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新型コロナウイルスに感染した心筋細胞が、等間隔にパキパキに折れていくことが分かった。ヒトiPSC由来心筋細胞に極めて少量のウイルスが感染した後わずか48時間で、筋原線維が個々のサルコメア単位へ分断。さらになぜかDNAが抜け落ちた「亡霊」のような細胞になっていた。 🕵️心筋細胞で大増殖していた 心筋細胞、心線維芽細胞、内皮細胞で状態が違っていました 1️⃣心筋細胞 (CM): ポンプのエンジン。ACE2(鍵穴)が豊富で、ウイルスがガンガン入って増殖していました。 2️⃣心線維芽細胞 (CF): 心臓の土台・パッキング。ACE2が少なく、感染しにくい。 3️⃣内皮細胞 (EC): 血管の内張り。ACE2が少なく、感染しにくい。 👉ウイルスは心臓の中でも最も重要な「エンジン」だけを狙っていました。しかも単にウイルスが入っただけでなく、「中で増殖し、外へ新しいウイルスを放出している状態」で、心筋細胞はウイルスの工場にされていました。 👞心筋細胞への侵入ルートは ACE2依存 + エンドライオソームです。肺の細胞では細胞膜の表面で鍵が開きます(TMPRSS2経路)が、心筋細胞では「細胞に飲み込まれてから(エンドライオソーム)、中の酸で溶かされて脱出する」という裏口ルートが主体でした。これが、心臓への感染を防ぐのが難しい理由の一つです。 🧱等間隔にパキパキと割れていた サルコメア単位 心筋細胞の「収縮エンジン」の最小ユニットです。心筋細胞は、このサルコメアが数珠つなぎになった「筋原線維」を束ねて作られています。論文で言われているのは、この数珠がランダムに千切れるのではなく、「ビスカットで切られたように、サルコメア1つ分ずつ、等間隔にパキパキと外れていく」という異常な壊れ方をしていました。単なる融解ではなく、構造的な切断が起きていることを示します。 🖍️研究者らはcTnT と α-actinin 2の染色で可視化した ・cTnT (心筋トロポニンT): サルコメアの「薄フィラメント(アクチン)」側に存在するタンパク質。↔厚フィラメント側は心筋の収縮力を生み出す「モーター(ミオシン)」が集まっている部分。ここが選択的に破壊されると、心臓のポンプ機能が物理的に奪われます。 ・α-actinin 2: サルコメアとサルコメアの境界線「Z盤」に存在するタンパク質。 見えた像: cTnT(薄)・α-actinin(境界)・cTnT(薄)というサンドイッチ構造が見えました。つまり、境界線は残っているが、その間の「厚フィラメント(ミオシン)」が消し飛んでいたのです。レール(薄フィラメント)は残っているのに、走るためのモーター(厚フィラメント)だけが綺麗に削ぎ落とされたような状態で、心臓はポンプとして物理的に機能しなくなります。 💦細胞側の必死の抵抗 myosin heavy chain 遺伝子群が上昇していた: モータータンパク質「ミオシン」の設計図です。RNA-seqでこの遺伝子群が異常に上昇していました。これは「モーターがハサミで切られているから、細胞が必死に補充しようとしている(代償反応)」と解釈できます。 ⚖️極めて少量のウイルスでパキパキになっていた MOI 0.006 と 0.1: ウイルスの濃度です。0.006は極めて薄い((細胞1000個に対してウイルスが6個程度=軽症に近い状態)。それでも48時間後には破壊が進んでいました。つまり、少量の感染からでも確実に壊れていくことを示します。 🧬DNAがない 核が見えない好酸性心筋細胞になっていました。H&E染色で、細胞の体(ピンク色)はあるのに、核(青紫色)がない細胞に。DNAが抜け落ちた「亡霊」のような細胞です。これは実際の患者の標本でも確認されました。 🔬透過電子顕微鏡 (TEM)で確認 光学顕微鏡の解像度を遥かに超える「超・顕微鏡」です。これで初めて、細胞内の小胞に詰め込まれたウイルス粒子や、サルコメアのZ盤の間がスカスカになっている様子(厚フィラメントの消失)が直接見えました。 🧐研究者らの解釈 驚くべきことに、心筋のモータータンパク質(ミオシンなど)にあるLKGGKという配列が、ウイルスが持つハサミ「PLpro」が切断する目印の配列と一致。つまり、ウイルスは自分自身を切り出すためのハサミで、ついでに心筋のモーターも切断している可能性が高いと仮説しています。 😏しかし 不気味なことに、明らかにウイルス複製中の細胞だけでなく、近くの dsRNA 陰性細胞(まだウイルスが感染していない細胞)にも周期的な心筋の構造的破壊が出ていました。つまり、直接感染だけでは説明しきれない波及があります。 先日、新型コロナのMproが脳の毛細血管の内皮を切断して空の糸状にしてしまうことをシェアしましたが、今回はウイルスが持つもう一つのハサミ「PLpro」が、MOI 0.006という極めて薄いウイルス濃度でも心筋細胞をブロックごとに切断してパキパキにしてしまうことが分かりました。 iPSC心筋細胞だけではなく、患者心筋標本でも同様に確認されたということで、ごく僅かなウイルス量でも起こり、しかもまだ直接は感染していない細胞にまで波及する現象です。 心筋障害そのものは他のウイルスでもあります。ただ、等間隔のサルコメア断片化、厚フィラメント寄りの選択性、そして核DNA喪失、近傍の dsRNA 陰性細胞にも出る、という特徴は、新型コロナに高い固有性です。