「銀さん!大掃除手伝って下さいよ!」
「そうネ!一人だけサボりだなんて許さないアルヨ!」
今日は12月30日。
ここ最近は年末ということもあり、依頼がとても多かった。なので万事屋の大掃除はまったく進んでいない。今日終わらせないと大晦日の日にまで掃除をしなくてはならなくなる。それはごめんだ。
「今日はお登勢さんからも大掃除の手伝い頼まれてるんですよ!ちゃんと働いて下さいね!」
さらにはこんな依頼まで来ている。今日の万事屋は大忙しなのである。
銀時は寝転がっていたソファーから、のそのそと起き上がる。新八はホウキでホコリを落としながら言う。
「銀さんはそこの棚拭いて下さい。神楽ちゃんはそこ片付けてて。それが終わったらお登勢さんのとこ行きますからね!」
「分かったネ!」
「銀さんも、良いですね!」
銀時はゆっくりと頷いた。
「あぁ後そう言えば、お昼ご飯はお登勢さんが作ってくれるそうですよ? だからお昼までにここ、終わらせますよ!」
「まじアルか!?やったネ!そうと決まればさっさと終わらせるアル!!」
神楽のやる気は跳ね上がった。お昼ご飯恐るべし。
* * *
朝起きたら喉がひどく傷んだ。ついでに言うと頭も痛い。昨日の疲れでもでたのだろうか。そう思い、銀時は試しに声を出そうとする。
「.........っ」
出ない。声が全くでない。と言うか声を出そうとすると酷く頭が痛む。そういえば昨日の依頼は結構寒かった。それが原因か?
あ、そういえば今日は大掃除するんだっけ?熱は無さそーだし、無理しなけりゃばれねーかな? つーか風邪ぐらい二度寝すりゃ治るだろ。…多分。
「おはようございます!」
玄関の扉が開く音と共に新八の声が聞こえてきた。
…二度寝出来ねぇじゃん。まぁいいか。朝飯食べてからソファーにでも寝転んでよう。朝飯食べたら楽になるかもだし。
銀時は布団から起き上がった。
朝食を食べ終わってしばらくした頃。銀時はソファーに寝転んでいた。気分はさらに悪くなったような気がする。つーか朝飯多くね?
ちなみに朝食はいつもと同じ量である。
「銀さん!大掃除手伝ってくださいよ!」
「そうネ!一人だけサボりだなんて許さないアルヨ!」
すでに新八と神楽は大掃除を始めていた。 さすがに動かないといけない。昼飯食べたら治る…よな?そう思いながら銀時はのそのそとソファーから起き上がる。
動く度に頭がさらに痛くなる。頭を抑えないよう注意を払いながら二人の元へ銀時は向かった。
まぁ、熱は無いだろうし大丈夫大丈夫。
銀時は新八の指示に従って棚を拭き始めた。
そして数時間後。
「終わったー!!」
「お腹すいたネ!早く下にいくアル!お昼ご飯が私を待ってるネ!」
時刻はお昼前。
今やっと万事屋の大掃除があらかた終わったところである。銀時は掃除が終わってすぐに朝と同じソファーに寝転んだ。銀時の体調は治るどころか酷くなっていた。
ダルい喉痛い頭痛い!これからどーしよ。新八たちにバレるのも時間の問題な気がする。
「じゃあお登勢さんのところにいきますよ。銀さんも!」
「銀ちゃん!早くするアルヨ!」
二人の声が聞こえた。その声に銀時は驚く。急に呼ぶからてっきりバレたのかと思っちまったじゃねぇか。
銀時は急いでソファーから起き上がる。起き上がると、神楽がいつの間にか目の前のところまで来ていた。
「今日の銀ちゃんなんか変アル。朝から一言も喋らないしボーっとしてるし、どうしたアルか?」
まずい。バレたかも。
新八も銀時の目の前に来て言う。
「僕もそれ思ってました。どうかしたんですか?」
ついにズバリ指摘されてしまった。銀時はひどく痛む頭で考える。
どうしよう。つーか何でこんなときに二人とも気づくんだよ!...そうじゃなくて。それよりも今はどう誤魔化すかだ。...待てよ?俺今喋れねーじゃん
思考を痛みが邪魔をする。思わず頭を抑えたくなる。だが銀時はそれを我慢し、机に向かって紙とペンを取り出した。
