家庭の味はどの高級料理よりも勝てないもの
銀さんが依頼で真選組に朝ごはんを作ってあげるお話。
銀魂吉原大炎上映画公開おめでとう☀️
シーンごとの絵がめちゃくちゃ綺麗になってるし真選組とか桂がでてくるから楽しみ
映画とは関係ないお話を作ってしまったのでちょっと後悔してる
それとは別の依頼のお話↓
【お前ほどではないが、俺は今もバラガキである】
「はあ?稽古もつけてやれって?むりむり、俺ら万事屋は荒ごとは専門外なの」
「荒ごとこそオメーら専門だろォが」
朝食を食べ終わったあと、隊士たちはぞろぞろと庭へと出る。
朝からこんな稽古もするなんて、馬鹿たちだなあと思いつつ銀時は鼻ほじりを続ける。
「お前の剣術は我流も我流。決まった型をおさめているやつとやっても新鮮味を味わえんだろうし、何よりそういうやつと出会った場合として対処しづらい」
「だから、俺にやれと?それならウチの神楽のほうがいいだろ。いや、あいつぁ、我流すぎるからな」
「……上乗せ、いや、もとの報酬の2倍」
「やります。やらせてください。」
ということで、カンッカンッ、と木刀と木刀がぶつかり合うことが響き渡る。
場所を変えて武道館。
「おらおらァ!一気にかかってきやがれ、そんなんじゃ薙ぎ倒しちまうぞ!!」
「よ、万事屋の旦那、オリジナル性のある技っていうか、ほとんど野生の動物ゥ!」
「野生はテメェらんとこのゴリラだろうが!」
「俺はゴリラじゃあないいい!!」
土方はその光景に、ニヤッとわらう。
計画通りだ、認めたくはないがあいつの剣術は一流。我流も我流。もとの型におさまらない、流派で行ったら御法度だと言われそうなほどの乱暴な振り方に対処。
剣筋を読むのに必死になっている隙をついて蹴りに殴り、なんでもござれ。
こんなんなら、自分で流派でもつくっちまいやがれと思うほど。
奴の稽古は確かなものだ。彼奴の剣は真選組随一の剣の使い手と言われる沖田も凌駕するほどだと確実に言える。
どこからその腕っぷしが磨かれたのかは知らないが、野生的な知覚で気配を察知し、殺気が飛んできたらすぐに反応して剣を交えている。
不思議。謎。
どこかおちゃらけたような性格は、何かを隠しているかと時たま感じられる。
それはフォロ方十四フォローであるから感じられるものである。
「ジミーィ!地味さを有効に使え、せっかく良いとこまでいってんのによ!!」
「褒めてんですか、貶してんですか旦那ぁー!!」
山﨑の叫ぶ声がこだまする。
銀時を囲んでいた大勢の隊士は、息切れをおこし地に伏せている。
いつもの、洞爺湖と彫られた木刀を片手に、ほとんどとちっても良いほど息を切らしていない銀時。
まだまだ余裕のある顔でSっ気を発揮させる。
「オラオラ、まだ足んないぜ?生きてるなら戦えるんだよ、はやく立て。戦じゃそんな甘っちょろい考えは通らない。理不尽だけが通じる場所なンだよ」
銀時の言う言葉は妙に信憑性があった。
「じゃあ旦那ァ、俺と一戦どうでィ?」
「…総一郎くんかぁ。うん、うん、総一郎くんなら全体的に良い感じ。V字前髪と張り合えるからV字前髪の副長さんと戦ってきなさい」
「俺は旦那を所望したんですが?V字前髪なんて、誰もお求めになりやせんぜィ」
「だよな、しかしもらってやれよ。もらいていなくて困ってんだ」
「旦那は俺の扱い雑じゃないですかィ?可哀想とは思わないですかい」
「一番かわいそうなのは俺だ、ドSコンビ!」
「銀ちゃん、久々に戦えて楽しそうアル」
「いっつものらりくらりで運動不足に見えますけど、意外と戦うとか体動かすこととか好きだからねぇ」
そうほのぼのとした空気で話すのは万事屋のふたり。手に持った緑茶を啜りながら稽古の風景を眺めている。
「テメェらふたりはやらねぇのか?」
