薄命の陽だまり
※非常に陰鬱としています
※ハムスターが死にます(寿命)
※書きたいところだけLv100
可愛くて小さい命が羨ましかっただけの、どこにでもいる女の子の話。
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〇追記
このお話には、2つの読み方が存在します。
どちらも正しく彼女達の物語であることにご留意ください。
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ひまわりが死んだ。
3年と11ヶ月。ハムスターの寿命としては、長いくらいだったのかもしれない。
眠るように安らかに死んでいった小さな命を、悲しみながらも羨ましく思った。
食べ、眠り、走り回って、懸命に生を駆け抜けた命。
短くも、周りに一生愛され続けた命。
ひまわりのお墓の前で流した私の涙は、果たしてこの子の為のものだっただろうか。
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2ヶ月前。
テスト終わりのご褒美に立ち寄ったスタバで、「そういえば、彼女出来たんだよね〜」と知夏は言った。
何気ない、いつもの世間話のような態度で紡がれたその言葉に、私は何を言えばよかったんだろう。
知らない子だった。
知夏が通っている進学塾で知り合った女の子らしい。
「あっちは私立なんだけど、2人ともテスト期間が終わったからさ〜」
「今度デートで服買いに行くの」
私の反応が薄かったことに気がついているのかいないのか、知夏は新作のフラペチーノに視線を落としたまま続ける。
いつも通りに振る舞っているようでいて、いつもよりほんの少し耳が赤い。
きっと目を合わせないのも、私に「いつも通り」を装う為なのだろう。
そんなことだって、私には分かるのに。
知夏のことは、私が一番お見通しだったはずなのに。
どうして、疎らに垂れた茶髪で隠れかけている知夏の横顔が、知らない女の人みたいに見えるんだろう。
どうして、いつも二人で選んでいた知夏の服を、違う女の子と選ぶことになっているんだろう。
私には、何も分からなかった。
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あの日、どうやって帰ったのかはあまり覚えていない。
けれど私の幼馴染に彼女が出来たところで、世界も日本も滅ばなければ、学校が休みになることすらない。
当たり前のように1日が過ぎ、1週間が過ぎ、1ヶ月が過ぎ、知夏は日を追うごとに幸せそうに私と過ごす時間を減らしていった。
更に半月過ぎる頃には、下校時間に私の元に走ってくる足音も消えていた。
一人で帰路につき、ひまわりの4歳の誕生日が近いことを思い出した。
ひまわりは、私たちが小学5年生になってすぐの頃に知夏の家に貰われてきたジャンガリアンハムスターだ。
家が近かった知夏と私は夢中になってこの小さな命の世話をした。
ひまわりの誕生日は、毎年知夏がお祝いにナッツをあげすぎてお母さんに注意されていた。
今年のひまわりの誕生日は、祝日だ。
普段であれば、知夏は彼女と約束をしている日だろう。
何となくLINEの画面を開けば、友達リストの1番上にピン留めされた知夏の名前が映った。
少し逡巡して、画面を閉じる。
ひまわりはもう歳だ。実際、食欲も少し落ちてきているらしい。
私があげる分のナッツまではもう食べられないかもしれない。
言い訳がましく心の中で唱えて帰ったその夜に、知夏から「ひまわりが亡くなった」という知らせが届いた。
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ひまわりは、知夏の家の紫陽花の下に埋めることになった。
冷たくなったひまわりを地面にそっと置いた知夏は、隣に大粒のナッツをひと粒だけ添えた。
「…」
「…もっと、沢山食べてもらいたかった」
「………もっと、沢山撫でたかった」
「……もっと、沢山走ってて欲しかった」
「もっと、沢山、沢山、ひまわりと一緒にいたかったのに……」
「はやすぎるよ……ひまわりぃ…」
そう言って慟哭するように泣き始めた知夏は、酷く可愛かった。
そんなことを思った自分自身に驚いて、誤魔化すようにひまわりに手を合わせる。
…私なら、どうだろう。
あの子なら、どうなんだろう。
知夏は、私が死んだとき、今と同じように泣いてくれるんだろうか。
あの恋人が死んだとき、今よりもっと可愛らしく泣いてあげるんだろうか。
それなら、私は___
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『本日午前7時半頃、E県の希望ヶ丘中学校で女性の遺体が発見されました』
『警察によると、遺体はこの中学校に通っていた天宮日向(14)さんのものと見られ……』