娘の不登校は本人の気質のせいなのか。
夏実さん(仮名)は2学期から、福岡市内の区をまたいで別の中学校に転校しました。私が運営する塾はその転校先の学校に近く、転校する直前の夏休みから塾に通うようになりました。だから、新しい学校に通い始める前に、転校先の子たちと仲良くなることができました。
2学期に入って行われた面談で、お母さんは本人の隣で泣きながら話してくれました。
「先生、この子は1年生の2学期から学校に行けなくなって。きっかけはクラス内のさりげない仲間外れや小さな嫌がらせだったんです。この子自身が内弁慶で、人前ではもじもじしてしまうのが良くなかったんでしょう。それに、自分のことを置いて、人の気持ちを察知しすぎるところがある。だから、苦しくなって行けなくなったんだと思います」
「でも、今は1年間も学校に行っていなかったのが嘘みたいに楽しそうに学校に行っているんです。先生の塾に先に行っていたおかげでクラスになじむのもすごくスムーズでした。私は彼女の性格だから仕方ないとどこかで思っていたんですけど、これは本人のせいにしてしまっていたんですね。そうじゃなくて環境でした。環境が変われば、彼女は変わりました」
お母さんが泣きながら話しているのに、夏実さんはそれをちょっとめんどくさそうに聞いています。そして、めんどくさそうな顔のまま、お母さんが涙でも鼻水でも好きに拭けるようにポケットティッシュを左手で手渡します。
子供のことで本人よりも揺さぶられてしまう親は多くて、それが続くと子供は夏実さんのように親を「またか」と冷静に見るようになります(きっとそうなるまでには、親が動くたびに自分自身も揺さぶられて、しんどい時期もあったと思うのですが)。
さっきお母さんは大切なことを言っていて、不登校は本人の気質のせいにされがちですが、環境やタイミングによっては誰でもそうなる可能性があるんです。大人が本人の中にばかり原因を探ることで、かえって動けなくなっている子供が今日もいて、そういう子たちに別の仕方のアプローチが届くことを祈っています。
これは決して不登校が悪いという話ではありませんよ。そうではなく、不登校を通して「この子はこういう子だから仕方がない」と負の烙印を押されてしまう子供を一人でも減らしたくて、この文章を書きました。
※プライバシー保護のため、事実とは異なるフィクションとして書かれた文章です。
(2022/9/19 西日本新聞)



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