万事屋に子供組がくっついて離れないってだけの話
題名通りの話。もう皆銀時大好きでいいんじゃないか?って思いつきだけで書きました。
銀魂アニメ再開おめでとう!!
お祝いにもなりませんが久しぶりに投下します。
銀魂に滾りすぎた結果がコレと思って頂いて構いません。薄目で見てやってください。
いろんな人が銀時大好き?という感じになっていますが、腐ではないと一応言い張ります。…多分。
なので、CPや腐が苦手な方はバックを静かに推奨します。
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《土方side》
危険がゴロゴロとそこら中転がる町、歌舞伎町。今日も異常ナシ。
今、俺の前から異常なモン接近中。
「…あり?」
「…お前等、何やってンだ」
「……知らね」
「「…」」
「あ~あちぃ…あの太陽と一緒に土方も蒸発して消えればいいのになぁ。爆発すればいいのになぁ。マヤの予言身を挺して本物にしてくんねぇかなぁ。というワケで死ね土方」
「テメェをマヤの生贄にしてやろうか…!」
初夏…と言うにはまだ早い。
…のクセに暑い。死ぬほど暑い。気の早い蝉でさえも熱中症で倒れちまったンじゃねぇか?ってぐらい暑い。所謂暑いのゲシュタルト崩壊だ。
それでも音で溢れかえるこの町は変わらず。
その全てが妙に神経を逆なでするようで、隣を歩く総悟も珍しくあの飄々とした態度が崩れかけている現状だった。
「ホント…何でこんなあちぃんだよ…今日は……」
今俺は、いや、俺達はいつもの通り巡回中。
違う事があるとすれば、ペアが総悟という事だけだ。
基本真選組の見回りは二人で一組。もしもの事があった時ようにという、俺の提案からだ。まぁ、若干現在進行形で後悔しているが…。
とにかく、日頃チンピラ警察やら税金泥棒やら言われている俺達も、クソ暑い中這いずり回って仕事しているという事だ。全国のニートに見てもらいたいぜ、この姿勢。
「あ~もうやる気でねぇ。俺ちょっくらクーラーの効いた家に自衛しに行ってきまさぁ」
…こいつは見てもらいたくない。
「ふざけんな!堂々とサボる気だろ!!」
「当たり前でさぁ。こんなクソ暑い中誰が好き好んで汗水たらしながら歩かにゃならないんですかぃ。俺はMじゃありやせん」
「知ってるわサディスティック星の王子。その前にお前は警察だろ。給料分働けや」
「あーあぁ~嫌だねぇ、金に汚い大人ってのは。何かある度に金、金……同情するなら金をくれぃ!!」
「…」
あ…ダメだこいつ。暑さにやられてらぁ。
妙に今日はペラペラと喋ると思ったら、眼が死んで遠くに飛ぶ危険な状態。汗一つ掻いていないまま標準語でブツブツと喋る総悟の不気味さといったら、ない。
すぐに休める場所を…、と思ったとき、総悟の足がピタリと止まった。
「…」
休むことなく紡がれていた声も止まる。
半テンポ遅れて気付いた俺は、少し先で立ち止まって総悟にふり返った。
「おい…どうした?」
虚ろな紅色が俺を越えたさらに向こうを見つめている。色素の薄い肌は青白く、異様に赤い頬。
…本格的にやばいな……。
こんなになるまで気付かなかった自分に舌打ちしたくなる。
後悔なら後でいくらでもできると腹を割り、すぐに総悟の元へ寄ろうとした時――…
