【再審制度】袴田巌さんの再審・無罪判決受け進む再審制度見直す法改正議論が紛糾しつつヤマ場…その行方は(静岡)
確定した刑事裁判をやり直す「再審」についてです。袴田巌氏の再審での無罪判決を受け法改正の議論が進められていますが、検察による「抗告」、つまり、不服申し立てを認めるかどうかで会議で怒号が飛び交うほど紛糾しています。そして、その議論はきょう7日、ヤマ場を迎えています。
5月7日、午後2時から行われた自民党の会議。再審制度を見直す刑事訴訟法の改正案を巡り法務省側から改めて修正案が示されました。
(自民党 司法制度調査会長 鈴木 馨祐 前法相)
「基本的には抗告についての原則禁止であるとか、そうした点につ
いての改正案を、さらに修正した形でお示しいただくと。しっかりとした法案をつくっていく、これも政府与党の大きな使命である」
これまで紛糾してきた「再審制度の見直し」を巡る自民党内の議論。
(自民党 稲田 朋美 議員)
「ほとんどの議員が(検察官の)抗告禁止って言っているにもかかわらず、それを全く無視をしている。法律を作るのは国会ですからね」
会議では怒号が飛び交う場面も…。
反対派の議員が主張しているのは検察の抗告、つまり不服申し立ての「全面禁止」です。
そもそも再審制度を見直す機運が高まったのは、袴田巌氏の再審で無罪が確定したことがきっかけでした。
袴田氏の再審では2014年に静岡地裁が再審開始を認める決定をしましたが、検察が「不服申し立て」つまり抗告したことで審議が長引くことになり、再審開始が確定したのは2023年。静岡地裁の決定から9年かかったのです。しかし、再審制度見直しの政府案は当初、検察による「不服申し立て」を認める内容になっていました。その後、法務省は修正案を示しましたが「抗告の全面禁止」を求める自民党議員からは…。
(自民党 井出 庸生 議員)
「自民党は法務省のためにあるんじゃないんだぞ。国民のためにあるんだぞ。忘れるなよ」
(自民党職員)
「まだ会議始まっていません」
(自民党職員)
「報道の人、速やかに退出をお願いします」
(反対する議員)
「不誠実なんだよ」
反対する議員が立ち上がり怒号が飛び交う展開に…。
検察の不服申し立てを認めれば「えん罪被害者の救済が遅れる」と主張し、政府の案に与党の自民党議員が反発する“異例の事態”となっているのです。
(袴田 巌氏の姉 ひで子さん・93歳)
「どこ行ってきた?どこ行ってきたの?きょうは」
(袴田 巌さん・90歳)
「…」
袴田氏は半世紀近い獄中生活の影響で、いまだに「妄想」の世界に入り込む拘禁症状が続いています。“検察の不服申し立て”について姉・ひで子さんは…。
(姉・ひで子さん)
「抗告は一切やめていただきたい。私たちは58年闘ってきましたよ。58年といえば(事件当時は)33歳のときで、再審開始になって無罪が確定したときは91歳になっていました。長いですね。えん罪被害者はたくさんいるの。その人たちも本当に苦しんでいるの。だから、その人たちのことを考えて抗告は禁止するべきだと思っている」
3月には自民党の会議にも出席したひで子さん。全国を飛び回りえん罪被害者の早期救済のため「検察の抗告を禁止するべき」と訴えています。
(姉・ひで子さん)
「巌だけが助かればいいという問題ではないのよ。再審法改正は不備があるんだから、不備を直してもらえばいい。そういうもんですよ。人間がつくった法律ですよ。人間が直さなくて誰が直すの」
一方、元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏は「抗告の全面禁止」には慎重な考えをもっています。
(元東京地検特捜部副部長 若狭 勝 弁護士)
「検察がループのようなかたちで何度も何度も不服を申し立てることができることは改善しなければいけないと思っている。しかし、この再審請求というのは、その前に最初の裁判において、裁判官が合計で11人ぐらいは関与していて有罪と認定したわけですよね。“一回ぐらいは不服申し立てを認める制度を設けた方がいい”と私自身は思っている」
つまり、地裁が再審を認めた場合、その判断が正しいか、1回はチェックできる制度があってもいいのではと話します。
そして、紛糾する自民党の会議については“冷静な議論”を呼びかけます。
(元東京地検特捜部副部長 若狭 勝 弁護士)
「国会議員の人たちは一面では気持ちはわかるが、もう一面では確定判決の重み。いかにも自分たちの言うことを聞かない法務省に問題があると、大きな声をあげるなどしてやることが冷静な日本の刑事裁判システムを構築していく上において、必ずしもいい影響を与えるものではないと思います」
