f3e9ee10 No.877
「ふふ……ぐふふっ……」
鏡に今の自分の姿を映して悦に浸る。
儂の名前は村永清彦。54歳のしがない会社員、だった。たまたま調査に行ったライバル企業の新入社員の女を一目で気に入った儂は、階段の踊り場で彼女を呼び止めて今晩食事にでも誘おうとしたのだが、強く拒否されてしまう。激しく揉み合う内に階段を踏み外して2人で転がり落ち、気付いたら儂はこの女と身体が入れ替わっていた。
儂の身体に入ったこの女が元に戻ろうと方法を考えていたところだったが、儂にはそのつもりはなかった。若く、活力に溢れ、何より美しい身体。突然女になることを差し引いてもお釣りが来る。
そう考えた儂は新たに手に入れたこの女の声を使って悲鳴をあげ、警備員に元儂のカラダを捕えさせることに成功したのだった。
女は儂の声で「私が双葉なの!」や「あの男と入れ替わったの!」と事実を伝えているが、誰も信じようとはしない。儂は心置きなく、この双葉という娘の肉体と人生を貰い受けることにした。
133ed034 No.889
とりあえずは、パニックになっているのを演じて、やり過ごすそう。
どうにかして、この女になりすまして生きていく必要があるからな。
記憶をつかさどっている脳は今の体にあるわけだし、記憶も見ることができれば、いいのだが。
ガタガタと体を震わせていたら、イケメン男性が颯爽にあらわれて、お姫様抱っこで医務室まで運んでくれた。
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(王子様、颯爽に登場!?)
そんなことを考えながら、その男性のお姫様抱っこに甘えさせてもらう。
その男性が歩くたびに、この体のおっぱいが揺れる.
それならば、お姫様抱っこをされながら、少しその男性にしがみつきおっぱいを当ててみた。
しかし、その男性は動揺することはなかった。
どうしてだろう、と考えてみると『だって私の彼氏だから、当たり前か』との思考が流れてきた。
『この男性は園田 力也(そのだ りきや)。営業部のエースで私のイケメン彼氏。私のこと心配して来てくれたんだ……。うれしい♪』
なんと、この女の記憶が少しずつ読めるようになっていた。
俺は、お姫様抱っこされつつ、おっぱいを押し当てながら、この女こと双葉の記憶を読み取ることにした。
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「大丈夫かい?」
医務室のベッドに寝かせて、優しく話しかけてきた。
「うん。大丈夫。」
まだ十分に双葉になりきれるだけの記憶を得ることができていなかったが、俺は双葉らしく返事をして見せた。
「なら、よかった。申し訳ないけど、今から重要な会議だから、少し離れるけど、また、ここにくるよ」
俺(双葉)の手を握りしめて、力也は颯爽と医務室から出て行った。
とりあえずはこのまま医務室のベッドに横になりながら、双葉の記憶をのぞかせてもらおう。
だって、この双葉の体はもう俺のもだからな。
それくらいの権利はあるってものだ。
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医務室のベッドで布団を被ったじょうたいで、双葉の胸の感触を楽しむ。
乳首が硬くなっているので、そこを集中に触ったり、つねったりして、その快感を楽しんだ。
本当ならばもっと楽しみたかったが、30分後ぐらいに力也がお見舞いにきたので、その程度しか楽しむことができなかった。
夕方前に刑事からの聞き取りがあった。
任意での協力依頼であったため、隣にいた力也は「明日にしてくれませんか」と言ったが、俺の体と本物の双葉の精神がどんな状態かを知りたかったので、聞き取りに協力することにした。
刑事の話によると、『「本物の双葉は私だ」と叫びまくり、話にならないため、精神科病院に入院をさせる手はずになっている』とのことだった。
よし、それならば、本物の双葉には悪いが、今の状況を上手く使わせてもらおう。
「あの人、ライバル企業の社員さんみたいなんですが、私を前からストーカーみたいなことをしていて…今日だって、階段の踊り場で声をかけられて……うぅぅ…」
最後は涙を流して怖がる演技をしてみた。
涙は女の武器って言うぐらいだし、この双葉って女はすぐに泣くことができる特技もあるみたいなので、それを使わせてもらった。
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刑事からの聞き取りはまた後日となった。
刑事も双葉(俺)のことを被害者として、取り扱ってくれているのでそこは柔軟に対応してもらえるとのことだった。
双葉のマンションに帰ろうとおもって準備をしていたところ、力也が「今日は心配だから、俺が送っていくよ」と歯をキラキラさせながら話しかけてきた。