土方はふかしていた煙草を、未成年に近寄ったことで持っていた灰皿に押し付ける。
まとっていた煙を払う。
「僕たちは見るだけで充分です」
「そうネ。ここはいつもと一味違う喧嘩をやった方がたくさん学べるアル」
「へえ、そう」
土方は銀時が動き回りながら笑っている姿を見る。まさに鬼神と形容しやすいその姿に引き込まれる。
綺麗。
野蛮な戦い方であるが故、瞳に焼き付く。狂ったように剣を振り回すが、その太刀筋は相当目を見張るほど。
バラガキと呼ばれた自分でも、彼奴はそれ以上の悪ガキだ。
「じゃあ俺もあいつに学んでくるしかあるめぇ」
そういって、腰に携えた真剣を微量のカチンッという特有な音を立てて引き抜く。
え、と焦ったような声が聞こえたがそれを無視して煙草にお気に入りのマヨボロで火をつけた。
「はあ?!多串くん真剣なんか本気か?」
青天の下で銀時が口いっぱいに広げて騒ぐ。
そんな騒音と化した声が土方の耳に届く。不思議と、うるさいとは思わない。
「ああ、俺は至ってマトモだ」
お前のバラガキほどの話だが。
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真選組は頭を抱えていた。
そのおかげで頭はまわらないし、どこか体がおかしい気もする。
実際にいま体調を崩して隔離されているやつも多くはない。まだ痺れる舌を誤魔化すように水を飲む。
男というのはそういうものだと我慢して食おうにしても、喉が拒絶反応をおこすようにして言うことを聞かないのだ。
耐えに耐えかねた武装警察・真選組局長は腹を括ってかぶき町へと向かった。
「というわけだ、よろしく頼む!」
「ンでそこでここ頼るって話になるんだよ」
向かった先は、汚れの目立つ看板が提げられている万事屋。目の前にいる男は仮にも、その店の社長である坂田銀時だ。
客がいるというのに一切何も気にせず、ソファへ座り込み足を組む。
見下ろすような姿勢で局長・近藤勲を見ると、泣き顔になって叫んだ。
「そうなんだ!トシに任せれば、あのマヨネーズ丼、総悟は激辛飯、唯一地味でマトモな山﨑に任せてみれば一日中あんぱん!」
コレを聞いただけで真選組の苦労が目に見える。
茶を汲んでいた新八も苦笑いで、「大変でしたね」と近藤の前にお茶を置いた。
「で?もうみんな料理出来ねぇから俺らに依頼しにきたってわけか?」
「そうだ!お妙さんにも頼んだんだが、『動物園はペットの餌でもやっておきなさい』と言われてから記憶がなくて…」
「それ絶対殴られたんじゃねーか!」
記憶がないと言うのはどうせストーカーまがいのことをしている近藤をまた前のゴリラパワーで殴ったのだろう。
「あのゴリラに料理なんか頼むもんじゃねえよ。可哀想な飯の残骸が出てくるぜ、涙がでそうになるっての」
シクシク、と目元を擦るような仕草を見せて十字を切る。アーメン。
そこで今まで酢昆布をしゃぶり続けてきた神楽が口を開く。
「それならわたしがつくってあげるネ!酢昆布丼とか団子丼とか、なんでも丼にしたらおいしいアル。欧米食とかクソくらえアル」
「欧米食になんの恨みがあるんだ!というより、チャイナさん料理できるのか」
「いや…毎食卵かけご飯ですよ」
神楽が鼻高々に言っていたのをコソリと新八が近藤に耳打ちする。万事屋がそもそも家計が火の車というのもあるが、それを抜きにしても白米は彼女にとって絶対で、ついてくるとしたら卵にふりかけ。
最悪神楽が一週間料理当番なら、一週間同じ料理が続くのである。
それだけは避けたい、と近藤は神楽に断りをいれる。そこで、近藤の無線機がジジジッと機械音を鳴らして伝達が伝わる。
「聞こえますか局長!いまかぶき町近くで指名手配犯桂小太郎をみつけました、挟み撃ちにしてやりましょう」
部下と思われる真選組のひとりが無線機を通してそういうと、近藤は応答をして立ち上がる。
