「私、月見ヤチヨはあなたのことをお慕いしております」

  • 1二次元好きの匿名さん26/04/28(火) 19:50:08

    「どうか私と一緒にハッピーエンドを目指してください、綾紬芦花さん」
    「……え、私?」

  • 2二次元好きの匿名さん26/04/28(火) 19:52:33

    『ヤオヨロ〜♪芦花、ちょっといい?』
    『芦花に折り入って話したいことがあるんだけど、時間もらえないかな?』
    ヤチヨからそんな誘いが来たのは、彩葉が10年越しの悲願を叶えてから、少し経った頃だった。
    最初は"珍しいな"と感じたのを覚えている。
    10年前、彩葉が私たちに"月見ヤチヨ"の正体を明かしてから、プライベートで私たちと話すときはかぐやちゃんとして話しかけられることが多かった。あえてヤチヨとして話すのは公の場でのコラボだったり、仕事中のことに限られていた。
    『いいよ、仕事の話?』
    『ごく個人的な話〜。でも大事な話だから、時間もらいたくて。ダメ?』
    プライベートであえて"ヤチヨ"として話しかけてくることも珍しかったが、ヤチヨが私に"大事な話"ときた。
    かぐやちゃんが、ということであれば、彩葉に怒られたとか、とりなして欲しいとか、いくつか例はあるのだけど。
    私は興味をそそられた。
    『彩葉は知ってるの?』
    『うん。知ってる』
    彩葉が知ってるならいいか、と私は誘いにOKを返した。
    時間を打ち合わせて、スケジュールに登録してから彩葉にメッセージを入れる。
    『なんか、かぐやちゃんから改まって相談を持ちかけられたんだけど、何か知ってる?』
    返事はシンプルだった。
    『知ってる』
    『どんな相談か分かる?』
    『ん〜……ヤチヨから直接聞いたほうがいいと思う。芦花の感じたままを答えてあげて』
    『りょ〜』
    アプリを閉じながら、私は首を傾げる。彩葉のメッセージには、喉に小骨が引っかかったような違和感があった。
    彩葉も普段は、ヤチヨと同じように2つの名前を呼び分けているが、身内だけで話すときは基本的に"かぐや"と呼んでいる。それはヤチヨの正体を考えれば自然なことだ。ヤチヨはかぐやちゃんなのだから。
    そんな彩葉が、ほかに見る人もいない私とのメッセージで彼女のことを"ヤチヨ"と呼んだのは、やはり敢えてなのだろう。
    それに、もう一つ。
    『芦花の感じたままを答えてあげて』
    普段の彩葉なら、かぐやちゃんが助けを必要としているなら『悪いけど助けてあげて』とか『手伝ってあげて』とか言うはずだ。
    一体どんな相談をされてしまうのだろう。私はそれを楽しみに思いながら、約束に間に合うようその日の仕事をこなしていった。

  • 3二次元好きの匿名さん26/04/28(火) 21:00:49

    約束の時間に間に合うようにツクヨミへログインする。
    目を開けると、視界の端にメッセージの通知が光っていた。
    メッセージはヤチヨからで、ツクヨミ内のプライベートルームへの招待だった。招待を受諾すると、スポーン地点から即座に対象のルームへと転移する。
    「…………ぁ」
    転移した瞬間、思わず驚きの声が出た。
    そこは、雄大な夜の海とツクヨミの夜景を望む、天駆ける飛行船の中だった。
    それも、料理や飲み物を楽しむことができる、屋形船タイプのもの。
    人気が非常に高く、チケットはすぐに売り切れてしまう。特にヤチヨのミニライブ時に飛行している飛行船の抽選倍率は熾烈を極めるという。
    また、今後味覚が実装された際には、その価値は現在の数倍に跳ね上がるだろうと言われている。確かに、この景色で味を感じながら食べる食事は、仮想のものとはいえ何物にも代えがたい体験になるだろう。真実はその日を今か今かと心待ちにしている。
    さて、ヤチヨがいつも使っている天守閣を想像していたので思わず心を奪われてしまったけど……今日の本題はツクヨミの夜景を楽しむことではなかった。
    視線を夜景から船内に戻すと、料亭の座敷を模した空間の真ん中に、ヤチヨが座っていた。
    「ヤオヨロ~。呼び出してごめんね」
    いつもの衣装のまま、ニコニコと手を降っている。あの頃のようなテクスチャの笑顔ではなく、本物の笑顔で。
    「ごめん、待たせちゃった?」
    「全然~。むしろちょっと早いくらい?」
    なんだかデートみたいなやり取りをしながら、ヤチヨのところまで歩いていく。
    「どうぞどうぞ、おかけください」
    「じゃあ、失礼して」
    ヤチヨに促されて、彼女の前の座布団に腰を下ろした。
    「この船、わざわざ飛ばしたの?」
    「たま~に、こうしてツクヨミの空を眺めてるんだ。いい眺めでしょ?」
    「職権乱用じゃない?」
    「ノンノン、こうしてツクヨミのサービスがバグなく動いていることを確かめるのも仕事のうちなのです」
    人差し指をチッチッと振りながら、ヤチヨは得意げに笑う。そういうところはあの頃のヤチヨと何ら変わらないのだけど、真相を知ってから改めて見ると、かぐやちゃんの面影でもあったのだと感じられた。
    「さあさあ芦花、何か頼む?今日はヤッチョの奢りだよ!とはいっても、まだ味覚はないけどね」

  • 4二次元好きの匿名さん26/04/28(火) 21:08:31

    ヤチろか!?ヤチろかじゃあないか!!コイツはいけない正座待機しないと……

  • 5二次元好きの匿名さん26/04/28(火) 22:05:41

    それでも、せっかくの機会だ。私は役得を楽しむことにして、普段は頼まないような料理をいろいろ注文した。
    テーブルの上は、すぐに色とりどりの料理や飲み物で埋め尽くされる。
    「「かんぱ~い!」」
    ヤチヨはメロンソーダ風の飲み物を、私はブルーハワイ風の飲み物を手に持って、グラスを合わせた。
    そのまま二人でゴクゴクとグラスを傾ける。味はしないし、触覚もまだ料理に対しては適用されていないが、こうして誰かと楽しむだけで幸せな気分になれる。それがツクヨミの良いところだ。
    「ん〜、おいしいなぁ」
    なんだかよくわからないたこ焼き風の料理をつつきながら、ヤチヨはそんな風に言って笑う。
    私も謎の生物の串焼きを齧りながら、ワインのように真っ赤な炭酸風の何かを飲む。
    たとえ味はしなくても、この時間のことを「おいしい」と言うのだろう。
    「芦花、最近お仕事はどう?順調?」
    「おかげさまで。あ、この前のCMのアドバイスありがとね。めちゃくちゃ評判良かった」
    「お安い御用〜。そだ、ツクヨミも今度化粧品コラボの話が来ててさ、芦花にお願いできないかな〜って」
    「私にはちょっと荷が重いよ」
    「そんなことないよ〜!それに、今ヤッチョと繋がりのあるモデルさんのなかで、一番ツクヨミと関わりの深い人はROKAだよ。適任だと思うな〜」
    「うぇ〜……まぁ、そこまで言ってくれるのは嬉しいけど……メールで送ってくれたら考えてみるね」
    「感謝感激雨アラモード!近いうちに送るね!」
    こうして、友達同士で飲み食いする時の話題が仕事の話や近況報告になってしまうのが、大人になったというか、時の流れは残酷というか。
    「ヤチヨの方はどう?」
    「順調順調~!新規の神々にも既存の神々にもご満足いただいているのですよ。やっぱりかぐや復活ライブが大きくて今期収益は過去最高の見込み!ヤチヨは果報者なのです」
    なんというか、ヤチヨの口から"収益"って単語が出るの、なんか嫌だな……。
    それもまあ、純粋な電子の歌姫でなく、かぐやでもある私たちの友達として接してくれている証なんだろうけど。
    でも彩葉が言うには、月に帰っちゃう前も赤スパで大量に稼いで大喜びしていたらしいから、もともとたくさん稼ぐのが大好きなんだろう。

  • 6二次元好きの匿名さん26/04/28(火) 22:57:42

    保守

  • 7二次元好きの匿名さん26/04/28(火) 23:16:50

    おしゃべりをしながら机の上に並べられた料理を二人で平らげていく。味も食感もないからこそ、話しながらいくらでも食べられる。これはこれで利点だろう。今後ツクヨミに味が実装されたら、いくらお腹に堪らないとは言ってもこんな楽しみ方はきっと難しくなる。
    そんなことをヤチヨに言ったら、
    「そうなんだよね~。ヤッチョは早く彩葉のパンケーキが食べた過ぎてすっかり忘れてたんだけど、味がないならないで別の楽しみ方もできるんだよね~。だから今どんな風に実装するかは関係各所と協議中。たぶん任意でON/OFFできる形に落ち着くと思うんだ」
    「その辺りは難しいよね。触覚の時もいろいろ大変だったんだっけ」
    「触覚はね~。ヤッチョは一刻も早く導入したかったんだけど、いろいろ問題が見つかって半年くらい実装が遅れちゃったな~。あの時はもう毎日ヤキモキしてムキー!ってなってたんだよね~」
    「あ~、あの時期のヤチヨ、妙に機嫌悪いなって思ってた、実は」
    「痛みの処理とか、後はえっちな部分の判定とか、実はいろいろ考えなきゃいけないことが多かったんだよね~。私は早く彩葉と触れ合いたい一心で、そういうところ全然考えられてなかったから……」
    「あ~……今の仕様に落ち着くまでいろいろあったんだ」
    「本当にいろいろあったよ……今となっては笑い話だけどね!」
    そんな風によしなしごとを話しながら、テーブルの上の料理はどんどん減っていく。食べきると食器が花弁になって散っていくのは仮想空間ならではの便利機能だ。現実にも正直欲しい。
    さて、テーブルの上が片付いて、お互いおしゃれなカクテルを一つずつ持っているだけになった頃、私は切り込んだ。
    「それで、おしゃべりするためにわざわざ呼んだんじゃないでしょ?何か相談があるんじゃない?」
    「……んー、相談っていうかね~」
    ヤチヨは立てた人差し指を頬に当て、考えるように目を窓の方へ向けた。ちょうどそのタイミングで飛行船は大きく旋回する。窓の向こうには、煌びやかな地上の光が視界いっぱいに映り込んでいる。触覚機能の妙か、アトラクションのように傾きを感じられて、臨場感も抜群だ。
    旋回が終わってからも、ヤチヨは考えるように視線を私から逸らしていた。考えるようにというよりは、何かを躊躇うように。
    「話しづらいことなら、ゆっくりでいいよ。私、今日はこの後予定ないし」
    「うん……ありがとう、芦花」