「…旦那の……匂いがする」
「…あ゛ぁ?」
何故か、アイツの名前がでてきた。
この歌舞伎町の端辺りに住み着き、万事屋という怪しげな店の看板をぶら下げるこれまた怪しい男。
坂田銀時。
風に泳がせる天パの銀髪も、奇妙な着物の着方と色も、引っさげる木刀の【洞爺湖】という文字も。何もかもが俺の癪に障るような男だ。
一見隙だらけに見えて、実は隙がないと見せかけてやはり穴だらけ。何も考えてないように見えて、いつの間にか俺でも気付かないような所を鋭く勘付いている。
つまり、飄々とした掴み処のないようなヤツ、ということだ。
色んな所で縁が(望んでねぇのに)あり、俺達真選組とも結構深い関わりがある。
そして中でも意外な事に、総悟がやけに懐いたのだ。
何かある度に旦那、旦那と追いかける。
理由は分からねぇが、妙に気に入っているらしい。
「…」
ゆらりと覇気のない動きで180度振り返った総悟。
俺の前でミルクティー色の髪が揺れた。どうやら人垣のその向こうを見ているようだった。
「…?」
それに続いて、俺も元来た道の先を総悟越しに見据えてみる。
天人の来迎後、目覚ましく文化が発展した江戸。その中でも、特にこの通りは一気に栄えた。多くも少なくもないが、人で溢れかえる中心街。まぁ、人が居るからこそ俺達が駆り出されているのだが…。
とにかく、良くも悪くも人が往来する中に……奇妙な団体…と言っていいのか悪いのか分からない集団を見つけた。
そして、冒頭に至る。
「…暑くねぇの?」
「…めっさ暑い」
今、俺の目の前に立つ塊。
いつものムカツク銀髪ヤローに…赤と黒が引っ付いていた。
…自分で言ってて意味分かンねぇ。
しかし、実際に見た通りを言葉に表せばそういうこと。
中央には柱の様に立つ銀髪…つまり、万事屋。そして木の幹に張り付く虫のように引っ掴まっているのがチャイナ娘。腰にへばりついているのがメガネだ。
いつもはギャーギャー五月蠅く万事屋に纏わりついている餓鬼共だったが、今日は本当に言葉通り纏わりついた…というか引っ付いたらしい。
「…重くね?」
「…めっさ重い」
何故だか餓鬼共の様子がおかしい。
この距離なのだから俺達がいるのは気づいているはずだ。
しかし全く反応を示さず、うるせぇチャイナどころか礼儀はあるメガネまで全然動こうとしない。
万事屋の着流しに顔を埋めれば表情は見えず、疲労しきった顔のヤツがそれぞれを腕で抱え、支えている。
どうやらこの状態で器用に歩いているようだ。
え…ホントにどういう状況?
「どうしたんだよ…」
「…朝から引っ付いたまんま離れなくてよ……」
「はぁ?…ワケも無くか?」
「……いや…理由は分かってンだけど、な……」
俺もこんな状況で突っかかる程空気が読めねぇワケじゃねぇ。
次々と浮かんでくる疑問を一旦整理するように、マヨライターで灯ったタバコの煙を吸い込んだ。
肺へ、そして脳へと回ったニコチンが一時的に暑さを忘れさせてくれる。
そして、フー…、と吐いた煙と同時に、今一番の疑問を吐き出した。
「……一体どんなワケだよ…」
困ったように薄ら笑いを浮かべるヤツは、あ~…っとな…、と微妙に言葉を濁している。
…余ほど言いづらいコトなのか?
