低廉で質の高い住宅を求める若者(一人暮らしの大学生など)と、自宅の余った部屋を提供する高齢者とをマッチングし、両者の交流を図る――。そんな事業を、京都府が2016年度にスタートして8年目に突入した。「京都ソリデール」と名付けられたこの“次世代下宿”事業は、最近になって京田辺市(京都府)や大和郡山市(奈良県)も独自に取り組んでおり、新しい住まい方として広がりを見せている。全国の自治体に先駆けてスタートさせた京都府と受託事業者に、事業のこれまでと今後の展望を聞いた。

学生に街への愛着を持ってもらうための“次世代下宿”

 政府が地方創生元年と位置付けた2015年、京都府も同年10月に「京都府地域創生戦略(第1期)」を策定。その中に、「京都ソリデール」の原案となった「若者と高齢者の同居を支援する新しい住環境のマッチングシステムづくり」が盛り込まれた。

京都ソリデールの事業スキーム(出典:京都府)
京都ソリデールの事業スキーム(出典:京都府)
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 明治時代から昭和の半ば頃までは、学生や若者の下宿生活はありふれたものだったようだが、昨今ではかなり珍しいものになっている。にもかかわらず、地方創生の文脈で、なぜ下宿なのか。京都府建設交通部住宅課計画係の和田由美子係長(課長補佐)は次のように説明する。

 「京都には“学生の街”という顔もある。大学進学を機に京都へ移り住む人も多い。ただ、大学卒業と同時に京都を離れる人もまた多い。せっかく京都に住んでくれた学生さんに、社会人になってからも京都に住み続けたり、京都と関わりを持ち続けたりしてもらうきっかけづくりが必要だと感じていた」

 京都府は人口10万人当たりの大学数が1.31校(2020年)で、47都道府県で1位。まさに“学生の街”だが、学生が一人暮らしをする場合、主に大学やアルバイト先で交友関係を広げることになり、地域には特になじむことなく卒業を迎えることになりがちだという。そうなると地域への愛着が育まれないので、京都に住み続けたり関わりを持ち続けたりする動機が生まれにくい。

 一方で、少子高齢化や核家族化が進んで、京都に長く住んでいる高齢者の住宅では部屋が余りがちになる状況があった。

 「高齢者の方は大きな家に単身や夫婦2人で住んでいるというケースも多いので、空き部屋という資産を地方創生にうまく活用できないかという視点もあった。そこで、学生と地元の高齢者が交流を持ちながら住んでもらえばよいのではないか、そのことが京都の活性化(地方創生)につながるのではないか、と考えた」(和田係長)

 「京都ソリデール」と従来の下宿との違いは、学生と地域の高齢者が共同生活を通じて交流することを意図的に目指した点にある。その結果として、学生に街への愛着が生まれることを期待する。京都府がそう呼んでいるように、 “次世代下宿”といえるだろう。

 京都府は2015年度にまず事業化のための調査を開始。国内の自治体には先行事例が見つからなかったため、フランス・パリの事例に学んだ。ソリデールという事業名称も「連帯」を意味するフランス語(solidaire)だ。他に、国内の民間事業者の取り組みや、大学での研究を参考にしたという。そして、2016年度から事業を開始した。

* 「第4回大学生の学習・生活実態調査」(ベネッセ教育総合研究所、2021年)によれば、大学生の6割強が実家住まいで、3割強が1人暮らし。寮に入っている人は3パーセント強で、「その他」は1.5パーセントという少なさだ。