【技術解説:なぜGOTALはIF-WS2を「主役」にするのか】
GOTALが配合する次世代固体潤滑剤 IF-WS2(無機多層フラーレン構造二硫化タングステン)。この粒子が、チェーン潤滑の要である「ピン周辺」でどのようなスケール感で機能しているか、具体的な数値で見てみましょう。
ピン径を3.4mm(3,400μm)とした場合、ブッシュとのクリアランス(隙間)は以下の通りです。
初期伸び 0.1%時: 3,400μm × 0.001 = 3.4μm(3,400nm)
摩耗限界 0.5%時: 3,400μm × 0.005 = 17.0μm(17,000nm)
この「極小に見える隙間」に対し、GOTALが採用するIF-WS2のサイズは60nm〜200nm。粒子にとって、0.1%の隙間は自らのサイズの17倍〜56倍という「広大な空間」であり、オイルの流動と共に深部までスルスルと浸透していきます。
最近では大手メーカーもこの物質に注目し、ワックス系の「HALO」などはセラミックとIF-WS2の「ハイブリッド構成」を採用し始めました。産業界でも、高価なIF-WS2の使用量を抑えつつ効果を出す手法として知られていますが、GOTALはチェーンのピン周辺において、この構成には懸念があるとGOTALは考えています。
一般的にセラミック等の剪断系(板状)固体潤滑剤は数μm(3,000nm〜10,000nm以上)の大きさがあり、チェーンピンの3,400nmという隙間に対しては「大きすぎる」のです。
もしピンの入り口でこれらの粒子が「渋滞」を起こせば、IF-WS2はおろか、オイル自体の浸透さえも妨げてしまいます。(IF-WS2を「ビー玉」に例えると、一般的な剪断系固体潤滑剤は「広げた新聞紙」ほどのサイズ感になり、物理的に通り抜けることが困難です)そのため、GOTALではリスクを回避するため高価ですがIF-WS2のみとしてルブを設計しています。
「コストのために性能を妥協し、中身を誤魔化したくない」。だからこそGOTALは、高価であってもIF-WS2を基本(メイン)に据えています。物理は、忖度しません。0.1%精度の真実を追求した結果が、この一滴に凝縮されています。