「そういう事だから!明日の朝からお願いします!!どうせメガネだから眼鏡くんは料理できるだろ?」
「おい、メガネだからってなんだよ!おまえは眼鏡キャラなんだとおもってんだ!!」
しかし新八のツッコミも、悲しく近藤に届く事はなかった。パタンと扉が閉じた室内で、三人は顔を見合わせる。
そこで先陣を切るように、銀時がため息をつくと、
「俺が行く」
と言った。
たしかに新八は料理はある程度できるが、その料理のレパートリーは増えることを知らない。
姉のお妙に比べたらまだマシな方である。なんならお釣りが来るくらいだ。
「銀さんが?起きれるんですか?それに、真選組にはアンタが顔を合わせたくない奴らだっているでしょ」
「いーんだよ、テメェら子供が起きる時間じゃねえときに依頼が入ってんだ」
銀時はさりげなく新八らに休ませるように言うと、「じゃあ俺朝早く起きないといけないから」といってソファでいそいそと寝転がって寝息を立てた。
幸い、頼まれたのが夜ご飯後だったというのもあり、銀時は糖分摂取によって数秒もしないうちに微睡んでいた。
新八は「じゃあ僕も帰ろうかな」というと、最後にやり残した掃除や洗濯物をとりこんで帰る準備をしはじめた。
神楽はというと、「夜道は気をつけるネ」と新八の心配をして玄関まで見送る。
ありがとう、と微笑むと新八は月が出る空の下を歩き始めた。
今日の朝ははやい。
何でこんなに早く起きたのだっけ、と机に置かれてあったジャスタウェイの時計を見る。
マダオと称される銀時には勿体ないくらい早い時間だ。
寝ぼけている頭でそういえば今日依頼が入っていたと思い出してシワだらけになった着流しを脱いでシャワーを浴び出す。
腰にはいつも通り、洞爺湖をさげ、手紙を書き残す。神楽がいつもの襖の奥でどこぞの猫型ロボットの如く寝息を立てているのをみて、優しげに笑うとそっと頭を撫でた。
「いってきます」
そういうと天然パーマが爆発する銀の髪を無造作にかきあげて、真選組屯所へむかった。
冬の朝は寒い。ふぅっと息を吐いたらおきまりの白い吐息が姿を見せる。
鼻と耳が赤く染まる。着流の上に一枚羽織ってきたから寒さは半減されているものの、それでも冷たい風は体を刺すようにして寒さを訴える。
手が悴んで料理ができるかと心配になるが、真選組内であれば暖房もついているはずだろうと心を落ち着かせる。
着いた時には鼻水がダラリと流れていた。
朝がこんなにもはやいためか、真選組の門は閉まっている。軽くウォーミングアップをするかと意気込んだ銀時は、門から距離を取ると一気に走り出す。
高さは人の身長よりも数メートル高い。
踏み込みを万全に行うと、軽く蝶のように重力を無視してフワリと宙へ浮く。
ストンっと超えた先の地面で完璧に着地すると、何も温まらなかったと思い、屋敷内へとあがる。
何度もここへ訪れているがために、玄関も当たり前かのように自分の家のようにして靴を放り投げる。
食堂はどこだったっけか、と屋敷内を数分彷徨くとそのような部屋が廊下の先に見つかって扉を開ける。
大きた机が数列並び、フライパンや鍋が揃えられているのを見ると、食堂だと簡単に理解できる。
ようやく見つけ出した、と思ってまずは肝心な冷蔵庫の中身を探る。
そういえばあのゴリラが一丁前に具材は何でも揃っていると言っていたなと思い出して、まずは適当に朝ごはんになりやすそうな食材を取り揃える。
まずは目玉のおかずだな。
銀時はそう思ってチルド室から鮭の切り身をとりだし、塩を適当に振って、食べた時にピリリとほどよい塩味がきくようにする。
朝ごはんのメインといえばやはり鮭だろう。すこし塩のきいたふっくらとした身が口の中でほろほろとけて、寝起きの口にはぴったりとあう。
