AI

2026.05.05 15:30

22歳の開発者が「Claude Mythos」を推定・構築、公開プロジェクト「OpenMythos」開始

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なぜ重要なのか

OpenMythosがAnthropicの設計と一致しているかどうかは、ほとんど本質的な問題ではない。このプロジェクトが示しているのは、十分な手がかりが公開されれば、アイデアはいかに速く広がるかということだ。同時に、実験が行われる場所の変化も浮き彫りにしている。独立系の開発者は今や、かつて大手研究所の中にとどまっていたアーキテクチャ上のアイデアを、自分たちで試せる道具を手にしている。

ゴメスの「理論的な実装」がAnthropicの実装と違っていたとしても、それは研究者に、検証できる具体物を与える。それだけでも、この分野の進化に影響を与え得る。

OpenMythosは、最先端のAI技術がどれほど速く広がるか、そして安全性やガバナンスの仕組みがどれほど遅れているかを示す、もう1つの例である。

2025年1月、中国の比較的小規模な研究所であるDeepSeekは、欧米最大級のシステムに匹敵する性能の推論モデルを、はるかに低いコストで生み出した。それ以降、この技術は世界中の派生システムへ複製されてきた。

2025年11月には、1人の開発者が、現在OpenClawとして知られるオープンソースの自律型AIエージェントを作り上げた。通常その種の強力な技術を取り囲んでいるはずの、組織的な安全機構をまったく備えないものだった。

その結果生まれているのは、大手テック企業並みの自律性でありながら、大手テック企業並みの安全対策を欠いたシステムだ。これは、最先端の能力を複製・公開する、動きの速い草の根のハッカーたちが形作る、生まれつつある世界の一部だ。

次に何が起きるのか

ゴメスは、より大規模なモデルを訓練し、それを自身のエージェント・フレームワークと接続する計画だと述べている。それが本格的な競合相手につながるのか、それとも一連の実験にとどまるのかは、資金と実行力にかかっている。

今のところ、OpenMythosはすでに1つのことを明確に示した。1人の開発者が、かつて大企業が支配していた水準で活動できるということだ。そして次のブレークスルーは、どこからでも生まれ得る。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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AIは使い方ではなく「とらえ方」で価値が決まる ライフサイエンス領域に見るビジネス変革の本質
AIは使い方ではなく「とらえ方」で価値が決まる ライフサイエンス領域に見るビジネス変革の本質

/ ビジネス

2026年4月23日

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〜決断する人のAI〜
AIは使い方ではなく「とらえ方」で価値が決まる
ライフサイエンス領域に見るビジネス変革の本質

Forbes JAPAN BrandVoice Studio世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

AIを導入しても、すべての企業が期待通りの結果を得られるわけではない。技術力以上に、AIの位置づけと、その先に人が担うべき役割の明確化が、その差を生む。AI研究者 今井翔太、製薬業界のDXを牽引する中外製薬 鈴木貴雄、そして企業の変革支援を行うPwCコンサルティングの大森 健の対話から、ライフサイエンス領域におけるAI活用の本質的価値を探る。

効率化の先にある、ミッションクリティカルなAI活用へのシフト

――まず、今井先生にお伺いします。AI研究の最前線に立ちながら、サイエンス領域の変革にも深く精通されていますが、この領域におけるAI活用の現在地をどのように見ていらっしゃいますか。

今井翔太(以下、今井):ライフサイエンスの分野で極めて大きな転換点となったのは、2020年代前半に登場した「アルファフォールド2」です。これは、アミノ酸の配列(一次構造)から、タンパク質がどのような3次元のかたち(立体構造)になるのかを予測するAIです。タンパク質の立体構造を解明することは、病気の原因特定や新薬の開発において非常に重要なプロセスですが、かつては膨大な時間と労力を要する研究の最難関のひとつでした。この課題をAIが解決したことは、後にノーベル賞を受賞するほど画地的な出来事であり、ライフサイエンスにおけるAI活用のコアとなりました。

現在のトレンドは、そこからさらに一歩踏み込んでいます。以前のAI活用は研究の特定部分にとどまっていましたが、現在は研究という非常に長いプロセス全体、あるいはその相当部分を自動化しようとする動きが加速しています。実際に、新型コロナウイルスに関連する特殊な抗体の特定においてAIを活用したプロセスが成果を上げており、自動化は着実に実用化のフェーズへと向かっています。

