「結婚」というインフラに頼ってきた世界の宗教が直面する「独身者排除」の末路
「家族」を信仰の基盤としてきた宗教界がいま、岐路に立たされている。非婚化と独身者の増加に伴い、伝統的な「結婚前提」のコミュニティ運営が限界を迎えつつあるのだ。なぜ独身者は信仰の場で「透明人間」として扱われるのか。ソロ・エコノミーが専門の米国の行動経済学者が、宗教界の現状と、現代に適応するための実践的なステップを伝えている。 【画像】「結婚」というインフラに頼ってきた世界の宗教が直面する「独身者排除」の末路
結婚が信仰を強くする
カップルが教会やシナゴーグ、モスクなどで結婚式を挙げるとき、その儀式は単に2人の結びつきを神聖なものにする以上の意味を持つ。多くの場合、それは2つの家族をひとつの信仰共同体へと結びつけるものだ。 何世紀もの間、結婚と子育ては、大人が信仰共同体の生活に溶け込むための主要な手段だった。同じ信仰を持つカップルは教義をより忠実に守る傾向にあり、その伝統のなかで子供を育てることで、次世代を自然に共同体へと導いていく。組織内での婚姻数が増えれば、礼拝堂の席を埋める家族が増え、その教えを受け継ぐ子供も増えるというわけだ。 これを知れば、現代の多くの宗教にとって、独身成人の増加がいかに不安をかき立てる事態であるかが理解できるだろう。 米国では、2023年の時点で成人の42%が結婚も事実婚もしていない状態にあり、2000年の38%から増加している。この傾向がすぐに収まる気配はない。現在、40歳の4分の1が一度も結婚したことがなく、Z世代にいたっては3分の1が生涯結婚しないと予測されている。 同時に、何らかの信仰共同体に所属する独身の米国人の割合は、既婚者のそれを大きく下回るようになった。「ピュー・リサーチ・センター」の2023~24年の調査によると、既婚者の68%がキリスト教徒を自認しているのに対し、独身者では51%にとどまる。また、既婚者の24%が無宗教であるのに対し、独身者ではその割合は39%にのぼる。 行動経済学者としてビジネススクールで教鞭を執る私は、こうした独身成人の増加が職場や税制、消費市場をいかに再編しているかを研究しており、これを「ソロ・エコノミー」と呼んでいる。 宗教界は、この変化の波に直面した最新の領域といえる。彼らが突きつけられているのは、単なる婚姻率の低下ではない。独身者を「共同体の不完全なメンバー」として扱ってきたことの、いわば「報い」に直面しているのだ。