『のど痛くてしゃべりたくないだけだ』
「えっ喉?大丈夫ですか?」
銀時の書いた内容に新八が驚きの声を上げる。
『大丈夫』
「本当に?熱は?体温計はどこでしたっけ…」
銀時は体温計を探しに行こうとした新八の服の袖をつかんだ。
『大丈夫。熱もたぶんない。むしろ寒いし』
「そうですか?ならいいですけど…」
「昨日銀ちゃんがあんなに騒いだせいアルな。自業自得アル!」
『お前があんなことしなきゃ大声出す必要もなかったんだけどな』
「ほら。もうそこまでにして早くお登勢さんの所に行きましょ!」
「そうアルな!お昼ご飯ー!」
そう言うと神楽は先に下に降りていった。
「まったく…。僕も先に行きますよ?早く来てくださいね」
銀時が頷くのを確認すると新八も神楽のあとを追い、下に降りていく。銀時は新八が玄関の扉を閉めた音を聞いたと同時にソファーに倒れこんだ。
どうやらなんとかバレずにすんだらしい。神楽に良くやったと言いたくなるぐらいに銀時はほっとしていた。
神楽が言っていたことは実際に昨日あったことだ。大掃除を依頼されていた家で神楽が古いマイクを発見し、それを使って神楽がカラオケ大会を始めてしまったのだ。結局なんやかんやで大騒ぎになったのを銀時は思い出す。あれがなかったら新八を丸め込むことは出来なかっただろう。まさに神楽様々だ。
あ、喉痛いのそれが原因じゃね?寒かったからとかじゃなくて昨日騒いだせいだ。風邪ではない。多分。
まぁいい。早く下に下りよう。昼飯食べて一眠りすりゃ治る。と思いたい。
銀時は重い体を起こし、新八たちのいるお登勢の店へと向かった。
* * *
「銀時!ったく何してたんだい?とっくにご飯出来てるよ!早く食べな」
お登勢の声が頭に響く。これ以上怒鳴られても困るので、銀時は足早に席についた。
「おかわりアル!」
「ったく…一体何杯食べるんだい?」
そう言いながらもお登勢はご飯を神楽のお椀に山盛りについでいく。
「まだまだ全然食べた気がしないアル!あ、ありがとネ!」
ご飯を受け取った神楽はまたすごい勢いで食べていく。
「ほら銀時!ボーとしてないでさっさと食べな!」
銀時は"いただきます"と声には出さず、手を合わせてから食べ始める。だが、箸が進まない。美味いけど、これ以上食べれる気がしない。銀時の皿にはまだかなりの量が残っていた。
「おかわりアル!」
「またかい?これで最後だよ」
「ありがとネ!」
その間に神楽はどんどん食べ進めていく。ちなみに新八は等の昔に食べ終わっている。銀時は神楽の食べっぷりをぼーっとしながら見ていた。
なんだか治るどころかさらに酷くなってる気がする。
「おかわり!」
「さっきこれで最後だって言っただろ!というかもうないよ」
「えー!?まだ腹六文目ネ!もっと食べたいアル!」
「無いものはないよ!」
「そんな!?あんまりネ!」
項垂れる神楽の肩を銀時は叩いた。
『やる』
そう書いた紙といっしょにほとんど減っていない昼食を神楽へと渡す。
「おおー!!ありがとアル!さすが銀ちゃんネ!」
銀時は手を軽く振って答えた。
「銀時、ほとんど減ってなかったじゃないかい。それにその紙はなんだい?」
『腹一杯だからいい。あと喉痛めたからこうしてるだけ』
そう書いた紙をお登勢に渡し、銀時は後ろにあるソファーへと行き、寝転がる。銀時はだるかったこともあり、横になってすぐに眠りに落ちた。
* * *
「…………き。…とき!起きな!銀時!」
目を覚ますと目の前にお登勢がいた。周りに目をやると新八たちはすでに掃除の準備を始めていた。 どうやらかなりの時間がたっていたらしい。銀時はソファーから起き、立ち上がろうとする。
「ちょいと待ちな。
銀時、働く前に熱計りな」
お登勢が銀時を止める。話しながらお登勢が銀時に手渡したのは体温計だった。
「さっき新八たちに話聞いたけど朝からそんな調子なんだって?
