市塔(しとう)承(しょう)さんの『女王陛下に捧(ささ)ぐ、王家の宝の在処(ありか)』(講談社)は、宝の保管場所を物語に潜ませた書物をめぐる、とびきり奇想に満ちた快作だ。めくるめく読書体験ができるファンタジーにして、戦争が各地で起きている現状を想起せずにはいられない。
神聖ニアニ共和国の大学院生、エリメは不慮の事故で婚約者を失った。ショックで昏倒(こんとう)し、約3カ月後、実家で目を覚ますと、記憶障害になっていた。とりあえず復学するため、首都へ向かう道中の暇つぶしに『女王陛下に捧ぐ、王家の宝の在処』という本を手にする。これは時の宰相が女王の命で書いた宝の保管場所を示す書だった。
この書の内容そのものが描かれるのだが、物語の構造がすさまじい。作中作が入れ子状態になって、何と5重の層をなしている。最初は面食らうのだが、読ませる工夫も随所にある。いつの間にか夢中になって読んでいた。描かれているのはニアニの歴史だ。国教である拝月教の横暴、王権との確執、異教徒への侵攻、かつて隆盛を誇っていた拝水教と隠された歴史と盛りだくさん。十分堪能してこの書物は終わる。けれど、あれ、宝の所在が…
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