次は米を炊こう。
丁度ここには、大人数用の炊飯器があるし、こんなにたっぷり時間があって数台フルで使えば余裕で間に合う。
そう思って米びつのなかから一合、二合と次々に入れていく。そのうちの二台分は炊き込ご飯にでもしてやろうと炊飯器に米をいれたあと、冷蔵庫から茸、コーン、豚ばら肉、にんじんを取り出して細かく刻む。
とくに人参は根菜類であるため、適当に切ってはならない。
全て切り終わると、ザッと米と水が入った炊飯器に具材を入れて、醤油・みりん・酒・バターを加える。そこでちょっと胡麻油をいれると風味が出るのだ。
そして全ての炊飯器にスイッチを入れて、炊き上がる間に次は汁物を作る。
今日はこんなにも寒いのだからあったまるものがいいだろう。だからといってオシャレめいたものはここじゃわない。
先ほど使った野菜をみて、こんなにも具材があるのだから豚汁にでもしようと寸胴に水をたっぷりいれる。
アジがでるよう、贅沢に昆布と煮干を使わせてもらい、出汁をとる。
沸騰する間に豚汁でつかう具材を切る。
大根は扇形に、人参は短冊切り、豚肉をぶつ切り、豆腐を賽の目切り、椎茸を薄くスライス。
トントン、と小気味良い音が室内に響く。
生憎だが、味噌の味の違いはわからないので適当にあった味噌をスプーンでいっぱい掬っておく。
たもうひとつ、やはり副菜が欲しいところだ。
卵焼きを作るにしても骨が折れる。やはり炒め物がいちばんいいのか?
作り出したものを思い出していると、緑のものが足りないことに気づいた。
幸い、野菜室の中にはキャベツがあったはずだ、と思っていそいそと取り出して取り敢えず水切りのボールに手で適当に千切る。
それと合わせて、きゅうりも輪切りにカットしてボールに混ぜ合わせる。
水抜きをするため、調味料のところから塩を取り出し、一二杯パッパと振りかけて揉み合わせる。これから少し放置してシナシナし出した頃にぎゅっと絞る。
その途中に、ブクブクと音を立ててきたので寸胴の中に切った具材をバラバラといれる。蒟蒻もあったので薄くスライス。
ここから具材にしっかりと熱が通るまで少し火を弱くしておく。
全体的にふやけてきたキャベツときゅうりは水切りから大きなボールにうつす。
そこに、胡麻油・粒だし・醤油を目分量でいれる。
そして、最後にとっておきのものを。
ガサゴソといちばん下の粉やなんやら入っているところで先ほど見つけた、塩昆布を取り出した。
塩昆布は塩っぽいため、入れすぎると辛くなるし、塩分過多で健康に悪い。
ちょっとずつ調整していれていく。
キャベツやきゅうりなどの具材に少し色づく頃が、程よい。
一通り作り終わった後、キッチンを見つめ、まだ緑の食材が残っていることに気づく。
「…大根の葉っぱか」
豚汁で使った大根のものである。
ザクッと根っこから切った折、何も気にしていなかったものである。
大根の葉は捨てる人が多いと勝手に思っているが、これを醤油などで炒めたら意外と美味しいのだ。それを白米の上にほかっとのせたらいつのまにか茶碗の中がからになっているということが多々あるほど。
浅いフライパンをとりだし、ざく切りにした葉を胡麻油を多めにいたフライパンへといれる。
日の通りが早いので、あまりシナシナになりすぎないよう、ほどほどのザクッとした歯応えを目指してチャリチャリと炒める。
そして、醤油・みりん・鰹節を入れ味が染み込んで、いい匂いが漂ってきたら頃合いだ。
ふわぁ、とあくびを一つ。
窓を見るともうすぐ日は昇る。そろそろ、隊士の一人でも起きてくるだろうか、と思って頭を掻きむしった。
いつもとちがう、ふんわりとした匂いが鼻腔をくすぐって目覚める。
畳の匂いと、それと混じって漂うご飯の匂いが土方を食堂へと誘った。
食堂のばーさんたちがかえってきたのか?