  • 8二次元好きの匿名さん26/04/28(火) 23:21:54

    「そうだ……じゃあ、待っている間に私から一つ聞いてもいい?」
    「お、なんだいなんだい?」
    せっかくなので、ヤチヨの心の準備ができるまでの間、今まで疑問に思っていたことを訊いてみることにした。
    「ヤチヨが……かぐやちゃんが身体や名前を使い分けるのって、どんな時に使い分けてるの?」
    「使い分け?」
    「うん、仕事とプライベートで分けてるんだろうなっていうのは分かるんだけど、他にも基準がありそうで。今日とか」
    その質問に、ヤチヨはしばらく「ん~~~」と唸ってから、質問を返してきた。
    「仕事とプライベートっていうのはそのとおりだけど、それ以外は……言っちゃえば気分、かな。例えば……芦花は、家族といる時と、彩葉たちといる時、全く同じ話し方や対応をする?」
    「しないね」
    「そんな感じに近い……かなぁ。神々の皆やヤチヨのファンに会う時と、彩葉や芦花、真実たちと会う時じゃ私もキャラが変わるっていうか。もちろん、身体やアバターに引っ張られるっていうのもあるけどね。かぐやの姿をしている時は、ついあの頃のかぐやみたいに振る舞っちゃうし、振る舞えるけど、ヤチヨの姿の時は、"月見ヤチヨ"としての振る舞いが板についてるっていうか。あとは強いていえば……かぐやでいる時は、「あの頃」から地続きの、皆が知ってるかぐやとして振る舞ってるかも。ヤチヨでいる時は逆に、8000年生きた月見ヤチヨとして振る舞ってる……って感じ?」
    「……ということは、今日敢えて"ヤチヨ"としてここにいるってことは、8000年生きた存在として、私に相談がある、ってこと?」
    「……うん、そういうこと、だね」
    ヤチヨは目を閉じて、しばらく沈黙する。空気がぴりりと張り詰めるのを感じる。
    私も思わず居住まいを正す。彼女が次に何を話すのか、固唾を呑んでしまう。こういう"空気"は大女優の纏うオーラに近く、彼女が数多の人々を惹きつけてやまない"本物"であるということを再認識させられる。
    今や現実にも顕現した電子の歌姫――押しも押されぬお姫様、月見ヤチヨ。
    彼女がスッと目を開いた時……そこには彩葉のそれにも似た"覚悟"の光が灯っていた。
    そして――十分な"間"を置いてから、彼女は、口を開いた。
    「私、月見ヤチヨはあなたのことをお慕いしております」
    「どうか私と一緒にハッピーエンドを目指してください、綾紬芦花さん」

  • 9二次元好きの匿名さん26/04/28(火) 23:32:41

    (今日は一旦ここまで。続きはまた明日以降)

  • 10二次元好きの匿名さん26/04/28(火) 23:39:36

    10まで保守

  • 11二次元好きの匿名さん26/04/28(火) 23:41:38

    ヤチろか!?新解釈の登場だ…

  • 12二次元好きの匿名さん26/04/29(水) 08:17:15

    保守

  • 13二次元好きの匿名さん26/04/29(水) 10:00:59

    「……え、私?」
    あまりにも予想外の言葉に、私は間の抜けた反応を返してしまった。恥ずかしい。
    今、告白されましたか、私?
    「彩葉と喧嘩した?」
    「ハズレ」
    「何かの当てつけとか」
    「ハズレ」
    「ドッキリ」
    「ハズレ」
    「月見ヤチヨの告白断る人0人説の検証」
    「ハズレ」
    「罰ゲーm「そろそろヤッチョが話してもいいかな?あと、当てつけやら罰ゲームで告白するって思われてるならちょっと心外かも」
    「……ごめん」
    「……え~っと、どこから話そうかな」
    「じゃぁ……真面目な話、彩葉は知ってるの?今の……この、告白のこと」
    「うん、知ってるよ」
    ヤチヨは、いつもの泰然とした、穏やかな顔でそう答えた。
    「彩葉とはたくさん話し合って、私がこうするって決めたの」
    「……ヤチヨは、かぐやちゃんは、彩葉のことが好きなんでしょ。ずっと一緒に生きるために、彩葉は――」
    「待って、芦花、怒らないで。そういうことじゃないの。私は彩葉が好き。宇宙で一番好き」
    「じゃぁ、どうして――」
    「宇宙で二番目に、芦花が好きだから」
    その言葉で、一瞬で煮えたぎった私の気持ちはとりあえず落ち着きを取り戻した。
    「……地球人的には、一番好きな人と付き合ってるのに二番目に好きな人に告白するのはナンセンスだよ」
    「だよねぇ……でもヤッチョは宇宙人だし?それに、ワガママで欲深なかぐやちゃんだし?」
    「知ってる」
    その物言いには苦笑するしかない。それに、実は計算高いことも知っている。
    「……私もヤチヨのことは好きだよ。ツクヨミの神々の一人だからね。かぐやちゃんとしても好き。大好きだよ。でもそれは友達としてであって、ヤチヨと付き合いたいって思ったことはないかな。ヤチヨもそうだと思ってた。友達として好かれてるんだって」
    「いろいろ……ね、ありまして。話だけでも、聞いてもらえないかな?」
    そう小首を傾げるヤチヨの目には、僅かに不安の影がちらついている。いつもの自信満々なヤチヨと比べて、あまりにも儚げで、庇護欲をそそるというか。ああもう、そんな目をされたら無下にできないじゃない。

  • 14二次元好きの匿名さん26/04/29(水) 12:33:04

    かぐやちゃんが彩葉にするみたいにしてたら、ごめんねって言って帰るつもりだったのに。相手に刺さる方法を熟知している。天然にせよ計算にせよ、とんでもない悪女だ。
    「……分かった。聞かせてよ、ヤチヨの気持ち」
    「……芦花はさ、彩葉から聞いてるよね。私のこれまでのこと」
    「あらましだけね。月からやってきて、電柱から産まれて、彩葉に育てられてあれやこれや。私たちと一緒に過ごして、月に帰って……今も月で仕事してるんだっけ?」
    「そう、今空に浮かぶ月には、絶賛社畜中のえらえらかぐや姫がいるのです」
    「……で、今から何十年かあと?仕事を終えたかぐやちゃんは、あの頃の彩葉に会うために月を出発するけど、途中で事故に遭って……それで、8000年前の地球へ。そこから現代までかぐやちゃんは生き続けて、インターネットで他人と交流できるようになって、レスバして」
    「そこは飛ばして〜」(∩∩💦
    「……で、かぐやちゃん自身が月見ヤチヨだって気づいて、ツクヨミを作って。それで、私たちとも遊んでくれて。今に至る……ってところかな、私が知ってるのは」
    「うんうん。ぜ〜んぶ知られちゃっててちょっと恥ずかしいくらい」
    「……彩葉はさ」
    私の口から、ぽつりと言葉が漏れる。
    そういえば、ヤチヨにお礼を言っていなかったことを思い出した。
    「彩葉はさ。私が出会った時にはもう、限界ギリギリでさ」
    「うん」
    「話しかけると明るく笑ってくれるんだけど、その裏で今にも泣き出しそうなのが分かっちゃってさ。……でも、自分の力で生きるんだって覚悟がみなぎってるその顔がとても綺麗で。支えになりたい、って思ったんだ」
    「私と同じだね」
    「……でも私は、そこから先に踏み込めなかった。あの頃の彩葉は、いつかふっと消えちゃいそうな感じだったけど……壁の内側に踏み込んだら、もう二度と内側に入れてくれなさそうな感じで」
    「うん」
    「そんな彩葉が、今にも折れそうな彩葉の支えになっていたのが、ヤチヨで。ヤチヨの歌で。私が彩葉と出会えたのは、一緒に過ごせたのは、今も一緒にいられるのは、全部ヤチヨの……かぐやちゃんのおかげ。ありがとうね、かぐやちゃん。お礼言うの遅くなってごめん」
    「いやいやそんな〜」

  • 15二次元好きの匿名さん26/04/29(水) 15:27:42

    「……かぐやちゃんが、彩葉に会いたい一心で生きてくれたおかげで、私たちの今がある。そう考えたら、どれだけお礼を言っても言い足りないくらい」
    「いや〜照れますなぁ」
    そう言って、ヤチヨは大げさに手で顔を仰いだり、頭を掻いたりする。その動作は、かぐやちゃんの気配が強めに出ている気がした。
    「……かぐやちゃん――ヤチヨは、いつから私のことが好きなの?」
    たぶん、その話がしたいんだろうなって思ったので、私の方から振った。その方が話しやすいだろうし、私の方も、気になった。彼女は彩葉一筋に思えていたし、自分がそんな風に想われているなんて思ってもみなかったから、聞いてみたかった。
    ヤチヨはん〜と腕を組んで唸ってから、話し始めた。
    「最初から……なのかなぁ。初めて会った日のこと、覚えてる?」
    「カフェの話だよね、もちろんだよ」
    「あの時、芦花のパンケーキも食べさせてくれたよね。あれ嬉しかったしおいしかったな〜。味覚が完成したらまた食べたいな〜」
    そう言いながらチラチラとこちらを見る仕草は、ヤチヨではなく完全にかぐやちゃんのものだ。
    「はいはい、連れて行ってあげる。だから本題に戻って」
    「で……えーっと……そう、あの頃の私って、だいたい何でも好きだったんだよね。彩葉のことは大好きだったし、芦花のことも真実のことも、リスナーのオタクたちのことも。毎日が楽しかったし。食べ物もおいしいし、ぜんぶぜんぶだ〜い好きだった」
    そう語るヤチヨの表情は、楽しそうで、懐かしそうで。どこか遠くを見ていた。

  • 16二次元好きの匿名さん26/04/29(水) 22:06:03

    「最初に気づいたのは……いつだろう。最近50年のどこかかなぁ……。私がヤチヨなんだって察したあたりだったと思う。それから私は月見ヤチヨになるための準備を始めたり、忙しくしていたんだけどね……ある日気づいたんだ。彩葉を支えていたのは、ヤチヨだけじゃないってことに」
    そこで、ヤチヨはにっこりと笑った。自分の大切なものを他の人も大切にしてくれていることを嬉しく思うような、幸せそうな笑みだった。
    「それを痛感したのは……彩葉が家を出たあたりかなぁ。結局ね、私ができることって、ツクヨミの運営とか、歌を届けるとか、そんなことばかりでさ」
    「それが一番大事だったんじゃないの?」
    「うん、まぁ……ね。彩葉にも言われた。『この歌のおかげで生き残れた』って。そこは私も自負があるし、謙遜するつもりもないけど……でもね。何もできないんだなぁ、って思ってた」
    「何も?」
    「そう、何も。彩葉にご飯を作ってあげることも、お金を助けてあげることも、なぁんにも。あの頃は……彩葉のご飯、全部私が作ってたのに」
    懐かしむような視線に、少しずつ寂しげなものが混じっていく。
    「8000年生きてみて、あの頃の彩葉の生活がどれだけ苦しくて、ギリギリだったかよく分かっていたから、毎日気が気じゃなかったよ。彩葉がある日死んじゃったらどうしよう、何か事故があったらどうしよう、って。さすがに、ツクヨミ運営から彩葉にふじゅ〜を振り込んだり、物を送ったりとかはやっちゃダメだってわかってたからね」
    何度もやりそうになったけどね、とヤチヨは笑った。
    「……それで、その時、分かったんだ。芦花と真実が、彩葉を支えてくれていたんだって」
    嬉しかったな〜、と、目を細める。
    「特に芦花が気にしてくれていたんだろうな、って気付いた。思えばあの頃も、みんなでいた頃も、芦花がずっと彩葉を気にかけてくれていた。きっとあれこれ理由をつけて、遊びに連れ出してくれたり、何か食べさせてあげたりしてくれてたんだよね?」
    「……苦労したよ。ほんと」
    私はテーブルに頬杖をついて、外を見遣る。
    ちょうど古代魚のホロが船を掠めるように通過していくところで、その迫力ある景色に心を奪われた。

  • 17二次元好きの匿名さん26/04/29(水) 22:12:45

    「……彩葉、施しは絶対に受け取らなかったからね。だから勉強とかゲームとか、彩葉に助けてもらって、そのお礼ってことにしたりね」
    その光景が想像できるのか、ヤチヨはけらけらと笑う。あれはもう、本当に大変だった。支えになりたいけど、踏み込むこともできない。そんなジレンマに呑み込まれそうだった私を助けてくれたのは真実だった。
    ひとしきり笑ったヤチヨは、涙を拭う仕草をしながら、続きを話す。
    「さっき芦花は私のおかげって言ってくれたけど……私も同じことを思ったの。私が彩葉を支えられないとき……芦花たちが彩葉を支えてくれたおかげで、私はあの日、彩葉と出会えたんだって」
    それでね、それでね、と、ヤチヨは弾むように言う。
    「それに気づいたときね、胸がきゅ〜〜〜っってなってね、芦花のことで、胸がいっぱいになったんだ」
    そう話すヤチヨはとてもひたむきで、ふわりと花が開くような柔らかな笑顔で、まっすぐな瞳には、穏やかに、けれど消えることなく燃え続ける情熱が灯っていた。
    それはまるで、真摯に、ひたむきに恋する少女のような視線で。
    私は、それが自分に向けられていることが――向けているのが他ならぬ月見ヤチヨであることが――すぐには信じられなかった。
    「芦花のお陰で私と彩葉は出会えたし、その出会いがあったから8000年頑張れた、また彩葉にも、皆にも会えたんだって思ったとき、気付いたんだ。私、芦花のことも好きなんだって」

