【完結編】国立科学博物館「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」

支援総額

33,402,000

目標金額 30,000,000円

支援者
877人
募集終了日
2018年9月14日

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2018年08月28日 08:45

日本一マッチョな縄文人集団を発見!「漕ぎ舟」のプロたちか?

8月27日現在、「3万年前航海 徹底再現プロジェクト【完結編】」のクラウドファンディングが成功するかどうかは、まだ不透明です。9月14日までに成功できれば、これまでのように、いやさらにもっと面白い情報を発信できますので、皆さまどうか最後まで、応援をお願い致します!

 

さて今回は、私たちが昨日発表した新しい研究成果について、裏話を交えて解説したいと思います。

 

日本一骨太な「マッチョ」縄文人集団を発見!

 

「3万年前の航海 徹底再現プロジェクトが、なぜそんな研究をしているのか?」

 

――その疑問には次項でお答えすることとしまして、先に成果の概要をお話しましょう。そもそも縄文人の骨格は現代人より頑丈な傾向があるのですが、私たちの研究チームは、全国各地の縄文人の上腕骨約800個体分を分析し、彼らの中にも、「上腕骨が異様に太い集団」がいたことを、はじめて明らかにしました。縄文人の体格の地域差に関する研究としては、過去最大規模です(圧倒的に)。

 

まず、縄文人の上腕骨は、内陸平野より海岸付近の集団で太いという、とても「きれいな結果」が得られました。そしてその頑丈な海岸集団の中で、愛知県渥美(あつみ)半島(田原市)の突端近くに所在する縄文時代晩期の保美貝塚(ほびかいづか)の男性が、特異的に骨太であることがわかったのです。

 

・・・これは一体、何を意味しているのでしょうか? 私はヒントを得るため、今年の1月に、現地の遺跡調査状況を熟知している田原市の増山禎之さんを訪ねました。遺跡から見つかる動物骨を調べて保美貝塚人などの生業のあり方を研究している奈良文化財研究所の山崎健さんにも、同席頂きました。

 

 

 

縄文時代のマッチョ集団が存在したことで見えてくること 〜漕ぐか・帆を使うかという課題への答え〜

専門家と議論し、データを見直して明らかになってきたのは、海岸付近の縄文人の中でも、河口ではなく、海で積極的に漁労を行なっていた集団の上腕骨が太いということでした。つまり「海での活動」の中に、上腕骨を太くする何かがあるようなのです。

 

ヒトの四肢骨は、個人が経験した筋活動レベルに応じて太く成長することがわかっていて、例えば「ボート漕ぎの選手の上腕骨は太い」ことが知られています。

 

▲マッチョな人物のイメージとして「3万年前の漕ぎ手チーム」の宗元開さん。上腕骨が太いかどうかCTスキャンなどで調べたことはまだありませんが、調べたら面白い結果が得られるかもしれません。

 

このことから、私たちは、海での日常的な舟漕ぎが、海岸付近の縄文人たちの上腕骨を発達させた最大の原因と考えました。漁労活動には、突いたり、投げたり、引いたりといった様々な動作があるでしょう。それでも、あれこれ議論しましたが、長時間の舟漕ぎ以上に上半身に負担をかける動作は考えつきません。

 

●  ●  ●  ●  ●  ●  

 

縄文時代の舟は帆船でなく手漕ぎ舟だった――実はそこが、私たちが確かめたいポイントだったのです。風力を使う帆かけ舟に比べ、手漕ぎ舟の推進力は人力ですので、その肉体に対する負担の違いは容易に想像できます。私たちはそれが骨に現れているかどうかを探ろうとして、この研究をはじめました。

 

▲「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」でこれまでテストした「草束舟」、「竹筏舟」、そしてこれから海上実験予定の「丸木舟」でも、「漕ぐ」モデルを採用します。

 

そもそも、この時期の日本列島には、風を自在に操る「本格的帆走技術」は存在していなかったということが、考古学者から言われていました。全国の縄文遺跡から、これまで160艘くらいの舟の残骸が発見されているのですが、その全てが丸木舟で、漕ぐための櫂は多数発見されていますが、帆がつけられていた痕跡は知られていないのです。今回の骨のデータは、上記の考えと見事に整合しており、この考えがさらに強化されたと言えます(※)。

 

※さらに弥生~古墳時代の舟の残骸・図像・埴輪などを調べると、この時代ですら漕ぎ舟の時代であったことがわかります。詳しくは、先の「新着情報」のページから無料ダウンロードできる、「古代日本における帆走の可能性について…横田洋三(公益財団法人滋賀県文化財保護協会)」をご覧ください

 

縄文時代がそうなら、それ以前の旧石器時代(3万年前)の人たちが風を操って航海したとは考えられません。従って、私たちがこれまで、「3万年前の実験」で、草束舟と竹筏舟を「漕いだ」のは間違っていませんし、来夏に実施予定の「本番」の航海も手漕ぎ舟で出航すべきということになります。

 

 

彼らは何故それ程までにマッチョになったのか

「海岸付近の縄文人の上腕骨がなぜ太いのか?」についての答は、上記のように落ち着きましたが、もう1つの謎が残っています。渥美半島の保美貝塚人の男性が、他の海岸集団と比べても飛びぬけて太い理由は何だったのでしょうか?

