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戦争と徴兵制と

◉東野篤子筑波大学教授の朝日新聞記事が、議論を呼んでいますね。有料記事なので全文は読めませんし、読んでも内容を引用するのは物書きの仁義に反しますので、控えますが。東教授に関して言えば、ロシア専門家としてのその専門的な知識や見解はとても勉強になるのですが……。
戦争→動員→徴兵制→戦争反対→憲法9条バンザイ
の、手垢のついた思考停止ロジックに絡め取ろうとする朝日新聞の意図が、ちょっと見えてしまいます。

【ロシア、ウクライナから考える「戦時動員」という現実 東野篤子さん】朝日新聞

耕論 戦時の動員どう考える

 ウクライナ侵攻では、ロシア政府が戦場に市民を次々に動員しています。より自由な国というイメージのあったウクライナでも、侵攻開始直後に総動員令が発せられました。国家による戦時の動員を、私たちはどう考えるべきなのでしょう。「国民が国のために戦うとは何を意味するのか、考えて議論しておくべきです」と語る国際政治学者の東野篤子さん(筑波大学教授)に聞きました。

https://www.asahi.com/articles/ASR335R62R32ULZU001.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、新聞の写真です。

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■徴兵制度と民主主義■

Twitterやこのnoteなどでも、たびたび言及していますが、 戦争=徴兵制 という連想ゲーム自体が軍事音痴の証拠です。そもそも徴兵制というのは、国民国家と民主主義を支える根幹でした。フランスなどの絶対王政の時代、軍隊というのは国王のポケットマネーで雇われる、私兵のようなものでした。現在でも、バチカン市国にはスイス人傭兵の、衛兵がいますが。中世や近世の軍隊というのはそういうものでした。

ところがフランス革命が起きて、主権在民の国民国家が誕生すると、徴兵制度が敷かれます。それまで国防というのは王様の軍隊がやっている他人事でしたが、国民が国の運営に責任を持つからこそ投票権があり、国を守る義務も生じるわけです。この場合は義務というよりも責任と言った方がいいでしょう。そうやって動員されたフランス軍は、戦争にめちゃくちゃ強かったのです。

戦争のプロの傭兵の方が、個人個人を見れば技量的には徴兵よりも上でも。お金で雇われた傭兵は、自分が死にそうな状況になったらとっとと戦場から逃げ出します。ところが国民国家の徴兵は、愛する母国を守るため多くが死ぬまで戦います。第二次世界大戦でも、日系人部隊が、アメリカ史上最も多くの勲章を受けた部隊になった、理由のひとつです。親兄弟は強制収容所に入れられていて、自分たちが戦場で頑張ることが、アメリカに対する忠誠心の証明になるので。

■民主主義は戦争に強い■

しかも傭兵は有料ですが、国民国家の徴兵は基本的に無料で兵隊を集められます。しかも傭兵よりも、大規模に。数が圧倒的に多くて、意識が高い徴兵。そこにナポレオンという軍事の天才が出現して、フランス軍は連戦連勝。いきなり攻め込まれたドイツはボコボコにされ、国民国家の必要性を痛感します。それまでのドイツは江戸時代の日本と同じで、プロイセンやバイエルンなどの有力領主と多数の少領主の連合国家のようなものでした。

日本でも未だに「国はどこですか?」と聞くと、それは日本とかアメリカとか国籍を聞いてるのではなく、生まれ故郷を聞いているだけです。江戸時代の300諸藩は領主がいて軍隊があり、独自の分国法があり、藩札という独自の通貨さえあった准独立国です。でもそれでは、インドの藩王(マハラジャ)のように、西欧列強に個別撃破されて飲み込まれてしまうので、明治維新で廃藩置県をして中央集権国家を作ったわけです。

国民国家と徴兵による軍隊の出現は、ヨーロッパ各国に国民国家や立憲君主制度に移行して、対抗せざるを得ない状況を生み出したわけです。しかしこの徴兵制が有効だったのは、ナポレオン戦争の時代ぐらいまで。日露戦争の時代にはすでに、二百三高地攻略で兵隊の数に頼った力押しが、うまくいかなくなっています。コンクリートを使った要塞化と、進路を阻む塹壕と鉄条網。そして機関銃の出現によって、戦術が大きく変わってしまったのです。

■徴兵制度の限界■

しかし、この日露戦争の貴重な戦訓は、ヨーロッパにはあまり共有されず。第1次世界大戦になって初めて、高度に機械化・専門化された兵器の出現によって、徴兵制の限界が露わに。そこら辺のヤンキー兄ちゃんを徴兵してライフルを持たせても、戦車に勝てるはずがなく。戦艦や護衛艦の操船ができるはずもなし。日本では乃木希典大将は、司馬遼太郎の小説の悪影響で無能呼ばわりされますが、全く前例のない事態の中、むしろ頑張った方だと、個人的には思います。

