評価 4/5 ☆☆☆☆★
予告編で「湊かなえ史上、もっとも過酷で、最も切ないミステリー」と言うので、興味を持って鑑賞した。湊かなえ原作の映画を全部見ている訳ではないが、確かに最も残酷で切ないかも知れない。
章子のアパートの郵便受けに、章子宛の20年後の章子からの手紙が届く。本作はSFやファンタジーでないので、誰がこの手紙を書き、どうやって20年後の栞を送ったか不思議に思った。
良太の死後、文乃は倒れオフになる状態が続き、未来からの手紙は章子の励みになったようである。「2分の1成人式」の章子の発表は感動した。しかし、その後、文乃の新しい恋人の早坂と一緒に暮らす章子が虐待される。プライドの高い早坂と、店に食事に来た実里の家族と言い争いになり、その後、実里に章子がいじめられ、不登校になる。店の評判が悪くなり、客が来なくなると、早坂は文乃に売春をさせる。こんなに次々と不幸が襲って来るとは、章子と文乃が余りにも可哀そうである。
章子の友人の亜里沙も同じような境遇で、父親からの虐待や、父親から売春させられた弟は自殺してしまう。そこで、章子は早坂を、亜里沙は父親を、ニコチン独で殺害する事を決意する。
章子と亜里沙の話と並行して、小学校の章子の担任だった真唯子の話も描かれるが、そちらも壮絶だった。真唯子は両親が離婚したために祖母に育てられ、大学の学費も祖母が出してくれた。ところが在学中に祖母が死に、祖母の財産は母親が持ち出したようである。ファミレスのアルバイトだけでは学費に苦労した真唯子は、カラオケ映像の撮影の仕事も受けるが、エロティックな映像だった。実里の暴言に対する真唯子の体罰事件で、実里の母から映像をバラされ、教師を辞める事になる。
それと並行して、樋口と真珠の物語も描かれる。真珠は父親に傷つけられ、さらに性的暴行を受けていた。真珠は父親の殺害を決意するが、方法は同じくニコチンの毒だ。
樋口は名字で呼ばれていたので気づかなかったが、下の名前は良太で、後の佐伯良太だった。真珠もその後に改名したので、文乃だとは全く気付かなかった。細田佳央太が松坂桃李と全く似ておらず、近藤華が北川景子と似ていない事もあるが、ミスリードのためにわざと似ていない俳優を使ったのか?
真珠も壮絶な過去があるので、文乃が時々オフになる理由が分かった。文乃がマドレーヌを好きなのも、真珠の母親や樋口の思い出があると分かった。文乃と章子を合わせると「文章」とは感心した。
最後に、死期を悟った良太が、見舞いに来た娘の章子の担任の真唯子に「僕が死んだら、章子に、あなたにも幸せな未来が待っているという手紙を書いてほしい」と頼んだと分かる。幼くして父を亡くす娘に良太自身が励ます手紙を書きたかったがその元気はなく、妻の文乃に頼める状態ではないので、やむを得ず真唯子に頼んだのだろう。真唯子はちょうど勇輝から貰った「ドリームマウンテン30周年記念の栞」があったので、未来の自分からの手紙なら章子も信じるだろうと考えて書いたのかもしれない。しかし、良太も真唯子も、章子にこんなに次々と悲劇が襲って来るとは予想していなかったに違いない。
深夜バスでドリームランドに着いた章子は「ドリームランドに行くのは今日じゃない」と言う。2人がドリームランドに行くのは現実逃避であり、解決ではないと気づいたのだろう。手紙のように、20年後には幸せになっていると思ったのかもしれない。章子は「助けてくれる大人がきっといる」と言う。章子も亜里沙も文乃も真珠だって、警察や行政に助けを求めていれば、こんな悲劇に見舞われなくても済んだかもしれない。現実でもいじめや虐待の話は数多く聞くので、ここに登場するような人物は沢山いるに違いない。世の中の人々は、いじめや虐待にもっと目を向けなければならないと思った。
最後に殺人罪で服役している章子を、面会に来た真唯子が抱きしめる。きっと2人には、手紙のような明るい未来が待っているに違いない。感動したが、重い内容だったので、評価は「4」である。