【JRバス関東】苦境の南房州本線

むかしの光いまいずこ
 南房州線(南房州本線及び洲の崎線を総称)の前身である北倉線は、昭和8年1月20日に関東地方初の省営自動車(全国4番目)として、北倉本線の安房北条(現・館山)〜千倉間、豊房線の潮留橋〜長尾橋間、西岬線の潮留橋〜西岬間が開業した古い歴史を持つ。北倉線開業と同時に、安房館山自動車所(現・館山支店)が開設された。
 現在は、南房州本線(館山駅〜安房神戸〜相の浜〜長尾橋〜安房白浜)と、洲の崎線(館山駅〜西岬〜伊戸〜平砂浦海岸〜千里の風)の2路線で構成される。かつては夏の海水浴輸送、春は花輸送で活気を呈しており、平成初頭までは1時間に1~3本運行されていた。観光客だけでなく、沿線住民の利用も多かった。
 今や館山支店は、高速バスがメインとなっており、「房総なのはな号」と「新宿なのはな号」を合わせて30分間隔で運行されている。東京~館山・千倉間の特急「さざなみ」を廃止に追い込み(現在は朝の上りと夜の下りに、東京~君津間のみ)、千倉乗り入れもなくなった。現在は土休日に新宿~館山間の「新宿さざなみ」が2往復に過ぎず、しかも短い5両編成だ。「房総夏ダイヤ」が設定されていた頃は、「あずさ」が乗り入れていたり、横須賀線直通の快速「青い海」も運行されていた。
 平成初頭の館山駅のJRバス関東のりばは、旧駅舎に隣接して①〜⑤番まであり(ほかに定期観光バスのりば)、2〜3台のバスが同時に出ていく光景は壮観だった。のりばには誘導員の笛の合図でバックして付けていた。
 平成11年3月に駅舎の橋上化に伴い、のりばは館山支店の出入口に移設した。しかし、ここは長続きせず、のりばが半分に縮小されたのち、館山支店敷地の縮小に合わせてコインパーキングとなってしまった。現在、南房州本線と洲の崎線は同じとなり、日東交通の市内線・高速バスのりばの後ろにある。南房州本線と洲の崎線が2台同時に発車する光景は見られなくなった。①番線は「房総なのはな号」「新宿なのはな号」、②番線は臨時(小塚大師行などが使用)、③番線は南房州本線と洲の崎線となっている。日東交通のりばは番号が振られていない。
 JRバス関東発足前後から路線網の縮小が始まり、汐湊線(安房白浜〜安房平磯〜南千倉海岸〜汐湊〜千倉駅)や、南房総定期観光バス「南房号」(館山駅〜南房パラダイス~野島埼灯台~安房白浜~太海フラワーセンター~安房鴨川駅~鴨川シーワールド)などが廃止された。また、かつては定期観光バス「ポピー&ストロベリー号」も季節運行されていた。平成6年6月20日発行の「バスジャパンハンドブック⑱ジェイアールバス関東」に乗車レポートがあり、3台口の運行だった。
 個人的に衝撃的だったのは、平成17年月3月31日限りで千倉線(安房白浜〜白間津~安房平磯〜本千倉〜千倉駅)と豊房線(館山駅〜豊房〜下神余〜長尾橋〜安房白浜)が廃止され、館山日東バス(現・日東交通)に移管されたことだ。同時に外房急行線「くろしお号」(安房白浜〜千倉役場前〜和田浦駅入口〜鴨川シーワールド〜亀田病院)も撤退し、館山日東バスの単独運行となった。
 洲の崎線は館山市の交通政策により、「ショッピングライナー」として、令和2年4月1日に南房パラダイスから「おどや大神宮店」と「渚の駅たてやま」のある相の浜まで延長したが、利用者は極めて少なく、令和6年4月8日の改正で千里の風〜相の浜間が廃止された。同時に、季節運行となっていた「フラワー号」(館山駅〜南房パラダイス〜フラワーパーク〜野島崎灯台〜安房白浜)なども廃止されている。
 「房総なのはな号」の一部は館山駅から先、千倉経由で安房白浜まで運行しているものの、館山駅以遠の利用者は少ない。一時期は館山駅から一般路線への直通便も設定されていたが、バリアフリーに対応していないハイデッカーは短距離の乗降に不便で、東京湾アクアラインの交通渋滞の影響で延着する場合があることから取りやめとなった。「房総なのはな号」の利用者数は、コロナ禍以前の水準に戻っていないのが気がかりだ。
 なお、正面行先表示の「JB」は「RBUS(JRバス)-MINAMIOSYU(南房州本線)」、「JS」は「RBUSJRバス)-UNOSAKI(洲の崎線)」の略だ。
CSC_1486.JPG↑館山駅とバス降車場。橋上駅舎となる前は、向かって右側のきっぷ売場付近にJRバスのりばがあった
DSC_1483.JPG↑「関東省営バス発祥の地」記念碑
CSC_1485.JPG↑のりばのポール。西日本で多くみられる仕様だ。停留所名は「館山」で、「駅」は付かないが、安房白浜行は「駅」が付いている
DSC_1392.JPG↑発車時刻表。減便により、空欄があるのは寂しい
DSC_1391.JPG↑路線図。路線の縮小により、コンパクトとなってしまった
相次ぐ観光施設の閉鎖
 過疎化による沿線人口の減少や少子化の進行、小学校の統廃合に伴うスクールバスの運行、高速道路網の整備による観光客のマイカーへのシフトなどが重なり、利用者の減少が続き、厳しい路線環境となっている。