いわんや、現在の軍隊においておや。20年以上前に産経新聞が世界各国の徴兵制を比較検討し、専門化した現代の軍隊では意識の高い志願兵でないと、運用は難しいという結論に達しています(ただし、徴兵制の代替として国の福祉作業に従事する人間のマンパワー頼りのため、徴兵制を廃止したくてもできない国もあるという事例も紹介されていた記憶が)。そしてこの見解は、安倍晋三元総理も国会で答弁しています。保守派の方が新聞も政治家も、よほど現実的なのです。

ところが日本の左翼は軍事音痴の上に勉強不足で、しかもその勉強不足を自覚していないくせにプライドだけはやたら高いので。戦争=徴兵制復活=怖い怖い怖い の阿呆陀羅経を、ひたすら繰り返すしかないのです。「今こそ共産主義を見直そう」なんて寝言と同じです。対案や代案を出さずに、反対反対とにかく反対何が何でも反対反対反対反対……で、知的怠惰をむさぼってきたからです。それでは、もう通用しません。

■暇空茜氏の疑問■

この東野篤子教授の論に対して、暇空茜氏が疑問を呈してちょっとしたバトルに発展していました。難攻不落と思われたツイフェミ陣営や大弁護団を相手に、孤軍奮闘しているゲーマーらしく、戦術論としての問題点を、指摘されているように見受けられます(言葉は行儀悪いですが)。内容については各自が判断すればいいと思いますので、自分は個人的に思ったことを、勝手に背乗りして語ってみようと思います。

風呂で考えたけど「国民が国のために戦うとは何を意味するのか、考えて議論しておくべきです」ってやっぱおかしいよ。
ウクライナをみて俺が思うのは「防衛費をあげて国防の準備をしよう、中国のその日は近そうだ」だよ。理想は抑止力が戦争を止めることで、次が職業軍人だけで戦争が終わることでしょ。
そんなときに全体主義臭のする「国のために国民が戦う意味の議論」なんて気色悪いことしても、パヨクが喜ぶだけでしょ。議論すべきは「増税と防衛費」じゃねえの?国民まで総動員されるような惨状から想定するのは変でしょ。
ロマンチストなのかバカなのか知らんけどピントズレてると思うわ。

ロシア連邦軍によるウクライナ侵攻以降、戦後ずっと軍事を情緒論で語ってきたツケが、吹き出してる感じですかね。日本の悪い癖で、都合の悪い未来を考えたくない言霊信仰で、先送り先送り。二進も三進も行かなくなってから、泥縄式に動くから、粗や歪みが出るんです。その点で、『海国兵談』を発禁にし、正論を語った林子平を弾圧した昔から、この国は変わっていないんです。

■孫子の兵法の柔軟性■

でも言論弾圧は、どこかに悪い権力者がいて、勝手にやってることじゃなくて。その背後には、不都合な未来をシミュレーションしない言霊信仰や、軍事を忌避する穢れの日本的文化と、それを支えてる大衆がいるんですよ。だから非武装中立論みたいなお花畑平和論は、核武装論のような極端な意見と、コインの裏表なんです。右も左も、極論を言う人は本質的に似ています。

孫子は戦争について『十なれば則ち之を囲む。五なれば則ち之を攻む。倍すれば則ち之を分かつ。敵すれば則ち能く之と戦う。少なければ則ち能く之を逃る。若かざれば則ち能く之を避く』と語っています。兵力が敵の10倍なら包囲し持久戦に持ち込んだり兵糧攻めにし、5倍なら攻撃し、2倍なら敵兵力を分断して各個撃破し、同じレベルならば風船する必要がある。戦力が少ないならば、戦闘をせず戦力を温存し、戦力差が大きければ戦争自体を避ける……という感じですかね。

重要なのは、各兵士の奮戦という精神主義的なものは、戦略が互角な時の要素であり、劣った戦力を精神主義でカバーしようなんて、アホな話ではありません。また「少なければ則ち能く之を逃る」は敵前逃亡のススメではなく。戦わなければ負けないのですから、むやみな戦争遂行による経済的な疲弊を戒める孫子の、戦争観に合致しています。「若かざれば則ち能く之を避く」も、戦争以外の方法論を模索するという感じでしょう。

■両極端はコインの裏表■

「戦争は外交の失敗」という、誰が言い出したか知りませんが、珍妙な言葉がTwitterでよく流れてきます。『戦争論』で知られるクラウゼヴィッツは、「戦争は政治的手段とは異なる手段をもって継続される政治にほかならない」と定義しています。戦争も外交も謀略も、政治の延長線という考え方です。ところが日本では、第二次対戦の大敗北による反動から、戦争を穢れとして忌避するか、特別視する風潮がずっと続いています。