ただし、すべてがデジタル空間で完結するわけではありません。ライフサイエンスには、実際に試験管や細胞を扱う「ウェット実験」と呼ばれる物理的なプロセスが不可欠です。AI活用の現在地としては、この実験以外、例えば、膨大なデータ分析や新たな仮説の生成、さらには論文執筆の補助といった論理的・記述的なプロセスなどをいかにAIで自動化し、研究のスピードを極大化できるか、という挑戦の最中にあるといえます。

GenesisAI代表取締役社長 CEO北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)客員教授
今井 翔太

――中外製薬は、テクノロジーを積極的に取り入れている企業として知られていますが、製薬業界ではAIはどのように活用されているのでしょうか。

鈴木貴雄(以下、鈴木):一般的にあまり知られてないかもしれませんが、ひとつの化合物が薬として患者さんの手元に届くには、おおよそ9年から16年という気の遠くなるような時間がかかります。はじめに「これだ」といえる候補を見つけるだけでも3年。そこから動物実験や臨床試験を経て、ようやく世に出る。なぜこれほど時間がかかるのか。それは、薬には効くこと以上に、安全であることが絶対条件として求められるからです。このプロセスは、私たちが薬を扱う以上、決して避けては通れない、厳然として存在するステップなのです。

一方で、この気の遠くなるような時間を大きく縮める可能性を秘めているのがAIです。特に化合物の探索において、AIの強みは圧倒的です。私たち人間は24時間365日働くことはできませんが、機械は24時間稼働でき、探索の効率を大幅に高められます。AIという強力なパートナーを活用することで、今まで見ていた化合物の数の、それこそ桁違いの候補を効率的に探索できる。

さらに、これからの薬は、「病気に対してひとつ」という画一的なものから、その人のタイプに合わせる「個別化医療」へとシフトしていきます。製造業の言葉を借りれば、まさに少量多品種生産の世界です。管理は一気に複雑になりますが、そこでAIの力を借りることで、一人ひとりの患者さんに適した治療の選択を支援し、適正使用や安全性の確保に貢献していくことができる可能性がある。薬を細分化し、質を極限まで高めていくために、AIは不可欠な存在となっています。

――PwCはコンサルタントという立場から多くの企業とかかわっていらっしゃると思いますが、今、ビジネスの現場はAIによってどのように変化しているのでしょうか。

大森 健(以下、大森):これまでのテクノロジーは、「1+1を2にする」ように画一的な答えを求める計算は得意でした。しかし、生成AIの登場によって、ビジネスは決定的な転換点を迎えています。例えば、マーケット調査のように、観点によって答えがひとつに定まらない、画一的な正解がない領域にまでテクノロジーが踏み込めるようになった。テクノロジーに詳しくない経営層の方々も、「今まで考えもしなかった価値を生むのではないか」という期待を抱き始めている。こうした動きは、AIが“決断する人のAI”として、経営の判断そのものを支える段階に入ってきたことを示しており、これが一番の大きな変化だと感じています。

では、現在のAIの立ち位置はどこにあるのか。創薬の根本に関わるような本質的な取り組みも進んでいますが、実利の面で言えば、やはり業務の効率化のフェーズだと考えます。鈴木さんもおっしゃる通り、新しいシーズ(種)を生み出すことだけがAIの役割ではありません。今、あらゆるビジネスプロセスには多くの人が介在していますが、そのなかには、本来必ずしも研究者が行わなくてもいい業務や、アセットにならない繰り返し作業が多くあります。こうした人の介在を最小化し、業務プロセスを半分、あるいは70%にまで凝縮していく。そのようにして生まれた余白で、人間がより本質的な創造に集中する。そんなトライアンドエラーが、今まさに各所で起きているのだと思います。

今井先生や鈴木さんがお話しされたように、AIの可能性は広がり、実際に果敢なチャレンジが始まっています。ただ、ビジネスの現場には特有の難しさがあります。それは、技術的に「実現可能」なことと、ビジネスとして「今すぐ成果が欲しい」ことの間に潜むギャップです。例えば、創薬におけるAI活用は素晴らしい成果をもたらしますが、実を結ぶのは5年、10年先です。一方で、経営陣が求めているのは、もう少し直近の短期的な成果。この経営判断と技術的な可能性のズレをどう埋めていくかが、今の経営者の大きな課題になっています。

