プレイヤーにゾクゾクする感覚を与える『Mixtape』
2026年はノスタルジアが特に強力な力となっています。そのため、スマートフォンから離れ、たまごっちに餌をやることや、有線ヘッドホンが絡まっていないかを確認することが最大の心配事だった時代の、シンプルな生活へのカルチャー的なシフトが見られるほどです。とはいえ、このコンセプトを理解することと、プレイヤーがその切ない感情に間近で触れることができるインタラクティブな世界を創造することは、全く別の話です。『Mixtape』は、英国アカデミー賞(BAFTA)受賞スタジオBeethoven & Dinosaurがお届けする最新アドベンチャーゲームで、1990年代の高校生活最後の数日間を懐かしむ音楽マニアの変わり者3人の視点にプレイヤーを置くことで、この強力な感情を巧みに表現しており、インスピレーションに満ちた、サイケデリックで、ヒット曲を満載した冒険が展開されます。
「すべては音楽から始まりました」と語るのは、『Mixtape』の脚本家兼監督であるジョニー・ガルバトロン氏。「私たちのキャラクター、ペース配分、物語は、膨大なプレイリストを中心にゲームを作るために、常に音楽から始まるように思えます。ゲームのメカニクスはミックステープであり、音楽もミックステープであり、キャラクターもわずかに異なる時代のミックステープのようです。アートスタイルは、太陽が降り注ぐ山間のスケボーコースから、ライブのアーカイブ映像、そして粒子の粗い白黒へと変化します」と彼は続けます。「それはゲームのあらゆる要素に存在する、一種の一貫性のあるコラージュなんです」
時の流れは速いもの
『Mixtape』は、Stacy Rockford、Van Slater、Cassandra Morinoという3人のキャラクターを中心に描かれています。彼らは、親の反対や明らかな価値観の相違にもかかわらず、人生の重要な成長期であるこの時期ならではの絆を築き上げていきます。「Rockfordは音楽に夢中な夢想家で、ささいな破壊行為を働きます。故郷を離れてニューヨークへ行き、映画のサウンドトラックを手がける音楽監督になる準備をしているところです」と、ガルバトロン氏は説明します。「Van Slaterにはそんな野心はなく、故郷に対して禅にも似た愛情を抱いています。Cassandraは優等生ですが、両親はRockfordとSlaterの影響で道を踏み外したと信じています」
大学生活や大人としての人生によって楽しみが奪い去られてしまう前に、3人が最後のパーティーに向かうところから物語は始まります。Beethoven & Dinosaurの開発チームの多くが1980年代と1990年代に子供時代を過ごしたため、『Mixtape』はその世代のプレイヤーに親密な感動を与える機会となっただけでなく、彼ら自身の過去を再訪する手段にもなりました。「私にとって、こうしたことをアニメーション化することは、もう少しだけそこで過ごす機会のように感じられました」と、『Mixtape』のリードアニメーターを務めるジョー・トゥール氏が付け加えます。
しかし特筆すべきは、同スタジオはオーストラリアのメルボルンに拠点を置いているにもかかわらず、『Mixtape』が主にアメリカ郊外のカルチャーを描いている点です。「私にとって、それは遠く離れた場所、架空の町を舞台にした物語です。その町は、まるで1980年代や1990年代のラジオ局の曲をそのまま具現化したかのように、当時のあの『過剰さ』や『モノカルチャー』の空気を今なお色濃く漂わせているんです」とガルバトロン氏が付け加えます。
Beethoven & Dinosaurは、単に過去を振り返るだけでなく、大きな変化の瀬戸際に訪れる高まる感情も探求したいと考えていました。「(3人が)一緒にいると、静かな安堵感が生まれます。もちろん彼らは大騒ぎしたり、車の合間をスケボーで駆け抜けたり、パトカーをオーリーで飛び越えたりもします」とトゥール氏は続けます。「でも、そのどれも悪意や残酷さによるものではありません。ゲームで最高の瞬間のいくつかは、彼らがただ一緒に過ごしている時だと思います」
Beethoven & Dinosaurは『ブレックファスト・クラブ』やリチャード・リンクレイター監督の反抗的なコメディ映画『バッド・チューニング』のような青春時代の名作から大きな影響を受け、ハングアウト映画サブジャンルの雰囲気を再現することに熱心でした。「アニメーションの観点から、キャラクターが分かりやすい演技の選択をするのを避けました」とトゥール氏は説明します。「大げさに目をむいたり、うんざりした長いため息をついたり、怒って足を踏み鳴らしたり(といったリアクション)です。感情は大きくても、演技まで大げさである必要はありません」と付け加えます。「そうすることで、もっと共感を得られると思います。その結果、即座にそのキャラクターについてすべてを理解しているわけではないのだという印象をプレイヤーに与えます。発見し、理解するために掘り下げるべきものがまだたくさんありますから、それが人々を惹きつける事を願っています」
