不十分な調査が広げた心の傷 14年前のいじめ、鳥栖市は検証を
佐賀県鳥栖市立中1年の時にいじめに遭った被害者は、14年たった今も心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいます。
心身の傷はなぜここまで広がったのか。長崎支局の樋口岳大記者は、学校や市教委のこれまでの対応に問題があったためだと考えます。
樋口岳大(長崎支局)
「学校や市教委は事実調査を徹底せず」
「極めて重大で深刻ないじめだった」。佐藤和威(かずい)さん(26)が鳥栖市立中1年だった2012年、約7カ月にわたって複数の同級生から受けた暴力などについて、市教育委員会の第三者委員会は今年3月、答申した調査報告書でそう結論付けた。
さらに、学校や市教委が事実調査を徹底しなかったことが、佐藤さんの精神症状を悪化させたと断じた。佐藤さんは「組織的に責任を回避し、事態を沈静化させようとしたためだ」と指摘する。
凄惨(せいさん)ないじめで佐藤さんが心身に負った傷を「調査を徹底しないこと」で回復しがたいレベルまで広げてしまった責任に、学校関係者は真摯(しんし)に向き合うべきだ。
「学校や市教委が事実を明らかにし、対応してくれていたら、身体的にも精神的にもここまでひどくはなっていなかった」
3月26日、佐藤さんは第三者委の答申を受けた後の記者会見で声を震わせた。今も心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しみ、治療を続けている。家族の付き添いなしでは外出もままならず、仕事に就くこともできない。
第三者委の報告書などによると、佐藤さんは12年4月の中学入学直後から、複数の同級生に学校の内外で、エアガンで撃たれる▽「プロレスごっこ」と称して暴力を受ける▽包丁を向けられる▽顔に殺虫剤のスプレーをかけられる▽30万円以上を脅し取られる――などの被害を受けた。
病態悪化招いた学校などの対応
佐藤さんを診た複数の精神科医は「凄絶な被害に加え、学校などからの不誠実ともいえる扱いを受けたことが病態の悪化につながっている」「(学校や市教委の対応は)大人は信用できないという否定的認知の上塗り。症状は教員らによる対応が影響している」と指摘した。
第三者委も学校側の対応を「極めて不適切」と批判。「再々被害を訴えたが納得のいく調査をしてもらえなかったことなどが症状を悪化させた。徹底した調査が早い段階でされていれば、重い精神症状に苦しめられることはなかったかもしれない」と述べた。
いじめは12年10月、同級生が教師に伝えて一端が発覚した。
初めて被害を知った家族が佐藤さんの体を見るとあちこちに赤黒いあざができていた。「ばらしたら家族も同じ目に遭わせる」と脅されていたため、見つかったことでかえってパニックに陥り、卒業するまで登校できなかった。
何度も自ら命を絶とうとした。卒業後に学んだ高校では、佐藤さんが飛び降りないよ…
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