ここは力也の言葉に甘えることにして、双葉のマンションまで車で送ってもらうことにした。
力也の車でマンションに送ってもらっている途中。
『このルートだったら、たしかアソコに高級ラブホテルがあったな。』と、思いついた。
これは俺の記憶ではなく双葉の記憶からで、以前に力也と一緒に利用したことがあるみたいで、その記憶から思いついた。
なら、今日は一人でこの双葉の体を楽しもうと思ったが、それよりも力也に協力してもらって、楽しませてもらおう。
「力也さん……ちょっと気分が悪くなったみたい……。どこか、休憩する場所ないかな?」
これで、力也はどんなアクションをしてくれるだろうか。楽しみだ。
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「我慢できそうにない?」
そう聞いた後に「うん、今すぐ横になりたいの。」と俺はそう答えた。
その答えに力也は少し気まずそうに「確か、ホテルが近くにあるから、そこに行ってみる?」とさらに質問をしてきた。
さすがラブホテルと言わないところがスマートだ。
なので俺は「うん」と答えた。
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ホテルに着いたのはいいが、これからのことを『どうしよう?』と力也は悩んでいる表情だった。
なので俺は、
「ちょっと気分がよくなったから、ここでシャワーを浴びて気持ちを切り替えたい」
と、力也に伝えた。
渡りに船だったみたいで力也は「わかった」と答えてくれた。
部屋のバスルームはラブホテルだからなのかベッドから丸見えのガラス張りだった。
本当はシャワーオナニーとかを楽しみたかったが、ここは太刀葉になりきることを楽しむことにした。
だから、バスルームで服を脱ぐ時には力也にその体を見せつけるようにエロい仕草を時折織り交ぜてセックスアピールをしてみた。
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シャワーはとても気持ちよかった。
若い体は水をはじく。
中年親父の体はじっと、と水分は広がるだけだったので、新鮮な感覚だった。
本当なら体の感度を確かめたかったが、ベットにいる力也の視線があったので、双葉の記憶にある双葉が普段しているお風呂の流れをなぞってシャワーを浴びた。
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それからいろいろあった結果、力也は双葉ことワシを抱いた。
「私の不安を力也が上書きして」
と、バスローブ姿で目をウルウルさせてお願いしたら、すぐにバスローブを脱がされた。
あんだけお風呂でエロい仕草とかしていれば、力也も限界だったんだろう。
双葉の記憶のなかでも、最高レベルに激しいセックスみたいだ。
抱かれているワシも男同士という抵抗もあったが、双葉の記憶に影響されていているようで、最後の方はその快感に酔いしれていた。
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力也は俺(双葉)を抱き締めながらいきなりディープキスをしてきた。
舌が俺(双葉)の口の中に強引に入って口の中で俺の舌を絡め取ろうと動き回る。
俺も双葉の記憶の中にある普段しているように、力也の舌に絡める。
「ん……、ん…」
「ん……、ん…」
ラブホテルの部屋には声にならない声だけが響く。
双葉の記憶をメインにするとそのキスは気持ちいいんだが、なんか複雑な気持ちになる。男相手にキス、それもディープキスをするのは気持悪いのだが。
双葉の体は興奮している。
その興奮にのまれて俺は不快というよりも気持ちよさを求めているような気持ちになっている。
今は双葉の感情に支配され始めているみたいだ。
そんなキスをしていると、力也は俺(双葉)の胸に手をのばしてきた。
胸を手で撫でられ、そしてもみ始めた。
ただ揉まれているだけなのに、俺(双葉)の胸の奥からあったかさと気持ちよさを感じる。
「あっ……」
俺(双葉)の口からかわいらしい声がこぼれる。
その声に反応して、力也はさらに俺(双葉)の体中を愛撫しはじめた。
そして、俺はその快感にすっかり翻弄されてる。
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それから、力也は丁寧に俺(双葉)の体を愛撫してくれた。
そうすると、俺(双葉)の股間からヌルヌルした液が漏れているのに気づいた。
そして、気づいた時には、力也のそそり立っているものが急に愛しくなった。
『あれが欲しい!!あれを入れてほしい』
男の体だったときには考えることすらなかった感情と思いが頭を支配した。