  • 18二次元好きの匿名さん26/04/29(水) 23:34:57

    その視線があまりにもまっすぐすぎて、眩しくて、灼かれてしまいそうで。私は思わず逃げを打った。
    「真実……かわいそうに……」
    「真実のことももちろん好きだよ。でも真実には旦那さんいるから……それに」
    ヤチヨが言葉を切って、私を見る。
    「友達以上に彩葉のことを想ってくれてたのは、芦花だったから」
    「――――」
    咄嗟に比定することも、肯定することもできず、言葉に詰まった。そしてその沈黙は、どんな言葉よりも雄弁に物を語っていた。
    「……ヤチヨの気持ちは十分伝わったけど……どうして、今?」
    思わず、更に逃げてしまう。
    「今……身体ができて、彩葉と暮らせるようになって、一番幸せな時でしょ?8000年待ち続けた彩葉と触れ合えて……もうすぐ味覚も完成して、パンケーキでも、オムライスでも、何でも食べられるようになるのに……どうして、今、私に?」
    その質問に、ヤチヨはムフフと笑う。悪い笑みだった。
    「ヤチヨはね……強欲なんだよね」
    「強欲」
    「強欲で、欲深くて……欲しいと思ったものは、全部手に入れないと気がすまないの」
    それは。なんというか、昔からそうだったけど。
    「最初はね。……10年前は。皆に正体を明かす前、ただの"月見ヤチヨ"だった頃は、そのまま終わるつもりでいたんだよね」
    「…………」
    「8000年ぶりに彩葉の姿を見られて。一緒にゲームもできて。あのライブもできて。私の旅路は十分に報われた。それで十分だった。これで終わってもいいと思ってた」
    それは10年前のあの日、かぐやちゃんの"卒業ライブ"の後の話か。彩葉が私たちとの連絡を絶っていた数日間、その直後のしばらくの期間。その裏話。
    「そしたら……彩葉は私の正体に気付いてくれて。私のことを受け入れてくれて。私といたいって……言ってくれて……」
    その時のことを思い出したのか、ヤチヨは軽く涙ぐむ。
    「私もね……彩葉と触れ合いたい、彩葉のパンケーキが食べたいって、本音が溢れて……そしたら、そしたら……彩葉は、全部、叶えてくれて――」
    そう、彩葉は、かぐやちゃんのお願いは何でも叶えてしまうのだ。それも、たった10年で。
    「――そしたらね。欲が出てきちゃった」
    おっと。
    話の流れが、ちょっと変わってきた。

  • 19二次元好きの匿名さん26/04/30(木) 00:02:36

    「一番の願いが叶うと、もっともっと、欲しくなっちゃって。二番目の願いも叶えたい、三番目の願いも、四番目の願いも――って」
    たぶん、彩葉はその全てを叶えてしまうのだろう。目に浮かぶようだ。しまいには世界征服に乗り出すのかもしれない。
    「それでね」
    ヤチヨは話を区切る。その次に何を言うのか、私にはもう分かっていた。
    だって。
    もしワガママを言っても許されるなら。何をしても許されるのなら。
    私もきっと、同じ願いを抱く。
    「一番好きな人だけじゃ足りない。二番目に好きな人も、欲しくなっちゃった」
    「地球の言葉では浮気っていうんだけど」
    「公認浮気っていう性癖もあるしにゃ~?それにヤッチョは月の出だし、8000年過ごした身としては一夫一妻なんて言い出したのはつい最近の話だしね?」
    それは、そうだろうけど。
    「……これが、私が芦花に告白した理由だよ」
    「……そっか」
    ものすごく真っ直ぐに気持ちをぶつけられて、言葉も出ない。私は、なんて返せばいいんだろう。
    "芦花の感じたままを答えてあげて"
    彩葉のメッセージが頭の中を流れる。彩葉。本当にそれでいいわけ?
    「……そういえば、ビックリしてそっちまで意識回ってなかったけど」
    また逃げを打つ。保留。引き伸ばし。我ながら格好悪いことこの上ない。
    「いつもの天守閣じゃなくてこの飛行船なのって、つまり――」
    「夜景の見えるレストランで告白、的な。あんまりお気に召さなかった、かな?」
    「いや、その――すごくびっくりしたし、最高のシチュエーションだったよ。ただ、完全に予想外だったってだけで」
    「ヨヨヨ……恋愛経験ゼロのヤチヨには男女の駆け引きはまだ難しいのです……」
    男女というか、女女というか。
    「それで……何で私を好きなのかはわかったけど……私のどこがいいの?こう言っちゃなんだけど……」
    本当に、告白してくれた相手にこう言ってはなんなのだけど。
    「私、ヤチヨのことも、かぐやちゃんのことも、そういう目で見てなかったっていうか。気付いてると思うけど、私は彩葉を――」
          ・・・・
    「――好き、ではない、んでしょう?」

    ヤチヨのその言葉に、私は今度こそ逃げ場を失って、絶句した。

  • 20二次元好きの匿名さん26/04/30(木) 00:03:54

    (今日はここまで。見てくれてる方ありがとう。あなたの存在が私の栄養です)

  • 21二次元好きの匿名さん26/04/30(木) 00:39:35

    新パターンですのん

  • 22二次元好きの匿名さん26/04/30(木) 01:09:28

    芦花のCPスレは毎度読ませる人が現れて来るけどまさか最初から建てて書き出すとは思わなんだ
    続きが待ち遠しい

  • 23二次元好きの匿名さん26/04/30(木) 05:36:31

    乙乙

  • 24二次元好きの匿名さん26/04/30(木) 09:08:07

    保守

  • 25二次元好きの匿名さん26/04/30(木) 11:08:23

    私は、彩葉の支えになりたくて。
    彩葉が生きていれば、それでよくて。
    彩葉が幸せなら、なおよくて。
    彩葉に私を見てほしいとか、振り向いてほしいとか、そんなことは望んでいなくて。
    でもできれば、彩葉が欲しいとは思っていて。
    彩葉が私を求めてくれるなら、それはそれでよくって。求めてほしくって。
    でも、自ら彩葉に踏み込むことはできなくて。
    何より彩葉のことを考えてしまうくせに、彩葉に嫌われてでも彼女のために踏み込むことができなくて。
    そんなの。
    好きでもなんでもないでしょう。
    「なんで」
    口から絞り出した声は、震えていた。
    「なんで、そこまで知ってるの」
    『私は彩葉が好きだから』そう言って、誤魔化すつもりだったのに。
    ヤチヨには、すべてを知られていた。
    「それは……私も同じだから」
    ヤチヨがこちらへ手を伸ばし、私の手に掌を重ねた。
    そこで初めて、私は自分の手が震えていたことに気づいた。
    「好きっていうのは。もっと純粋で。まっすぐで。かぐやちゃんみたいな、ひたむきに相手のことを想える人のための言葉で」
    擬似触覚がもたらすヤチヨの――かぐやちゃんの手は、柔らかくて、温かくて、包みこんでくれるようだった。
    「彩葉の側にいたい。彩葉が幸せにしている姿を見ていたい。でもこれは――」
    でもこれは。
    たぶん、欲望だろう。
    浅ましくて、汚くて、醜い。
    そっと、ヤチヨが私の手を握ってくれる。
    「私も同じ気持ちだよ。ううん、もっと醜いかも」
    「……ヤチヨは、かぐやちゃんは、違うでしょ」
    「あはは、芦花、それは私に夢を見すぎ。まぁ夢を見せるお仕事だし、そう振る舞ってるけどさ――」
    ヤチヨはからからと笑う。
    「8000年も生きた私がきれいなだけだって、本当にそう思ってる?」

  • 26二次元好きの匿名さん26/04/30(木) 12:46:15

    あっけらかんと言う彼女の目だけが、真剣で。
    8000年。
    私は初めて、彼女の背負う時間の重みを感じた気がした。
    「人間をね、滅ぼそうと思ったこともあった」
    ぽつりと、彼女がこぼす。
    「人間をね、支配しようと思ったことも何度かあった。彩葉にいじわるをした人の人生をめちゃくちゃにしてやると思ったこともあった。たくさん」
    ぽつぽつと、語るその言葉はとてもどろりとしていて。
    表情だけはいつものヤチヨで、そのギャップを処理できない。
    「彩葉を私のものにしたい。私だけのものにしたい。彩葉が活躍しているのは嬉しいし、彩葉が楽しそうなのも嬉しいし、皆が彩葉のことを愛してくれて、応援してくれるのも嬉しいけど。それがとても厭。私の彩葉なのに。彩葉が他人に愛されているのが、とても厭。私だけがいい。私だけの愛で彩葉を満たしたい。その身体も、心も、私だけのものにしたい。もう傷つかなくてもいいように、頑張らなくてもいいように――もう二度と離れなくていいように――彩葉をツクヨミに閉じ込めて、私の部屋に閉じ込めて、誰にも見られないところで、2人だけで過ごしていたい」
    紡がれる言葉の響きとは裏腹に、どこまでも甘く、うっとりとした色の乗ったヤチヨの言葉が、私の脳を揺らす。
    そして、やや遅れて気づいた。
    その言葉は今、彩葉ではなく、私に向けられているのだと。
    「……どう、幻滅した?」
    ヤチヨは、困ったように笑った。
    「いや……びっくりはしたけど、幻滅までは。びっくりはしたけど。ヤチヨって、そんなに重かったんだ」
    「これが歴史の重みってやつなのです」
    いやそれは絶対に違う。
    「芦花の価値観を否定するつもりはないから、あくまで私の話なんだけどね。私は違うと思うな」
    ぎゅっと。ヤチヨが両手で私の手を包みこんでくれる。他意はないんだろうけど、今の話を聞いたあとだと、背筋にうすら寒いものが走る。
    「きれいな恋も、美しい愛も、たくさん見てきた。汚い恋も、醜い愛も、たくさん見てきた。だから私は、この気持ちも"好き"だと思ってる。ねぇ芦花」
    ヤチヨは私を見る。私だけを見る。
    「私は芦花が好き」
    その言葉の重みは。さっきよりも数十倍しっかりと感じられて。

  • 27二次元好きの匿名さん26/04/30(木) 13:33:27

    「芦花のどこがいいかってさっき聞いたよね。一番大きいところはさっき言ったとおりだけど、もっと言うなら……彩葉のことをそうやって想ってくれてること」
    「……なんで?こんなこと考えてるやつが好きな人の周りにいるって、嫌じゃない?」
    その疑問に、ヤチヨはゆっくりと首を振った。
    「私と彩葉、一つだけ絶対にわかり合えないことがあるの。なんだと思う?」
    私はしばらく考えた。ヤチヨと……かぐやちゃんと彩葉が、絶対にわかり会えないこと。絶対に。そんなこと、あるのだろうか。
    一つだけ、思い当たることがあるとすれば。
    私がかぐやちゃんだとして、彩葉に対して、絶対に譲れない、許容できないことがあるとすれば。それは、一つだけ、思い当たることがあった。
    「いざというとき、彩葉はきっと、かぐやちゃんを優先する」
    ヤチヨはにっこりと笑った。正解らしい。
    「もし、私と彩葉、どちらかしか助からないとしたら……彩葉は迷わず私を助けようとすると思うんだ。もちろん私は、そういう時彩葉を助ける」
    「……それは、折り合いがつかないだろうね」
    「うん。だから、むしろ彩葉より、芦花とのほうがわかり合えるかもしれない。それに……私や彩葉に、何かあったときの支えにもなるし」
    「何かあったとき?」
    「……たとえば、私が消滅しちゃうとか、何かの事故で私じゃなくなっちゃうとか。月人に寿命があるのかもわかんないし、今のところその様子もないけど……ある日、私が死んじゃうことだってあるかもしれない。その時、誰かが彩葉の傍にいてあげないと。そのためには、私が安心して彩葉を任せられる誰かに、一緒にいて欲しい」
    それは。そんなことは想像もしたくないけど。でも、確かに、あり得ることだった。
    「逆もそうだよ。もし彩葉がある日死んじゃったら。病気でも、事故でも。どんなに気をつけていても、お別れはある日突然やってくる――そんなことを、何度も見てきた。そうなったとき、私はきっともう耐えられない。独りには耐えられない」
    想像するだけで恐ろしいというように、ヤチヨの手が震える。
    「もしそうなったなら、その時は誰かに――芦花に、隣にいて欲しい。同じ人を想ってくれるひとに、同じ思い出を、一緒に持っていて欲しい」
    恋敵ではなく、同じ相手を想う同志として……ということか。

  • 28二次元好きの匿名さん26/04/30(木) 20:20:49

    芦花さんどうか幸せになって

  • 29二次元好きの匿名さん26/04/30(木) 23:22:58

    思ったより緻密に話が続いてるから汚したくなくて保守ついでにちょっと書き込むくらいしかできねえ!