俺もそれなりに興味を引き、黙って続く言葉を待つことにした。
「…まぁ……その、何だ…俺にも非があると言うか何と言うか…」
「……さっさと言えよ」
余りにも勿体ぶる様子に段々焦れてきた。
せっつくようにさらに言えば、万事屋は渋々…、という感じで口を開く。
「…ま、昨日…ってかもう今日の事か。とりあえず夜中のコトなんだけどよぉ…」
「「………」」
「実は俺がな…」
「そこの銀髪天パァァア!!!」
隣の総悟と揃って万事屋の話に耳を傾けていたその時――…
突然、新たな声が万事屋の話を遮った。
その汚い怒声が響いてきたのは、万事屋を越したさらに向こう側から。
あまりの大きさに道行く人間誰もが振り返り、何事かとそちらの方を注目していた。
何か嫌なフラグを感じるな…、とか他人事のように思いながら、一応そちらを向いてみる。
「テメェ!!ここで会ったが百年目!!米助兄貴の敵ッ…討たせて貰うぞコノヤローォォオオ!!」
「あんさぁ…俺、お前に会ってから百年も経ってないからね?ンなゴキブリじみた生命力なんてないから、確かに白髪だけど…って誰が白髪だコノヤロー。あーぁ、今俺の心に一生分の傷を負わせたぁー。というワケで百年後にもう一回出直してこいハゲ」
「誰がハゲじゃボケェェェエ!!ってか誰も白髪なんて言ってないから!!勝手にテメェが自虐しただけだから!!」
…何なんだこいつら。
お日さんを反射する見事なスキンヘッドが眩しい男を筆頭に……十、十一…全部で十五人のむさい野郎が集団でいた。
どう見たって堅気って雰囲気じゃねぇな、コイツ等。
厳つい顔面が昼時の今とどうもアンバランスだが…流石歌舞伎町、と言うべきか。なんの疑問にも思わねェ。
「大体なンだよこんな昼間っからお宅らよぉー…ンな敵討ちなんて今時流行ンねーからな、言っとくけど。それでもやりたいって言うンなら時と場合を考えろー。ハイ、ここテストに出るから覚えとくよーに。約束は五分前行動って引っかけも出るから気を付けろよ」
「小学生のテストぉぉ!!?つーかそんなテストの方が今時ねーよ!!」
「おー、分かってンじゃねぇか。というワケで過ぎたブームは忘れて次を見ろよー。きっといい人見つかるって」
「お、おう、そうかな…って何で失恋相談みてーになってンだ!!」
さて、どうするか。
ここは真面目に職務を全うするか…だが、前にも言った通り、この街にはあんなゴロツキがいることが当たり前。故にそこら辺で起こる多少の諍いは、目を瞑らなければキリがないというもの。
警察官としてあるまじきコトだと言われればそこで終わりなのだが、まぁそれはしょうがねェだろ。
どうやら向こうも万事屋にのみ用があるみたいだ。俺達警察がいても目に入らない程の要件なんだろ。
ここは変に関わる前に退散した方が吉………ん?
「「………」」
万事屋に引っ付いていたガキ共が、ストン、と降りた。
さっきまでテコでも動かない様子であったのに、その変わり用。
何の不自然も無く離れた。
だが万事屋は特に気にしたコトでもないのか。解放され凝った身体を解すように伸びをしている。
一体どうしたのか…ガキ共の顔を伺おうにも、立ち位置的に見える筈がない。
そのままフラフラと若干覚束なくも見える足取りで、いまだ喚くチンピラ共の元へと着実に歩む。
ユラリと揺れる背中からは何の心情も読み取れなかった。
「…何か、様子がおかしいですねぃ……」
「…やっぱ、そう思うか」
ポツリ、独り言のように零した総悟も感じるのか。
多少戻ってきた顔色で、俺と同じくアイツ等の背を見る表情は訝しげだ。
総悟が思っているコトも何となくだが、察せる。
それほどまでに、揺れるあの背中達には…覇気迫るモンがあった。