否、退院はまだだったはずだ。
そう思って黒い着流を整え、常備している真剣を帯に携えると、襖の外をあるく。ちゅんちゅん、と鳥の囀りが鼓膜を揺らす。
気候もいつもよりは陽気で、冬ではあるがポカポカと気持ちが良い。
今日の食事の番は誰だ、こんな匂いを漂わせることができる隊士がひとりでもいたか。みんな男飯やらなんやらと、マトモに料理できたやつはいなかったはずだ。
一番酷かったのは、総悟のやつだっただろうか。舌が痺れてたまらなかった。
ちなみに俺のマヨ丼は渾身作だった筈だが、まわりからギブアップの声が次々と上がり疑問が生じた。
トントン…
柔らかく響く音。
力任せに切るような音じゃなくて、しっかり食材にあわせて優しく刃を入れる音だった。
扉越しからでもわかる、魚の焼ける匂いと、ほんわかと香る米の匂い。
キィ、と静かな空間に響く蝶番に恨みを込めつつも、ちらりと中を覗く。
動きに合わせて銀色の髪がふさふさと揺れていた。光を受けて反射する蓬髪は、美しい以外に言いようがなかった。
「みてんだろ?」
気配を消してのぞいていた筈だが、やはり気づかれていたのか、背を向けつつもそう言い放つ。
諦めて食堂の中へと入ると、犬猿の仲とも言える万事屋が小刻みに揺れつつ調理していた。
「なぜおまえがここに?」
「オメーのところのゴリラに頼まれんだよ。ご飯にもならねえご飯が出てくるから代わりに作ってくれってな」
アイツは新八をお望みだったらしいが、と皮肉のように付け加える。
俺もそう思う、と土方は納得する。
第一、このマダオと呼ばれる男が料理できるなんて微塵も思いやしなかった。どうせチャイナ娘はできないだろうし、そうとなったらいちばんできると思うのは眼鏡だ。
「あぁ、そう。報酬は弾んでやる」
「本当か?!流石は税金ドロボーだぜ」
「るせェ」
土方は銀時のそばによると、何作ってんだ?と聞く。
んー、と気だるげに返事をしてこれ、と今炒めてる最中であろうものを指差す。
「ンだこれ」
「大根の葉っぱ。うめぇんだよ、こうやって炒めたらご飯にめちゃくちゃ合うの」
そういって、別の箸に切り替えて一口分摘むと、フーフーと熱を覚ますように息を吹きかける。
「ン」
「…つまみ食い?いいのか?」
「いいって。ちょっと、味見してみてよ」
ほれ、というように土方の目の前でユラユラと箸を揺らす。鼻の前で、醤油とかすかに香る鰹節が鼻をくすぐる。
我慢しきれずにパクリ、とかぶりつくと口の中で香ばしさと深みのある醤油、それにマッチする葉っぱがシャキシャキと音を立てて広がった。
「…うまい」
「あ、ホント?珍しいね、多串くんが馬鹿正直にいうだなんて」
そう言ってカタン、と箸を置いて平たい皿に豪快にどかどかといれる。
そのうえに、引き出しから取り出した白胡麻をパラパラと満遍なくふりかけて完成だ。
「手伝う。これ持ってけばいいか?」
「たすかる。そう、米とか自分でついでもらおうと思って向こうに全部炊飯器とか置く予定だから。あの長台においてて」
「わかった」
そういって土方は片手に皿を持ち、どうせなら持っていけるだけ茶碗を持っていこうとありったけの力で皿を両手に持った。
そのとき、ピーッと一斉にけたましく音が鳴り響いた。なんだと音をした方に顔を向けると、炊飯器から程よい煙と匂いがふんわりと押し寄せた。
「お、ちょうど出来上がった見てーだな」
