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黒く煤けた日記/Novel by ティモシー@リク受付

黒く煤けた日記

12,448 character(s)24 mins

銀「ねぇ、なんで俺が主人公なのに俺が出てこないの?」
新「給料払ったら出してやりますよ」
銀「うぃっす」

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きょおからにっきをかけといわれた。めんどおくさいけど、じをおぼえるためにがんばる。
きょおはおれのたんじょおびらしい。おれとせんせえがはじめてあったひらしい。そろそろここにきたきせつだなぁとはおもってたけど、それがたんじょおびになるなんておもってなかった。べつにたんじょおびほしいなんておもってなかったし、ほかのやつらのたんじょおびがうらやましいともおもってなかった。だっておれにたんじょおびがないのがあたりまえだったから。
せんせえはおれにおれせんようのしないをかってくれた。せんせえがくれたにほんめのかたなは、いっぽんめよりとてもかるかった。
こたろおはあめをくれた。いちごのあじのあめで、いっこなめたらめちゃくちゃうまかった。たいせつになめよう。
しんすけはこんぺえとうをくれた。めずらしいものらしくて、こたろおはおどろいてた。いっこなめたらめちゃくちゃうまかった。これもたいせつになめる。
じゅくのほかのやつらも、いろんなものをくれた。なんでおれなんかにぷれぜんとをくれるんだろうっておもったけど、まぁどうでもいいからいいか。
あしたはこたろおたちとやまにいくやくそくをした。やくそくはぜったい。せんせえもこたろおもしんすけもじゅくのやつらもむらびとも、みんなみんな、やくそくをまもってる。だからおれもまもるんだ。まだひとはまもれないけど、やくそくならまもれる。ちょっとだけせいちょおしただろ?



ほんとうですね、ぎんとき。
あなたはほんとうにせいちょうしている。
たんじょうびのケーキはおいしかったですか?なかなかのじしんさくだったんですよ。
さて、あした……ぎんときがめざめてこのぶんをみるときにはきょうですね……きょうはかんじをれんしゅうするとともに、ぶんをかくときのちゅういてんも、れんしゅうしましょうね。
「こたろお」ではなく「こたろう」
「きょお」ではなく「きょう」
「めんどお」ではなく「めんどう」
「たんじょおび」ではなく「たんじょうび」
「せんせえ」ではなく「せんせい」
「こんぺえとう」ではなく「こんぺいとう」
「せいちょお」ではなく「せいちょう」
ややこしいですが、くちにだすときに「お」とはつおんするものでも、かくときには「う」とかくものもあるんですよ。
おなじく「え」ではなく「い」とかくときもあります。
すこしずつおぼえていきましょうね。
さいごに
おたんじょうびおめでとう、ぎんとき。
わたしからのもうひとつのぷれぜんとは、あなたにけんをおしえることです。













押し入れの整理をしていた時に見つけた一冊の本。表紙が黒く煤けて端が焦げているという目を見張るような見た目に新八は思わずその本を開いた。1ページ目には拙い平仮名の文字がつらつらと並べられていて、読みにくかったがなんとか読み終えた。その裏のページには丁寧な美しい字が、同じように全て平仮名で書かれていた。

「……これ、銀さんの日記なのかな」

銀さんと呼ばれる万事屋のリーダー、坂田銀時の幼い頃を想像してみる。生意気そうに鼻をほじる子供が想像できて、思わずぴきりと青筋を立てた。

いや落ち着け僕。もしかしたら銀さんも昔は超絶可愛い純粋無垢な子供だったかも…………ねぇよ。
いやいや、もしかしたらあの死んだ目も昔は輝いていたかも…………ねぇわ。
いやいやいや、もしかしたらめちゃくちゃ真面目な優等生キャラだったかも…………ねぇな。

三段階で銀時が幼い頃は純粋だった説を否定して、新八はまたノートに視線を移した。

幼い銀時が書いたであろう最初のページの文章には、ところどころ面倒くさがりの銀時のイメージが現れていた。
それ以上に銀時には似合わない文も現れていた。

「……誕生日が、なかった」

ないのが、あたりまえ。

銀時は他者の誕生日を大切にする。金欠の癖に新八や神楽の誕生日には外食、それができなければ家で出来る限りのご馳走を作ってくれる。さりげなくその日には依頼を入れないようにしていることを新八は知っている。普段いがみ合っている真選組の面々にも、偶然を装って町中で遭遇し、何かしらプレゼントを贈っている。

それに相反するように、銀時は自分の誕生日に無頓着だ。まず、知らせるのが遅かった。新八達の誕生日はカレンダーに書かせたくせに、自分の誕生日はへらりと笑って「大人になると誕生日は嫌なもんなの。年取るとか何がいいのかわかんねぇわ」とのたまった。だから新八達が銀時の誕生日を知ったのは、たまたまバイトをしていた桂の「そろそろ銀時の誕生日だな」というつぶやきを聞いた時である。なぜ黙っているのかと憤慨しながらそそくさとサプライズパーティーの準備をして当日を迎えれば、銀時はポカンと二人の顔を見て、カレンダーを見て、また二人の顔を見て、となんとも面白い反応を見せてくれた。