  • 30二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 00:58:36

    なんだこの素敵概念、最高だな

  • 31二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 01:27:07

    これは支援せざるを得ない
    wktk

  • 32二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 07:35:56

    (仕事とホスト規制の影響で落としかけてたので保守・支援に感謝っ…!圧倒的感謝っ…!)
    (あと気にしないで感想でも雑談でもしてください)
    (ほかのストーリーラインの投稿もいいぞ)

  • 33二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 07:40:49

    「あと、これはオマケというか……ある意味一番大事な理由なんだけど」
    「どんな理由?」
    「一緒に彩葉の推し活したい!いろPコラボカフェ行こ?限界トークしよ?ヤッチョ秘蔵いろP切り抜き集とかあるよ?彩葉の家での様子とか、あ〜んなことやこ〜んなことの様子とか、芦花になら教えてあげちゃうよ?」
    「んっふw」
    急に俗の極みみたいな話が飛んできて、思わず吹き出してしまった。たしかに大事な話だけど……重要極まる話だけど、温度差がすごい。
    そういえば、と思い至る。ヤチヨがかぐやちゃんである以上、彼女は彼女で彩葉の限界ギリオタクなのだ。いや、法律的な意味では限界を超えているはずだ。
    彼女は電脳上の存在で、公私問わず彩葉と共に在り――言ってしまえば監視している。24時間365日、彼女自身がスリープに入っている時間を除いて、研究者の彩葉も、ライバーの彩葉も、限界オタクの彩葉も、オフの彩葉も。すべてを特等席で眺めている。
    ヤチヨが流してくれる彩葉のあれこれは、この世の何よりも価値がある。
    正直、喉から手が出るほど欲しい。なんだそれ。一周回って腹が立ってきた。その席、私が欲しい。
    「さっき彩葉が他人に愛されてるのがイヤって言ってなかった?」
    「それはそれ!これはこれなの!オタク心は複雑なのですよ〜」
    「複雑だねぇ〜」
    「一般には出せない彩葉のあんな画像やこんな動画も、芦花が私と付き合ってくれるなら……と・く・べ・つ・に、こっそり見せてあげるけど……どうかにゃ?」
    今日イチでぐらっと来る言葉だった。これだけでヤチヨの告白を受けてもいいくらいに。

  • 34二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 10:46:37

    保守あげ!

  • 35二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 11:30:04

    そういえば、ここまで純粋に、私の在り方を求められたのは初めてかもしれない。
    昔から容姿には恵まれていた。それは良い方向にも、悪い方向にも作用した。最終的に、私は自分の武器を活かすことを選んだ。
    美容インフルエンサーとして活動して、高校生にしては身に余るファンと収入ができた。
    友人にも恵まれた。そして私は、何をおいてでも支えたいと想う人に出会った。
    いろいろな出来事があって。10年という時間が流れて。
    そういうファンはたまにいた。モデルを始めてから、声をかけられることも多かった。たくさんの人が私を求めた。
    私の外見や、身体を求められることそのものにそこまでの嫌悪感があるわけではない。もとより身体を見せる仕事だし、この道に進むと決めたときから受け入れて、覚悟もしていた。
    それでも、なんとなく、誰にどんな風に求められても、熱くなれなかった。
    薄いガラス越しに見ているような、冷めた感覚。他人事の感じ。
    それはきっと、私の気持ちを。きっと理解してはもらえないんだろうなという諦めによるもので。
    恋人でも、夫婦でも、なってしまえば、相手を一番に考えることを求められる。
    それは私にとっては、きっと耐え難いことで。彩葉ではなく相手を一番にすることを求められたら、私はたぶん別れることを選ぶ。
    ヤチヨの視線は真っ直ぐで、8000年分の重みがあって。
    私が必要だと。
    私の、彩葉を一番に考えてしまう在り方が必要だと。そう言っている。
    それは、私にとっては初めてのことで。
    お互いを想い合うのではなく。
    同じ相手を想う者として、一緒にいようと。
    何かが、どこかがおかしいというのは分かっているけれど。
    私にとっては、他の在り方よりは、馴染む在り方かもしれないと思った。

  • 36二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 15:46:20

    このレスは削除されています

  • 37二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 15:48:35

    「……………………もし、さ」
    私が夜景の方を見ながらそう呟いた瞬間、ヤチヨの顔に喜びが満ちていくのが見なくてもわかった。ああもう、そうですよ。私の負けですよ。
    「もし、私が頷いたら……私の立場ってどうなるの。プロポーズ、ってことでいいの?」
    「ん〜〜〜そだね、ヤッチョの第二夫人ってことになるかな?法的に結婚することは難しいけど……気持ちのうえでは、プロポーズのつもりだよ」
    「生活はどうするの?ヤチヨって普段は彩葉と一緒に住んでるでしょ?私との時間は取れないんじゃない?」
    「それは……これから考える。でも、プロポーズした以上は、彩葉ばっかりになって芦花をないがしろになんて絶対しないよ。芦花のこともちゃんと大事にする」
    「でも私、今幸せだし。幸せにしてもらう必要なんてないよ」
    そう、それは、偽らざる本音で。強がりでもなくて。
    彩葉が生きて、幸せなら、それだけで幸せなのだ。
    ヤチヨに手を差し伸べてもらう必要も、筋合いも、ない。
    「ノンノン、芦花はまだ私のことが分かってないね〜」
    ヤチヨはにやりと笑う。本当に、笑顔のバリエーションが増えた。
    あの頃は、笑顔テクスチャで済ませていたのに。
    「芦花が幸せなことなんて分かってるよ。だから"幸せにする"とか"幸せになろう"って言うつもりなんてない。私の幸せに芦花が必要なの。私が、芦花を欲しいと思ってるの」
    どこまでもまっすぐに、言葉を、想いを、突きつけてくる。
    「さっきはちょっと格好つけたけど、改めて、本音で言うね」
    もはや私に、逃げ場なんてなくて。
    「綾紬芦花さん。私はあなたが欲しい。どうか私のものになってください」
    本当に、正解しか言わないな、この子は。
    「……なんで、そんなに私に詳しいの」
    「そりゃ~もう、ツクヨミに初めてログインしてくれた時から、ずっと見てましたから。彩葉も、芦花も」
    「付き合うとしてさ。私、めんどくさいよ。欲深くて、嫉妬深くて。ヤチヨほどじゃないけど、重くて、めんどくさいよ」
    「知ってる」
    「証とか、欲しがるよ。たまに……"一番にして"ってごねるかも」
    「私にできることなら、必ず芦花を満たしてあげる」
    「……じゃあさ」
    もう、こうなったら私の負けみたいなもので。これはもう、最後のあがきというか。気持ちにふんぎりをつけるための要求というか。それはそれとして、本音でもあって。

  • 38二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 15:52:17

    本当に、私ってめんどくさいんだなって、自分で自分に呆れるけど。
    「ヤチヨの初めてのこと、ちょうだい」
    私は言った。
    「何かひとつ」
    あんなことを言っておいてなんだけど、本当になんだけど……ただの第二夫人では、満足できそうになかった。
    請けると決めた瞬間、次から次へと欲が出てくる。
    あぁ……私って醜いなぁ。
    ヤチヨなら……同じだねって言って、受け入れてくれるのかな。
    欲しいって……言ってくれるのかな。こんな私を。
    「彩葉にも渡してないものを、ひとつでいいから、私にちょうだい」
    「いいよ」
    それは、私にとっては竹取物語の難題のように、不可能な要求のつもりだったのに。これで断られて、いい感じに話を終える想定をしていたのに。ヤチヨはあろうことか、即答した。
    「とっておきをあげる」
    ヤチヨは私の手をぎゅっと握った。交渉成立――と告げるように。
    「YC型の――"ヤチヨ"の初めてを、芦花にあげる」

  • 39二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 15:56:26

    (というわけで当ヤチ芦花SSは一旦これで完です。読んでくれた人、感謝感激雨アラモード☆)

  • 40二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 17:42:23

    めっちゃ良かったです。ヤチろか……ええね!

  • 41二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 17:49:50

    おれはおまえのことを永遠に記憶のかたすみにとどめておくであろう、スレ主
    シャボン玉のように華麗で儚きSSよ

  • 42二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 18:42:25

    (次回予告:いろPから寝取る時にやること)

  • 43二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 19:37:57

    (盛り上がるスレ作りができなくて本当に申し訳ない)

  • 44二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 20:12:16

    GJだったよ

  • 45二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 20:55:14

    「ねぇ……芦花、本当にやるの?」
    隣に立つヤチヨが、私に心配の声をかける。
    夜の竹林。とは言っても、現実のものじゃない。
    ツクヨミのKASSENエリア。そこで私は待ち合わせをしていた。
    「う~んまぁ……ケジメとして?」
    「こんなことしなくたって、もう話はついてるのに……」
    「私がしたいの。ダメ?」
    「ダメじゃないけどぉ……」
    待ち合わせの相手は、私の親友にして、私の想う相手にして、今日に限っては敵。
    彩葉こと、いろPだった。

    『ヤチヨ争奪戦、してよ』
    『分かった』

    昨日、私と彩葉の間で交わされた、短いメッセージ。
    彩葉の端末からその内容を見たヤチヨが慌ててメッセージを送ってきたのは言うまでもない。
    「でも芦花、分かってると思うけど彩葉は強いよ?」
    「……分かってる」
    彩葉は強い。めちゃくちゃ強い。最近は研究やら何やらでKASSENには潜っていないはずだが、それで彩葉が私より弱くなったとは思えない。
    それでも。
    「正面から彩葉に勝ちたいの。でなきゃ、自分を許せない。応援してくれる?」
    「う~~~ん応援できるかは複雑ですにゃぁ。気持ち的には応援したいけど、相手が彩葉だし……発端が私のワガママな手前、彩葉の目の前で芦花を応援すると私が彩葉に飽きちゃった感じが出ちゃうっていうか……」
    あらぬ方向へ視線をやりながらモゴモゴと言い訳するヤチヨ。正直かわいい。
    その難しい立場に自らを追い込んだのは自業自得なので、別に擁護しないけど。
    「こっそり、こっそりね!応援してる!」
    「ん」
    まぁ、このくらいでいいか、今日は。
    そんなことを話していると、約束の時間の5分前に、彩葉がログインしてきた。
    「……よっす、彩葉」
    なんて声をかけたものか悩んだ末、いつもの挨拶。