「っ…な、何だよお前等!!餓鬼に用はねぇンだよ!!」
ようやく自分達に近づく影に気づいたのか。
一瞬怯んだように言葉が震えたが、ただの子供だと気付いてすぐに調子が戻った。大人気なくも頭上から威嚇するように、大声で喚く。
「俺達はこの白髪に用がっ――…」
その言葉は…途中で、切れた。
―ドゴォッッ!!!――
「「「……へ?」」」
ただのちょっと喧騒が絶えない街に、人影が舞った。
大きく空中で弧を描き、人々の頭上を遥かに超えた所で飛んでいく。
全員がアホみてぇに口を開き、何の言葉を発する事も出来ずただ視線だけでそれを追った。
それはもう、綺麗すぎる程全員揃って。
一瞬、それが何だか俺にも分からなかった。
情けねぇことにな。
―ドサッ……――
ようやく分かったのは、乾いた音と共に着地…というより落下音に、意識を戻された時だった。
「「「…あ、兄貴ぃぃぃいい!!!?」」」
落下した状態、地面に倒れ伏すそこから動かない人影。
妙に覚えがあると思ったら…つい先ほどまで威勢よく吠えていた……あの、男だった。
「…おいおい…マジかよ……」
ヒクリ、自分でも引きつる口元が分かる。
呆れたような言葉が出た俺は、決して悪くないと思う。
…そりゃ、そうだろ…だって、アイツをあんなk.o状態にしたのが誰かなんて……もう、決まりきったみてぇに分かってンだからよ。
「ギャーギャー喧しいンですよ……発情期ですかコノヤロー…」
「ハゲはハゲらしく焼け野原になってればいいアル…土が口開いてンじゃねーヨ…」
再びユラリ…、と揺れる二つの背中。
大人には成りきれていないような小せぇそれであるが、纏う雰囲気には息を呑むぐらいのモン。
それなりに縁があってきた仲だ。
何度か見たコトのある姿である。
そう、万事屋の、餓鬼共だ。
「な、なにしやがンだクソ餓鬼ぃぃいい!!!」
「よくも兄貴を…!!」
「っていうか兄貴はハゲじゃねぇ!!立派なオシャレ坊主なんだよこれは!!」
「AT●US●I並のセンスなんだよコノヤロー!!」
「というより焼け野原になるの前に土に還されてる……って、ぎゃぁぁぁああ!!!」
「ぐほぉっっ!!」
「「…」」
先ほどの巨漢を吹き飛ばした細腕や、いつの間にか携えられていた木刀が宙を舞う。そしてついでに大の大人達も舞う。…っていうかメガネ、言っとくが木刀も廃刀令ギリギリなんだからな。
―ドゴォォッ!!――
「ぐぼぉぉっ……」
―ゴォンッ!!!――
「ガハッ…!!」
縦横無尽に軽い身体が立ち回れば、それに伴って吹き飛ぶ影が弧を描く。
アイツ等…。
チャイナ娘は確か戦闘民族だとか聞いたことがあったから、多少動けると知っていたが…あのメガネまでもか。
道場剣術は一通りこなしている…が、どこか実戦向きの立ち回り方も混ざっている。ムカツク野郎を思い出させるような動きだ。
…あの二人の齢からしてみれば、十分な程の動きだ。いや、それ以上か…。
総悟を見ていれば多少慣れていると思っていたが、案外そうでもなかった。これは普通に驚く。
まるでただの軽い泡のように簡単に飛ばされていく人間の影を、ただ目で追う事しかできなかった。
立っていた姿は次々と消えていく。
それはもう、相手の動きに反応していてもしていなくても関係なく全て。
嵐の目のようなその二つの背中が自然とおさまるまで、職務がどうとかという思考は完璧に消えているのに自分で気づいた。
「…俺さ、入院してたんだわ」
ふと、ポツリ、と零すように万事屋が呟いたのが耳に入った。
あぁ…そういやコイツも隣にいたンだっけな。
珍しいコトに餓鬼共の暴れっぷりを傍観しているだけのソイツは、気づけば俺達と並ぶように目の前の乱闘を見ていた。