「日本よい国、強い国、世界にひとつの神の国」と「日本は世界に誇る平和憲法を持つ、唯一の被爆国」は、一見すると真逆のように見えながら、日本は特別の国であるという思い込みという点で、おんなじです。前者がストレートな国粋主義であるのに対して、後者は捻じくれた国粋主義です。孫子は戦力バランスひとつでも、様々なグラデーションがあることを説いているのに、こういう極論に走る人間は右にも左にも一定数いるわけです。

孫子の言葉も、極右は「日本は10倍の戦力がないから、軍事費を10倍にしよう!」と解釈し、極左は「戦争は避けるのが最高、外交力で回避!」と解釈し、極論に走るわけです。そういう極論ではなく、状況に応じた柔軟な対応を損しは磨いているのに。んで、前者の極論が核武装論に、後者の極論が非武装中立論に、それぞれ繋がっちゃうわけです。

■軍事音痴の外交音痴■

極論もあっていいですし、議論の叩き台にもなるので。でも、日本の軍事議論は右も左も、素人の畳の上の水練に見えちゃいます。例えば『遠交近攻』という兵法があります。地理的に遠い国と同盟を結び、近隣国を挟撃する戦術です。これを現代に応用するならば、「日本はインドと経済や軍事で関係を深め、台湾有事には中印国境でインドが軍を動かすだけで、牽制になる」ってのが、戦わずして勝つ兵法になるわけです。

安倍晋三元総理大臣の日米豪印戦略対話は、まさに遠交近攻の具体例でしょう。ベトナムやフィリピンやモンゴルなど、中国と国境を接し、国境問題を持つ国との友好関係も、ここに繋がります。ところが外交外交と言う野党がやったのは、林芳正外相を国会日程を理由にG20外相会合を欠席させ、開催国インドのメンツを潰し、不快感と不信感を持たれたわけで。政治音痴にもほどがあります。

日米安保改定に強硬に反対し、ソ連・中国・北朝鮮の軍事独裁国家を利した学生運動の昔から、日本の左派は何も変わっていないのです。あの頃は、情報が少なかったから同情できる点もあるのですが。それでも1954年には福田恆存が、『平和論の進め方についての疑問』を中央公論というメジャーな雑誌に発表しているのですから。少なくとも、全学連の全共闘の学生たちや、左翼は総括すべきでは?

■悪者探しと悪魔化■

けっきょく、朝日新聞は軍事について専門家がほとんどおらず、「徴兵制怖い怖い怖い!」しか、意見がないわけです。まともに議論をすると、これまでの朝日新聞の主張を否定する可能性もありますからね。であるならば、孫子の兵法「少なければ則ち能く之を逃る」で、議論を先送りにするしかありません。こういう先送り体質はあらゆるジャンルで日本を蝕んでいます。チョックリーさんのこんな指摘をいただきました。

少子高齢化を考えれば、直間比率の見直しは必然であったし、先進各国で導入して成果を出していた消費税の導入は、不可避でした。ところが「公約違反の大型増税」の連呼で、中曽根内閣を退陣に追い込んだ成功体験からか、マスコミはずぅ〜っと消費税を目の敵にし続けて、令和の世になっても「とにかく消費税さえ廃止すれば昔のような日本に戻れる」と幻想を振りまくのです。

消費税を減税したり廃止しても、それはただの対処療法でしかなく。景気浮揚のための政策がなければ、雨漏りを直すバケツの数だけ増やすようなものでしかないのに。ここら辺は、とにかく日米安保さえ阻止できればOKで、その後の日本の安全保障についてロクな対案を持っていなかった、安保反対の学生たちと同じです。

■対案なき反対論は危険■

歴史に学べば、王安石の新法を廃止するだけで対案がなかった大学者の司馬光や、荻原重秀を失脚に追い込みながらロクな経済政策の対案がなくデフレを招いた新井白石など、大安がなく様を混乱させた大学者がいます。ただ、司馬光も新井白石も、お仲間の学者には高く評価され、後世の評判は長らく上々だったりします。マスコミを味方につけたリベラル学者が、批判を免れている現代と似ていますね。

東京都政でも、美濃部都政に青島都政に小池都政は、後楽園競輪廃止に都市博中止に豊洲市場移転反対にと、対案なき廃止論中止論で大衆の人気を博しますが、政治的には混乱させただけで。司馬光や新井白石の故事に、そっくりです。TBSラジオ劣化の象徴である荻上チキ氏や青木理氏も、批判だけして対案を出さず、対案を出せないことを居直るようなことを口にしていますが。

結論ありきの、反戦反自民反徴兵の朝日新聞論法でもなく、もうちょっと事実ベースのリアルな議論が、軍事に関しては必要なのですが……。日本のリベラルは、マスコミ・アカデミズム・法曹界に護られて、知的怠惰をずっと続けてきたので。安倍晋三元総理のモリカケには執拗に騒げても、一般社団法人Colaboの奇妙な会計と言い訳には、口を噤む。もうちょっと是々非々の議論ができませんかね?

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