分や近しい人がよければそれでいい
・嫌われることを気にしない
・将来展望がない日本でも十分幸せ
・日本の衰退を気にしない

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【「熱い上司」はとことん不人気】

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このうち、ここでは職場内の上下関係に目を向けてみよう。枠内の下線を引いた箇所が主なポイントになる。キーワードは「オフィスでも無敵化する若者たち」だ。

理想の上司は塾講師?!

図表をご覧いただきたい。これは、日本能率協会が全国の新入社員を対象に調べた「理想の上司像ランキング」だ。

(出所)『無敵化する若者たち』

昨今の若者の間で断トツの人気となったのは、「仕事について丁寧な指導をする」上司だ。同様に、「部下の意見・要望に対し、動いてくれる」上司も急上昇中。動いてくれるという項目が人気になるあたりが、まさに今風といったところ。

逆に、「場合によっては叱ってくれる」や「仕事の結果に対する情熱を持っている」といった熱い上司は人気急落の憂き目にあっている。

とにかくわかりやすく教えてほしい

もう一つ、株式会社SHIBUYA109エンタテイメントがとった「Z世代社員にとっての理想の上司像」アンケートも興味深い。

(出所)『無敵化する若者たち』

「分かりやすい言葉で説明してくれる」や「丁寧に教えてくれる」が人気なのは先の調査結果と変わらない。

僕が興味深いと思ったのは、中位付近にある項目たちだ。たとえば、「リーダーシップがある」や「決断力がある」「尊敬できる」といった項目は、上司として最も重要な必須項目ではないのか(だって、リーダーシップがあって、決断ができて、人として尊敬できるんですよ?)。

にもかかわらず、これらの順位はごく平凡な真ん中くらい。

つまり、このデータが示すことはこうだ。

上司とは、決断力がなくてもいいし、尊敬できなくてもいいから、とにかくわかりやすく教えてくれることが大事。

これって「理想の塾講師像」の間違いじゃないの?

と、思ってしまう。

さらに特徴的なのが、下位に位置した項目たちだ。

「友達のように接してくれる」や「食事に頻繁に誘ってくれる」のなんと人気のないことか。

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【アットホームなのも活気があるのも嫌】

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一方で、「気軽に相談しやすい」が第3位、「プライベートも理解してくれる」も低めながら中位に位置している。これだけ見ると、一部の上司の皆さんは「そうか、食事はともかく、やっぱりフレンドリーな関係がいいんだな」と思うかもしれない。

それ、勘違いの可能性が高いです。

プライベートに理解があって、気軽に相談しやすいといっても、何も個人的な話までシェアしたいわけではない。友だちのように仲良くしたいわけでは、決してない。

そうではなく、とことん若手のプライベートに配慮があって、何を相談しても怒らず、不機嫌にもならず、とにかく丁寧に教えてくれる上司がいいのだ。

やっぱり、理想の塾講師像の間違いですかね!?

今の若者たちは、塾でお金を払って教えてもらうのも、会社でお金をもらって働くのも、同じようなものだと思っているのかもしれない。

活気のある職場はいらない?!

今度は、若者たちが職場に何を求めているのかについても見てみよう。引用するのは、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが実施した「新入社員意識調査2025」の結果だ。

(出所)『無敵化する若者たち』

結果を一言で評すると、今の若者たちは10年前の若者たちに比べ、マイルドな職場を好む一方、活気がある元気な職場を嫌う傾向にある。

2025年の新入社員は、10歳上の人たちが新人だったころに比べ、「お互いに助けあう」「お互いに個性を尊重する」という項目が10ポイント以上も上昇している。

他方、「アットホーム」や「活気がある」は10ポイント以上の下落だ。

先輩世代の多くは、特に「活気がある」職場の大暴落について「意外」「なんで?」と思うらしいので、もう少し考察してみよう。

活気がある職場ということは、仕事に前向きな職場ということだ。仕事に前向きな職場ということは、コミュニケーションを活発にとりながら、皆が目標に向かって努力している職場ということになる。

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【志が高い職場は困る】

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ワークライフバランス重視(という名のワーク軽視・ライフ重視)を目指したいのにもかかわらず、皆が一つの目標を共有し、志高く、お互いに切磋琢磨するような情熱あふれる職場に入ってしまったら、自分も努力しなければならなくなる。

今の多くの若者は、そんな努力に意味や意義を見出してはいない。それは会社や上司にとっての意味や意義であって、出世も成功も望んでいない若者にとっては圧でしかない。

若者が「お客様」化していく

どうだろう。現在の若者にとって、仕事に情熱を持った上司や活気のある職場は急速に忌避される傾向になる。逆に急浮上する理想の上司像は、とにかく丁寧に教えてくれる上司だ。

他方、上司たちは依然として、部下たちには主体的に自ら動いてほしいと考えている。

この上司と部下の認識ギャップは、埋まるどころかますます開き、日本海溝並みの深い谷を組織にもたらす。

このとき、今の日本では、ほぼ確実に上司側がこの深い海溝を埋めねばならない。パワーバランスという観点において、今の若者たちは圧倒的優位にあるためだ。

安定した安全安心ライフを求める若者たちと、主体的にリスクを取って行動してほしい先輩・上司たち。この綱引きにおいて、今の日本は若者側の圧勝になる。

こうしてつぎつぎと若者への配慮が積み重ねられ、お客様化していく。

そうやって今の若者たちが「無敵化」していると僕は感じる。

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