自民党内で紛糾する再審制度の見直しを巡る議論。
7日の会議でまとまらない場合は、今国会での法案提出が難しくなる中、議論の行方はどうなったのでしょうか。
(スタジオ解説)
(徳増 ないる アナウンサー)
そして、きょう7日の自民党内での最新制度見直しの議論は、先ほど午後5時過ぎに終わりましたが、議論はまとまらなかったということなんです。詳しく見ていきます。まず裁判は、このように地方裁判所、高等裁判所を経て最高裁判所、ここで審理されて判決が確定します。その判決に不服があり、取り消しなどを求めて再び審理を行うためには、こちらの再審請求審、ここでもう一度審理するかどうかを決めます。ここで裁判のやり直しが決まって初めて再審が始まります。争点となっているのは検察の抗告、それはこの再審請求審に関する部分です。そして皆さんも記憶に新しいと思います。袴田巌さんのケースでは、2014年に静岡地裁で最新開始の決定が出ました。この時、すでに袴田さんは78歳でした。しかし検察が抗告をしたため、東京高裁で審理が続くなどして、実際に再審が始まったのは9年後の2023年でした。とても時間がかかったんです。自民党内からは、再審を認めるかどうかの審理は、審理に時間がかかりすぎて、えん罪被害者の救済が遅れてしまうという声が上がっています。津川さん、この検察の抗告についてはどう見ますか?
(レギュラーコメンテーター 津川 祥吾 氏)
検察側は、再審が始まるのであれば、その中で主張すればいいので、このタイミングでの抗告は私はいらないと思います。
(徳増 ないる アナウンサー)
そして、きょうの会議で、法務省側が示したのは、検察の抗告を原則禁止するという修正案でした。ただ、法務省が示した修正案は、法律の柱である本則ではなく、付則に記載されたということなんです。本則に付随する付則に加えられていまして、検察の抗告が温存されるような内容とも読み取れることから、議員らが反発しているんです。反対する議員からは、付則では実効性が担保されないと主張しています。辻川さん、当初の案よりも法務省側が踏み込んだ印象ですが、この議論はまとまりませんでした。
(レギュラーコメンテーター 津川 祥吾 氏)
まず、付則だとダメだというのは政治的にはよくあるんですが、私は必ずしもそうは思わないです。付則でも十分に法的拘束力はありますので、ここはそんなに争う部分ではないと思います。気になるのは原則禁止というところですね。例外があるのかなと…。私は別にこれは禁止でいいと思うので、例外があるんだとしたら、そこを法務省は示すべきだと思います。ただ大事なところは、裁判官も人ですから間違えることはあると思います。ですから、最新のルールはしっかりと整備すべき。ただ、その前に一審二審あるいは最高裁というものがあって、そこでしっかりと審理をして、えん罪など起こらないような裁判を行うということが、まず大前提だと思いますので、そこをしっかりと前提として強調しておきたいなと思います。
(徳増 ないる アナウンサー)
坂口さんは、この再審の見直しについてはどう見ていますか?
(コメンテーター 経営コンサルタント 坂口 孝則 氏)
日本という国は、えん罪がこれだけ多発して、99%が有罪になる国ですから…、私も今おっしゃったみたいに、抗告というのは基本的に禁止でいいと思います。ただ、本当に原則ってつけたいんだったら、例えば仮に再審請求の時に、弁護側が出してきた証拠が明らかにねつ造とか、明らかに、これうそでしょ…という場合は、本当に例外的にあってもいいと思うんですが、抗告、今必要かな?と思います。あと、ちょっと話進んじゃうみたいなんですが、あえて言うと、検察があれだけの捜査情報を持ってるわけですから、全てじゃなかったにしても、弁護側とのもうちょっと情報の共有化や議論があってもいいのかなという気はしますけどね。
(レギュラーコメンテーター 津川 祥吾 氏)
まさに今回の見直しの議論の中でも、証拠の開示というのが一つポイントになってますよね。
(コメンテーター 経営コンサルタント 坂口 孝則 氏)
そうですよね。だから、今どうしても検察側が情報量多いというのは仕方ない構図だと思います。100%かどうかは別として、弁護側と検察側も真実を明らかにするというのが
両者の願いでしょうから、もうちょっと情報をオープンにした方がクリーンになる気はしますけどね。
(徳増 ないる アナウンサー)
情報の開示ですね。袴田巌さんの無罪をきっかけに見直しが議論されている最新制度ですが、えん罪被害者の早期救済につながるものになるのか…私たちもこの議論をしっかり見ていく必要がありそうです。