新築から「和室」が急速に消えている——工務店さんと畳屋さんに聞いた日本の住まいの大変革
DIYで古い家をいじっていると、和室に出くわす機会が多い。畳を剥がし、床を張り替える——そういう作業をしながら、ふと思った。「そういえば最近の新築って、和室がない家が多いよな」。工務店の棟梁と、付き合いのある畳屋さんに話を聞いてみると、二人の言葉が重なりながら、日本の住まいの大きな変化が見えてきた。
■ 畳の需要はこの20年で3分の1に
「正直、厳しいですよ」——畳屋さんの第一声がそれだった。
畳の表面に使うい草製の「畳表」の国内需要量は、ここ20年で3分の1以下まで落ち込んでいる。山梨県では15年前に125店あった畳店が現在55店に半減しており、全国的に廃業が相次いでいる。後継者不足も深刻で、「周りの畳店が次々と閉じていく」と畳屋さんは言った。和室が減るということは、畳屋の仕事がなくなるということでもある。
■ 工務店から見た「和室離れ」の本当の理由
棟梁に「なぜ和室が減っているのか」と聞くと、「理由が一つじゃないんですよ」という答えが返ってきた。
まず住宅価格の高騰だ。資材費や人件費が上がる中で、家の広さを削らざるを得ないケースが増えており、「最初に犠牲になるのは和室」と棟梁は言う。次にライフスタイルの変化。床に座って食事をし、布団を敷いて寝るという習慣が薄れ、椅子・テーブル・ベッド中心の洋風の暮らしが主流になってきた。さらに一世帯あたりの人数が減り、来客を泊める「客間」としての和室の役割も小さくなってきた。
■ 畳屋さんが語る「もう一つの理由」
畳屋さんが「これも大きいんですよ」と教えてくれたのが、メンテナンスの問題だ。
天然い草の畳は3〜4年で裏返し、6〜7年で表替え、15年以上で新調が必要になる。フローリングに比べると手間もコストもかかる。「若い世代に『畳は管理が大変』というイメージが定着してしまっている」と畳屋さんは言った。実際、畳のある家で不便だったこととして「畳が傷みやすい」を挙げる人が約半数にのぼるというデータもある。かつてイグサの香りを「懐かしい」と感じた世代が減り、「臭い」と感じる若い世代が増えているという現実も、畳屋さんには切実だ。
■ 意外な逆転現象——若い世代ほど畳を選ぶ
ところが、ここで棟梁から意外な話が出てきた。「全体では和室が減っているんですが、実は若い世代ほど畳を取り入れる割合が高いんですよ」。
住環境研究所の調査によると、和室や畳スペースを設けた建て主の割合は20代が76%、30代が75.6%、40代が70.6%と、若い世代ほど高い。「懐かしいから」ではなく、「子供の遊び場」「転んでも安心」「ごろ寝できる」という実用的な理由で畳を求める若い親世代が増えているという。ただし昔ながらの「6畳の和室」ではなく、リビングの一角に設ける小さな「畳コーナー」や「小上がり」というスタイルが主流になってきた。
■ 畳屋さんが生き残るための変化
「い草にこだわり続けるだけでは難しい」と畳屋さんは言った。最近は和紙や樹脂でできた畳が登場しており、ダニ・カビが発生しにくく、液体をこぼしても染みにならない。メンテナンスの手間が大幅に減った新素材の畳は、「畳が苦手だった人」を取り込む新しい可能性として注目されている。飲食店や老人ホームへの法人向け営業に活路を見出す畳屋も増えているという。
■ 「和室」は消えるのではなく、変わっていく
「和室がなくなるとは思っていないんですよ。形が変わるんだと思う」——棟梁の言葉が印象に残った。
畳屋さんも同じことを言っていた。「昔の6畳の和室という形は減っても、畳という素材への需要は残る。むしろ新しい素材や使い方で、もう一度見直されていくと思いたい」。千数百年続いてきた畳文化が、今まさに変わり目を迎えている。
消えていくのではなく、時代に合わせて姿を変えながら生き残ろうとしている——そんな話だった。
和室や畳について、ご意見やご経験談をぜひコメント欄で教えてください。