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2015年の研修旅行

前回の記事 : https://note.com/beloved_tomoka/n/nff1804b84df7

2015年の研修旅行について、もうひとつ気になる記録がある。

沖縄到着初日の夜にホテルでの講演があるが、そこで行われたQAでの内容についてである。

2015年以前は、宮城喜久子氏 (ひめゆり学徒隊に参加し負傷兵の手当てに当たった方)が務めることが多かった講演枠を、2015年は磯野直氏が担当している。生徒全員が対象の、研修旅行初日に行われる重要なプログラムだ。

磯野氏は冒頭でこう述べている。
「半年くらい前に西田先生から連絡があって、沖縄タイムスを読んでいただいて話をしてほしいということでまいりました」
と。当時学年主任だった西田現校長が、沖縄タイムス記者の磯野氏に直接オファーを入れた流れと読める。

講演の内容は、磯野氏が手がけた連載「基地で働く」をもとにした沖縄の基地労働の歴史が中心となっている。米軍統治下の沖縄で基地労働者だった方々への取材を通して得た生の声を元に、当時の労働者の葛藤や抵抗などを時間をかけて説明をしている。一部、現政権を明確に批判する言葉が含まれることは問題だが、修学旅行向けの講演として、全体が大きく逸脱しているとは言えない。

問題は、講演後のQAにある。


生徒のひとりが質問した。

生徒 「当時、基地で働く人たちがベトナム戦争に反対するために武器を壊したり物資を抜いたりしていたことも、今の非合法な基地反対活動も、少なくとも合法ではないですよね。」

磯野氏「そうしなければ気が済まなかった人たちがいる。その人たちを非合法だと責められるかどうか」。

生徒「今の政府のやり方は間違っていると思って非合法な措置をとってもいいということか?」

磯野氏「どういうことを非合法というのか?」

生徒「当時の法律が正しいかどうかは別として、法律で禁じられていることをすること。おかしいと思ったら違法行為でも良いのか。」

磯野氏「物資を壊したこと、それは間違っていると思う?」

生徒「少なくとも、その当時の法律がある限りは。」

磯野氏 「意思表示をすることが大事なこと。バックボーンがある人たちを違法だと断ずることはなぜできないか説明してきたつもりだが」

生徒 「今も違法行為で良心を果たすことは正しいのか」

ここで同席していた教師が「水掛け論になる」として議論を打ち切った。

「今も昔も」という問いに対して、
磯野氏は「今は違う」と明確に否定せず、
先生は、法と良心の関係というテーマに辿り着いた生徒の議論を
打ち切った。


辺野古のゲート前では国が不法占拠と指摘するテントの設置が続いている。道路を塞ぐ座り込みもある。警察が逮捕しても起訴猶予が繰り返されてきた。
漁港には、今回の研修旅行で拠点・待機場所となったテントがある。名護漁協が撤去・使用禁止を市に要請したヘリ基地反対協議会のテントだ。名護市長は動かない。
同じ立場の知事や政治家たちから、これらを「違法だ」と明確に言う声は聞こえてこない。

磯野氏が高校生に向けて使った「バックボーン」の論理が、そのまま生きている。

ひとつ聞きたい。

米軍統治下で、選ぶ余地なく基地で働くしかなかった人々と、民主主義の日本で自らの意思で抗議活動に参加している人々とでは、「バックボーン」の重みはまったく違う。その違いを誰より知っているのは、当事者の声を実名で集めた磯野氏自身のはずだ。それを高校生の前で説明しなかったのは、なぜだったのか。


さらに次の生徒は、自身が辺野古移設にどちらかと言えば賛成とする立場から丁寧に論拠を述べた。キャンプシュワブ内への建設であること、嘉手納以南の基地整理との関係、辺野古区内の民意について、具体的な数字を挙げ、「参考までに反対する理由をお聞かせくださいますか?」と質問した。

磯野氏は、生徒が示した具体的な数字を「信憑性がわからない」と退けた上で、「普天間は国際法違反で接収された民間地だから無条件返還されるべきであり、代替地を求めること自体が違法だ」とした。


自分たちの側の違法行為は「良心があるから断じられない」。
相手側の論拠は「信憑性がわからない」と言いながら、自らの主張は「国際法で断じる」。同じ口から、同じ場で出た言葉だ。

この内容が、同志社国際高校の沖縄研修旅行初日の全体講演として提供された。その年の平和学習を総括する冊子に、注釈も補足もなく収録されている。
学校がこの内容を問題と認識していないか、あるいは認識した上で容認しているか、どちらかだ。

以下、磯野氏講演の内容

【講演③】
磯野直氏講演会日時:2015 年3月 14 日(土)20:00 ~ 21:30場所:パシフィックホテル沖縄 ワイケレルーム 磯野直(いその なおし)

中略

こんばんは。沖縄タイムスの記者をしています磯野といいます。半年くらい前に西田先生から連絡があって、沖縄タイムスを読んでいただいて話をしてほしいということでまいりました。