 

現地の遺跡調査状況を熟知している田原市の増山禎之さん(以下、増山さん)と奈良文化財研究所の山崎健さん(以下、山崎さん)との議論から、【2つの原因候補】が見えてきました。

 


 【マッチョになった理由①】


保美貝塚の近隣には、ほぼ同時期の伊川津貝塚、吉胡貝塚、稲荷山貝塚などの集団が暮らしていました。山崎さんらの研究によれば、他集団の漁労は基本的に集落周辺の湾内で行なわれていたのに対し、保美貝塚からは外洋(遠州灘方面)にいる大型のマダイやニホンアシカが多く見られたのです。つまり保美貝塚人は、積極的に外洋へ出て漁をしていたために、特に上腕骨が発達したと言えそうです。

 

▲海を遊泳するマダイ(※写真はイメージです)

 

しかしそこで、山崎さんから指摘されました。「北海道や三陸海岸など、ほかの地域の縄文人たちも、外洋で積極的に漁をしています。それだけでは保美の特異性の説明にはなりません。

 


 【マッチョになった理由②】


そこでさらに議論を詰めた結果、もう1つの理由が浮上してきました。それは「海上交易」です。

 

当時、石器の石材として重宝されていた「サヌカイト」という石があるのですが、考古学者たちは、これについて興味深いシナリオを描いていました。サヌカイトは近畿地方の二上山でとれますが、保美貝塚から大量に発見されており、そこまで運搬されていたことがわかります。そこで各地で見つかるサヌカイトの分布パターンを調べたところ、どうやら渥美半島まで、ぐるっと陸路を回るのでなく、紀伊半島から海路で搬入されていたらしいのです(下図参照)。

 

 

●  ●  ●  ●  ●  ●  

 

これを知ったとき、目の前がスーッと晴れていく感覚を覚えました。「保美貝塚人は手漕ぎ舟で、外洋での漁に加えて、海上交易を積極的に行なっていた」とすれば、彼らの特異性がきれいに説明できます。

 

増山さんから、さらに面白いことを教えてもらいました。保美の隣に川地貝塚という、保美より少し古い縄文時代後期の遺跡があります。そこの男性の上腕骨の太さは保美に劣るのですが、川地では、外洋での漁が行われていた痕跡があるものの、サヌカイトの出土は多くないというのです。つまりサヌカイト交易の活発化と同期して、上腕骨の極端な頑丈化が起こったようなのです。

 

 

以前から話題だった「マッチョ骨」。その意味をはじめて問う研究

今回分析した保美の人骨の多くは、私(海部)が学生時代を過ごした東京大学総合研究博物館に収められています。そして、その異様な頑丈さは、実は研究室に出入りしている学生や教職員の間では、当時から有名でした。「いやー、これすごいよね。縄文人おそるべし」と話していたものです。

 

それから20年以上、私自身は、東南アジアでの人類進化研究(ジャワ原人など)に注力していましたが、今回、航海プロジェクトの関連研究として、なんと四半世紀(!)ぶりに“あの骨”を手にとることになったわけです。

 

●  ●  ●  ●  ●  ●  

 

それでは彼らの異様さを、実際のデータで見てみましょう。

 

図の縦軸は「上腕骨の周径」、横軸は「上腕骨の長さ」に相当します。骨が長ければその分太くなる傾向があるため、こうして“長さでコントロールした太さ”を比較します。

 

サンプルは縄文(水色の×)及び弥生・古墳時代人(グレーの×)の男性の上腕骨で、図中の斜めの実線は全サンプルに基づく回帰直線、つまり「ある長さなら周の平均的状態はこれくらい」ということを表示します。回帰直線の上に来る個体は「平均以上に太い」とみなせます。

 

注目の保美貝塚人は、赤いHで示しました。なんと22人の男性全員が、全国平均を上回っています!保美貝塚では、ムラの男性全員がマッチョだったようなのです。

 

そんな男性全員がマッチョのムラが隣にある光景を、想像してみてください!

 

さらに極め付けは、図からはみ出しそうな一番上のH。この男性は、一体何者だったんでしょう?

 

現時点で私の手元にあるデータの中では、彼は日本一のスーパーマッチョ男です。この点、気になるのでさらに検証を続けます!

 

最後に補足ですが、図中のGは保美に次いでマッチョだった縄文男性なのですが、北部九州の玄界灘集団です。現段階では十分な検討はできていませんが、この地域は朝鮮半島との交流があった可能性が疑われる場所であり、やはり海との関係が気になります。

 

●  ●  ●  ●  ●  ●  

 

先史時代のマッチョ集団の研究は、今回で終わりではありません。今後も機会があれば続報を打ちますので、ぜひ楽しみにしていてください。

 

また、気になるのは、「これだけの上腕骨の持ち主が、実際にどんな体格をしていたか」ですね。これについては現代人のCTデータなどを集めて検討する必要があり、今後の課題の1つです。近い将来、そういう研究にも挑戦してみたいと考えています。

 

▲”スーパーマッチョ縄文人”の上腕骨模型を手にする、「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の漕ぎ手の宗 開元さん。宗さんの上腕骨がどれくらいの太さなのか、CTスキャンで調べてみたいですね。

 

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論文タイトル:縄文時代人の上腕骨はなぜ太いのか? -遺跡間変異が示唆するその原因-
掲載誌:人類学雑誌(Anthropological Science (Japanese Series))【早期公開論文】(アクセスは人類学会会員に限定されています)
掲載日:2018年8月25日(土)
著者:① 海部陽介(国立科学博物館「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」)、② 増山禎之(愛知県田原市教育委員会)

 

 

本プロジェクトへのご支援は以下から

 

 

リターン

5,000

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15,000

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②舟員番号入り「クルー認定証」:
・プロジェクト最新情報(メールニュース)の受信権付き
・科博の特別スペースにお名前を表示
③「本番の航海」航跡ライブ配信閲覧権
④国立科学博物館の常設展招待券2枚
※前回支援者名+舟員番号を入力した方は「プレミアムマーク」付認定証を贈呈します
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申込数
283
在庫数
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発送完了予定月
2018年11月
5,000

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