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■ヴァンガード誕生秘話 ― あの現場のリアル・第六回「ヤベーー!!」

「ヤベーー!!」

ヴァンガードのルールが出来上がり、そのルールに準拠した原作漫画の第一話を、伊藤彰氏が描きあげました。

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読み終えた途端、僕は「ヤベーー!!」と叫びましたね。その出来の良さに。

この第一話は、その後続く“ヴァンガード”の根源(オリジン)になります。

アニメと漫画を完全に同調させて作り続けることは難しい(原作漫画がアニメより3か月ぐらい早く進んでないとアニメは作れない)ため、第一話はアニメと漫画は同じ物語にできますが、その後はある程度の打ち合わせで作っていくしかありません。

しかし逆に言うと、第一話は原作漫画通りのアニメが作れます。

だからこその「原作」です。

その原作第一話を読んだ僕の感想が、「ヤベーー!!」でした。

これは、良い!

まず、主人公より先に「先導者」たる櫂トシキが登場。
周囲の弱さに醒めつつも、強い相手を求めている……と示唆。オイオイ、クールなキャラじゃんよ。

彼の期待する相手が主人公なのかな?と予感させつつ、満を持して主人公、先導アイチが登場。

あれっ?櫂トシキのライバルになるにしては弱々しいぞ…?と違和感を持たせつつ、

「往年のレアカード“ブラスターブレード”の持ち主」

という強力なフックを見せる。これは、うまい。

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授業中にカードを見てニヤニヤと妄想にふけるという、

「当時の小中学生あるある」

というシーンで感情移入させ、読者に対し、「自分はこの、アイチの立ち位置だ」と自然に意識させています。

そしてブラスターブレードが奪われ(モリカワァ……)、これは取り返さねば!どうなるのか?! と読者をグイグイ引っ張っていく。

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「カードを取り戻す」
という強いモチベーションのまま、流れるようにルールの説明に入るのですが……

ここで大発明!

「イメージしろ」
の登場です!!

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カードゲームをアニメ化する際、モンスターが登場するシステムをどう設定するかは、重要なファクターですよね。

ソリットビジョンなのか、ルミナイズなのか?あるいはゲートオープン界放!なのか?

ヴァンガードは最もシンプルにして汎用性の高い、

「イメージしたからそこにモンスターが居る!」

という設定を提出しました!

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これはコロンブスの卵!
特殊な機械は必要ないし、特別な闘技場でなければモンスターがでてこない、ということもありません。

教室で、街角で、どこでファイトしてもイメージのモンスター(ユニット)がでてきます。

弱点としては、観客の多い大会試合などで、

「観客とイメージを共有してるのか?」

とかの細かい突っ込みは入りますし、アニメでは特殊なシステムが導入されたりしてましたが……

僕なりの解釈では、

「ヴァンガードの世界ではファイターのイメージ力が強いので、観客にもイメージが伝播する。また、観客も現実の地球人よりイメージ共有能力が高い。」

という事でエエんじゃないかな?と思います。

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必要以上に悪ぶる櫂くん。

話が脱線しましたが、それだけ「イメージしろ」は、たった一言でヴァンガードの世界設定のほとんど全てを説明してしまった、とんでもない「発明」と言えるでしょう。

ストーリーの続きですが、途中で、櫂トシキとの因縁もエモく語られ、アイチはしっかりと大事なカードを取り戻します。
カードを奪った森川との関係性も穏やかに修復され、読後感も爽やかです。

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伊藤彰氏の描いた第一話を見て僕は、

「カードゲーム漫画の第一話として、完成の域に達している。」

と判断しました。

これは、イケる。ヴァンガードというプロジェクトは、成功しつつある、と僕は確信しました。

◯木谷社長の仕掛ける数々のプロモーション。

◯中村さんの作ったゲームシステム。

◯期待を上回る、伊藤氏の原作漫画。

◯ニコニコ動画でのミルキィホームズのヒットにより、「ブシロードのアニメはニコニコで見る」という文化が根づいていたこと。

◯ニコニコで遊戯王MADが大流行して、遊戯王やTCGそのものが再評価されつつあったこと。

これらの要素を鑑みると、ヴァンガードがヒットするために必要なエレメントは揃ってきている……と僕は実感していた……

の、ですが!