中略

司会 磯野さん、ありがとうございました。せっかくの機会ですから質問がある方、手を上げてください。

質問 沖縄の人たちが基地で働いていてベトナム戦争に加担したと。それって憲法違反にならないんですか。日本は平和主義で戦争に加担しない法律がある。
沖縄の人たちが米軍基地でベトナム攻撃の爆弾の火薬を詰めることは。

磯野 この時代はアメリカの占領下なので沖縄に日本国憲法はなかった。当時、日本にも基地があった。
横田とか本土の基地から、平和憲法下にあるはずの日本からベトナムにいった。同じようなことをやっている。それが「なぜ憲法違反でないのかと問えないのか?」という質問ですが、当時、本土でもそういう事件が起きています。伊達判決があります。先生に聞いてみてください。

中略

質問 全軍労が地下組織から始まったと。基地で働く人たちがベトナム戦争に反対するために武器を壊したり、抜いたりとか。今も基地反対運動は非合法かもしれませんが、彼らの運動が非合法だということではなかったのか。当時も、今も。少なくとも武器を壊すのは合法ではないですよね。

磯野 そうでもしなければ良心が保てなかった。確かに物資を抜いたりという話は出てくるけども、それを非合法だと責められるかどうかは、どうなんだろう?

質問 今の政府のやり方は間違っていると思って非合法な措置をとってもいいということですか?

磯部 どういうことを非合法というんですか?

質問 その当時の法律が正しいかどうかは別として、当時の法律で禁じられていることをする。当時からすると違法ですよね。おかしいと思ったら、それに反対する、そういう違法行為をやっていたことについて、どうお考えですか?

磯野 物資を壊したこと、それは間違っていると思う?

質問 少なくとも、その当時の法律がある限りは。

磯野 意思表示をすることは大事なことであって、違法行為というのは、杓子定規にいえば法律の違法行為かもしれないけど、そうしなければ気が済まなかった人たちがいるわけですね。その人たちに対して「あんたたち違法だ」と断じることが、なぜできないかという説明を、この人たちのバックボーンがどうだったのかということを説明してきましたけど。

質問 そのことは結果論であって、その当時の法律を守らないことは違法ではないですか。今、違法行為をしても、その人の良心を果たすことは正しいことですか?

先生 この話を通して考えることができたと思いますが、ちょっと水掛け論になる、それぞれの基準がありますし、それをこれから研修していく中で自分が見ていくものを考えることが、その基準にあてはまることかどうかを、この研修の中で考えてもらいたいと思います。「考えましょう」ということで、一旦終わらせていただきます。

質問 沖縄の人々が苦労してきたことは、よくわかりました。辺野古の移設に対して僕はどちらかというと賛成の立場です。なぜかというと辺野古移設は何もないところにいきなり基地がくるということではなく、基地がくるのは辺野古というより、キャンプシュワブという米軍の基地の中に空港をつくる。米軍の中に米軍が基地をつくるということが一つ。二つ目は2006年の日米ロードマップで普天間代行施設が完成した場合、嘉手納より南の基地はほぼ、なくなる。普天間にいきましたけど、煩かったし、嘉手納より南の基地がなくなることが二つ目。3つ目は民意について。この前の名護市選挙で反対派の方が勝った。多くの人が移設に反対していることはわかる。しかし辺野古の民意が無視されているところがあるのではないか。『八重山日報』が出していたものがあって、4割賛成、2割反対、あとはどちらでもない。その他にも辺野古の前区長が、この前の選挙で7割が賛成派に入れたというのもあったんです。名護市の選挙管理委員会では何区で投票率が書いてあって、誰々さんと書いてない。『八重山日報』の情報ですけど。これらの3つの点から僕は、もし仮に辺野古の住民が賛成しているというなら、名護市の民意が、辺野古区の小さな民意を潰しているのではないかと感じたんですが。これらの3つの点で、僕は辺野古移設に賛成する立場ですが、明後日、辺野古にいきますが、一つの参考として反対する理由をお聞かせくださいますか?

磯野 辺野古区の民意が、なぜそのように具体的なのか、僕にはわかりません。その信憑性についても、わからないです。1945年当時であっても国際法はあった。第二次世界大戦の当時でも、やっていい行為と、やってはいけない行為が国際法で書かれている。ハーグ陸戦規程として。その中の一つに「民間人の財産を奪ってはいけない」。当時であっても。
普天間飛行場は米軍が占領して民間地を占拠した。
70年間。当時においても国際法違反です。ということは、その1点で普天間は無条件で返還される基地だと思っています。代替地や移設地を求めることは違法だと思っています。

質問 わかりました。ありがとうございました。

司会 それでは磯野さん、どうもありがとうございました。

(責任佼正 西田喜久夫)

同志社国際高等学校 「平和を作り出す人」 第33号 より


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