地方衰退の一番の原因は「人口減少」ではない…山口の超富裕層が「住民税43億円」をまるっと抱えて移住した理由
■街を「子供の未来の実験場」にしたい 「周南市は当時、合併後に『新市建設計画』に基づいて実施される公共施設整備等の事業に対し、国が返済の70%を普通交付税で支援する非常に有利な地方債(借入金)、合併特例債という制度の対象でした。この制度をうまく利用して何かできないか考えました。たとえば街の名前を『ドラえもん市』にするとか。版権の問題があるので難しいですが、町が本当に子供たちのことを考えているのなら、子供が主役だということが一発でわかる事業をやるべきです」 街そのものを「未来の実験場」にしたい。テクノロジーと夢が教育カリキュラムに組み込まれ、子供たち自身が街づくりの当事者になる。そうすれば、出ていく理由ではなく、「ここにいる理由」が生まれる。外から来たいと思う若い家族も現れる。ジェームスさんが周防大島に見ているのは、まさにその可能性だ。 「都市のアイデンティティは、未来を背負う子供たちの中にこそある。周防大島をその実験場にしたいんです」 ■起業できる高校生を育てたい 子供を主語にした街づくり。その具体的な一歩として、ジェームスさんが関わったのが教育の現場だ。 山口県立大学附属周防大島高校を周防大島に設立する計画に伴い、町民としてジェームスさんは意見する機会があった。 「大学受験するための高校ではなく、高校時代にインターンシップでビジネスを経験したり、高校生のアイデアを採用し事業化を検討したり、高校生社長を生み出す土壌のような学校にすべきだ」 そのために、予備校のスーパー講師のような「名物先生」をスポットで招聘し、基金を募って運営を任せる――いわば「ハーバード・モデル」の地方版だ。ハーバード大学がなぜ世界最高峰の教育機関であり続けるか。それは、巨額の寄付基金(エンダウメント)を運用し、その運用益で最高の教授陣を招聘できるからだ。授業料収入に依存せず、長期的視点で人材を育てる。この仕組みを、地方の高校に導入できないか。 ジェームスさんの構想では、校歌の作曲にX JAPANのYOSHIKIを起用する案まであった。「役所は県出身の音楽家を選びがちだが、世界的に活躍するアーティストに依頼して子供たちに夢を与えたかった」というのがその理由だ。 しかしこれも、行政との協議で頓挫した。前例がない、予算の枠組みに合わない、既存の教育機関との調整ができない、責任の所在が不明確になる、失敗したときに誰が責められるかわからない……。考えられる理由はいくつもある。だが、一つひとつは「もっとも」に聞こえる理由の積み重ねが、改革を殺す。 子供に夢を与える話が、大人の都合で潰される。この国の地方では、こういうことが繰り返されている。そして繰り返されるたびに、「本気の一人」は去っていく。