『神功皇后論』発売記念 小林よしのりインタビュー
第9回「最終的には、わしの想像力!」
(インタビュアー・にしやん)
ー最初からあとがきまで通して読んで、私が凄く感じたのは、やはり先生は、神功皇后論から建国論まで描くことが、何か大きな力に導かれているような、それが運命づけられているような、そんな印象を強く受けました。
小林「でも田中卓氏から建国論を描くべきだ、と言われてもね、どうやってそのレベルにまでもっていって描くのか、というところがあったからね。
古代史の学者や研究者の本を読むともう本当に難しくて、更に考古学なんかも入ってくるでしょう?
例えば古代に使われたとされる木材一つをとっても、その木材が何年頃のものなのか、鑑定方法で違ってきたりする。
年輪をどう計算するのかとか、いやこれはリサイクルされてるからその年代は違うとか、論争がまだあるからね。
そんなところから勉強しなきゃいけないのかってなると、ちょっとウンザリ(笑)、みたいになってしまうけれども。
ー確かに果てしのない感じがしますね(笑)
小林「今描いているなかで、神武天皇の最大のライバルだったとされる、長髄彦(ナガスネヒコ)いう人物がいるのだけれど、ナガスネヒコって、長い脛と書くんだ。足が長かったということだよね。でも昔は足が長いのが格好悪いという価値観だったから、この名前は蔑称なんだよね。
ヤマト政権にまつろわぬ土蜘蛛もそうでしょう?土蜘蛛って手足が長いし、その人達が住居にしている洞窟から這い出してくる、つまりそういう所に住んでいるのは野蛮人だから、それを天皇家の人間が退治しにいくわけで。
だから長髄彦(ナガスネヒコ)も要するに蛮族で、では神武天皇が戦ったのは一体何者なのか?ってなるわけなんだ。
色んな説がある中で、わしはどれを使おうかと、そういうことを考えなきゃいけないんだ。
だから、学者達が研究している古代の事を、わしは一生懸命勉強をして、日本史の全体像を獲得しようとしているんだよ。
邪馬台国が北九州なのか、あるいは奈良の纏向(まきむく)遺跡なのか、この論争はまだ続いているよね。そして田中卓氏は北九説州派なんだ。
田中氏は、わしが福岡出身だから地元愛でそっち(北九州説)をやってくれるんじゃないかと思っているわけね(笑)
そうやって考古学まで勉強をしないといけないから、これは堪らんなと思ったんだけど、本を読んでいると、むちゃくちゃ難しいんだけど、でも何か面白いなって思ってしまうんだよ!
結局色んな学者の説なんかも全部踏まえた上で、あくまでもわしの想像力からいくと、これはこうだなっていう風に最終的には描いていくことになるんだけどね。」
バックナンバー
第1回「古代史から現れたフェミニズム」
第2回「『日本書紀』にも捏造がある!」
第3回「漫画だから描ける、古代人の感覚」
第4回「コンプラ気にして古代が描けるか!」
第5回「『神功皇后論』に仕掛けた罠!」
第6回「神功皇后の顔・作画秘話!」
第7回「古来、日本は輸入したものにそのまま全て侵されてはいない」
第8回「本当に古代史って面白い!」
確かに最新の古代史学ではどこまでわかっているかというところには興味が湧きます。
古代史界隈には「皇統は例外なく男系」みたいなトンデモ説・デマ説もいっぱい出回っていたりもするので、誰のどの説が信用できるのかを見極めて紹介してくれるだけでも本当にありがたいものです。
でも、それだけじゃまだ足りない、いまひとつ面白くない。
全く当たり前のことなのですが、やっぱり最終的に、よしりんならではの想像力が加わって初めてこの作品は生きてくるのだということを、改めて認識する次第です。
神功皇后論インタビューシリーズは、次回で完結!
どうぞお楽しみに!!