熟練者の思考ロジックに基づく企業独自のデータが、競争力となる

今井:AI活用の現在地を語るうえで、研究と実際の業務や組織にAIを導入・運用する実装現場との乖離が生じている点も見過ごせません。研究者が論文で「AIでこれが実現できる」と発表しても、実社会の導入フェーズではその95%が失敗に終わっているという衝撃的なデータもある。これほどのギャップが生まれる背景にあるのは、AIが将棋や囲碁のように、ルールと評価基準が明確な世界で力を発揮してきたという前提があります。一方で人間社会は、言語化できないふわっとした基準や感情的なプロセスで動いている。この不条理な現実世界にAIをどう適応させるかというフィードバックループを構築していくことが、今まさに研究者である我々が直面している壁ですね。

大森:その壁は、経営陣が求める時間軸とのズレにもあります。先ほど申し上げた通り、AIによる創薬の成功は10年先ですが、経営は四半期ごとの成果を求めます。そのようななかで、注目すべきはデータの質の変化です。現在、インターネット上の公開データはAIにインプットされつつあり、データの拡充という観点でAIの深化は飽和しつつある。だからこそ、今後はネットには落ちていない企業独自のクローズドなデータをどれだけもっているかが、企業の競争力に直結すると考えています。

中外製薬 参与
デジタルトランスフォーメーションユニット長
鈴木 貴雄

鈴木:おっしゃる通り、これからの勝ち筋は、自分たちのドメインデータをどう差別化要素としてAIに組み込むか、にかかっています。弊社でも試行錯誤を繰り返していますが、興味深い発見がありました。AIにただ大量のデータを無作為に与えても、トップ研究者の暗黙知には到底及ばないのです。そこで今取り組んでいるのが、AIが研究者に「なぜその判断をしたのか」を問い、対話を通じて熟練者の思考ロジックを引き出すという試みです。

また、経営の観点ではポートフォリオマネジメントの再定義が不可欠です。創薬のような長期スパンの投資と、デジタル特有の超短期プロジェクト。この質の異なる二つの時間軸を同時にマネージし、ROI(投資利益率)を追う部分と、ディスラプト(破壊的変化)に対抗できるイノベーションへの投資を峻別する。うまくいかないケースも、結果の検証だけでなく、撤退判断を迅速に行いながら「失敗」の知見を蓄積していく。このアジャイルな意思決定こそが、AI時代のリーダーに求められる唯一のミッションだと確信しています。

現場の試行錯誤から組織全体の価値が生み出される

――中外製薬では、すでに全社員の9割がAIを活用していると伺いました。効率化を超えた、より創造的な価値はどこで生まれているのでしょうか。

鈴木:現在、社員の約90%が何らかのかたちでほぼ毎日AIに触れている状況です。弊社では「AI Everyday」「AI Everywhere」「AI Transformation」という3つの戦略を掲げていますが、決して会社が一方的にツールを押しつけたわけではありません。

例として、現場のMR(医薬情報担当者)たちが自発的に始めた使い方が、大きな価値を生みはじめています。MRの役割は薬の説明に留まりません。病院経営の悩みや患者さんとのコミュニケーションなど、いわば「コンサルタント」のような高度な対人スキルが求められます。中外製薬ではMRたちが、訪問前にAIを相手にコミュニケーションの壁打ちをして、シミュレーションを繰り返すような事例も出てきています。特別なシステム開発を待つのではなく、既存のツールをどう使いこなすかという現場の工夫が、大きな価値を生んでいます。

今井:それは非常に良い事例ですね。実は「AIで何を自動化し、何を自動化しないか」の境界線を、人類は今まさに探っている状態です。

例えば、営業活動そのものをAIに代行させると、多くの場合で批判の声が上がるほど強い嫌悪感を買ってしまいます。人間は「AIから物を買いたい」とはまだ思えない。しかし、営業で相手に対面する一歩手前で自分の思考を研ぎ澄ますためにAIを使う。人間ならではの役割を補強するこのような使い方は、まさにAI活用の正解のひとつだと言えます。

大森:マーケティングの歴史を振り返ると、かつては統計的な「群」として人をとらえていましたが、今はAIによって、MR側と医師側それぞれの特性を踏まえたテーラーメイドの「対話」が可能になっています。中外製薬さんのような活用方法は、利用する側の工夫によって価値の出し方が変わるフェーズに入っていることを実感できますね。