  • 46二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 21:06:12

    彩葉は当たり前だけど、あまり機嫌は良くなさそう。
    「……芦花、本気で言ってる?」
    「……こんな冗談言うと思う?」
    「私は口出しする気なかったんだけど。私が勝ったら、ヤチヨと芦花が付き合う話は無しってことでいいわけ?」
    「もちろん。その代わり私が勝ったら……ね?」
    「――分かった」
    彩葉は彩葉で、複雑そうだ。まぁ、その辺りの事情は彩葉とかぐやちゃんの事情だから、私が気にすることじゃないんだけど。
    「始める前に少しいいかな」
    「なに?」
    「どうして私の感じたままを答えて、なんて言ったの?断るよう言うこともできたよね」
    「…………」
    「私が察して断るのを期待してた?」
    「それは違う」
    彩葉は少し怒ったような、心外だといいたげな顔をした。
    「……思うところはいろいろあるけど。かぐやがそうしたいって言うなら、私がそれに蓋をすることはしたくなかった」
    『ギャン泣きされたけどね』
    視界の端に、ヤチヨからチャットが飛んでくる。視線の動きでバレたのか、彩葉はキッとヤチヨを睨み、ヤチヨは『ヨヨヨ~』とわざとらしく泣きながら私から距離を取った。
    「それに、かぐやに地球人の倫理観を説いても今更だしね……だから、あとはかぐやと――ヤチヨと芦花で決めることだと思ったの」
    「そう」
    「……それに、芦花は――いや、なんでもない。でもこうなった以上話は別。かぐやは、ヤチヨは私のもの。絶対に渡さない」
    「……いいね、あの頃のいろPじゃん」
    「ルールは?」
    「1対1、残機1、制限時間なし。竹林で開始距離500m。これでどう?」
    「ハンデあげてもいいけど?」
    「冗談」
    「恨みっこなしだからね」
    「もち」
    設定が承認され、カウントダウンが始まる。

  • 47二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 21:40:29

    「ねぇ、彩葉」
    カウントダウンを横目に見ながら、私は彩葉に声をかけた。
    「彩葉。私、ヤチヨにプロポーズされたんだ」
    彩葉が目を見開く。
    「あなたの最推しの、月見ヤチヨに」
    それはある種の嫉妬。ある種の憎悪。推しを持つ人なら誰でも抱く、当然の感情。
    「でもね。ヤチヨに告白されたからじゃない。私が、ヤチヨと付き合いたいの。私を求めてくれた、ヤチヨに応えたいの」
    推しが誰かと良い仲になるなんて、そんなの耐えられない。
    「だから――私が勝ったら、ヤチヨと付き合うから」
    だからこそ。

    「私が勝ったら、あなたの最推しは私のものだから。よろしく」

    彩葉は答えない。その代わりに、ただ、私を睨みつける。
    ……目は口ほどに物を言うとは、よく言ったもので。
    殺す。
    彩葉の瞳には、その二文字が燃え盛っていた。

    あぁ、いいな。
    あの彩葉が、いつになく強烈な感情を私に向けている。
    もっと私を見て。私だけを見て。私のことで頭をいっぱいにして。
    幸せ。
    推しに殺されたい人の気持ちがちょっと分かったかもしれない。これは、気持ちいい。
    カウントダウンが0になり、私と彩葉は戦闘エリアに転送された。
    『がんばって』
    転送の瞬間、視界の端にそんなメッセージが瞬いた。

  • 48二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 23:17:36

    彩葉は強い。
    トッププロの黒鬼や、その黒鬼を相手に優勢だった"あの日"の使者たちと勝負が成立するくらい。
    それは私から見れば、"無敵"と同じ意味だ。
    あの日。手も足も出なかった私からすれば。
    でも、理由なく強いわけじゃない。
    彩葉の強さには理由がある。
    動体視力が良く、反応速度と判断が早く、エイムとキャラコンが早くて正確。
    『ただ、それだけだ』
    あの人はそう言った。
    『アイツはゲームが上手い。ゲームが上手いから強い。それだけだ』
    『俺と勝負になるくらいには上手いけど、プロにはなれない』
    『彩葉はそういうやつだよ』
    あの人の言葉は、私が漠然と考えていたことと一緒だった。
    彩葉は強いけど……その戦い方には、実はムラがある。
    ストレスが溜まっている時は荒っぽくなるし、ヤチヨのライブの直後は悟りを開いたかのようにエイムが研ぎ澄まされる。
    私や真実と潜っている時は、彩葉が強すぎてそもそも気になりさえしないけど。
    彩葉は、感情がかなり戦い方に出る。あの日の、鬼気迫る戦い方を見ても明らかだ。
    『プロってのはただ強いだけじゃやっていけねぇ。常に勝てなきゃ話になんねぇ』
    『だから……彩葉に勝てる――まで行けるかはわかんねぇけど、ワンチャン作るくらいはできるかもな』
    『死んでも勝ちたい、って言ったよな、ROKAちゃん』
    『とりあえず、ROKAちゃんのバトルログ、あるだけ送ってくれよ』
    私だって、無策で彩葉に勝とうなんて思ってない。
    ちゃんと準備はしてきた。
    勝ちたい。
    彩葉に勝ちたい。なんて。
    ヤチヨに、火をつけられちゃったみたい。
    ただ求められて、所有されるだけなのは我慢できない。
    勝って、自分の手で勝ち取って。私の意思で、彼女の気持ちに答えたい。
    だから、彩葉。細かい話は後でしよう。
    とりあえず、ヤチヨは私が貰う。

  • 49二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 23:21:02

    (今日はここまで)
    (芦花って一歩は踏み出せないけど、強い女性だと思うんだよね)
    (だから火がついたら、戦って、自分で勝ち取らないと気がすまない、誰かに施されるだけなのは我慢ならないんじゃないかなって)
    (近似値を挙げるとレルネン(それはどうなんだ?))

  • 50二次元好きの匿名さん26/05/01(金) 23:44:16


    続きが欲しいよぉ…!
    彩葉が「ヤチヨは私のだからさ、ヤチヨのものになった芦花も私の、だよね?」って迫って3人で"めでたし"したりヤチヨがかぐやの姿になって芦花にパンケーキ以来の"おねだり"をしちゃうような欲望全開な話も見たい…!

  • 51二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 01:09:01

    保守
    芦花を落とすヤチヨ……いいね……!

  • 52二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 02:49:25

    このレスは削除されています

  • 53二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 05:43:25

    乙乙

  • 54二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 07:43:14

    YC型の「初めて」は何やろなあ(すっとぼけ)
    彩葉の本命がKG型なの見越した上で許可貰ったとしたらヤッチョかなり罪作りな女では…?
    どうあれ彩葉はヤキモチ焼くだろうし

  • 55二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 09:48:16

    夜の竹林に、穏やかな風が吹く。
    ざわざわと、竹の葉が擦れる音が耳に心地よい。
    涼やかな風が、緊張に昂ぶる芦花の肌を心地よく撫でていく。
    元々、KASSENに風の要素はあった。ただしそれは遠距離武器の軌道に影響を及ぼしたり、枯れ葉が舞ったりといった環境効果としてのものに過ぎなかった。
    ツクヨミに触覚や嗅覚が実装されて以来、それは単なる演出ではなく、本物の風になった。
    ざわざわと、竹林が囁く。これから始まる戦いを待ち望んでいるかのように。
    芦花は遮蔽となる小岩に身を隠し、ただ、待っていた。
    そして。
    葉ずれに混じる風切り音が耳に届いて、芦花は目を開けた。
    (――来た!)
    隠れていた岩場から飛び出し、正確に投げられたブーメランを躱す。
    その戻っていった方向を確認しながら構える。即座にワイヤーの射出音が聞こえる。
    (早い)
    戦闘開始から30秒も経っていない。隠密も索敵もなく真っ直ぐ突っ込んできたということだ。そして。
    ワイヤーの巻取り音とともに。

    竹林の向こうから、幽鬼のように殺意が姿を表した。

    (ッ!)
    ガァン、と重々しい音。彩葉の双剣と芦花のネイルユニットがぶつかり合う。彩葉は即座に芦花の視界から消える。
    (やっぱ追えない――でも)
    彩葉はワイヤーを巧みに駆使し一瞬で背後を取る。その勢いのまま斬りかかり、芦花は反応できない。それで試合終了。
    しかし。
    「!」
    彩葉が構えた時には、芦花のビットが1機、既に彩葉の方を向いていた。
    緊急離脱。構えた方の剣からワイヤーを射出し、そのまま直前と180度逆の方向へ飛んでいく。その瞬間芦花のビットが射出され、彩葉の足先を掠めた。
    (私のエイムじゃ彩葉は捉えられない――けど、どこに来るか分かってれば)
    (エイムを置いておくくらいは私でもできる)
    即座に彩葉の消えた方向へビットをけしかけ、同時に背後をはじめ、彩葉が取りたがるであろうポジションに残りのビットを配置する。
    そのまま立っていてはいい的になるので、芦花自身も駆け出し、別の遮蔽に身を隠す。

  • 56二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 10:01:05

    『彩葉は言っちまえば、"ボタンを押すのが上手いから強い"ってだけだ』
    『戦術や戦略なんかは、一般のプレイヤーと比べりゃかなり上手いが、俺達プロほどガチガチに固めてるわけじゃねぇ』
    『ましてやあんだけムラがあるんだ。一回こっきりでよけりゃ、こじ開けられる隙はある』

    ヒュン、とワイヤーが芦花の耳を掠める。
    次の瞬間、彩葉が芦花の方へ真っ直ぐ突っ込んできた。
    (ッ、直接――)
    遮蔽に隠れた相手に直接吶喊するなど、セオリーとしてはほぼ有り得ない。それはつまり――
    (よっぽど頭に血が登ってるか――)
    (私のこと舐め過ぎじゃない?)
    置いてあるビットの隙間を縫うような動きで芦花の首を取りに来た彩葉に、死角から別のビットを突進させる。彩葉はそれをノールックで迎撃し、そのまま牽制射撃で芦花を狙う。
    (痛っ)
    芦花は右手のネイルビットを盾、左手のネイルビットを牽制として使いながら距離を取り、別の遮蔽を目指す。その過程で、盾を躱した銃弾が脚を掠める。制御された違和感程度の痛みが、ダメージの表現として芦花に走る。
    視線を切る瞬間、彩葉は双剣で5機のビットを捌いていた。
    (私のコントロールが甘いのもあるけど、強すぎるでしょ)
    (ほんとにブランクあるの?)
    そして視線を切った瞬間、ひゅんひゅんとブーメランの音が響いてくる。
    (だから、早いって――)
    即座に右手分のビットを結集して盾のように構える。ガァン!と重々しい音がしたがノックバックは免れ、ブーメランは弧を描いて戻っていく。左手のビットを呼び戻して構えると、またも彩葉が飛び込んでくる。
    (っ、まず――)
    迎撃に打ち出したビットは、冗談のようなワイヤーアクションで全て回避された。
    その目は瞬きさえせず、ただ、芦花を見ている。
    視線で焼き尽くさんばかりの熱量で以て。
    (っ――いいね――)
    ゾクリと、芦花の背筋に奔るものがあった。
    それは興奮かもしれず、あるいは危険察知の本能かもしれなかった。
    (っ、まず)
    芦花は気合で身体を逸らす。ザン!!!とゲーム的な斬撃音がして、背後の岩がパーティクルとなって消滅したのが分かった。直前のビットの動きで彩葉が姿勢を崩していなければ、今ので決着していただろう。