ちろ、と下をのぞかせ、気分爛々に炊飯器へ近づく銀時。近寄って釜の中を覗く。そこには、ふっくらつやつやと水を含んだ米粒が。
キラキラと一粒一粒が輝くのが目に映る。
しゃもじで切るようにふんわりふんわり混ぜるたびに匂いが空気によって漂ってくる。
「…炊き込ご飯?」
自分も銀時のように真似ようと、パカリと炊飯器を上げた中には白米とはちがって、茶色に染まり、具材がパラパラと入っているものが。
「あ、そうそう。白米じゃ面白味ねーかなって。あと俺も炊き込ご飯すきだし」
そう言って銀時も炊き込ご飯の炊飯器をあけ、具材を混ぜる。おこげがいい感じにパリパリになっていた。
「よっし、あとは盛り付けだな。冷蔵庫のなかにサラダあるからだしてくんない?」
銀時はそういうと、後ろの大きなオーブンから焼いた鮭の切り身をとりだす。焦げ焦げにはなっていないが、程よく色づいたサーモンピンクが食欲をそそる。
土方は言われた通りに冷蔵庫から大きなボウルを取りだし、かけてあったラップをぴらりととる。
どうやら、キャベツの酢の物のようだ。
とりだした魚を置くような長方形の皿に、こぶりの枠がふたつある。そのうちのひとつに、サラダをいれていく。
そのあとに銀時が鮭を置くという流れ作業だ。
ホカホカとした匂いに釣られてやってきたのか、普段ならばなかなか起きない沖田までも寝ぼけ眼を擦り食堂へと入ってきた。
額には、沖田のトレードマークとも言える目隠しをつけてある。
「おはよーごぜーます、土方死ね」
「開口一番俺の命狙ってんじゃねぇよ!!」
と言いつつも、土方はサラダを盛り付ける手は緩めない。それに気づいた沖田がキョトンとした顔を浮かべ、土方のそばへ行く。
そして土方と一緒に動き続けている銀時を見て、もっと瞳を丸くさせた。
「これ、旦那が作ったんですかィ?」
「一応な。ゴリラから頼まれてよ。もちろん報酬は弾んでくれるよな」
にやっと意地の悪い笑みでわらうと、沖田は「土方さんにつけときやす」と言ってべしりと土方に頭を叩かれる。
「へえ。旦那って料理できたんですねィ、意外でした」
「あーよく言われる。ひとり暮らしは何年もしてきたし、そうしないといけない環境にもいたわけだし」
銀時は小さくそういうと、最後のひとつの鮭をプレートにのせて満足のえみをうかべた。
そこでようやくチラホラと隊士が目をこすりながらやってくる。そして大体の人は銀時を見た瞬間、「万事屋の旦那?!」と一気に眠気を散らせるのだ。
「炊飯器のとこから、米はよそって。こっちで汁はアツアツのまま飲めるように注ぐから」
そう指示すると、お盆の上にズラリと配置しておいた鮭の切り身と酢物をのサラダをのせたプレートを乗せ、次に箸をカチャンと置く。
銀時があらかじめ用意しておいた茶碗に具材と汁を均等に注ぎ、アツアツのまま提供。
ふんわりと香る味噌の香りが隊士の腹を掴む。
そこで、勢いよく扉が開いたと思ったら見慣れた顔がズカズカやってくる。
サーモンピンクの髪が、朝日にキラキラと照らされ、もう一人の少年の眼鏡が光に反射していた。
「銀ちゃん、私もついていくって言ったのになんでひとりで行っちゃうネ!万事屋に頼まれんだから、私たちも連れていくヨロシ」
「そうですよ、銀さん!しっかり目覚ましセットしていたのに、勝手に止めて行っちゃうんですから!」
そうプンスコと怒って銀時の元へ向かうと、銀時の背をうりうりと押した。
