「ショート動画中毒」が深刻すぎる…脳科学が解明した“集中力低下”の恐ろしすぎる正体
脳はなぜスマホや動画に夢中になってしまうのか?
「なぜかスマホを何度も見てしまう」「長文や読書が苦手になった」――デジタル社会の現代、多くの人が感じているこの「疲れ」と「集中力の低下」には、脳の特性が深く関わっています。 【気づかぬうちに脳が壊れていく】医師が警告する、精神疾患が18年で2.6倍に増えた“本当の理由” そこで今回は、情報に追われ、常に脳が疲弊してる現代において、“読書だけがもたらすもの”を、脳科学の視点から解説した書籍『読書する脳』(SBクリエイティブ)を一部抜粋してご紹介。 なぜ現代人は情報に振り回されやすく、集中力を保つことが難しいのかを解説します。スマホやSNSに振り回されず、深く集中する力を取り戻す第一歩を、一緒に見ていきましょう。
脳が新しい刺激を求めてしまう理由
私たちの脳には、「新奇性」(新しいものや変化のあるもの)を自然に求めるという特性があります。これは、人類が進化の過程で、新しい情報にいち早く注意を向けることで環境の変化や迫り来る危険を素早く察知し、生き延びてきたなごりだと言われています。 この「新しもの好き」な性質の鍵を握るのが、「ドーパミン」という神経伝達物質です。脳は、新しい情報や予測できない変化に対して、ドーパミンを放出して対応しようとします。ドーパミンの役割は、脳内の「報酬系」という回路において、報酬を予測し、その報酬を最大化するための行動を促すことです。報酬と言ってもそれは単にご褒美という意味ではなく、自分が計画した通りに身体を動かすだとか、自分の予測通りの結果を導くということも含まれます。「自分の予測が当たった」という確認も、脳にとっては立派な報酬なのです。 たとえば、私たちは、暗い部屋に入った際にスイッチを押すと即座に照明がつくことを学習して、次に暗い部屋に入った際も同じようにスイッチを押すという行為を繰り返します。この場合、自分の経験や記憶に基づいて行動した結果、以前と同様に照明がついたという結果そのものが脳にとっての報酬となります。 私たちは、このドーパミンの作用によって、新たな情報を積極的に追い求めたり、環境の変化に敏感に反応したりします。なお、私たちが感じる「快感」や「満足感」は、報酬系の中にある側そく坐(ざかく)核という部位で「エンドルフィン」という別の物質(いわゆる脳内麻薬)が放出されることで生じる副産物に過ぎません。つまり、脳は「快感そのもの」を追求しているのではなく、「報酬が得られる可能性を最大化すること」を目指しているのです。 SNSの「いいね」が気になってスマホを繰り返しチェックしてしまったり、次々と新しい情報が流れてくるテレビ番組やショート動画をつい視聴し続けてしまったりするのは、まさにこのドーパミン報酬系が刺激されているからなのです。 こうした脳のしくみは、本来は私たちの生存に有利に働くものでした。しかし、デジタルメディアが発展した現代においては、これが「情報過多」や「脳疲労」といった問題を引き起こしています。スマートフォンやテレビなどは、絶え間ない通知や画像、映像の切り替わりによって、脳の新奇性を求める傾向を巧みに利用し、私たちの注意を根こそぎ奪っていきます。その結果、脳は常に多くの刺激を処理し続けなければならず、疲労感を感じやすくなってしまうのです。 また当然ながら、脳が常に新しい情報に反応する性質は、私たちが集中して一つの情報や課題にじっくりと取り組むことを難しくします。深く丁寧に考える習慣が失われ、短絡的かつ即時的な情報消費行動が増えてしまうのです。 読書という、深い集中力を要する活動が近年難しく感じられる背景には、こうした脳の基本的な性質と、それを過剰に刺激する現代社会との深刻な負のシナジーがあります。この脳の特性を理解することは、情報に振り回されず、効果的な読書習慣を身につけるための第一歩となるでしょう。 しかし、そもそもなぜ私たちの脳はこれほどまでに情報過多に弱く、すぐに疲れてしまうのでしょうか? そのしくみは脳の構造的な性質、特に「エネルギー消費」という観点から理解することができます。 次回は、そんな疲れやすい脳について解説します。