大阪の書店員がおすすめ本について語り合う「書店バックヤードから」。今回は「詩」をテーマに据えました。詩の魅力に触れる本のほか、王道を行く詩集、入手が難しい自費出版の詩集まで、紡がれた言葉の美しさ、素晴らしさに触れる本がそろいました。(司会は文化部・渡部圭介)
MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店・持田碧さん選
・ヘンリー・スコット・ホランド著『さよならのあとで』(夏葉社)
持田 メインの選書は『詩のこころを読む』です。子供のころ母親に教えられた本で、詩の入門書といいますか。著者がいいな、と思った詩を取り上げています。一度読んだら忘れられないのが、国鉄社員だった方の「便所掃除」という詩。駅のトイレ掃除を詠んでいます。
渡部 タイトルを聞いただけで気になる。
持田 人のすることかよ、という汚され方をして、唇をかみしめて掃除していく動作を、ひとつひとつ書いていく。きれいになっていく過程と最後の結びが印象的でしたが、トイレ掃除が詩になるというのは衝撃でした。詩は遠くにあるのではなく、身近なものだとも感じます。
中川 詩を読んでいると、身近なことをこうやって言葉にできたらいいよな、と思うよね。
渡部 持田さんの選書には宮沢賢治の名があります。
持田 宮沢賢治って書店でも詩人の棚にあったり、近代の文豪の棚にあったり。スケールが大きすぎて浮いている感じが好きですが、最近近しい人を亡くしまして。賢治が妹を亡くしたときに詠んだ「永訣(えいけつ)の朝」という詩を読み返して、残された賢治の心とシンクロしたというか。改めて、すごい人だなと感じました。
紀伊国屋書店アリオ鳳店店長・此川洋平さん選
・WRITES PUBLISHING編『毎日読みたい 365日の広告コピー』(ライツ社)
・長山靖生著『恥ずかしながら、詩歌が好きです 近現代詩を味わい、学ぶ』(光文社新書)
此川 あえて王道から外れ、『毎日読みたい 365日の広告コピー』(WRITES PUBLISHING編/ライツ社)を選びました。広告コピーって新聞やテレビで触れても、パッと見て終わってしまいがち。いい言葉がいっぱいあるのにもったいない、ということでまとめられた本です。日めくりカレンダーのように読めるようになっています。
渡部 此川さんのお気に入りの一文は。
此川 いろいろありますが「やらない理由を探すのがうまくなると、成長は止まる。」は響きました。リクルートキャリアのコピーです。
持田 此川さんらしい。
此川 俳句にも「五七五」に縛られない、自由律があります。言葉遊びですが、言葉を芸術的にするという点で、広告コピーも詩と捉えることができると思いました。
渡部 そういう此川さんだからこそ、好きな詩人を聞いてみたい。
此川 ほかの2冊にあげている『恥ずかしながら、詩歌が好きです』でも取り上げていますが、恥ずかしながら中原中也かな。ああいう詩って、好きですというのが恥ずかしいのですが。
持田 分かります。なんなのでしょうね、この恥ずかしさは…。
スタンダードブックストア・中川和彦さん選
・池田彩乃『発光』
中川 僕はメインに池田彩乃さんが自費出版した『発光』を選びました。ボブ・ディランもいいなあと思いつつ、詩集は小さな出版社の本でもすてきな作品が多い。そういう本から選んでみようと思いました。
此川 詩集は小さな出版社や自費出版も多いジャンル。書店の中でも、棚の様子がほかとは異なりますよね。
渡部 どういった詩集なのでしょう。
中川 元はちょっとだけ刷って、貸し出す「貸出詩集」として始めたそう。反応が良くて4年前に130部だけ刷ったら全部売れて、2019年3月にまた刷ってます。発行日が「発光日」になっているなど、ちょっとしたこだわりも面白い。自分では表現しきれない感覚が言葉になっているのを見るとすごいと思う。解説は歌人の雪舟えまさんです。
渡部 詩のような言葉選びはなかなかまねできないものですが、実は皆さん、詩を詠むのが得意だったりして。
持田 そんなわけないじゃないですか。授業で書かされた程度です。
中川 ほんまに僕、言葉のセンスないから。センスがないから、読むと感動する。
此川 詩ではありませんが、通っていた銭湯で俳句を募集していて。シャカシャカと書いて応募しているうちに、何度か佳作をもらいました。
持田 ええっ!?
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大阪にある本屋さんの書店員たちが集まり、毎月テーマに沿ってそれぞれが本を選び、語り合います。