  • 57二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 10:12:20

    即座に右手のビットで殴りつけつつ、芦花自身は転がるようにして距離を取る。彩葉も深追いはせずに竹を遮蔽に回り込もうとする。
    (普段の彩葉ならもう負けてる)
    (やっぱいろいろ雑だよ、彩葉)
    (そんなに――私のこと想ってくれるの?嬉しい)
    芦花は再び突っ込んできた彩葉にビットをけしかけて凌ぎつつ、また別の遮蔽へ。
    (こっちから突っ込んだら負ける)
    (とにかく時間稼ぎ――それだけならなんとかなる)
    (彩葉のことは、私が一番知ってる)
    (立ち回りも、クセも)
    (一番近くで見てたんだから)
    (もっと、もっと怒って、彩葉)
    (もっと私を見て)
    (そうしたら――私の勝ち)
    彩葉の双剣はワイヤーアクション、ブーメラン形態の投擲など手札の多彩さが魅力だが、弱点もある。
    ワイヤーアクションは当然、動きが直線的になる。それをどう補うかが腕の見せ所ではあるのだが。
    今日の彩葉は、普段と比べても直線的な動きが目立った。
    それなら――彩葉の動く先にビットを動かせば、それでいい。彩葉にエイムを合わせる必要もない。
    彩葉の斬撃を大きく転がって躱す。芦花と彩葉の間に必ずビットを立てる。死角にもとりあえず置いておく。
    そうすれば彩葉はとりあえず一度引いていく。ヒットアンドアウェイで芦花の疲労を待つつもりか、別の狙いがあるのか。
    (でも、まずいな――)
    次の襲撃。ビットを掻い潜られて接近される。死角からビットを脇腹に突き刺そうとするが、それも躱され、また引いていく。
    (いつまでもは保たない……っていうか、もう対応されてる)
    再度の襲撃。今度は背中から。彩葉は引いたが、動かしたビットはしっかりと叩き落とされた。

  • 58二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 10:29:10

    引いていく瞬間、彩葉の表情と視線からは苛立ちが見て取れた。ギリギリと歯を食いしばり、犬歯を剥き出しにして。
    (もう、そんなに感情を剥き出しにして)
    ただでさえ頭に血が上っているのに、行動をガンメタされて苛立ちが頂点に達している。そんな表情だった。しかし、それでも、結局は彩葉の方が強いのだ。これだけ雑に立ち回られて、なお追い込まれているのは芦花の方だ。
    (次で負ける)
    ヒュンヒュン、とワイヤーの音が竹林の向こうから聞こえた。
    なんとなく、長い付き合いでタイミングだけは分かった。
    彩葉が突っ込んでくるタイミングで、芦花は両手全てのビットで迎撃する。しかし。
    (掠りもしないか)
    その全てを類まれなキャラコンで躱しきり、彩葉は芦花の前に着地し、双剣を大上段に構える。
    (そうだよね。彩葉ならそうする)
    (分かるよ。彩葉の戦うところをずっと見てきたんだから)
    (でも、彩葉は知らないでしょ、私がこうするってことを)
    その瞬間、芦花は両手を固く握り込んだ。

    『彩葉が強い理由の一つは判断の速さだ』
    『警戒すべきものは警戒するし、そうでないものは意識から外す』
    『ROKAちゃんの武器は、懐に潜り込んじまえば怖くない』
    『自分自身が射線に入っちまうからな、レンジの内側には攻撃できねぇ』
    『なぁ、ROKAちゃん、"死んでも勝ちたい"んだろ』
    『知ってるか?自分が死んでも、自分より先に相手が爆散してりゃ勝ちなんだぜ』

    中空に浮いたビットが、全て反転する。
    芦花と――彩葉の方を向く。
    (二度とは通用しないだろうけど)
    彩葉の顔色が変わった瞬間には、既に全てのビットが十方から突進を始めており。
    (この一度だけ勝てれば、それでいい)
    そのまま、芦花共々彩葉の全身を刺し貫いた。

    2人のHPは全損し――1フレームだけ早く、彩葉の身体が爆散した。

  • 59二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 10:54:04

    『WIN』


    リスポーン待ちの間、目の前に表示されるその三文字をぼんやりと眺めていた。

    なんだか、実感が沸かない。

    まぁ……あんな勝ち方じゃね。

    でも、大手を振って勝ったって言えるやり方じゃないけど……勝ちは勝ちだ。

    彩葉に勝った。

    彩葉に……勝った。

    キルログが流れている。私の目の前に立った彩葉を、私のネイルビットが貫くところが。

    それは勢いのまま彩葉のアバターを貫通し、私のアバターをも貫いて。ほぼ同時に私たちは爆散した。

    ほとんど心中じゃん、これ。

    ……保存しとこ。

    『お疲れさま、芦花!』

    クリップを保存していると、ヤチヨからのチャットが飛んできた。

    ……なんか、照れくさいな。

    『ありがと。……幻滅した?』

    『まさか!カッコよかったよ!』

    『彩葉と心中しちゃった^^』

    『萌える~~~でも脳が破壊される~~~心が2つある~~~><』

    『ヤチヨが壊れた』

    『でもこれで~……晴れて芦花とお付き合いできるね!ね……いつにする?"初めて"』

    『ちょっとやめてよ……今その話したらヤチヨの身体目当てで彩葉と戦ったみたいになるじゃん』

    『欲しいって言ったのは芦花だよ』

    『それはそうだけど……文脈が違うじゃん』

    『でもね……本当に嬉しかったよ。芦花が"応えたい"って言ってくれて。本当に彩葉にも勝っちゃって。王子様みたい』

    『……まぁ、ね』

    『ヤッチョは果報者だね』

  • 60二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 11:40:25

    そんな話をしていると、別のチャットが立ち上がった。彩葉からだ。
    『……やるじゃん』
    『イェイ。ぶっちゃけナメてたでしょ、私のこと』
    『正直、接敵10秒で終わらせるつもりだった』
    『実際そうなるかもとは思ってたよ。ブランクあっても彩葉は強いね』
    『……お兄ちゃん?』
    『立ち回り方とかは教えてもらったよ。でも彩葉のことは聞いてない』
    『……そっか』
    『……ねぇ、彩葉は本当にこれでいいの?』
    『今何か言ったら何言っても負け惜しみじゃん』
    『そだね』
    『約束は約束。元々かぐやと話し合い済みだし。……でもごめん、今日はちょっと話したくない。このまま落ちるね』
    『分かった、おつ~』
    『また今度ウチで話そう。じゃ』

    リスポーンすると、言葉通り彩葉の姿はなかった。
    「芦花~!」
    次の瞬間、ヤチヨが私を抱きしめてきた。
    「カッコよかったよ~~~!大好き!」
    「ん……ちょっと、離れて」
    「なんで~~~!」
    「顔がいいっていうか……意識しちゃうとなんか……」
    「ダメ~~~離れませ~~~ん!私だけの王子様~」
    ヤチヨと付き合う?ツクヨミの歌姫である月見ヤチヨと?中身かぐやちゃんと?
    いろPに勝った上で正式に?
    なんか、改めて意識するととんでもないことしてないだろうか、私。
    それに気付いて、血の気が引いていく。しかしその中でも、変わらず温かい熱源が私の中にはあって。
    「……これから宜しく、ヤチヨ」
    「お任せあれ~。よろしくね、芦花」
    とりあえず、選んだ以上――同じ人を想う者同士、行けるところまで行ってみよう。そう思うのだった。

  • 61二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 12:01:05

    このレスは削除されています

  • 62二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 12:03:56

    >>60

    コングラッチュレーション...

    よきたびを...

  • 63二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 13:31:05

    誰も見る者も、知る者もいない争奪戦から1時間後……。
    「や~~~だ~~~!いっちゃや~~~だ~~~!!」
    「も~~~いろは~~~」
    「やだやだやだ~~~行かないで~~~捨てないでよ~~~!」
    「捨てないってば~」
    「そう言って芦花のとこ行くんだ~~~!私にはもう飽きたんだ~!遊びだったんだ~~~!」
    「もう~~~自分でいいって言ったんじゃん……」
    女子高生ほどの、金髪の美少女にすがりついて泣きじゃくる、もうすぐ三十路に差し掛かる妙齢の女性の姿ありけり。
    名をば酒寄彩葉と言いける。日の本が世界に誇る今代一の天才科学者なりけり。
    そんな彼女は、自らが人生をかけて完成させた、世代を3つほど超越した技術の粋である医療用義体――端から見れば自作ハイエンドダッチワイフ――にすがりついている。日本が誇る天才科学者の姿か?これが……。
    「よ~~~しよし、かぐやはどこにも行かないよ~」
    「嘘だ~~~!!」
    「嘘じゃないよ~~~彩葉だけのかぐやだよ~~~。芦花に告白したのはヤチヨ」
    「あんたたち中身一緒じゃないのよ~~~身体が違うだけで~~~!浮気だ~~~!!」
    「も~~~いいって言ったじゃん!それがヤチヨの望みならって納得したじゃん!挙句争奪戦にも負けたじゃん!」
    「言わないで~~~!!」
    「大丈夫だって……"かぐや"としては彩葉のことだけ見てるから」
    「うぅ……理性では分かってても脳が破壊される……」
    「しょ~がないでしょ……"ヤチヨ"としては、彩葉のことを助けてくれた人みんな愛おしいんだから。それだけ彩葉のことを大切に想ってるってことだよ」
    「分かってるけど~~~!!」
    「ほら、あれ言ってよ……"でも幸せならOKです"って」
    「うぅ……でもかぐやが幸せならOK……そんなの嫌だ!かぐやに他の恋人ができるなんて!一生私だけを想ってて欲しい!私が死んだ後もしばらく……10年以上は引きずってて欲しい!」
    「……こいつめんどくせぇ」
    「あ~~~!ごめんうそうそうそ行かないで~~~!面倒なこと言わないから~~~!お願い捨てないで~~~!」
    「捨てないってばもう……でっかい赤ちゃんだな……よ~~~しよしよし……かぐやちゃんですよ~……」
    「うう~~~……グスッ……だいたいあんた今どんな気持ちでここにいんのよ……」
    「そりゃ"彩葉みっともなくてかわいいなぁ"って気持ち?」

  • 64二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 14:07:41

    「うぐっ……そうじゃなくて」
    「なんだろうね。"かぐや"としては彩葉かわいい~好き~って気持ちでいっぱいだし、"ヤチヨ"としても同じ気持ちだけど、今は芦花カッコよかったな~好きだな~って気持ちが7割くらい?」
    「それどっちが本心なの」
    「どっちも本心だよ。同時に存在してるの。身体が2つあるからね」
    「浮気だ~~~!」
    「だって考えてもみてよ。私と彩葉が出会うまで彩葉を支えてくれててさ、ツクヨミの中でも外でもずっと彩葉と一緒にいてくれてさ、地球にきたばっかの私にパンケーキくれたり一緒に動画撮ってくれたり、ゲーム教えてくれたりしてさ、その後も10年ずっと仲良くしてくれてさ?そんで第二夫人になってなんて、地球人的には割とサイテーな告白したのに受けてくれて、あげく必要もないのに「応えたいから」ってわざわざ彩葉と戦って、勝ってくれたんだよ?そんなの"ヤチヨ"的にはもう好きになってもしょうがなくない?」
    「うぅ……」
    「だいたい私の記憶全部入ってんだから彩葉だって分かってくれてるわけでしょ?だからいいって言ってくれたんじゃないの?」
    「そうだけど……」
    「じゃあもうこの話はおしまい!大丈夫だよ、かぐやは彩葉がいっちばん好きだから!ヤチヨとしても第一夫人は彩葉だしね~」
    「うう~~~」
    「今日は一緒に寝よ。慰めたげるから」
    「かぐや~~~」
    かぐやが腕を広げると、すがりついていた彩葉は今度はかぐやの胸元に顔を埋めるように抱きついた。
    そのまま存在を確かめるように頬ずりをする。かぐやの方も、子供をあやすようにゆっくりと彩葉の髪を梳いてやる。
    「よしよし……今日はお疲れさま彩葉」
    「かぐやぁ……好きぃ……」
    「大好きだよ彩葉」
    「でも今裏でヤチヨとして芦花とやりとりしてる~……」
    「もうそんなの今更じゃん!今までだって彩葉とご飯食べてる時もなかよししてる時も裏でヤチヨとして仕事してたよ!」
    「ダメ……かぐや私のこと不安にさせないっていったもん……ちゃんと安心させて……」
    「分かったから……もうしょうがないな~……ベッド……行こ?」
    「行く……」
    こうして、酒寄宅の夜は更けていく。

  • 65二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 14:55:47

    ROKA……本当にかっこいいよ……

  • 66二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 17:27:29

    保守

  • 67二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 20:01:17

    愛だなぁ

  • 68>>126/05/02(土) 20:13:46

    もう1エピソードくらい予定していますが今日中は難しそうなので
    保守がてら雑談や概念投下などしていただいて大丈夫なのですよ!

