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世界の声/Novel by 優緋

世界の声

8,923 character(s)17 mins

"後ろから聞こえる、涙が溢れる音には気づかないフリをした"

こんにちは。もしくは、初めまして。
前回の初投稿に評価・ブクマを頂きありがとうございます!感激・・・!

というわけで、調子乗って二作目作ってみました。
銀さんとお登勢さんの雪の日の出会いから、万事屋をやると決めるまでのお話。

銀さんって、なんであの墓場にいたんだろう(お化け怖いのにね)
銀さんって、いつ髪切ったの?(四天王編と死神編の回想で髪の長さ違う・・・!)

そんな個人的な疑問に、個人的に答えてみました。

今回はお登勢さん目線ですが、
皆さんの評価で元気出たので銀さん目線書きました!
「紅玉の向こう側」novel/5808590

相変わらず、無駄に長くなってしまいましたが、
よかったら読んでください。

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雪が降り積もる中、私は拾いものをした。

墓地から家に向かって歩きながら、お登勢は白い息を吐きだした。ちらりと後ろに目をやると、黙々と付いてくる男が一人。雪と同じような頭をした、浪人風の男と出会ったのは、つい先程のことだ。

夫の墓参り用に供えたまんじゅうを食べた挙句、死んだ夫と勝手に約束を取り付け、見ず知らずの自分を守ると言ってきた男。この歌舞伎町で、それなりに経験豊富な人生を送っていると自負しているお登勢だが、こんな出会いはそうそうないだろうと可笑しくなった。単純に興味が湧いたのかもしれない。ついて来な、と、ひとこと言って歩きだす。
雪を踏みしめる音が、ふたり分になった。

夫の墓地から自宅までそう遠くはないが、決して近くはない。その間、男は一言も喋らなかった。だが、嫌な気はしない。雪が降ったせいで、街の音が吸収され、いつもは騒がしいこの街も、静けさに包まれていた。


「さ、着いたよ」
自宅兼店の前でお登勢は足を止める。すると、男もお登勢の一歩後ろで立ち止まり、軽く看板を見上げつぶやく。
「スナック・・・お登勢・・・?」
「そうさ、ここが私の家さね。夜には店も出してるんだがね。この時間は無人だよ」
そう言って鍵を開け、中に入る。だが、男はその場から動かない。
俯き、前髪で隠れて表情は見えないが、どこか戸惑っているようで、なかに足を踏み入れなかった。
「なにやってんだい。早く入らないと家の中が冷え切っちまうじゃないか。私を凍えさせる気かい」
そう言ってやると、男は家の中にはいってきた。
とりあえずその冷え切った体を温めるのと、薄汚れた服を何とかしなくてはならない。
そのへんに座って待っておくように言い、湯を沸かして代わりの着替えを用意するため、お登勢は奥に入る。

寝室のタンスの奥の奥にしまわれていた亡き夫の着物に手を触れる。
夫が死んでから、その服を捨てるに捨てられず、だからといって目の届くところにおいておくのもなんだか辛く、結局奥にしまいこんでいた。その着物を目にするのもひどく久しぶりだ。だが、不思議と何の抵抗もなかった。
どこの馬の骨ともしれない男を拾い、家に上げただけでなく、服まで貸すことを夫は何と言うだろう。怒るだろうか。そこまで考えてお登勢は笑った。自分の夫はそこまで心は狭くなかった。なにせ、自分用に供えられたまんじゅうを食われたのだ。今更服を貸すくらいで怒らないだろう。

店に戻ると、男は先ほどと同じ場所から一歩も動かず立っていた。なにやってんだい、とため息をつくが、とりあえずは風呂だ。いつからあそこにいたのか知らないが、かなり体が冷え切っている。
風呂に入るよう言うと、素直に入った。おそらく本当はかなり寒かったのだろう。
男が風呂に入っているあいだに、それまで着ていた服を手に取る。 
ずっと自分よりも後ろを歩いていたせいで気づかなかったが、所々に血がついている。すでに乾いてしまっていて黒ずんでいるが、紛れもなくこれは血だ。予想はしていたが、どうやらただの行き倒れ、というわけではないようだ。

風呂から上がり、夫の服を着た男が店に戻ってきた。
よく見るとくるくる跳ねる髪からポタポタと水がたれていた。

「あんたねぇ、ガキじゃなんだから、頭くらいしっかりふいてきな」
呆れながら代わりにガシガシふくと、髪の隙間から紅い瞳と目があった。
お登勢がおや、という顔をすると、男はさっと離れて顔を伏せるように俯いた。
最初は頭も今以上にボサボサで、服も汚れていたため分からなかったが、案外若く、まだ少年の面影が残ることがわかる。それに意外と顔も整っており、なにより先ほど一瞬見えた紅い瞳がひどく綺麗だった。

「あんた、名前は何ていうんだい」
「・・・・・・」

だんまりかい。
お登勢は今日で何度目になるかわからないため息をつく。
カウンターに置いてあったタバコに手を伸ばし、火を付ける。

「言いたくないってんなら、無理には聞かないけどね。ただ、そうなるとあんたをなんて呼べばいいのか困るじゃないか」
「・・・・・・わりぃ」
「謝んじゃないよ。そうさね、じゃあこっちの好きに呼ばせてもらうよ」

お登勢は3秒だけ思案したあと、男に呼びかける。

「クソガキってのはどうだい」
「はぁぁ!?」

初めてと言っていいくらいの素直な反応に、お登勢はニヤリとする。
「なんだい、不服かい?嫌なら名前教えるんだね」
「・・・このクソババァ」
「なんか言ったかい!?」
「・・・別に」


こうして、真っ白な頭のクソガキとの奇妙な関係が始まった。

Comments

  • 舞瀾
    July 13, 2024
  • Yuzu
    January 14, 2024
  • lyla
    February 19, 2016
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