『何を考えているんだ!!』との思いが一瞬よぎったが、すぐにかき消され、俺(双葉)は自然と股間を広げていた。
力也も俺(双葉)の思いに気づき、俺に覆いかぶさってきた。
すぐに股間に今まで感じたことない、入れられる感覚と快感が体を走った。
力也はやさいく丁寧に腰を動かして、俺(双葉)を気持ちよくさせてくれた。
「あぁ!、ああん♪」
「あん、あん、あん、いい、いいの、いいの!!」
だから、俺も双葉に成りきって抱かれた。
後半は力也も激しく腰を動かし、俺(双葉)の膣の触感を楽しみ始めた。
俺(双葉)の壁に当たるたびに俺は行きそうになる。
「んん!だめぇ、あああん!!いい、とっても、ああ、だめぇ、いきそう!!」
もう、完全にメスになった俺はなんとか双葉になりきっていくことだけに集中するので精一杯だった。
その声に反応したのか、力也のアソコが急激に膨らんできたのがわかった。
さらに激しい快感が体を襲ってきて、無意識にぎゅっと両手と両脚を力也を絡みついてしまった。
「お、おれ…あたしも、ああ、い、ちゃう!!」
ついにいってしまった。
力也も同じ瞬間、いったみたいだった。おなかの中に熱い液体が注ぎ込まれたのがわかった。
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朝、目が覚ますと目の前には全裸の男、力也がいた。
(そうだった、双葉と入れ替わって、昨日はエッチしたあとそのままお互いに寝入ってしまったのか)
そんなことを考えていると、力也も起きてようで、目覚めた瞬間に俺(双葉)を抱きしめてきた。
「……やめろって。」
俺は、精一杯「彼女」らしい声音を意識して、力也の胸を軽く押し返した。
昨夜の経験から学んだのは、下手に拒絶するよりも、少し甘えるような素振りを混ぜたほうが、男という生き物は納得しやすいということだ。
「なんだよ、つれないな」
力也は苦笑いしながらも、素直に手を離してくれた。
助かった。
俺は急いでお風呂場に向かいシャワーを浴びた。
シャワーの後は洗面台に向かい、バックの中から化粧品のポーチをを睨みつけて化粧を始める。
(落ち着け。鏡の中の『彼女』をよく見ろ。記憶の中から、彼女がどう笑い、どう振る舞っていたか、必死に思い出せ……)
記憶の底にある彼女の仕草を、パズルのピースを埋めるように自分に当てはめていく。
慣れない手つきで筆を動かし、肌の赤みを消し、瞳に力を宿らせる。
鏡の中の「俺」が、少しずつ完璧な「美女」へと作り替えられていく過程は、まるで自分という存在が塗り潰されていくようで、吐き気がするほどに刺激的だった。
「ねえ、今日のメイク、変じゃない?」
俺はあえて、彼の方を振り返って小首を傾げた。
彼女がよくやっていた、計算高いようでいて無垢なポーズ。
「……いや。最高に綺麗だ。やっぱり、今日はおかしいくらい色っぽいよ」
力也の視線が、俺の唇に、そして喉元に絡みつく。
その欲望に満ちた眼差しを浴びて、俺の心の一部が奇妙な高揚感を覚えた。
男だった頃の俺なら、こんな視線を向けられることなんて一生なかった。
「……そう? 嬉しい」
俺は、自分でも驚くほど自然に微笑んでみせた。
それは、彼を騙せているという優越感なのか。
それとも、この完璧な肉体を与えられたことへの、無意識の肯定なのか。
(俺はなりすましているだけだ。こいつを騙して、これからの人生を楽しむ。……それだけだ)
自分に言い聞かせながら、昨日来ていた服を双葉の記憶を使い、彼の前で堂々と着替え始めた。
俺の正体を知らない彼を、この体でどこまで狂わせることができるのか。
そんな、歪んだ快感が、静かに、だが確実に芽生え始めていた。
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力也の車に揺られ、ようやく辿り着いた双葉のマンション。
オートロックを抜け、彼女の記憶を頼りに暗証番号を打ち込む。カチリと音がして扉が開いた瞬間、ふわりと柔軟剤と微かな香水の香りが鼻をくすぐった。
「……お邪魔します、か」
独り言が、女の声で部屋に溶ける。
力也は「下で待ってるから、ゆっくり準備しなよ」と、どこまでも紳士的に送り出してくれた。
都合のいい男だ。俺は一人、双葉の生活空間へと足を踏み入れた。
まずは着替えだ。昨日の揉み合いと、その後の力也との情事で、服はもうボロボロだ。俺は寝室にあるクローゼットを勢いよく開け放った。
「ほう……。なかなかの品揃えじゃないか」
整然と並ぶブラウス、タイトスカート、そして奥の引き出しには色とりどりの下着達。
俺は指先でその繊細なレースをなぞった。
54歳の男の指にはあまりにも不釣り合いな、柔らかい布の感触。
「今日の私は……少し『守ってあげたくなる』感じがいいかしらね?」
双葉になりきって、わざとらしく独り言をこぼす。
選んだのは、清楚な淡いブルーのブラウスと、膝丈のフレアスカート。