万事屋である。
「ちょっ、お前ら力つよすぎぃ…」
お前ら、といってもほとんど神楽の馬鹿力によって隊士たちが集まっている方へと招いた。
「すっ、すげぇ!!うめえ!!」
「粒が、、白米も炊き込ご飯もうめぇよぉ!!久々に食ったよな、こんなマトモなご飯!」
びええと涙を流しながらガツガツと食っていくため、次々に皿に盛られたご飯がなくなっていく。
銀時はその様子をほけっと見つめる。
自分がこうやって大盤振る舞いで食事を作るなんてなあと他人事のように考える。
「はいっ、銀ちゃん!」
「こんなことしても結局は銀さんが作ったことには変わりないんですけど…」
すると、万事屋メンバーがほくほくと湯気を立てる食膳を両手に持ち、にこにこと朗らかに笑う。
「銀さんも、はい。みんなで食べましょう」
「そうネ!みんなで食べた方が美味しさ100倍ってきいたことあるヨ」
にこにこ、と笑いながら席の一角を陣取る。
そこで、近くにいた隊士を押しのけて不躾にもどかりと座ったのは、神楽が目の敵にしている一番隊隊長沖田総悟である。
「旦那ァ、この緑の野菜はどうやって食べるんでィ?」
「ああ、コレ?これはね、大根の葉っぱ。白米の上にのせたらうめぇよ」
そういって、菜箸で沖田の茶碗にすこしのせる。
訝しげにそれを見つめ、白米と一緒に掬う。
「わたしも銀ちゃんが作ったそれ、好きネ。サドヤローが食わないならわたしが食べるから安心するヨロシ」
「誰がおまえにあげるかよ」
鼻までかおる、香ばしい匂いと共に口の中へ放り込むと、一気に溢れる醤油と鰹節で炒められた、風味のある味。
沖田はその味の虜になり、あるぶんを一気にハムスターのごとく頬張った。
「オイオイ、喉詰まらせちまうぞ?」
「そのまま死ぬヨロシ」
神楽の冗談などきいていない言葉に、新八が駄目でしょ、と静かに突っ込む。
「おお、万事屋がこの飯作ってくれたのか!」
「ゴリラの飯ならねェや。バナナでも暗黒物質でもそこら辺のジャングルで調達してきやがれ」
「いや俺ゴリラじゃないから!俺のケツなら年中ケツ毛というジャングルができあがっているけれども、ここ南米じゃないからね??」
と、言葉の応酬を交わし、隊士の1人が一応ではあるが真選組のトップに全てを揃えたお盆を手渡す。
キラキラと瞳を輝かせ、神楽が「ゴリラが新たなものにならとうしてるネ、進化ヨ。でも野生だからジャングルに返すアル」といえば、土方が「そこはジャングルじゃなくて動物園にしてやれや」とズレたことを突っ込む。
「さ、ささっ、みんなで食べましょ!ホカホカのご飯が冷めちゃいますよ、ホラ席について」
身内といっても過言ではない土方にそう言われたのが悲しかったのか、うるうると瞳を潤ませる状況を打破するように新八が苦笑いを浮かべ皆んなを促す。
わらわらと集まってきた隊士たちをみんな座らせる。
「じゃあ銀さん、おねがいします」と、新八がいうと、「俺がぁ?いつもはぱっつぁんの役割じゃねぇか」とめんどくさげに反論する。
いつもはご飯を作るのが心配であるが故その言葉を言うのだが、本日は違う。
作ったのは銀時だ。
ガシガシと照れ隠しのように銀髪をかくと、決心するようにパチンッと手を合掌した。
つられるように他のみんなも手を合わせる。
「せーーの」
ほかほかと陽気な太陽が照らす。
「いただきます!!」
おまけ→キャプション