先ほど今井先生がおっしゃったAIに対する拒否反応というお話ですが、今は拒否反応があることでも、デジタルネイティブな若い世代が大人になったときには、「営業はAIがするものではなく、人間がするものなの?」という疑問が当たり前になるような、デジタルに対する認識自体が変わってくる可能性はないでしょうか。

PwCコンサルティング
執行役員 パートナー
大森 健

今井:それは非常に難しい、かつ重要な問題です。確かに、かつてはAIがつくった芸術に嫌悪感を抱く人が多かったのが、今ではAI作品をあえて探す人たちも出てきています。ただ、介護のように気持ちの問題で嫌がられていたものは時間が解決するかもしれませんが、過剰な自動化による人間側のキャパシティオーバーのような問題は、時間が経っても人間が担い続けることになる。営業活動も、その類かもしれません。

鈴木:現場の試行錯誤を日常に落とし込み、文化として定着させるには、経営側の覚悟が必要です。中外製薬では、業務継続上重要なIT基盤の一つとして、かつて「止めてはいけないシステム」の1位はメールでしたが、今はAIです。このような背景もあり、当社では、社長自らが若手から学ぶ「リバースメンタリング制度」を導入しました。トップの認識が変われば、組織全体が変化していく。こうした姿勢を仕組みにして、カルチャーをつくるところまでもっていく。これを徹底的にやり抜くことで、企業としての真のROI(投資利益率)、そして持続的な成長が見えてくるのだと考えています。

後編に続く

pwc 決断する人のAI

今井 翔太

GenesisAI代表取締役社長 CEO。北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)客員教授。文部科学省の「AI for Science」推進にも深く関わるAI研究の第一人者として活躍。

鈴木 貴雄

中外製薬 参与 デジタルトランスフォーメーションユニット長。NTTコミュニケーションズ、マイクロソフトを経て、中外製薬に入社。2024年より現職。

大森 健

PwCコンサルティング 執行役員 パートナー。米国系コンサルティングファームを経て現職。20年以上のコンサルタント経験を活かし、数多くの日本企業のDX戦略立案、組織変革支援をリードする。

Promoted by PwCコンサルティング合同会社text by Motoki Honmaphotographs by Daichi Saitoedited by Aya Ohtou(CRAING)

AI

2026.04.11 18:00

アンソロピックの最新AI「Claude Mythos」とは何か、なぜ一般に公開しないのか

sauloangelo - stock.adobe.com

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セキュリティの訓練をまったく受けていないAnthropic(アンソロピック)のあるエンジニアが、Claude Mythos(クロード・ミトスやクロード・マイソス。またはクロード・ミュトス。もともとギリシア語の「μῦθος」[神話]を意味する)に、一晩でリモートコード実行の脆弱性を見つけるよう頼んだ。翌朝目を覚ますと、完全に動く攻撃手段ができあがっていた。

Anthropicが米国時間4月7日に発表したのは、そういうモデルである。Claude Mythos Previewは、公表されているあらゆるベンチマークで、これまでに作られた中で最も高性能なAIモデルである。SWE-bench Verifiedで93.9%、USAMOで97.6%、CyberGymで83.1%を記録した。主要なすべてのOSと主要なすべてのウェブブラウザーでゼロデイ脆弱性を見つけた。完全に自律的に、人の指示なしでだ。

このモデルを作ったAnthropicの対応は、公開しないことだった。その代わりに同社は、サイバー防衛の取り組みであるProject Glasswing(プロジェクト・グラスウィング)を立ち上げ、このモデルをアマゾン、アップル、グーグル、マイクロソフト、エヌビディア、CrowdStrike(クラウドストライク)、JPモルガン・チェース、シスコ、ブロードコム、Palo Alto Networks(パロアルトネットワークス)、Linux Foundation(リナックス財団)に提供した。さらに、重要なソフトウェア基盤を支える約40の組織にもアクセス権が与えられる。Anthropicは、利用クレジット1億ドル(約159億円。1ドル=159円換算)と、オープンソースのセキュリティ関連団体への直接寄付400万ドル(約6億3600万円)を拠出する。