俺が聞いていなくてもどちらでもいいのだろう。
相槌を返さなくとも続けられた。
「偶々一人で請け負った依頼でよ…そンでヘマしちまったンだ。…ちっと意識不明になるぐらい、な……ンな状態なら連絡なんざ取れるワケねぇのによ?」
…ここまで言われりゃ、もう何となくこの事態の全貌が分かった気がした。
アイツ等がなんであんな状態になったか、そして、コイツの右腕のアンダーから覗いていた包帯の意味も。
「…そりゃ、旦那が全体的に悪いでさぁ、今回は。何なら俺もアイツ等に参加してぇぐれぇですぜぃ?」
「…いや、何でだよ。つか、やめろよ?紛いなりにも警察だろ、お前」
「だな、総悟の言う通りだ。お前が悪い」
「…ンだよお前等まで揃いも揃って!!餓鬼共預かってたババアには鼻フックからの背負い投げされるしタマに至っては薬酒ぶっかけられるしよぉ!!俺だって瀕死でもこうして帰ってきて…!」
あの背中をもう一度見てしまえば、もう隣で喚くヤツの言葉に同意は出来ない。
珍しく掻き消された表情も、可笑しな行動も。
全てが察せた後、納得してしまった自分がいた。今であれば総悟の最初の言葉も許可を出してしまいそうになる。
要するにだ。
どこにもぶつけられないアイツ等の怒りの発散を、俺は目をつぶるしかないって事だ。
例え相手が瀕死の状態に陥ろうが、全滅していようが。
「「…」」
「…ン、終わったか」
糸が切れた人形のようにピタリと勢いは止まり、気づけば残っていたのは二つの影だけ。
周りに散らばって倒れ伏す野郎共の意識は、きっと確認するまでもないだろう。
つい先ほどまで上がっていた怒号やら戦闘の音もパタリと止まった今、無音になったこの空間の静寂の方が逆に不気味であると思う。
気づけば周りの野次でさえも一言も発してはいなかった。おそらく誰もが呆気にとられていたのだろう。言葉も忘れるぐらいの目の前の状況に。
それ程までに、圧倒的な存在感を放つ小さな背中。
皆が皆の視線を集めるそれが、次の瞬間にはフラリと揺らいでいた。
真っ直ぐ向かった先。
勿論、万事屋の所であった。
それが元から分かっていたのか、驚きもしないヤツは声をかけながらその腕に迎え入れる。
「…怪我はねぇか?」
「「…」」
相変わらず下に向けられた表情は読めず、静かに問うている万事屋の言葉にも応えていない。
だがそれも気にせず、万事屋の両腕がス…、と上げられた。
―ポンッ…――
最終的に乗ったのは、その二人の頭。
万事屋の手がでかいのか、それともコイツ等の頭が小せぇのか。すっぽりとその手の平に収まった下で、ピクリ…とようやく反応が返っていた。
「「っ…」」
「!うおッ……!」
間髪入れず動いた。
踏み込みもせずバッ!、と飛び出すように万事屋へと同時に手が伸ばされる。
そしてグルリとその細い四本の腕が万事屋に回された。離さないように、逃がさないようにというように、しっかりと。
流石に反応が遅れたのと、勢いに驚いたようで。普段は煌めきの欠片もない朱色が暫し見開かれていた。
「「…!」」
…しかし、それも束の間。
自分の着流しに顔を埋めるそいつ等を見下ろして……フワリ、と、その双眼が細められた。
…酷く、優しく…そして慈しむような眼差しで。
いつものソイツであれば考えられないような表情に、思わず息が詰まる感覚を覚えた。
隣の総悟にいたっては、ヒュッ…、と空気が流れる音が聞こえた気がする。
「…じゃ、帰ぇるぞ」
だが、それも一瞬。
まるで夢でも見たンじゃねぇかと思う程短い間で、もうその温かさは消え失せ元のやる気のなさが全面に出ていた。
…いや、別に名残惜しいとか思ってねぇから。もう一回…とか思ってねぇからな!…って、俺は誰に言ってンだ?