    読んでくださった方はマジ感謝!

  • 69二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 21:56:55

    このソードインパルスVSエアリアルは一体…?

  • 70二次元好きの匿名さん26/05/02(土) 22:42:46

    ヤチ芦花はいいぞ

  • 71>>126/05/02(土) 23:37:07
  • 72二次元好きの匿名さん26/05/03(日) 04:57:37

    乙!やちろかはあまり見なかったので良いものを読ませてもらいました
    だだっこ彩葉かわいい

  • 73二次元好きの匿名さん26/05/03(日) 07:20:34

    特殊すぎる脳破壊で笑ってしまった
    芦花はほんまいい女やで

  • 74二次元好きの匿名さん26/05/03(日) 08:51:07

    >>58

    >(二度とは通用しないだろうけど)

    >(この一度だけ勝てれば、それでいい)


    これが嫌いなやついる?いねぇよなぁ!?

  • 75二次元好きの匿名さん26/05/03(日) 09:18:15

    彩葉との決闘から数日後。
    私は電車に揺られていた。

    『明日、どうかな』

    そんなお誘いがヤチヨからあって、私は応じた。
    待ち合わせ場所に指定されたのは、立川から少し動いたところにある駅。
    改札を出ると、すでに彼女は居た。
    黒いTシャツにホットパンツ。長い銀髪は畳んで無地の野球帽のなかにしまい込み、真っ黒なサングラスをかけている。いかにもな、有名人の変装のような格好だ。
    ……まぁ、私も似たような格好だけど。
    「や。やおよろ、アヤ」
    「お待たせ。……ルナ」

    『私たちさぁ……表で名前呼びあったら絶対まずいよね』
    『彩葉と一緒ならまだしも、芦花と2人だとスキャンダルになっちゃうよねぇ。私は平気だけど、芦花の方が大変そう』
    『いや、私も別に気にしないけど。いざとなったらヤチヨが養ってくれるんでしょ?』
    『♡♡♡♡♡∩∩』
    『呼び方でも決める?』
    『いいね。じゃあ……芦花のことは"アヤ"って呼ぼうかな』
    『じゃあ……私は"ルナ"って呼んでもいい?』
    『いいよ!!!!!!!!』
    『声でっか』
    『テキストだよ。彩葉には絶対呼ばせないから、芦花だけがそう呼んで』
    『……ありがと』

    そんなやりとりがあって、私たちは表ではそう呼び合うことにした。

  • 76二次元好きの匿名さん26/05/03(日) 14:32:49

    二人だけの秘密

  • 77二次元好きの匿名さん26/05/03(日) 23:07:47

    保守

  • 78二次元好きの匿名さん26/05/03(日) 23:52:39

    「……芦花、緊張してる?」
    ヤチヨはサングラスを僅かにずらし、隙間から上目遣いで私を見る。……ハリウッドスターしぐさが馴染むな、ほんと。
    「……少しね」
    内心を正確に言い当てられて、私はついそっぽを向いてしまう。
    「にひっ、行こ!」
    「うん」
    ヤチヨが私の手を取って、駅から歩み出す。
    その手は、人工物とは思えないほど柔らかくて、温かくて、僅かに強張っていて。
    ヤチヨも緊張してくれているのかな、なんて。そんなことを思った。
    駅を出て、住宅街の合間を縫うように歩いていく。
    「…………」
    「…………」
    私もヤチヨも、ひと言も発さない。発せない。ただ手だけを握ったまま、歩いている。自分以外の人たちの足音やざわめき、車の音なんかが、いやにはっきりと聞こえる気がした。
    「「……ねぇ」」
    沈黙に耐えかねて言葉を発すると、見事に被ってしまった。
    「あ、えっと」
    「ろk……アヤからどうぞ」
    「いや、ルナから……」
    「えっと……い、いい天気、だね!」
    「そう、だね」
    「ヤッチョの部屋、もうすぐだから!エアコン入れてあるから!」
    「う、うん」
    ヤッチョなんて言ったら、変装の意味も呼び方変えた意味もないんじゃ……なんて、そんな言葉すら出てこなかった。
    「…………」
    「…………///」
    ヤチヨは耳まで赤くなって前を向いて、また黙ってしまう。そのまま、私の手を引いて歩き続ける。私はヤチヨに置いていかれないよう歩調を合わせる。心臓の音がうるさい。口の中がいやに渇く。一歩一歩踏みしめる度に、身体が爆発しそうな錯覚に襲われる。
    それは私が、"このあと"を意識してしまっているからで。
    このあと。
    ヤチヨは私との契約を履行する。
    ヤチヨのプロポーズを請ける時に、私が出した交換条件を。

  • 79二次元好きの匿名さん26/05/04(月) 05:31:37

    初々しいのぅ

  • 80二次元好きの匿名さん26/05/04(月) 09:56:31

    age

  • 81二次元好きの匿名さん26/05/04(月) 16:57:08

    いい⋯

  • 82二次元好きの匿名さん26/05/04(月) 20:24:33

    特別って背徳感あるよね

  • 83二次元好きの匿名さん26/05/04(月) 23:05:39

    こいつらなかよしするんだ!
    …できるのか?
    しろ!

  • 84二次元好きの匿名さん26/05/04(月) 23:22:41

    到着したのは、入り組んだ住宅街の中にある、若干年季の入り始めたマンションだった。
    「……こっち」
    ヤチヨに手を引かれながら折り返し式の階段を上っていく。
    人の気配がしない通路を歩いていって、ある部屋の前でヤチヨが立ち止まった。
    「…………じゃぁ、その……どうぞ、上がって?」
    彼女がそう言うと、鍵を差し込むまでもなく、ガチャリ、と鍵の開く音が聞こえた。
    「…………」
    自分のつばを飲む音が、とても大きく聞こえた。

    生活感のない部屋。それが第一印象だった。
    ヤチヨとともに、廊下の突き当たりにある寝室へ入る。
    真っ暗な部屋。ヤチヨが電気を点けると、少し弱い蛍光灯の光が部屋を照らした。
    部屋の中にあるのは、簡素な事務机と事務用の椅子、それにベッド。
    部屋の真ん中に申し訳程度にラグが敷いてあるくらいで、座卓は畳まれて部屋の隅にかけられている。
    事務付の上には、これまた簡素なノートPCが置いてあるくらいで。
    窓はカーテンで塞がれている。なんとなく、閉塞感のある部屋。
    「……ここが?」
    「そう、"サーバールーム"だよ。元、だけどね」
    帽子とサングラスを机の上に置いて、長い銀髪をふわりと広げながら、ヤチヨは言った。
    彩葉の話によれば、10年前はここにかぐやちゃんの本体である"タケノコ"があったらしい。
    「今は彩葉が別の場所に移してくれて、ここは……私の部屋みたいになってるんだ。ここはここで思い入れがあるし、手放すのもね……あまり使ってないから、こんなだけど。さ、座って。お茶持ってくるね」
    ヤチヨは座卓をラグの真ん中に設置すると、寝室を出ていった。私は促されたまま、座卓の前に座り、帽子を取る。
    手持ち無沙汰で、形態を弄くるのもなんだったので、なんとなく部屋を見渡す。
    窓はブラインドが降ろされていて……なんというか、閉塞感があった。
    まるで、閉じ込められてしまったような。
    ゾクリ、と背筋を這い登るものがあった。

  • 85二次元好きの匿名さん26/05/04(月) 23:53:59

    素晴らしいです。花丸あげちゃう

  • 86二次元好きの匿名さん26/05/05(火) 00:34:17

    「おまたせ~」
    程なくして戻ってきたヤチヨはお盆を机に置いて、自らもラグの上に座った。
    「ま、普通の緑茶だけどね~」
    小ぶりなグラスに氷とともに入れられたお茶を、そっと私の前に置いてくれる。丁寧に可愛らしいコースターまで。
    お盆には私とヤチヨの分のお茶のほかに、爪切りが置いてあった。……爪切り?
    「……にへっ」
    目の前に座っているヤチヨが、唐突に表情を綻ばせた。
    「……どうしたの」
    「いやぁ……そのね」
    ヤチヨは妙にニヤニヤとした表情のまま、ぽりぽりと頬を掻いた。不自然に視線が泳いでいる。
    「なんというか……もちろん今のかぐやの家、ヤッチョの家といったら彩葉のマンションなんだけどね」
    「うん」
    「言ったとおり、ここは私がヤチヨとしてずっと過ごしてきた、"ヤチヨ"の部屋なんだよね……」
    「そう……だね?」
    「いやぁ……女の子、初めて連れ込んじゃったなぁ……って」
    ふへっ、と、ヤチヨはちょっと気持ち悪い笑い方をした。いや、"女の子"って歳でも、ないんだけど。
    でも、それを意識すると、かっと顔が赤くなるのを感じる。
    思わずぐいっと、お茶を流し込む。冷たい流れが喉を潤して、身体の中から冷却していくのを感じる。ふとヤチヨの方を見ると、にやぁ、と、笑っていた。いや、にやにやしているのはさっきからずっとだけど。
    なんですか、混ぜものでもしていたんですか。
    そういえば、告白された時も、心も身体も私のものにしたいとか、私の部屋に閉じ込めたいとか吐露していた気がする。あの時は"彩葉を"と言っていたが、文脈的には私のことをそうしたいという吐露だった。
    つまり……あれかな。もう私は、この部屋の外に出ることはできないということか。そのうち眠気が襲ってきて、目が冷めたときには、手錠とかであのベッドに繋がれているんだろうか。
    ……そんなバカみたいなことを考えている私も、大概おかしいんだろう。のぼせ上がっているのは、気温によるものか、私自身の熱によるものか。考えるまでもなかった。
    「……ヤチヨ、その。……今日は」
    「…………うん。約束をね。果たそうと思って」
    そう言ってはにかむヤチヨの姿は、なんというか、こう――罪そのもののように思えた。
    「いや、その、私は――」
    別に、無理には、そう言うつもりだったけど、ヤチヨが遮った。
    「――いや?」
    「いや、な、わけ――」

