大経大野球部の応援席でチャンスに掲げられる深緑タオル、贈り主は亡くなった前監督…引き継がれた「ここぞの時に頑張れる人になれ」
取材ノート
関西六大学野球の今春のリーグ戦で、大経大の応援席では好機に深緑のタオルが一斉に掲げられた。白と青のユニホームにはない色が気になり、部員たちに話を聞いてみると、贈り主が昨年12月に71歳で食道胃接合部がんのため亡くなった、前監督の高代延博さんだと教えてくれた。
プロ野球の日本ハムや広島で遊撃手として活躍した高代さんは現役引退後、阪神など6球団で指導。2009、13年の国・地域別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)でもコーチを務めた。
守備や走塁の指導のスペシャリストとして、「日本一の三塁コーチ」と称された。投手の癖や相手守備陣の力量を見抜く目に加え、選手の年齢や個性に沿って指導する対話力もまた、秀でていたとされる。
21年から大経大の臨時コーチとなり、23年に監督に就任。孫ほど年齢の離れた学生相手にもスタンスは変わらず、常に選手の能力や性格に合わせた助言を送った。丹念な指導は多くの選手の心を動かしたが、ここからという時に、高代さんの体を病魔が襲った。
昨秋、リーグ戦の途中に無念の緊急入院。高代さんは、病床で「チームに何か形に残る物を届けたい」と家族に相談し、自身のラッキーカラーの緑に座右の銘「一所懸命」の文字をあしらったタオルを自費製作、部員や関係者らに贈った。1か月後、高代さんは亡くなった。
「ここぞの時に」
信念は、チームに確かに息づいている。エースの常深颯大(4年・明石商)はピンチのたびに、高代さんの「走者を出しても後続を抑えればいい」との助言を思い出すという。リーグ開幕戦で大商大に完投勝利し、今月10日の京産大戦では、9安打されながらも10奪三振で完封した。
現在指揮を執る平川隆亮監督によると、高代さんは日頃から「ここぞの時に頑張れる人になれ」と説いていた。目標を見失わずに、でも、ずっと張り詰めている必要はない。一所懸命。学生たちは、含蓄に富むメッセージを受け継いだ。(下林瑛典)