アンタまた体調悪いの隠してるだろ。良いから計りな!」
「そうですよ!ちゃんと計ってください!」
「私たちに隠し通そうだなんて100年早いアル!」
作業をしながら二人は銀時に言う。どうやらもう誤魔化せないらしい。でも熱さえ無ければまだ誤魔化せる。今は寒いし熱はないだろう。そう思いながら体温計を脇に挟む。しばらくして ピピッという体温計の音がした。
銀時は体温計に表示された数字を確認する。そして唖然とした。この数字は誤作動に違いない。そう思い銀時は体温計をリセットし、もう一度計りなおそうとした。だがその前にお登勢が銀時から体温計を奪いとる。
「8度3分。…ったく、何で具合悪いのを隠そうとするかね。早くに言った方がよっぽど楽だろうに」
まったくをもってその通りである。銀時は呆れるお登勢から目をそらす。
「銀さん、布団ひいてきますから早く寝てください!じゃないともっとひどくなりますよ。神楽ちゃん、それやっててくれない?」
「了解ネ!銀ちゃん、早く治すヨロシ!!」
新八と神楽の言葉を聞きながら銀時は再びソファに寝転がった。
熱なんか無いと思ってたんだけどなぁ。むしろ熱高いじゃねぇか。
やばい。自覚したら余計に頭痛い。今度こそ銀時は頭を手で抑えた。
「僕、上に行って布団ひいてきますね」
新八が店の扉を開けようとしたその時だった。
「お登勢様、ただいま戻りました」
「タノマレタノモ買ッテキマシタヨ」
店に入ってきたのはたまとキャサリンだった。
「ありがとさん。わざわざすまなかったね」
「二人ともお疲れ様です!じゃあ行ってきますね」
そう言って新八は階段を駆け登っていく。
「新八様は何をなされに行かれたのですか?」
「あぁ、あれだよあれ」
そういいお登勢はソファーの上でぐったりとしている銀時を指さす。
「朝から体調悪いのを隠してたんだよ。さっきそれがわかってね。それで新八が上に布団をひきに行ったのさ。ったく、何で隠そうとするかね」
「まったくネ!」
その言葉を聞き、たまは銀時のところへ行く。
「銀時様、少し失礼します」
そう言うと銀時のおでこに触れた。
「熱、38.4度。銀時様、何故隠そうとしたのですか?」
たまの言葉を銀時はぼんやりとしながら聞いていた。
そういや、何で隠そうとしたんだっけ。自分でもわからなくなり、とりあえずたまから目をそらす。ちょうどその時、新八が戻ってきた。
「銀さん、布団ひいてきましたよ。ちゃんと休んでで下さいね!」
新八の言葉を聞き、銀時はソファーから起きあがって店の扉へと向かう。だがお登勢はそんな銀時をみて呼び止めた。
「ちょっとまちな!あんた、まっすぐ歩けてないよ。そんなんじゃ階段踏み外しちまう。たま!ちょいと手伝ってやんな」
「承知いたしました」
そう聞こえたと同時に銀時の体は宙に浮いた。たまが銀時の体を持ち上げたのだ。ようはお姫様抱っこである。
「っっっっっっっ!!!!」
銀時は驚いて思わず声を上げてしまった。途端に喉に鋭い痛みがさす。銀時は喉を押さえて喘いだ。もし今銀時が持ち上げられていなかったらきっと痛みで地面を転がり回っていたことだろう。
「なんか銀ちゃん、毒薬飲んで苦しんでるように見えるアル!」
「...確かに」
神楽の台詞に思わずその場にいたもの全員が頷く。
銀時は『俺も同じ気持ちだせコノヤロー!!!こうなった原因の癖に何同意してやがんだ!お前ら全員覚えてやがれぇぇぇ!!!』と叫びたかったが、熱と喉や頭の痛みで思うように動かない体ではそんなことできるわけもなく。
「では上に行きますよ。銀時様」
結局ろくに逆らえず、銀時は大人しくすることにした。
「銀さん!後で薬とか持っていきますから、それまでちゃんと大人しく寝ててくださいね!」
万事屋に入る直前に新八の声が聞こえた。その言葉を最後に銀時の周りは途端に静けさを増す。少しして銀時は布団に下ろされた。
「では、大人しく寝ていてください。早く治して下さいね」
そう言ってたまは下へと戻っていった。
一人になれば余計に体調は悪く感じられた。喉や頭の痛みは相変わらずな上に、熱があるはずなのにとても寒く、おまけに関節まで痛み始めた。こんなときは大抵思考も暗く染まっていく。現に銀時も先程たまに言われた言葉が頭のなかをぐるぐる回っていた。
『何故隠そうとしたのか』
今考えると本当にわからない。
だが、こんなこと考えてても頭痛が余計ひどくなるだけだ。そう思い銀時は考えるのをやめた。
銀時はしだいに眠りに落ちていった。
[次回予告]
真選組登場!!