主要なAI研究企業が最先端モデルを開発しながら、同時に一般には使わせないと決めたのは、これが初めてだ。

次ページ > Claude Mythosが実際に見つけたもの

翻訳=酒匂寛

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2026.05.05 11:00

アンソロピック、評価額141兆円でOpenAI超えへ──人類史上最大の資金調達ラウンド

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Anthropic(アンソロピック)は投資家に対し、評価額9000億ドル(約141.3兆円。1ドル=157円換算)での出資を決断するまで、48時間の猶予を与えた。ほとんどの報道が見落としている点を解説する。

Anthropic、評価額約141.3兆円超の新規資金調達ラウンドを準備

Anthropicは、評価額9000億ドル(約141.3兆円)超で総額500億ドル(約7.9兆円)の新規資金調達ラウンドを準備している。投資家には参加希望・出資額の提出について48時間の期限が設けられた。米国時間4月30日、BloombergTechCrunchなどに対し、関係者がAnthropicの動きとして明かした。

Anthropicの取締役会は、5月の会議で決定を下す見通しだ。このラウンドは、Anthropicが株式公開前に行う最後のプライベート資金調達になる可能性が高いとされている。

先の条件で成立すれば、3月時点でポストマネー評価額(資金調達後評価額)8520億ドル(約133.8兆円)だったOpenAIを抜き、Anthropicは世界で最も企業価値の高いAI企業となる。おそらく、あらゆるセクターを通じて世界で最も企業価値の高い未上場企業にもなるだろう。

この数字は慎重に検討する価値がある。現代のテクノロジー史において前例のないものだからだ。

2025年3月、Anthropicは評価額615億ドル(約9.7兆円)で資金調達を行った。2025年9月には評価額1830億ドル(約28.7兆円)。2026年2月には評価額3800億ドル(約59.7兆円)で300億ドル(約4.7兆円)を調達した。そして11週間後の今、9000億ドル(約141.3兆円)超で投資家の需要を試している。

同じ事業、同じ製品、同じ市場で、14カ月で15倍である。変わったのは、投資家が同社をどう値付けするかだけだ。

各報道の見出しは、これをAnthropicがOpenAIに追いついたと伝えている。それは表面的な解釈だ。より興味深い問いは2つに分かれる。その評価額の根底にある成長曲線が本当にこの到達点を正当化しているのか。あるいは、AI業界の価格形成の仕方が、歴史的な手法からいつの間にか乖離してしまったのか。

Anthropicの売上高は3年連続で10倍超に成長、評価額の根拠に

評価額9000億ドル(約141.3兆円)を支持する根拠は、エンタープライズテクノロジーの歴史上、かつて起きたことのない現象にある。

Anthropicの年間換算売上高は、2024年12月の10億ドル(約1570億円)から2026年3月末には300億ドル(約4.7兆円)へと成長した。10倍超の成長が3年連続で持続したことになる。記録に残る限り、この規模でこの成長率を維持したエンタープライズソフトウェア企業は存在しない。セールスフォースも実現していない。Snowflakeも実現していない。ServiceNowも実現していない。最も明白な比較対象であるOpenAIでさえ、同様の期間でARRは約250億ドル(約3.9兆円)に達した程度だ。ほとんどのアナリストがすでにレースに勝利したと見なしていた同社を、Anthropicが上回っていることになる。

売上は持続性が期待できる領域に集中している。フォーチュン10企業のうち8社が現在Anthropicの顧客だ。Claudeに年間100万ドル(約1億6000万円)以上を支出するエンタープライズアカウントは1000社を超え、2年前の約12社から増加した。Anthropicが2025年5月にローンチしたエージェント型コーディング製品Claude Code単体でも、2026年2月までに年間換算売上高25億ドル(約3925億円)に達した。同製品の法人向けサブスクリプションは、1月1日以降の6週間で4倍になっている。Anthropicは現在、世界中のGitHubパブリックコミットの4%を支えていると推定されている。

売上高の約30倍という倍率は、成長率調整後の比較対象と照らし合わせるまでは極端に聞こえる。年間10倍で成長している企業は、30%で成長している企業のようには価格付けされない。2028年になってもまだこの成長を続けている可能性のある企業として価格付けされるのだ。そうなれば、振り返ったときにこの評価額は合理的に見える。それが、入札する投資家たちが計算している数式である。

次ページ > 一部の初期支援者が、今回のラウンドをスキップ

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