サウジにUAEからの借金を肩代わりさせる

山根:先ほどパキスタンは隣国の紛争時に躍進すると言いましたが、その大きな理由は軍と政治のバランスが取れるからです。逆に、軍と政治のバランスが崩れ、テロやクーデターが起きるとパキスタンは内政の混乱など悪いパターンにはまっていきます。

 その中で今回の最大の立役者はムニール元帥だと思います。ムニール元帥は情報局長を務めた経歴があるなど、国内外の情勢に非常に明るい人です。また、かつて彼は陸上自衛隊富士学校で長期訓練をした経験もあります。日本語も上手で、「亭主元気で留守がいい」といったシャレも言えるなど、パーソナリティに魅力のある人です。

 今回の戦争での立ち回りでも、サウジとの関係の強化に努めたのはムニール元帥の存在が大きいと思います。パキスタンの最大の外貨獲得政策は労働移民ですが、今回の戦争でパキスタンがイランと関係を切らないことで、(イランから攻撃を受けている)UAEがパキスタンに激怒しました。

 パキスタンとしては中東に出稼ぎ労働者を派遣できないと経済的に厳しくなりますから、中東との関係は維持したいところですが、イランと対立するUAEの怒りを買うと移民派遣が難しくなる可能性があります。それでもイランとの関係は切れないのが現実です。

 そこで意味を持ってくるのがサウジとの関係強化です。サウジに兵士を派遣することで良好な関係を維持してUAEへの牽制もできます。実際、UAEがパキスタンに35億ドル程度の借金の即時返済を求めた際、これをサウジが肩代わりしたという報道もあります。こうしたバランス感覚のある外交政策は現パキスタン政権の強みでしょう。

──パキスタンはイランの“友好国”として、イラン体制の完全破壊を求めるイスラエルや、ハメネイ師をいきなり暗殺してしまうアメリカに、どこまで肩入れできるのでしょう。