太い上腕骨 海と生きた証し
日本一マッチョな男は、愛知県の渥美半島にいた⁉ そんな研究成果が東京大の総合研究博物館(東京都)で開催中の特別展「骨が語る人の『生と死』」で紹介されています。展示されているのは愛知県田原市にある縄文時代の遺跡「保美貝塚」(3000~2300年前)で見つかった男性の腕の骨。めちゃめちゃ太い!
縄文のマッチョ男性
展示室に並んだ骨と骨。どちらも大人の男性の上腕(肩から肘まで)の骨です。左の白いのが保美貝塚の骨。これまで日本で見つかった骨の中で一番太く、最も細い部分でさえ8㎝以上あります。右の江戸時代の平均的な男性の上腕骨と比べると、2㎝以上も差がありました。
保美貝塚で見つかった縄文時代の男性の上腕骨㊧。隣にある江戸時代の男性の骨より2cm以上太い=東京都で
どうして発達?
人間の手足の骨は、水泳など筋肉に大きな負荷がかかる運動を続けると太くなります。もちろん筋肉も発達するので、生きていたときの体格が分かるのです。
博物館の海部陽介教授は全国で800人以上の縄文人の骨を調査。やはり、内陸よりも海に近いところで見つかった骨のほうが骨太でした。海に近いほうが海上で舟をこぐことが多かったからです。
ただ、保美貝塚で見つかった骨は同じ渥美半島の遺跡で見つかった骨と比べても特別太く「マッチョ」でした。
骨が物語る暮らし
地元の田原市教育委員会の増山禎之学芸員によると、保美貝塚からはマグロ、カツオ、マダイなど外洋の魚の骨が他の遺跡よりも多く見つかっています。舟で陸から遠く離れた海へ漁に出ていた可能性が高いのです。また、石器の材料を対岸の紀伊半島から舟で運んでいたとの説まであるようです。
特別展には、千葉市の縄文遺跡などで見つかった頭の骨も展示されています。成長とともに歯がすり減り、上下の前歯がかみ合うのは、硬い物をよくかんで食べていた証拠です。
鎌倉時代の日本人は「出っ歯」の人が増え、江戸時代になると歯並びの悪い人が目立つようになります。食事でかむ回数が減ってあごの骨が発達せず、歯が口の中に収まりきらなくなったからだと考えられています。身分の高い貴族や武家ほどそうだったようです。
考古学の面白さ
特別展を取材した中日新聞文化芸能部の谷村卓哉記者は「遺跡で見つかる骨も石器も、それ自体は口を開いてくれませんが、ほかの研究材料と合わせて考えることで、言葉や文字のない時代の祖先の姿も分かってくる。今の暮らしを見直すヒントをくれるかもしれない。考古学という学問の面白さです」と話します。
特別展は2024年2月22日まで。入場無料。
(12月16日付中日こどもウイークリー3面「NEWS虫めがね」から)