  • 87二次元好きの匿名さん26/05/05(火) 03:12:28

    大人彩葉のいろP形態がいまいち想像できないな…
    大人姿が白衣かライブ衣装しかないせいか

  • 88二次元好きの匿名さん26/05/05(火) 05:34:06

    ヤッチョさんだいぶ魔性の女

  • 89二次元好きの匿名さん26/05/05(火) 09:53:40

    保守

  • 90二次元好きの匿名さん26/05/05(火) 13:03:51

    「ヤッチョもね……芦花の、"応えたい"って気持ちに、応えたいな……って。だから……芦花が嫌じゃなければ……ね、どう……かな」
    言葉にこそしないけれど、その指し示すところは明白で。私は今にも顔から火が吹き出そう。心臓は今にも破裂しそうに早鐘を打っている。本当に、今から、ヤチヨと。この、電子の歌姫と。
    「…………その、いやじゃ、ない。むしろ――」
    そっ、と。ヤチヨが私の右手を取った。両手で包むようにして、やさしく撫でてくれる。
    温かい。
    人工皮膚とは思えないくらい、さらさらとして、温もりのある、ヤチヨの肌。彩葉の、覚悟と執念の結晶。
    「芦花。よかったら……私に、爪の手入れ……させてもらえないかな」
    「えっ?」
    思わず、彼女の顔を見た。ヤチヨの顔が――月見ヤチヨが、そこにいた。ツクヨミの神々に見せる、髪を結った、花魁衣装の月見ヤチヨではなく。髪を下ろした、Tシャツ姿の、彩葉以外には誰も見たことのない、月見ヤチヨが。
    少し視線を落とせば、僅かに緩んだ首元から、彼女の鎖骨が覗いている。新雪のようにまっさらな、彼女の肌が。血の通う肌が。
    その奥には、抗いがたく私を惹きつける闇があって――
    「芦花」
    ハッと、ヤチヨと目を合わせる。彼女の青い瞳が、私を見つめていた。
    「どう、かな?」
    「……意味、分かってるの」
    思わずそう訊くと、ヤチヨは恥ずかしそうに、柔らかく微笑んだ。
    「……分からないほうが、いい?」
    反射的に、私の喉がゴクリと鳴る。
    その返しは。ずるい。
    「……どっちの私がいい?」
    ヤチヨは畳み掛けてくる。少しだけ、ニヤニヤといたずらっぽく嗤っている。……こういうところは、本当に、かぐやちゃんなんだ。
    ……だったら私は、こうするだけだ。
    「そのままのヤチヨが一番好きだよ。だから、今日はありのままでいてほしいな」
    そう返すと、ヤチヨはさっと赤くなって、拗ねたように唇を尖らせて、
    「……ずるい」
    と呟くと、爪切りを手に取った。

  • 91二次元好きの匿名さん26/05/05(火) 22:01:26

    良い…

  • 92>>126/05/06(水) 00:34:56

    続きは書いてるけど電波を受信した芦花×真実ピアッシングネタを優先して書いたので今日はこれで終わり!まったね~

  • 93二次元好きの匿名さん26/05/06(水) 03:16:58

    こんな良質なレズを読めるの最高すぎる

  • 94二次元好きの匿名さん26/05/06(水) 05:29:25

    GJ

  • 95>>126/05/06(水) 12:16:39

    保守
    仕事の都合で明日朝までアップ難しいかもしれません

  • 96二次元好きの匿名さん26/05/06(水) 16:38:26

    「…………」
    「…………」
    部屋の中は、重苦しい沈黙に支配されていた。
    まるで、粘度の高い液体のなかに、部屋ごと沈められたような。
    息をするのもままならないような。
    私も、ヤチヨも。
    2人して、息を潜めている。
    パチン、パチン、と。
    ただ、ヤチヨが私の爪を切る音だけが、明瞭に部屋の中に響く。
    爪を切り終えると、ヤスリで磨き始める。そのしょりしょりという独特な音が、同じように部屋へこだまする。
    私の指を見つめるヤチヨの表情は真剣そのもので。
    それにどこか、緊張しているようで、そわそわしているようでもあった。まるで急いているような。
    真っ白な頬を僅かに朱く染めながら、そんなふうにそわそわしている彼女を見ていると、私の方も意識してしまう。なんとなく、膝を擦り合わせるような。
    ヤチヨは指の腹で、磨き終えた私の親指の爪を撫でる。満足できる出来だったようで、軽く頷くと、親指を離して隣の人差し指へと移った。
    左手の掌に私の指を乗せたまま、親指にくっと力を入れて、私の人差し指を固定する。
    そして右手で爪切りを私の爪に当てる。
    パチン。
    そんや乾いた音とともに、私の爪が、彼女の手によって切り取られてゆく。
    それは、なんというか。彼女が私の世話をしているのか、私が彼女の望む形に整形されていくのか。だんだん分からなくなってきて。
    行為どころか前戯ですらないこの行いが、既に罪と背徳にまみれたものであるかのように思えてきて。
    なんとなく、叫び出したい衝動に駆られた。

  • 97二次元好きの匿名さん26/05/06(水) 19:16:47

    ここ3週間程オリキャラ含む芦花CPスレに脳を焼かれて常に3割くらいの思考リソースを取られて毎日このスレの更新を待ち続けちゃってる
    脳内の妄想は大体似たり寄ったりな内容だから恐れ多くて出力できんぜ!

  • 98二次元好きの匿名さん26/05/06(水) 21:11:06

    >>97

    似たり寄ったりでも出すんだよォ!

  • 99二次元好きの匿名さん26/05/06(水) 21:30:09

    あにまんの二次創作スレ読みすぎて原作の設定を忘れがちになるのはあるある

    よく考えたら芦花のレズ設定も本編では明言されない裏設定どまりなんだよな…

  • 100二次元好きの匿名さん26/05/06(水) 21:39:27

    >>99

    厳密に言えば公式ガイドブックの「特別な感情を抱いている」は恋愛感情とも明言されてない……?

  • 101二次元好きの匿名さん26/05/07(木) 06:00:02

    あっ

  • 102二次元好きの匿名さん26/05/07(木) 08:13:51

    「……ヤチヨ」
    「なぁに?」
    沈黙に耐えかねて、つい、名前を呼んでしまった。……呼んでしまった以上、何か話さないと。"呼んでみただけ"はなんか、恥ずかしいというか、まだ早いというか。
    パチン、パチンと。
    その間にも、私の爪は少しずつ切られていく。その小気味よい音を聞きながら、私は話題をなんとか捻り出した。
    「……こういう言い方が正しいか分かんないんだけど……私、"ヤチヨ"の奥さんになるの?」
    「……んー、そうだねぇ……」
    人差し指の爪をやすりで磨きながら、ヤチヨは唸る。
    「ヤチヨとかぐやはイコールだから、そこで分ける意味はないんだけどね。でも……そうだね、例えば外見で分けるとしたら、かぐやじゃなくて、月見ヤチヨと付き合ってもらうことになるね。かぐやの姿で、芦花といちゃいちゃしたりすることは、ないと思う」
    「……そう」
    「おやおや?芦花ちゃんはかぐやの姿の私ともえっちなことしたいのかな?芦花も案外スキモノですなぁ〜?」
    「ちっ、違っ――」
    「な〜んて冗談冗談」
    にっしっし、と笑いながら、ヤチヨは中指に取り掛かる。パチン、と。中指の爪が切られた。
    「どう言ったらうまく伝わるかわからないけど……芦花のことを好きになったのは、私のなかの"月見ヤチヨ"の部分、って言えばいいのかな」
    「……まだよく分からないけど、いつか、分かりたいな」
    「……芦花もさ、けっこう王子様だよね」
    「そうかな?」
    「この前の彩葉との決闘とか」
    「……今更恥ずかしくなってきてるんだよね、あれ」
    「本当にかっこよかったよ。惚れ直しちゃった」
    「……もう」
    「かわいがってくださいね、あなた?」
    ヤチヨはそう微笑みかけると、磨き終えた私の爪をおもむろに口元へ持っていき、唇で撫でた。
    「ん゛っ!?」
    「っふふ、芦花、すごい顔」
    「いや、だって」
    「こういうの、好きかなって」
    「…………ノーコメント」
    クスクスと笑いながら次の指へ取り掛かるヤチヨを見ながら、私は必死に平静を保ち続けた。

  • 103>>126/05/07(木) 08:14:52

    >>100

    なので1としては、芦花はレズビアンとしては描いてないつもり。内容が結果的に百合なだけ。

  • 104二次元好きの匿名さん26/05/07(木) 16:47:37

    ヤチヨはいつも彩葉の事を想ってくれてる芦花のことが好きなんだけど段々ヤチヨの方へも感情が傾き出して後ろめたさを感じてたり戸惑う芦花にちょっと良くない笑みを浮かべて欲しい(邪念)

  • 105二次元好きの匿名さん26/05/07(木) 23:45:13

    ええのぅ

  • 106二次元好きの匿名さん26/05/08(金) 06:43:21

    もっと読みたい(強欲)

  • 107二次元好きの匿名さん26/05/08(金) 12:43:06

    ほしゅ

  • 108>>126/05/08(金) 12:45:16

    続きをちまちま書いているのだけどなんか蛇足感出てきちゃったなとも思いつつ。
    ゆっくり待ってくれ。あと雑談もしてくれ。他の人の概念も知りたい。

    スレがオチたらオチたで渋のほうにアップするのであまり気にせずに気長に待っていて欲しい

  • 109二次元好きの匿名さん26/05/08(金) 17:23:03

    この概念だと彩葉が芦花に嫉妬するっていう他じゃ見られない要素を見られるのが素晴らしい...

    本編だとかぐいろが両思いすぎて表には出なかったけど、
    彩葉が実は超嫉妬深いとかだと嬉しいと思ってた。

  • 110二次元好きの匿名さん26/05/08(金) 19:41:01

    まぁ、かぐやに寄りつく奴をちぎっては投げちぎっては投げした経験はあるな

  • 111二次元好きの匿名さん26/05/08(金) 23:00:23

    彩葉からかぐやへの特大感情があることの裏返しでもあるんと思うんだよね。
    愛情深く、でも嫉妬深かったり強い独占欲があるからこそ義体作り上げられたのもあるんじゃないかなぁ。

  • 112二次元好きの匿名さん26/05/09(土) 01:30:03

    多分本編彩葉は嫉妬深いというか、どちらかといえば執着心と表現したほうが適切なような気もするんだよな……これもなんか違う気がするけど。
    母への対抗だったり、超スーパーJKであること、とか、かぐやと一緒にいたいとか。

  • 113二次元好きの匿名さん26/05/09(土) 05:45:06

    執着心は危うくあるが大事でもある

  • 114二次元好きの匿名さん26/05/09(土) 13:13:56

    保守

  • 115二次元好きの匿名さん26/05/09(土) 19:46:35

    >>112

    人間心理は複雑怪奇

  • 116二次元好きの匿名さん26/05/10(日) 00:18:18

    ヤチヨも芦花も大変奥ゆかしいけど仕掛けるのはやはりヤッチョだろうなと思ってる
    他スレで書き込んだけどAIなら大丈夫だろうと彩葉への想いを書き込んでいたのを普通に捕捉されててそこからゆっくりヤチヨに絡め取られていく場面があったらいいななんて

  • 117二次元好きの匿名さん26/05/10(日) 00:20:59

    >>116

    なにそれめちゃくちゃ良い

    もっと教えて

  • 118二次元好きの匿名さん26/05/10(日) 05:22:56

    ぐぅ、探し方がわからない…

  • 119二次元好きの匿名さん26/05/10(日) 13:01:04

    もうちょい絞る単語ないと総当たりだな

  • 120二次元好きの匿名さん26/05/10(日) 21:34:09

    >>117

    かぐやの引退ライブ後の彩葉に何もできないでいるときにAIヤチヨに相談する芦花

    途中で気づいたヤチヨが直接見ているなんて気づくはずもなくナイーブな状態で彩葉への想いを書き込んでしまう

    その時のヤチヨは自分がフェードアウトしたらそのまま芦花の方へ心が向いてくだろうと思って”もう少しだけ待ってあげよう”みたいな無難な回答で済ますんだけど、彩葉との再会とか10年後に義体で復活したあたりから

    >>18のような感じで彩葉が受けている愛もひっくるめて、大切な友人の芦花が欲しくなってしまう

    そして彩葉の大事な人でありかぐやでもあることとツクヨミの管理者でAIの相談内容を把握していることと芦花を愛しく思う一人であることを総動員してじわじわとヤチヨへの好意も深めさせていってたらとてもうれしいなって

  • 121二次元好きの匿名さん26/05/10(日) 21:37:08

    >>120

    なにそれすごく読みたい

    読ませて!書いて!丁度スレ主も休眠期みたいだし!

    次は君だ!

  • 122二次元好きの匿名さん26/05/11(月) 06:06:07

    >>120

    ヤチ芦花なんてなんぼあっても良いですからね

  • 123二次元好きの匿名さん26/05/11(月) 13:29:23

    わかるわかる

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