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開発秘話「NHKだけ映らないアンテナ」はこうして生まれた! 掛谷英紀(筑波大学准教授)

NHKだけ映らないアンテナは、今のところ販売には至っていないが、同じ原理でNHKの放送のみを受信できなくするアンテナ線フィルタは2014年7月よりAmazonで販売されている。フィルタの場合、取り外しができるため復元可能な程度の改造に当たる可能性はある。しかし、住人がアクセスできないアンテナ配線中にこのフィルタを埋め込んだ場合、復元不可能な改造と見なせる可能性はある。実際、山口ケーブルテレビジョンでは、NHKの衛星放送のみを受信できなくするカットフィルタを壁内や天井裏の配線中に取り付けることで、NHKの了解のもとBS料金を免除するサービスを行っている。また、2015年6月には、船橋市議の立花孝志氏が、このフィルタを室内配線中に取付けるとともに、このフィルタを絶対に外さないという誓約書を提出の上、NHKとの契約が不要であることを確認するための債務不存在確認訴訟を提訴しており、現在東京地裁にて係争中である。

NHKのみ受信できなくするフィルタは、2013年度、筆者の研究室配属の4年生の卒業研究として開発した。原理自体は非常に単純で、電気電子工学を専攻する大学2年生であれば理解できるレベルのものである。同様の装置は、2007年に出版されたラジオライフの「本気の電子工作2」でも紹介されている。ただし、当時はアナログ放送であったため、NHKに周波数が近接する放送にノイズが出る問題があった。デジタル放送化された現在、NHK以外の放送にノイズを発生させず、NHKの放送のみを完全に遮断することが容易に実現できるようになっている。

「政治的に公平」に違反する事案が続く背景

この卒論テーマ設定のきっかけは、NHKの要請でYouTubeにアップロードされた2013年3月8日の中山成彬議員の国会質問が削除されたことである。同日の衆議院予算委員会で、いわゆる従軍慰安婦問題について、辻元清美議員と中山成彬議員が正反対の立場から質問した。いずれもYouTubeにアップロードされたものの、NHKは後者についてのみ削除要請をした。この件は国会でも追及され、平成25年3月27日の参議院総務委員会では、亀井亜紀子議員がこの問題についてNHKの見解を問いただした。NHKの石田理事は、後日辻元議員の質問も削除要請したと答えたが、亀井亜紀子議員は削除に時間差があったことを問題視している。また、平成26年2月3日の衆議院予算委員会で、杉田水脈議員も、この問題を取り上げており、放送法4条にある「政治的に公平であること」に違反するのではないかと述べている。

上記の案件に限らず、近年のNHKの放送には、やらせや意図的編集など、公共性を疑わせる事案が数多く発覚している。こうした事案が続く背景として、NHKに公共性を担保させる仕組みがないことがあると考えられる。国会議員には選挙、裁判官には国民審査があるように、公権力に対しては国民によって何らかの選別・監視が行われる。一方、NHKは予算については国会の承認が必要なものの、それ以外については国民による監視が一切行われない。ふれあいセンターという苦情受付窓口はあるものの、そこで寄せられた視聴者の声を反映する義務はNHKにはない。放送倫理を審査するBPOも、その人選は放送局側によって行われており、放送局に甘い判断が下される傾向が顕著である。こうした状況を考えると、NHKに対して国民が自らの声を反映させる何らかの手段を確立することが必要である。受信料不払い運動はそうした手段の一つであるが、NHKを受信できる受信設備を設置している場合、それは放送法に違反する行為となる。そこで、合法的にNHKとの契約を拒否する手段を提供しようというのが、NHKを受信できなくする装置開発の目的である。

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