格差解消の歩み、さらに前へ 朝日新聞社ジェンダー平等宣言6年
■gender equality 朝日新聞×SDGs
朝日新聞社が2020年4月に「ジェンダー平等宣言」を発表して6年になりました。これまでジェンダー格差解消のため、独自の数値目標を掲げて改善を進めてきました。現在地を検証するとともに、新たに始める取り組みを紹介します。
■表現や内容、メディアは常に点検を 東京大学大学院情報学環・田中東子教授に聞く
朝日新聞がジェンダー平等宣言を出して6年。この間も社会は大きく動いてきました。東京大学大学院情報学環の田中東子教授に、ジェンダー平等に向けてメディアが果たすべき役割について聞きました。
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メディアの発信は、ジェンダーイメージの形成に影響を与えます。かつて新聞、テレビ、雑誌でのジェンダー表現は「男性は仕事」「女性は家事」といったステレオタイプが多く、1980年代からフェミニズムの研究者に批判されるようになりました。
2010年代に入り、ジェンダー平等を意識した記事が目立つようになり、組織としてもガイドラインを作ったり自己点検を始めたりという動きが顕著になりました。朝日新聞でも、17年にジェンダーを考える企画「Dear Girls」が始まりましたね。
今ではニュースでもドラマでも、ジェンダーやセクシュアリティーに関する多様なイメージが伝えられるようになりました。ジェンダー表現の偏りやゆがみがあると、違和感を持つ人も増えてきました。
もちろん、課題は残っています。女性に関する表現はかなり多様化しましたが、男性は昔ながらの男性像があふれ、弱さを描写する表現は少ない。むしろ男性の描き方や切り取り方を多様化してほしい。
朝日新聞は「ひと」や「耕論」で男女や職業の多様性を持たせる努力をしていますね。次は内容です。新たなステレオタイプを作り出したりしていないか、常に点検しながら施策を進めてほしい。
現在、多くの企業がDEI(多様性・公平性・包摂性)やジェンダー平等を掲げています。ですが、実際の課題はまだまだある。
「A社がDEIを推進しています」といった表面だけでなく、記者が取材しないとわからない「実際のところ」に目を向けてください。企業に属さない女性やマイノリティーの人権の改善も、問い続けなくてはいけないと思います。
それと、インターネット。これまでメディアが作ってきた偏見や差別的なイメージであふれています。
メディアが記事をSNSやプラットフォームに載せると、コメント欄が誹謗(ひぼう)中傷ばかりになることがあります。特にジェンダー平等に関するニュースはネットが荒れやすく、女性やマイノリティーが自ら発信したり取材に応じたりすることを萎縮させる大きな要因でもある。放置すると誹謗中傷を加速させることになりますから、しっかり対応しなければなりません。
世界でもインターネットでの女性やマイノリティーへの差別や攻撃は多く、SNSの言論空間から撤退せざるをえなくなっています。それが収益になるからと、プラットフォーム側も放置しがちです。
こうした女性・マイノリティーへの差別や性暴力、ルッキズムに立ち向かえるのも、責任あるメディアの仕事です。問題に向き合い、調べ、社会課題化できるよう発信していってください。(構成・熊谷姿慧)
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たなか・とうこ 1972年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。専門はメディア文化論、フェミニズム。共編著に「ジェンダーで学ぶメディア論」。
■「信頼の錨」へ、多様な視点持って 朝日新聞社代表取締役社長・角田克
ジェンダー平等宣言は、朝日新聞社の報道と事業、そしてそれを担う人材のすべてに多様性を確保するという私たちの約束です。報道で理念を掲げるだけで、実態が伴わなければ説得力はありません。その自覚から、この宣言は始まりました。
私たちの取り組みは社外からも評価され、2025年度には大阪市の女性活躍推進に関する市長表彰で、大規模企業部門の最優秀賞を受賞しました。24年度の東京都女性活躍推進大賞優秀賞に続いての栄誉ですが、今後も結果を示し続ける責任があると受け止めています。
真偽不明の情報があふれる時代に、生活者が判断するための基点となる存在であり続けること――私はこれを「トラストアンカー(信頼の錨〈いかり〉)」と位置づけています。取材を尽くした確かな報道だけでなく、それを生み出す組織自体が多様な視点を内包していなければ、信頼は成り立ちません。多様性は企業としてのサステナビリティにつながり、ジェンダー平等はその土台を支えるものです。
このたび発足した「Think Gender Forum」では、記者やクリエーターが学び、その成果を市民のみなさんと共有し、対話につなげていきます。報道と共にこのフォーラムを通じて、社会のジェンダー平等の実現に貢献してまいります。
■「シンクジェンダーフォーラム」とは
朝日新聞社がジェンダー平等を推進する取り組みとして、シャネル財団の助成を受けて立ち上げたプロジェクト。7月にメディア関係者を対象としたセミナーを実施する。NHK「虎に翼」を手がけた脚本家・吉田恵里香氏が基調講演し、総合監修を田中東子教授が務める。2026年度下期には、一般の方が参加できる意見交換の場(ラウンドテーブル)を実施予定。7月のセミナーは、申し込み受け付け中(5月10日締め切り)。公式サイトはhttps://www.asahi.com/special/thinkgender/forum/
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