9条「変えないほうがよい」63% 25年よりやや増 朝日世論調査

磯田和昭

 朝日新聞社が3~4月に実施した全国世論調査(郵送)で、憲法9条改正の是非について条文全体を示して尋ねたところ、「変えないほうがよい」が63%(前回2025年調査56%)で、「変えるほうがよい」30%(同35%)より多かった。

 この質問は、憲法を中心とした郵送調査では13年から、同じ聞き方を続けている。

 「変えないほうがよい」は今回、前回よりやや増えたが、5~6割程度で推移してきた傾向には変わりがない。

 自民、維新両党は25年10月の連立政権合意書にもとづき、9条改正の条文案をつくる「条文起草協議会」を設置した。しかし、「変えないほうがよい」は自民支持層で57%、維新支持層でも半数を超えた。

自民「改憲4項目」の回答傾向、大きな変化なし

 トランプ米大統領の目指す「力による平和」を評価するかどうかで、9条改正に対する見方に違いがある。「力による平和」を評価すると答えた人(10%)では、9条を「変えるほうがよい」が58%で、「変えないほうがよい」の39%より多くなっている。

 自民が18年に「たたき台素案」としてまとめた「改憲4項目」について個別に質問した。いずれの項目もこれまでと比べ、回答傾向に大きな変化はなかった。

 9条1項、2項をそのままにして新たに自衛隊の存在を明記する案について「賛成」52%、「反対」40%だった。

 「賛成」「反対」と答えた人に、理由をそれぞれ3択で尋ねた。

 「賛成」理由は「自衛隊が海外で活動しやすくなる」41%、「自衛隊は憲法に違反しているという疑いがなくなる」31%、「自衛隊員が今より誇りを持てるようになる」25%だった。

 「反対」理由は「自衛隊の海外活動が拡大するおそれがある」62%、「政府はこれまでも自衛隊は合憲としており、変える必要がない」29%、「戦力の不保持をうたった2項を削除するべきだ」6%だった。

 大規模な災害などの際に、内閣が法律に代わる緊急政令を出して国民の権利を一時的に制限したり、国会議員の任期を延長したりする「緊急事態条項」の創設については、「いまの憲法を変えずに対応すればよい」52%、「憲法を改正して対応するべきだ」33%、「そもそも必要ない」10%だった。

 国が教育の充実に向けた環境整備に努めることと、参院選での合区の解消についても、「いまの憲法を変えずに対応すればよい」が5割前後で最多だった。

 調査は全国の有権者から3千人を選び、郵送法で実施した。有効回答は1827で、回収率は61%だった。

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    木下ちがや
    政治社会学者
    視点

    これまでは「保守は改憲志向、革新(リベラル)は護憲志向」といわれてきた。ここ数年は世論の保守化傾向がいわれ、右派ポピュリズム政党が躍進し、共産党、社民党といった伝統的護憲政党が著しく衰退した。それにもかかわらず、この調査で憲法9条をはじめとする改憲に消極的な世論が増えているのは何故だろうか。 戦後日本において日本国憲法が定着した理由のひとつは、いうまでもなく戦争体験にもとづく平和意識である。もうひとつは、戦後もたらされた国民的豊かさと治安の良さである。平和意識は生活の向上と結びつくことで確固たるものになった。 したがってこの結びつきが失われてることで革新(リベラル)の護憲意識は衰退の一途である。他方、この豊かさと治安が失われつつあることへの世論の保守的な危機感が、ある方向では排外主義的な世論をつくりあげ、別の方向では「他国の戦争に巻き込まれること」を恐れる「新しい護憲世論」をつくりあげているのではないだろうか。 したがって「9条護憲」はもはや革新的(リベラル)というよりもむしろ、保守的なものになりつつあるのかもしれない。例えば右派ポピュリスト政党といわれる参政党の支持者のなかでも9条護憲派は結構いるのかもしれない。この憲法をめぐる世論の動向は、護憲=リベラルという色眼鏡を外してみる必要がある。

    2026年5月2日 08:14

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