黄海に設置された「深藍2号」。中国は、独自に開発した大型の全潜水式深海インテリジェント漁業養殖設備とするが…(写真:新華社/アフロ)
目次

 韓国国会に提出された合同参謀本部の資料によると、昨年1年間、中国軍艦が黄海(韓国名:西海)にある韓国の管轄海域に進入した回数は350回を超えた。特に中国の空母は8回も同水域に入り、艦載機の離着陸訓練を強行するなど、黄海を事実上、中国海軍の専用訓練場として活用している。

 空からの挑発も止まない。年間100回に達する韓国防空識別圏(KADIZ)への進入はもはや日常化しており、中国の偵察機は韓国首都圏の基地を射程圏内に置き、情報収集に血眼になっている。

 韓国の安保専門家らは、かつて南シナ海で人工島を造成し実効支配の海域を広げた中国の「グレーゾーン戦術」が黄海でそのまま再現されているとして、深刻な懸念を表明している。

「養殖場管理施設」としながらヘリポートや精密レーダー、居住施設まで

 中国が韓国の管轄海域を躊躇なく侵犯できる背景には、海上境界が明確に画定されていない「法的空白」がある。

 黄海は幅が狭いため、両国の排他的経済水域(EEZ)が必然的に重なるが、その画定原則において両国は平行線をたどっている。韓国は国際法上の普遍的基準である「等距離中間線」(両国の海岸線から等距離にある地点を結んだ線)を固守する一方、中国は海岸線の長さや人口などを考慮すべきだという恣意的な「衡平の原則」を掲げ、韓国領海に隣接する東経124度線までを自国の影響圏だと主張しているのである。

 結局、両国は2000年の中韓漁業協定において、境界が確定するまでEEZが重なる区域の一部を「暫定措置水域」に設定し、漁業と航行のみを許容する条件で共同管理することに合意した。

中韓の暫定措置水域 *イメージ(提供:共同通信社)

 しかし、中国は2018年から2024年にかけて、韓国政府の同意なく同区域に大型の鉄製構造物3基を無断で設置した。

 中国はこれを「サーモン養殖場および漁業補助施設」であると主張し、韓国政府の抗議を無視している。

 ところが、特に中国側が養殖場管理施設だと主張する「深藍1号」は、ヘリポートや精密レーダー、居住施設まで備えた事実上の「海上司令部」である。

 当初、中国は同水域に構造物10基を建設する計画を立てていたが、韓国国内でこの問題が社会問題化すると、いったんは様子見の姿勢に転じた。

 今年1月の中韓首脳会談のフォローアップ措置として、中国は「深藍1号」を自国領海側へ移動させたものの、残り2基の構造物は依然としてその場に留まっている。