騒音トラブル関連の法律について解説、使えるものは様々ありますが、訴訟による解決は非効率だと忘れずに!
騒音トラブルに巻き込まれた時に、これを法的に解決したいと考える場合もあるでしょう。そこで今回は、関連する法律について網羅的に解説します。ただし、法的な内容には法律や条例以外にも環境基準や建築基準法などの基準類もありますが、今回は基準については除外します。また、細かな数値などは多少の変更がなされている場合もあり、それが追跡できていないことも考えられるため、最終的には確認が必要です。
では、解説を始めます。騒音関係の関連法律とその内容は以下の通りです。
騒音規制法(昭和43年(1968年)6月10日施行、該当部分:全部)
騒音規制法と聞けば、うるさい騒音なら何でも規制できる法律と考えがちですが、そうではありません。あくまで公害騒音が対象であり、近隣騒音やマンションなどでの騒音を規制するものではありません。
騒音規制法は、当時の公害対策基本法(昭和42年(1967年)施行、平成5年(1993年)に環境基本法に移行)の主旨に則り制定された公害騒音の規制法であり、対象となる騒音は工場騒音、建設工事騒音、自動車騒音の3つです。工場騒音、建設騒音に関しては規制値が、交通騒音では許容限度が示されています。騒音規制法は罰則もある厳しい法律であり、違反して改善命令にも従わないときには一年以下の懲役又は十万円以下の罰金が科せられます。
規制対象となる工場および建設工事(各々、特定工場、特定建設工事と呼ばれます)の具体的な種類が決められており、何れも大きな騒音を発生する工場や建設作業です。
騒音規制法で示されている特定工場の規制値(すなわち騒音レベルの大きさ)は一定の範囲、例えば40~50dBというように決められており、実際の規制値は、地方自治体がその地域の実情に合わせて騒音規制法の範囲内で数値、および地域指定を設定します。したがって、特定工場を計画する場合や特定建設作業を行う場合には、所在地の自治体で規制値が幾つになっているかを確認する必要があります。
特定建設工事騒音の規制値は、建設作業場所の敷地境界において85dB以下となっており、地域指定により、住宅地などの第1号区域では午後7時から翌朝7時まで、その他の第2号区域では午後10時から翌朝6時までは作業が禁止されています。もちろん、休日は作業ができません。
なお、特定工場に関しては、各県の環境条例などで騒音規制法より厳しい適用条件を設定している場合もあるため、届出等に関しては条例等の規制基準も併せて確認する必要があります。
民法(明治29年(1896年)4月27日施行、該当部分:第5章、第709条、第710条、第718条)
本条文において、不法行為があった場合には、これを行ったものは損害賠償の責任を負うと定められており、これにより、騒音などで被害を受けた場合にも相手に損害賠償を請求することができます。ただし、その騒音が受忍限度を超えていると判断されることが必要であり、その判断基準は、「平均人の通常の感覚ないし感受性を基準として、被侵害利益の性質、被害の程度、加害行為の様態、地域性、交渉経緯を総合して判断する」というのが通説であり、騒音トラブルの場合でも騒音の大きさだけで決まるものではありません。
また、犬の鳴き声などに関しては、第718条に動物の占有者等の責任に関する条項があり、動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負うとなっており、これにより損害賠償請求を行うこともできます。犬の鳴き声の騒音に関しても対象となります。
刑法(明治44年(1911年)4月24日施行、該当部分:第204条)
騒音による傷害罪が成立する場合があります。傷害を与える行為としては暴行が通例ですが、他人の身体の生理的機能を毀損するものであれば方法は問わないというのが判例となっています。したがって、騒音を流し続け、睡眠障害や耳鳴り、頭痛などを生じさせる行為も、傷害罪の実行行為となります。有名な「奈良の騒音おばさん」の場合には、暴行には当たらないが、傷害罪の未必的故意があったとして有罪となり、懲役1年8月の実刑判決となりました。なお、騒音を発する行為が暴行に当たるとされた事例もあります。
最近では、モスキート音で子どもを撃退するなどの記事も見られますが、これも条件によっては傷害罪の対象となる場合もありえますので、音を攻撃手段として使用することは厳に差し控えるべきです。
風営法(昭和23年(1948年)7月10日施行、該当部分:第2条、第15条、第31条、第32条)
正式には、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」といい、風俗営業の該当業種を規定し、それらの業種に関して、都道府県の条例で定める数値以上の騒音又は振動(人声その他その営業活動に伴う騒音又は振動に限る。)が生じないように、その営業を営まなければならないことを規定している法律です。測定方法は、敷地境界の外側で、時間率騒音レベルの上端値(L5)で評価することとしています。
また、深夜における営業の規制についても規定しています。騒音の大きさに関しては、概ね自治体の騒音防止条例で規定する規制値を準用しています。したがって、隣のスナックが深夜に営業し、カラオケ騒音などが響いてきてうるさい場合などに適用できます。
