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アーティスト・荒川ナッシュ医、同性婚、代理懐胎で双子の親に。「子どもは無理だと思っていた私たちのところにベビーが」双子誕生で感じた命の喜び

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双子を抱っこする医さん。「死なない住宅」がコンセプトの三鷹天命反転住宅の一部の床は、ざらざら、デコボコしています。歩きにくくはありますが、五感が刺激され身体能力が呼び覚まされる感覚です。

アメリカ・ロサンゼルス在住のパフォーマンスアーティスト、荒川ナッシュ医(あらかわなっしゅ・えい)さん。2024年秋、国立新美術館で開館以来初めてパフォーマンスアーティストとしての個展が開催されたことも話題になりました。荒川ナッシュ医さんは、2023年にアメリカで同性婚をし、2024年に代理懐胎で双子の赤ちゃんを迎えています。たまひよでは「死なない住宅」のコンセプトで建てられた三鷹天命反転住宅に滞在中の医さんにインタビュー。
パートナーとのことや、卵子提供・代理懐胎で赤ちゃんを迎えたことへの思いなどについて聞きました。全2回のインタビューの前編です。

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パートナーとの出会いに、振り返った人生観

医さんが取材を受ける隣で、パートナーのフォレストさんが仕事をしています。フォレストさんは10歳年下だそうです。

――まずはなんとお呼びすればいいでしょうか?

荒川ナッシュ医さん(以下敬称略、医) 私は2023年にパートナーのフォレストと結婚し、家族全員が同じ姓をもちたいという思いから「荒川ナッシュ」という複合姓をつくりました。なので「荒川ナッシュ」か「医(えい)」と呼んでください。

――では、医さんが表現する「パフォーマンスアート」とはどんなものか教えてください。

医 パフォーマンスアートというのは、アーティスト自身の身体を使って表現するアートです。ダンスでも演劇でもなく、テーマやコンセプトに沿ってアイデアを提示するもので、かつて草間彌生さんやオノ・ヨーコさんも行っていました。私の場合は個人ではなく、集団で表現することをテーマにしています。

――小学生のころから絵を描くのが好きだったそうですが、本格的にアートを学び始めたきっかけは?

医 私は高校時代から松任谷由実さんの大ファンで何度もコンサートに行きました。曲も大好きでしたし、ステージの演出にもとても感動して、とくに彼女のステージの照明にすごく刺激されたんです。
照明デザインに興味を持ち、ブロードウェイなら学べるのではと高校卒業後に20歳で渡米しました。ただ当時は、照明デザインを専門的に学べるプログラムがなかなか見つからず、まずはデザインを学ぶためにニューヨークの「スクール・オブ・ビジュアル・アーツ(School of Visual Arts)」に入学しました。

そこから紆余曲折あって結果的に現代美術の道に進み、卒業後から長くニューヨークで活動していましたが、2019年からロサンゼルスに移って活動しています。今の作品にもパフォーマンスやLEDを使った作品があるので、アートを学んだきっかけと現在のアートもつながっています。

――2024年12月に双子の男の子と女の子が家族に加わったとのこと。パートナーのフォレストさんとの出会いや結婚に至るまでのことも教えてください。

医 現代美術のオンラインアーカイブを長年運営していたフォレストとは、仕事がきっかけで出会いました。フォレストと交際が始まったころ私は42歳。私が中学生のときに亡くなった父と同じ年齢になっていて、自分と父親との関係や、父親からどんな影響を受けたか、ということを真剣に考えていた時期でした。

一方フォレストは当時32歳でしたが、かねてから彼自身と親との関係について興味をもち、自己分析をしている人でした。私たちはパートナーになってすぐのころに、そんなふうにお互いの親子関係について話しながら、「子どもをもちたいかどうか」を話すようになりました。

卵子提供・代理懐胎で男女の双子が誕生

三鷹天命反転住宅の和室での双子のミルクタイム。まあるくデザインされた畳と丸い石が特徴です。

――早い段階で子どもをもつことについて考えていたんですね。

医 フォレストは性的マイノリティーとして生きながら、養子縁組や、生殖技術を使って子どもをもつという選択肢に興味をもっていたんです。彼の親も彼のその考え方に寄り添っていて、経済的にも協力してくれるということでした。彼の母親に会ったときに「子育てに興味はある?」と聞かれて驚きました。

私はフォレストに会うまで、子どもをもつという選択肢は考えてもみなかったけれど、ちょうど自分が父の亡くなった年齢になり、新しい世代との絆(きずな)をつくることにすごく興味をもつようになっていました。

家族になることや子どもをもつこと、それについて考えることがとてもすてきな新しい冒険のようにも感じたのです。そこから「家族になるなら名字が同じほうがいいね」と話し合い、2023年に結婚しました。アメリカは2016年から全州で同性婚が認められています。私たちが暮らすカリフォルニア州では、多くの方が同性婚をしています。

――結婚後、子どもをもつプロセスについてはどのように考えましたか?