まぁ、それはいいとして。
自分でも無意味だと思う葛藤をしている間に、話は進んで行く。
気づけば今日会った時のような元の状態に戻り、既にもう奴等は歩き出そうとしていた。
周りに散らばる死屍累々など見えていないように。あ、一人踏んでいきやがったしかも三人分の体重で。
「!お、おい…!」
「んぁ?…あぁ、まだ居たンだ、お前等」
自分でも知らねぇ内に声をかけていた。
引き留めるように、つか引き留めて振り返らせたのだが、それはいいとして。
続く言葉も思い浮かんでいないまま声を上げてしまった。
まさか止まってくれると思っていなかったのが正直なところで、思わず言葉にならない声が間誤付く。
やべぇ…めっちゃ万事屋の目が訝しんでンだけど。
何かかけたい言葉があるハズだ、と頭を回転させている内に。
「…旦那、明日は明けといてくだせぇよ。今日の内はそいつ等に譲るんで、明日は俺に付き合ってもらいやす」
「はぁ?何でだよ!」
「死ぬような思いで心配させたヤツの罰でさぁ。しっかり振り回させてもらうんで」
「え゛っ、ちょ、マジで意味分かんねぇンだけど…」
「ま、そういうコトで。ほら、さっさと行ってその邪魔な餓鬼共満足させて離れてもらってくだせぇ」
「あ?お、おいっ…」
言うだけ言って追い立てるように万事屋の背中を総悟が押せば、全く状況を理解できていないという顔のまま歩き出している。
最後まで意味は分かっていないようだったが、そのまま万事屋達は行ってしまった。
奇妙な後ろ姿の集団がヨタヨタと離れていく。
ついには人混みに紛れていき、その姿はいつの間にか見えなくなっていた。
「…」
「………」
まるで嵐だな…。
残った惨状とこの静寂さを見回し、改めてそう思う。
ったく…テレビ沙汰になってなきゃいいが…まぁ、そうなりゃ俺から手を回しておこう。
とりあえず、気づかない内にフィルター近くまで火が迫っていた煙草を離し、携帯皿に押し付けては顔を上げた。
「…後片付けするぞ、総悟。山崎に連絡だ」
「へいへい」
少しずつだが周りも正気を取り戻し、騒がしくなっているのを感じる。
こりゃ早くに片した方がいいな。
余計な仕事が増えた、と息をつけば自然と手が懐の煙草へと手が伸びてしまった。
「…なんだよ……」
いまだ地面に伸びる男達を悪戯につま先で突っついている総悟。
「…ヘタレ土方め」
「………あ゛ぁ!!?」
何を言い出すかと思えばこのクソ餓鬼っ…
「……これだからチャンスを逃すンですぜぃ…ま、譲るつもりはありやせんが」
「!…」
さっさと総悟が取り出したのは、真選組配給の携帯電話。
一応最近では時代も考えてス●ホにしようかという案が出ているが近藤さんが使えないっつーことで先延ばしになっている。まぁ、総悟やらその辺の若い連中なら自分で勝手に契約してンだろーけど。
慣れた手つきで操作し耳に当てた様子を見れば、先ほど俺が言った事に従うつもりだろう。
「あ、ザキかぃ?今すぐパト…あー、いや、先に救急車呼んでくれぃ。ンで、そのまましょっ引きやすンで……台数?とりあえず出せるだけ全部で」
怠そうないつものトーンで適当に返している総悟。
機械音に交じって聞こえるのは喚く山崎の声辺りか。…アイツもいつも難儀だな。今度少しは労わってやるか。
一旦吸い込んだ紫煙をため息に紛らせて空へと吐き出す。
火付けたばかりの煙草だ…まだ吸えるな。
もう一度口にと戻せばフィルターを噛み締める。
…そん時の自分の口元が、挑戦的に吊り上がってたのなんて知らねぇ。頭の片隅で聞いた噛み締める様な音なんて知るワケねぇだろ。
「…そりゃこっちのセリフだ、餓鬼が…」
『…じゃ、帰ぇるぞ』
一辺の欠片だって向けられた事のねぇあの表情を思い出す。
今も、そしてきっとこれから先も俺には拝む事すらねぇだろうな。
…ま、今回みたいな話じゃなきゃ見れねぇってンなら…もう二度と目にしなくてもいいと思えンだがな。
とにかく、今は――…
「……俺だって、譲るつもりはねぇよ、微塵もな」
あの掴めねぇ水のような存在のアイツを、どんな形でも捕まえておくことにするかな。