 5年前の4月1日現在の住民基本台帳から人口を比較すると、館山市は令和3年が45,447人に対して令和8年は6.4%減の42,537人、南房総市は令和3年が36,719人に対して令和8年は9.8%減の33,117人と、僅か5年間だけでも大幅に減少している。特に南房総市は、県の過疎地域に指定され、消滅可能性自治体に名を連ねている。房総半島では求人の職種が限られ、賃金水準が低いこともあり(千葉県は東京都に比べて最低賃金が安い)、若者は進学を機に都会へ出てしまい、15~64歳の生産年齢人口が少ない。国や県の出先機関に勤務する公務員、千葉銀行の正社員、JR東日本の駅員、JRバス関東の運転士は転勤族で、ずっと館山市内に勤務しているわけではない。JR東日本は館山運転区と館山保線区の廃止で、就労人数が減少している。
 南房総は観光地が点在しているので、マイカーで回る方が便利だ。「房総なのはな号」は宿泊施設の近くに停留所を設けているが、バス利用は少ない。数年前に家族で安房白浜駅前の南国ホテルへ宿泊したが、高速バスを利用したのはわれわれだけだった。館山駅周辺の宿泊施設では送迎を行なっている。
 観光客に依存し過ぎると、季節や天候に左右されやすいリスクがある。宿泊施設を予約しているならともかく、大雨や台風の日は目的地を変更してしまう。
 「館山市統計書」から観光客入込状況をみると、令和元年は195万4,000人だったが、令和5年は172万2,000人と減少している。
 JRバスのエリア内にあった、安房自然村、白浜フラワーパーク、館山ファミリーパーク、南房パラダイスなどは閉鎖されてしまい、停留所名の変更を余儀なくされた。現在、安房自然村→布良崎神社、フラワーパーク→白浜の屏風岩、ファミリーパーク前→布沼大石弁天、南房パラダイス→花の道藤原、いこいの村→千里の風に改称されている。フラワーパーク停留所にあった、ユニークなバス待合所も取り壊されてしまった。
 国道127号線のロードサイド店舗に人が流れ、JR内房線との乗り換え拠点だった館山駅前は人通りが減っている。かつてはJRバスが発着していた千倉駅周辺も閑散としている。
 安房白浜駅の向かい側には、海水浴向けの用具を販売している雑貨屋があった。家から持ってくるのを忘れても、この店で買えば揃うので便利だった。現在は解体され、空き地となっている。
数字で見る南房州本線
 「館山市統計書」から南房州本線の1日平均乗車人員を比較すると、平成15年度は351人、平成25年度は310人、令和5年度は227人と落ち込み幅が大きく、最近では200人前後に減少していると思われる。現在、南房州本線は地域間幹線系統確保維持費国庫補助金及び千葉県の地域公共交通確保維持事業による補助を受けている。
 令和7年度南房総・館山地域公共交通活性化協議会(令和8年1月26日開催)の資料によると、令和7年度(令和6年10月1日~令和7年9月30日)の輸送人員は7万2,629人(前年度7万5,159人)、経常収支は4,292万9,897円の赤字(同5,821万105円の赤字)、収支率は50.0%(同36.7%)、平均乗車密度は3.7人(同3.5人)、補助金額は1,156万1,000円(同869万円)と、利用者は減少しているものの、収支は改善した。その要因として、同社では運行の見直しによる増収(令和7年4月1日に運賃改定を実施)と、動力費などの減少による経費削減を挙げている。
 千葉県が策定した令和8年度地域幹線系統系統確保維持計画によると、同事業の目的・必要性として、▽館山駅や安房白浜駅等交通結節点へのアクセス▽館山駅周辺の病院等医療機関への通院▽県立館山運動公園へのアクセス▽房南学園及び安房特別支援学校生徒・児童の通学▽宿泊施設や寺社仏閣等への観光アクセス▽その他、通勤や各高校への通学等――を挙げている。南房州本線に対する令和7年度の県補助額は1,203万3,000円で、補助を受けている29系統のうち、2番目に補助額が多い。
組織も縮小
 昭和40年代前半に建てられたと思われる、3階建ての館山支店は解体された。道路を挟んで隣にあった日東交通本社ビル(解体済)ともども、バス黄金時代を象徴する立派な建物だった。令和5年3月31日限りで認証整備工場も廃止された。
 令和5年10月31日をもって館山駅前の窓口も廃止された。定期券はスマホ発売のみとなり、回数券の発売も終了した。高速バスの乗車券は、待合室の自動券売機で発売している。
 平成17年11月1日の安房白浜営業所廃止後も、ジェイアールバステックの委託で「つばめの窓口」を営業していたが、令和5年9月25日をもって廃止された。レンタサイクルも終了となった。窓口で「房総なのはな号」の乗車券を発行してもらったのが懐かしい。安房白浜駅に自動券売機は設置されていない。待合室は解放され、トイレや自動販売機が使用できる。
DSC_1425.JPG↑安房白浜駅。左に「南総里見号」、右側に南房州本線が収まった
DSC_1420.JPG↑「つばめの窓口」跡
DSC_1466.JPG↑安房白浜で待機中の南房州本線。車両は川崎鶴見臨港バスから移籍のいすゞPKG-LV234L2

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