しまむー「池っち店長、見ていただきたいものがあるので、すぐ本社に来て頂けませんか?」

呼ばれると何を置いてもブシロードにカッ飛んでいく僕。

しまむーがおもむろにスタンドアップさせたのは、

「ヴァンガードアニメの第一回PV(プロモーション・ビデオ)」

でした。

「ヤベーーーーーー!!」

15秒かそこらのPVを見て、僕は悲鳴を上げました。

「ね?ヤバいでしょう?!」

同意を求めるしまむーに対し、首がもげるほどの激しい同意を示す僕。

今回の「ヤベー!!」は、漫画の時とは真逆の意味でした。

PVの内容はですね……

適当に描かれた暗い荒野に、止め絵のドラゴニック・オーバーロードが立っています。
対峙するブラスターブレードがアップになって剣を振り上げ、そのまま跳躍!

……止め絵のままの小さなブラスターブレードが、ドラゴニック・オーバーロードにスーーッと平行移動して近づいていきます。

でもってタイトル表示。“カードファイト!ヴァンガード”。

これは……これはヤバい。全然迫力がない。というか作画レベルもとてもじゃないが、良いとは言えない。

というか、ブラスターブレードの顔が、

「誰これ?!」

って感じ。

あかん。これは…本当に、あかん……
僕は張り詰めていた空気が抜けていくのを感じました。

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こんな感じで消えそうになりました。

大きなプロジェクトというものは、各領分の一人ひとりが頑張って、才能と努力を発揮しても、たった一箇所の歯車が狂っただけで、全部崩壊することがある。

これはマジで、怖いことです。

ヴァンガードより後のTCGの話ですが、「銀鍵のアルカディアトライブ」というTCGがありまして……

カードイラスト、世界観やストーリー、そしてプロモーションにも力が入っていて、多分ゲームシステムも良かったんですが……

それを動かす鍵となる、アプリがその……「動かなかった」んです。(正確には仕様の問題で色々あるんですが、簡単に言うと動かなかった。)

“銀鍵”なのに、鍵そのものがブッ壊れてたって感じ。

99%のスタッフが頑張って、そこには目を見開くような才能も埋もれてて、ちゃんとしたコンテンツとして世に出ていれば、世界を席巻していたかも知れない。
ストーリーもKADOKAWA系列のすごく有名な作家が関わっていたらしくて、多分並のTCGより物語性もしっかりしていたと思うんですが。

アプリの開発に問題があった。その一点だけで、全てが瓦解し、何億と掛かった予算が水の泡に。(しかも、多分一番お金の掛かったのもアプリの開発)

お金だけじゃない。関わった人々の努力と才能、そして何より「この作品を出したい!」という熱意が、全て埋もれてしまった。

たった一箇所、アプリに関わった多分ごく少数の人間のミス、あるいは実力不足のせいで。

そういう事があるのが、多数の人間の関わる大型プロジェクトの恐ろしいところです。

ヴァンガードのPVを見た時、僕は今まで積み上げてきた全てが、バラバラになりかねない恐怖を感じました。

いや待て、落ち着け。これはきっと、「何となくイメージを共有するために作られた、プロトタイプの映像」に違いない。このまま世に出すものではなかろうに……

そうだ。これはきっと、内部資料であって、世の中に公開するPVではないに違いない。

しまむー「このままでは、これがヴァンガードの最初のPVとして、世に出ます。」

ぐはぁ!!!!

僕「だだだダメだーーッッ!! こんなもんが放映されて、最初のヴァンガードのイメージになっちゃったら、誰もアニメに期待してくれなくなるじゃねーか!下手すりゃ笑いモンだぞ!良くてネットミーム化!」

しまむー「僕もそう思います。それで池っち店長に来てもらったんですよ。どうすればよいと思います?」

むう、丸投げか!