まだひとはまもれないけど
やくそくならまもれる

その文を指でなぞる。銀時は幼い頃どんな思いでこの文を書いたのか。あれほど護る事に執着する銀時が人を護れないと宣言させる何かがあったのか。

人を護ると決心させる何かがあったのか。

せんせえ

銀時に師がいるのはなんとなく察しがついていた。悪夢を見て魘されている銀時を心配して新八が泊まれば、銀時は胸を押さえながら「せんせぃ」と苦しげに眠っていた。「いかないでくれ」と、「まもるから」と、泣きそうに眠っていた。

訊きたい。そして聴きたい。
でも、僕達には銀さんが自分から話してくれるのを待つしかないくて。
そんな時にこの本を見つけてしまった。

銀時の過去を詰め込んだ日記。本当は銀時の許可を得ないと見てはいけないものだ。それでも、新八は。

ページをめくる。














すこしずつ漢字が増えていく日記。すこしずつ銀時が銀さんに近づいていく日記。

銀時が“先生”を慕う気持ち、“先生”が銀時を愛する気持ちがひしひしと伝わってきた。

勝手に読んでいる罪悪感は、すこしずつ、確実に、新八の心を黒く染める。それでも、新八はページをめくっていた。

























これでこの日記もさいごか?
やっと終わったって感じするよなー。
そういえばさ、俺さ、さいしょはべつに人を護るための剣なんて学ぶつもりじゃなかったんだぜ?ホントは、もっと強くなるための剣を先生から学んで、そしたらまたあそこにもどるつもりだったんだ。生きるための剣。殺すための剣だ。
でもよ、先生ったら全然剣術教えてくんなかったじゃん?日記さかのぼったらここに来て一年もたってからじゃん。もうサギだよな。
はずかしいからあんまいわねぇけどよ、今は、先生に剣術教わって、文字を教わって、感情を教わって。家族、ってやつの温かさを教わって、さ。俺、本当にかんしゃしてるんだぜ?直せつは言わないけど!!言えねぇけど!!
先生。
俺さ、あそこにはもうもどりたくはないなぁ。いやね、だれかにもどれって言われたらそりゃあもどるよ。だって俺はよそもんだからさ。けど、ここの人たちぜんぜん言わねぇよな。意味分かんね。
なんかよ、俺ここにいればいるほどぜーたくになってる気がする。そのうちすんげぇワガママいうかも。俺が将来ダメダメ人間になったら先生のせいだかんな!!
なぁ、先生。俺、護る剣、できるようになったかなぁ。今なら、先生も晋助も小太郎も、護れるかなぁ?



銀時。
わがまま言ってもいいんですよ。あなたたちはまたまだ子どもなのですから。
戻りたくないのならずっとここにいなさい。ほかのだれかがあなたをここからおいだそうとしても、どこにも行かなくていいんです。ここはあなたの家です。あなたをここからおいだすけんりなんて、だれも持っていないんですから。
ねぇ、銀時。
わたしがいるうちは、わたしにあなたを護らせてくれませんか?たしかに人を護る剣を教えました。あなたはじゅうぶん人を護れると思う。でも、わたしはあなたを護りたい。ほかの生徒とおなじように、あなたのことも護りたいのです。だからわたしからはけっして、あなたに「護って」とは言いません。言うとしたら…そうですね。わたしが死ぬまぎわでしょうか?まぁ、しばらく先のことを考えてもしかたがないですね。
ああ、それと。銀時がやりたいと言っても言わなくてもこの日記はつづけますよ。今日新しい本を買ってきましょうね。
















新八は思わず微笑んで、それから不思議そうに頭を傾けた。
これほどまでに銀時を愛している“先生”………いや、“家族”がいたのに、何故銀時は家族の存在を否定するのだろう。

『俺には家族はいねぇよ』と、銀時はいう。最近ようやく、新八達を家族と認めてくれている…と信じている。坂田ファミリーと称することも増えた。

新八は握り拳を作った。絶対に、この“先生”に会って、銀さんを慕う家族がここにもいるんだと教えてあげるんだ。銀さんが“ただいま”という家がここにもあることを伝えてあげるんだ。きっとこの“先生”は、笑って、「そうですか、銀時を宜しくお願いしますね」なんていうに違いない。

日記の続き、あるのかな。

新八はまた押し入れを探そうと押し入れに目を移した時、誰かが帰ってくる音がした。一瞬びくりと体を跳ねさせるが、それが銀時ではなくもう一人の家族、神楽であることがわかり脱力した。

「ただいまヨ、新八。銀ちゃんは?」

「長谷川さんと飲みに行ってるよ。ほら、昨日の依頼で結構もらえたからね。少しだけ奮発してお小遣いあげたんだ」

最近の万事屋の財政管理はほぼ新八が行っている。銀時に任せると全て甘味と酒とパチンコに消えてしまうからだ。

「ふん、相変わらずマダオアルナ………何アルカ、それ」

あ、と思うときには既に遅い。神楽は新八が置いておいた銀時の日記を手に取り、読み始めていた。あちゃあーと思うものの、自分だけ読んでいるのもなんだか申し訳ない。きっと神楽も自分と同じように考えて、“先生”に会いに行こうと言い出すに違いない。
新八は押し入れを探し出した。

Comments

  • 華夏
    July 16, 2025
  • まこんぶ
    March 4, 2024
  • :)
    November 24, 2023
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