軍隊でドクロのマークは珍しくない
陸上自衛隊第1師団第1普通科連隊は5月2日、先月末に発表していた第4中隊の新しいロゴについて使用を中止すると発表しました。インターネットのSNS上で批判的な意見が続出したからという理由です。出典:@1i_nerima
陸上自衛隊第1師団第1普通科連隊第4中隊のロゴ
批判された主な理由
「AI生成されたものだ」
「他国の軍隊のロゴに酷似している」
「頭蓋骨のドクロが好戦的だ」
「鎖の意味が分からない」
「小銃の種類がおかしい」
「日本のロゴらしくない」
ただし「他国の軍隊のロゴに酷似している」とされたものはよく見ると、実はそのタイの国境警備警察の射撃クラブのロゴもAI生成物でした。右下にGeminiの透かしのマークが入っています。出典:ชมรมกีฬายิงปืนตำรวจตระเวนชายแดน
タイ国境警備警察の射撃クラブのロゴ(右側)
両者が似てしまったのは、おそらくAIに対して同じようなプロンプトを指定したら同じような生成物が出力されたというだけなのでしょう。陸上自衛隊第1師団第1普通科連隊第4中隊がゾウをシンボルにしているのは以前からのもので、手書きだった従来のデザインの方がシンプルですが個性があったのです。
頭蓋骨のドクロは好戦的で許されないロゴだろうか?
今回の騒動ではAI生成での没個性への批判とは別に、「頭蓋骨のドクロのマークは好戦的だ」という意見が多く寄せられました。中には「ドクロのマークはナチス時代のドイツで用いられた経緯から現代の正規軍では避けられてる」という事実無根の間違った主張まで広く拡散されてしまっています。しかし実際には世界の軍隊ではドクロのマークは一般的ですし、自衛隊でも既に採用済みのものでした。
頭蓋骨のドクロがシンボルの軍の部隊
- アメリカ海軍第103戦闘攻撃飛行隊「ジョリー・ロジャース」
- アメリカ海軍第34戦闘攻撃飛行隊「ブルー・ブラスターズ」
- アメリカ海軍イージス駆逐艦「キッド」
- 韓国陸軍第3歩兵師団「白骨部隊」
- 航空自衛隊飛行教導群(小松基地公式HP)
- イギリス陸軍第3師団第3深部偵察攻撃旅団装甲騎兵偵察連隊「ロイヤル・ランサーズ」
- エストニア陸軍第2歩兵旅団歩兵大隊「クペルヤノフ」
- ウクライナ陸軍第72独立機械化旅団「チョールニ・ザポロージュツィ」
※ここで紹介した各国の部隊は一部のみ。探せばもっと他にもあるでしょう。
このように軍隊の部隊で頭蓋骨のドクロのマークは珍しくありません。ドクロというだけでは否定されるようなものではないのです。ただしそれはドクロである必然性、歴史的な伝統的な意味が必要なのだと思います。陸上自衛隊第1師団第1普通科連隊第4中隊は伝統的に動物のゾウのロゴを使用してきました。ですが今回、突然にドクロが出てきました。おそらくAIが勝手に生成したのでしょう、他国の軍隊のマークでドクロはよくあるものですからAIが学習してしまったのです。
特に意味もなく出て来たドクロを採用する必然性は無く、新案の第4中隊のロゴは撤回されました。撤回自体は妥当な判断だと思いますが、批判の側から「ドクロのマークは現代の正規軍では避けられてる」などという間違った主張が広く拡散されてしまうなど、デマが吹聴されてしまったのは残念に思います。
イージス駆逐艦「キッド」の巨大なドクロの海賊旗