しかしこれは、本気でなんとかしなければならない案件。

◯木谷社長に、問題を深く理解して頂き、動いて頂く必要がある。
◯アニメ会社には、これを超えるPVを作ってもらう必要がある。

この2点、どう解決すべきか。

僕「……よし、お忙しいだろうが、木谷社長と伊藤彰氏、双方にお越し頂こう。
お二人同席の上で、このPVを見て頂く。
原作者がこのPVを見てどう反応するか。
それによって、危機感が正確に伝わるはずだ。」

直ちにPV視聴会が用意され、私、しまむー、木谷社長と伊藤氏の四人が集まりました。

PVを見た伊藤氏の反応については、ここでは詳しく語りません。
が、我々全員の間で、
「率直に言ってアニメのクオリティ的に、このまま一般公開するのは厳しい内容である」
という意思統一が成されました。

伊藤氏の期待に、木谷社長は万全に応えようとします。

アニメ会社とタフな交渉を行って下さったようです。

勿論、アニメ会社も本当は実力のあるスタジオ。問題のPVは、少ない資料と時間的制約の中から作り出されたもので、スタジオの実力を表したものではありませんでした。

じっくりと打ち合わせの時間が用意され、作り直されたPVは、一気にクオリティアップしたものになりました。アニメスタジオは我々の期待に答えてくださったのです。
僕達は心から安心しました。
(多分、この時点で原作漫画の1話が完成していたのが、資料として良い影響を与えたのでしょう。)

とは言え、僕としまむーが一計を案じなければ、最初のPVが世に出ていた可能性は高く、そうなっていたらどうなっていたことやら。

もしかすると、最初のPVのクオリティをそのまま飲んでいれば、PVのスタッフがそのままテレビアニメを手掛けて、TVアニメそのものが「ヤベー!!」というクオリティになっていたかも知れません!

その危機を回避したのですから、しまむーはプロデューサーとして、早速良い働きをしたと言えるでしょう。
相談された僕も、
「伊藤氏を呼んで、木谷社長にその仮想を聞いて頂く。」
という、結果につながるアイディアを出せて、役立つことが出来ました。

しかしなんですね。

こういうことって、アニメ業界にはよくあることなのかも知れません。
「あのPVで切り込んでいたら、その後あのコンテンツの大ヒットは無かった」
という、軽くホラーな事例って、結構転がってるのかも。

本編は普通に作画クオリティ高いのに、作画崩壊の一部切り抜きで「ダメなアニメ」だと思われてる作品って、リアルに結構あるじゃないですか。

PVって、放映前にそのアニメの格付に関わる部分です。
最初の15秒がダメだったせいで、多くの視聴者に「見る前に切られる」事がある。

ヤバいPVを出してしまって、最初の評価で爆死してしまった作品って、結構あるんでしょうね……

おお、怖い怖い。

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さて今回。地味に見えて、もしかしたらヴァンガードにとって大きな危機になっていたかも知れない問題を解決した我々。

次回、いよいよヴァンガードが世に出ます!

次回!ヴァンガード誕生秘話 ― あの現場のリアル・第七回
「ニコニコとヴァンガード」
ついにアニメ放映!
え?カードの発売はまだかって?そこが木谷社長の計略なんですよ!
ご期待下さい!

Q:伊藤氏とはどのぐらい会ったの?
A:僕と伊藤氏は数回お会いしています。
例えば最初の「面接」の時で一回目。ヴァンガードのタイトルを決める企画合宿(泊りがけ)で2回目、今回の記事のPV鑑賞会、その他、発売前に数回の企画会議で。
ヴァンガード公開後も、イベント会場で数回(当連載第一回のタイトル写真もそう)お会いしています。
ブシロードでの会議の後、伊藤氏のスポーツカーに乗せてもらって帰宅したこともありましたし、僕が「原作者」になった後などは、キャラクターの作り方について、電話で相談を受けたり世間話をしたりしました。
ただ、伊藤氏側には守秘義務があり、ヴァンガードの制作現場のことを何も言えないと思いますから、伊藤氏に質問するのはやめて下さい。
僕に会った事実すら言えないと判断されるかも知れませんから、困らせないでくださいね。
昔の話なので、単に忘れていらっしゃる可能性もあります(笑)何枚か一緒に写っている写真があるし、イベント会場で一緒にいるところは沢山の方に見られていると思いますが。

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コメント

1
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ブラックフレア

伊藤先生に守秘義務のあるようなお話を貴方がリークして本当にいいんですか!?

■ヴァンガード誕生秘話 ― あの現場のリアル・第六回「ヤベーー!!」|池っち店長
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