軽犯罪法(昭和23年(1948年)5月1日施行、該当部分:第1条14号)
本条文において、「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者は、これを拘留又は科料に処する」としています。大阪の公園などで、大音量でカラオケをやっていた場合に適用された事例などがあります。ただし、軽犯罪法の場合には、刑事訴訟法により住所不定などの場合を除いて逮捕はできず、これは現行犯の場合でも同様です。
「公務員の制止をきかずに」という点は重要で、警察官などが何度も注意しているのに迷惑行為を続けた場合が対象となり、いきなり取り締まるということはできません。
動管法(昭和48年(1973年)10月1日施行、該当部分:第25条)
「動物の愛護及び管理に関する法律」で、第3章第4節に周辺の生活環境の保全に係る措置の項があり、都道府県知事は、動物の飼養又は保管に起因して周辺の生活環境が損なわれている事態が生じた場合には、当事者に、その事態を除去するために必要な措置をとるべきことを勧告することができるとしています。これにより、騒音問題などにも対応が出来ますが、あくまで動物取扱業者に関するものです。一般家庭での動物の飼育に関しては動物愛護条例に該当条文があり、多数飼育に関する条例も鳥取県や山梨県で制定されています。
静穏保持法(昭和63年(1988年)12月8日施行、該当部分:第5条)
正式には、「国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律」であり、国会議事堂周辺等の指定された地域で拡声器の使用を制限する法律です。この静穏保持法の適用場所は、国会周辺に限られるわけではなく、一定の条件を満たしていて、かつ必要があれば、他の場所でも総務大臣が指定できることになっています。なお、右翼の宣伝カーなどの拡声機の騒音に関しては、暴騒音規制条例が多くの自治体で制定されています。
騒音関係の条例について
これらの法律以外にも、騒音に関連する条例が各自治体によって制定されています。主なものは、騒音防止条例(現在の名称は、環境基本条例や環境保全条例などが多く、東京都は環境確保条例)、迷惑防止条例(東京都では、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」)、その他に動物愛護条例、暴騒音規制条例や、苦情を言う側を規制対象とした国分寺市条例などがありますが、長くなるので、これらについての解説は別の機会に改めて行いたいと思います。
騒音トラブルを訴訟で解決しようとするのは非効率です。その理由とは
騒音トラブルが拗れれば相手に対する敵意も強くなり、騒音問題を解決することよりも闘う意識が強くなり、相手を何とかやっつけたい、思い知らせてやりたいという思いで法的な手段を選んでしまう場合もあるかもしれません。確かに、訴訟というのはトラブルに決着をつけるための有効な社会手段ですが、決してトラブル解決の手段ではありません。それどころか、騒音トラブルに関しては寧ろ非効率な対応手段だと言えます。その理由を以下に説明しましょう。
1) まず、騒音トラブルの訴訟期間は長く、平均で2年といわれています。結審まで8年掛かった事例もあります。民事訴訟全体では平均約9か月ですから、いかに長いかが分かります。この間の精神的な負担は大変に大きなものとなります。
2) 騒音訴訟で勝訴しても賠償金の額はせいぜい数十万円というのが通常です。更に、一番の目的である騒音の差し止めは認められない場合が殆どです。近隣騒音などの差し止めはハードルが高いといえます。
3) 騒音訴訟では被害を立証する必要がありますが、その証拠として長期間の騒音測定と発生記録が必要となります。過去の例では、1年以上に亘って毎日騒音の発生時刻と音の種類を記録し続けたものもありました。大変な作業ですが、この作業自体が相手への敵意をより高めてしまうことも問題です。
4) その上、騒音は計量証明の対象となるため、資格のない素人がインターネットで買った簡易な騒音計を使って測定するという訳にはいきません。騒音測定の専門業者への測定依頼が必要となり、当然費用が発生しますし、自宅内や深夜などでは測定自体が困難になることもあります。
5) 更に問題なのは、裁判での騒音被害の認定は、他の要因を加味した受忍限度論となるため、不確定要素が多く見通しが困難なことです。受忍限度については民法の解説のところで説明しましたが、何とも分かりづらいというのが印象です。
6) これが最も大きなマイナス点かも知れませんが、訴訟を遂行すれば相手との関係は完全に破綻し、近隣関係を維持することが困難となる場合もあります。状況によっては、訴訟後には危険な状況が出現するということもないとはいえません。
たとえ弁護士保険などの武器があっても、その使用は冷静に
如何でしょうか。これほど非効率な決着手段を使おうと思うでしょうか。最近は、弁護士保険なども個人加入のものだけでなく、マンションを対象とした団体型の保険も出てきました。たとえ、このような武器が手元にあったとしても、安易に使うことなく冷静に対応して下さい。安心・安全なマンションライフは、闘うところからは生まれません。