ゲームを通して、主人公のStacy Rockford,は、予期せぬタイミングで第四の壁を破り、プレイヤーに直接語りかけることがあります。「本作には3つの異なるインスピレーション源があります。『ウェインズ・ワールド』のマイク・マイヤーズ、『ハイ・フィデリティ』のジョン・キューザック、『フェリスはある朝突然に』のマシュー・ブロデリックです」とガルバトロン氏。「楽曲に関する情報、書かれた時期、作曲者に関する事実や興味深い話を含めたかったのですが、通常の会話では不自然になってしまうだろうと考えました。登場人物が突然そういう話し方をし始めることがあって、そういう時はただ書き留めるしかないんです」
「内省的なファンタジー」を表現する上で、もう一つの重要な側面はファッションでした。トレーラーでは、3人は燃えるようなオレンジ色の森をスケボーで滑り降り、車のボンネットの上で談笑します。だぼっとしたチェック柄のシャツ、時代に合ったバンドのTシャツ、擦り切れたキャンバスのスニーカーを身につけており、Rockfordのセーターのようなアイテムは、ガルバトロン氏自身のワードローブから直接取り入れたものです。目の肥えたプレイヤーは、『Mixtape』がどの具体的な年や時代を舞台にしているのか気になるかもしれません。しかし、Beethoven & Dinosaurはそれを意図的に曖昧にしています。「このゲームに、明確な『年』というものはありません」とトゥール氏は述べています。「キャラクターも、1985年から1995年の間の、わずかに異なる時代から来たように感じられます」時間軸をさらに曖昧にするために複数のメディアを組み合わせたビジュアルスタイルが採用されており、Beethoven & Dinosaurは雰囲気のある実写映像をカットシーンやゲームプレイと融合させています。
これは、アニメーター、アーティスト、テクニカルディレクターたちが愛情を込めて作り上げた、制作の過程で進化していったスタイルです。「私たちは、全体的な雰囲気、絵画的な表現の度合い、ライティング、レンズ、アニメーションのスタイルをどう使うかといったアイデアから始めますが、それはあくまでも漠然とした目安に過ぎません。制作の過程は様々な道へと続き、テクノロジーとアートは予期せぬ形で融合し、シェーダーは新たな可能性をもたらし、現実と様式化の境界線は常に変化し続けているんです」とトゥール氏は説明します。
厳選された楽曲
印象的な選曲こそが、『Mixtape』の鼓動する心臓部です。DEVO、The Smashing Pumpkins、Joy Divisionといったアーティストの楽曲が、登場人物たちが夜を進む中でインタラクティブな重要な瞬間に織り込まれています。「おそらく、友人たちと坂をスケボーで下ったり、家にトイレットペーパーを投げたり、生々しい描写で激しくキスしたりする映像を皆さんも目にしたことがあると思います」とトゥール氏が指摘します。「私たちはゲームメカニクスを通して、十代の激しい感情を表現しようと本当に努力しました。たとえば、ゲームの中で友人にすっぽかされた時の気持ちを、メカニクスでどう表現するのか?どんな曲が流れるのか?仲間と車の中で曲に合わせてノリノリになる感覚を、メカニクスでどう表現するのか?といった具合に」しかし、『Mixtape』の十代特有の超自然的な感情の増幅(最新トレーラーではキャラクターたちが空を飛んでいます)の裏にある意味について尋ねると、開発者の二人は口を閉ざします。
トゥール氏は、開発の過程でゲームの多くの部分が変更されたと説明します。Roxy Musicによるソフィスティ・ポップのクラシック曲『More Than This』と共に登場する「Coastal Cruise」というゲーム終盤のシーケンスは、純粋に物語的な構成上の理由から、より早いランタイムへと変更されました。「私たちは長い間、楽曲の順番を試し続けました。曲を最初から最後まで並べて入れ替え、再配置し、入れ替え、そして物語が速く美しく展開し、クライマックスが適切なタイミングで訪れるようになるまで試行錯誤を繰り返したんです」とガルバトロン氏は語ります。
Beethoven & Dinosaurが2作目のゲーム制作に、まるで片思いの相手との夏に合ったサウンドトラックを選ぼうとする傷つきやすい十代の若者のような、愛らしくも細やかなこだわりで取り組んだのも納得できます。「私たちはサウンドトラックに導かれるままに進めました」とガルバトロン氏は言います。「感情の高まり、落ち込み、爆発、すすり泣き、ギターソロ、叫び、怒り、愛、これらはすべてすでにそこに存在していたもので、私たちはただ『巨人の肩』の上に築き上げただけなんです」満足のいく完成までには多くの試行錯誤が必要だったことは明らかですが、リリースの際には、『Mixtape』が皆さんの夏を彩るサウンドトラックとなることを願っています。
『Mixtape』は5月7日(米国時間)にEpic Games Storeでリリース予定です。