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ポストフェミニズムとは、それまでのフェミニズムの呼称(第一波フェミニズム、第二波フェミニズム……)とはかなり異質な概念である。それは、新たなフェミニズムの運動の名称というよりは、およそ1990年代以降に支配的になった、フェミニズムが置かれている状況の名前だ。

イギリスの文化研究者アンジェラ・マクロビーの仕事と結びつけられることが多いポストフェミニズムについての議論は、近年日本の学問的フェミニズムでも盛んになされ始めており、私も前著『戦う姫、働く少女』(堀之内出版)で、ポピュラーカルチャーにからめながらそれを論じた。

ポストフェミニズムとは、ある種のフェミニズムが用済みであると考えられつつ、その一方で、別の種類のフェミニズムが可視性とポピュラリティを得るような状況のことである。用済みだと考えられた「ある種のフェミニズム」とは、第二波までのさまざまなフェミニズムが前提とした、人権の問題としてのフェミニズムということができる。

そして、それに代わってポピュラリティを得ている「別の種類のフェミニズム」とは、「ネオリベラル(新自由主義)フェミニズム」や「企業フェミニズム」といった別称が示すように、現在の市場万能主義的・個人主義的な新自由主義に合致する限りにおいてその存在が認められるフェミニズムである。

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市場で勝ち抜くことが「フェミニズム」?

このフェミニズムの代表としてよく批判されるのは、『リーン・イン』を著したフェイスブック(現メタ)のCOOであるシェリル・サンドバーグだろう。彼女は「リーン・イン(勇気を持って一歩を踏み出す)」ことでガラスの天井を破り、グローバル企業の重役となることを推奨し、それを実践した自分を「フェミニスト」とはっきり呼ぶ。女性が管理職や指導者になること自体は、確かに重要である。

しかし、それ「こそ」がフェミニズムだと考えられるとしたら、そこから排除されるものは多いだろう。このように、市場を独力で勝ち抜く女性のあり方こそが「フェミニズム的である」とみなされるような発想が、(批判も込めて)ポストフェミニズム(ポストフェミニズム状況)と言われているのだ。

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