医 養子縁組か、代理懐胎かという選択肢があると思いますが、2人で考えに考え、最終的に代理懐胎を選ぶことにしました。理由はいくつかありますが、私たちが双子を希望していたこと、そして代理懐胎であれば、赤ちゃんが生まれる瞬間に立ち会い、すぐに子育てに参加できる、といった理由が大きかったです。
双子を希望したのは、フォレストは3人きょうだい、私は2人きょうだいだったので、きょうだいがいたほうが社交性が育つのではと思ったことが大きいです。

私たちは結婚よりだいぶ前の2021年夏ごろから、卵子提供や代理懐胎について情報収集を始めました。日本にゆかりのある方の卵子提供者を紹介するエージェントを選び、100人ほどのプロフィールを見ましたが、その中で唯一「セミオープン・ドネーション」に同意してくれた方がいました。セミオープン・ドネーションとは、子どもが成人になったとき、弁護士を介して卵子提供者にコンタクトをとることができるシステムです。

私たちは子どもが出自を知りたいと思ったときに知ることができるほうがいいと考えていました。幸いその方から卵子提供を受けることができました。

毎日のお世話で、赤ちゃんが生きている喜びを感じた

2人のおむつ替えタイム。医さんとフォレストさんは、息を合わせて双子のお世話をしています。

――出産には立ち会いましたか?

医 出産の時期が近づくころ、私たちは仕事で東京にいたのですが、緊急で帝王切開になると連絡を受け、急きょ飛行機の日程を変更して病院に向かいました。

アメリカでは帝王切開でも立ち会いを許可してくれる病院も多く、代理懐胎を受けてくれた方も「ぜひ立ち会ってほしい」と言ってくださり、出産に立ち会うことができました。お医者さんも「カメラの準備はいい?」と撮影を促してくれて、誕生の瞬間を撮らせてもらいました。
最初の子が生まれて1分後くらいに2人目も生まれて、本当にあっという間のできごと。2人ともすごく大きな声で元気に泣いていました。男女の双子です。代理懐胎を受けてくれた方もにこやかな表情でしたが、双子の妊娠は体に負担が大きいですからとても大変だったと思います。

――誕生後の赤ちゃんたちはしばらく入院しましたか。

医 妊娠33週で誕生した双子たちは、3週間を新生児集中治療室(NICU)で過ごしました。私とフォレストは病院の近くのホテルに滞在して毎日通ったのですが、この3週間は私たちにとって非常に勉強になった期間でした。

赤ちゃんはものすごく小さいし、最初は壊れものを扱うみたいに慎重になったけれど、看護師さんたちが24時間態勢でいてくれて、おむつの替え方や、授乳のしかたなど、いろいろと教えてくれました。NICUにいるときから、カンガルーケアなどたくさん抱っこをしましたが、肌が触れ合うと赤ちゃんがとても安心しているのが伝わってきて、心が温かくなる時間でした。

――どんな幸せを感じましたか?

医 生まれたばかりのころは、おならした、うんちした、ということですら、生きているんだなと感じて喜びを感じました。
双子が生まれた病院では“父親になりました”と書いたシールをもらえるんです。それをフォレストと2人で貼って、エレベーターに乗ったりすると“Congratulations!”と祝福の言葉をかけてもらえて、うれしかったです。

入院中に印象的だったのは、看護師さんにノンバイナリー(※)の人がいて、赤ちゃんを「he」や「she」ではなく「they」と呼んでいたことです。セクシャリティに向き合いながら悩んできた私たちですが、その人のような対応が増えてくれることがとてもうれしかったですし、私たち自身、セクシャリティやジェンダーに固定されない育て方をしたいと考えています。

※性のあり方が男性か女性という性別二元論にとらわれない人のこと

お話/荒川ナッシュ医さん 取材協力/国際交流基金 撮影協力/三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレンケラー 撮影/矢部ひとみ 取材・文/早川奈緒子 編集・構成/仲村教子(entente)、たまひよONLINE編集部

▼続きを読む<関連記事>後編

取材を行ったのは三鷹天命反転住宅。ここは、芸術家の荒川修作と詩人のマドリン・ギンズが設計した集合住宅です。「死なない住宅」というコンセプトの場所に若い生命の1歳の双子たちと生活することに魅力を感じ、医さんファミリーが来日中に滞在していた場所でのインタビューとなりました。
同席していたフォレストさんに医さんとの出会いについて聞くと、「私は知り合う前からアーティストとしての医を知っていて、すてきだな、と思ってた」と話してくれました。

インタビュー後編では、同性カップルとしての子育てのことや、アーティスト活動との両立などの話を聞きます。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

荒川ナッシュ医さん(あらかわなっしゅえい)

PROFILE
1977年福島県生まれ。1998年20歳で渡米し、ニューヨークで21年間、その後はロザンゼルスを拠点に制作活動を行うパフォーマンス・アーティスト。自身の作品制作のほか、ロサンゼルスのArtCenter College of Design大学院アートプログラムにて教授を務めている。2023年に同性婚、2024年に双子が誕生した。

荒川ナッシュ医さんのInstagram

ヴェネチア・ビエンナーレ日本館のInstagram

三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレンケラー

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2026年4月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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