そして下着は、あえて地味すぎず、かといって攻めすぎないベージュのレース。
鏡の前で、下着姿の自分を眺める。
昨夜、力也に散々弄ばれたこの肢体。
赤みの残る肌を指でなぞると、脳の奥に昨夜の熱い感触がフラッシュバックし、股間がツンと疼いた。
「ふふ……。村永清彦、お前は今頃、鉄格子の向こうで発狂してるんだろうな。ご愁傷様。お前の『宝物』は、今俺が最高に活用してやってるぞ」
準備を整え、マンションのロビーへ降りる。
車の中で待っていた力也は、俺の姿を見るなり、一瞬だけ目を見開いた。
「……双葉、大丈夫? 顔色が少し悪いみたいだけど」
「あ……ごめんなさい。ちょっと、昨日のことを思い出してしまって……」
俺は視線を伏せ、ブラウスの裾をぎゅっと握りしめた。
『恐怖に震える、か弱きOL』。
これこそが今の俺に与えられた最強の役職だ。
「無理しなくていいんだよ。会社、休んでもいいんだぞ?」
「ううん。じっとしていると、あの男の顔が浮かんできて……。仕事に集中していた方が、忘れられそうな気がするの」
潤んだ瞳で力也を見つめると、彼はたまらずといった様子で俺の肩を抱き寄せた。
男の庇護欲を煽るのは、思っていた以上に簡単だ。
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会社に到着すると、エントランスにはまだ独特の緊張感が漂っていた。
昨日の騒動は、すでに社内の噂になっているはずだ。
俺は力也の数歩後ろを、少し怯えたような足取りで歩く。
エレベーターホールで、同僚らしき女たちがこちらを見てヒソヒソと囁き合う。
「ねえ、あれ斉藤さんじゃない?」
「災難よね、変なストーカーに襲われるなんて……」
その声を聞くたびに、俺はわざとらしく肩をビクつかせた。
内心では、笑いが止まらない。
俺を指差して同情しているお前ら。お前らが蔑んでいた「しがない中年男」が、今、お前たちの憧れる「マドンナの皮」を被って、真ん中を堂々と歩いているんだ。
「大丈夫だよ、双葉。俺がついているから」
力也が耳元で囁く。その甘い声に頷きながら、俺は双葉のデスクへと向かった。
これから始まるのは、単なる仕事ではない。
最高にエロティックで残酷な「成りすまし人生」の幕開けだ。
「……おはようございます」
悲劇のヒロインを演じながら、デスクに座り、PCの電源を入れた。
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デスクに座り、PCの電源を入れると、すぐに内線電話が鳴った。
「斉藤さん、部長です。ちょっと……いや、かなり急ぎなんだけど、第3会議室まで来てくれるかな。例の件で、相手方の会社が来ているんだ」
部長の声はひどく恐縮しており、俺は「……はい、わかりました」と、消え入りそうな声で答えた。いよいよ、俺を「しがない会社員」として扱ってきた連中との対面だ。
第3会議室の扉を重々しく開けると、そこには双葉の上司であるマーケティング部長、そしてなぜか営業部のエースである力也も同席していた。
「力也……どうしてここに?」
「あ、双葉。驚かせてごめん。営業部としても今回の件は看過できないし、何より君のことが心配だから、部長にお願いして同席させてもらったんだ」
力也は頼もしい眼差しを向けてくる。
マーケティング部と営業部の合同会議という体裁だろうが、実際は彼の「彼女を守りたい」という公私混同に近い執念だろう。
俺は心の中で鼻で笑いながらも、不安げに彼の隣に腰を下ろした。
向かい側には、見覚えのある禿げ上がった頭が二つ。
俺が昨日まで勤めていた、会社の営業課長と人事部長だ。
「この度は……弊社社員、村永清彦が、斉藤様に多大なるご迷惑をおかけしたこと、誠に申し訳ございませんでした!!」
二人が同時に、机に頭を叩きつけるような勢いで土下座を繰り出した。
「村永は……日頃から真面目な男だと思っておりましたが、まさかこれほどまでの不祥事を起こすとは……。管理不行き届き、弁解の余地もございません!」
(ふふ……あははは!)
俺の心の中は、爆笑の渦だった。
この課長、いつも俺に「村永、お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ」と毒づいていたくせに、今ではその「代わり」の一人に平身低頭、涙ながらに謝罪している。
「頭を上げてください。村永さんは、どうしてあんなことを……」
俺はハンカチで目元を抑え、掠れた声で演技を続けた。
「はい……。警察の取り調べでは、支離滅裂なことばかり叫んでいるようでして。『俺が双葉だ』だの『入れ替わった』だの……。精神鑑定も含めて検討していると聞いております」
「そんな……。怖い、本当に怖いです」
俺はわざとらしく肩を震わせ、隣の力也に寄りかかった。
力也は怒りに顔を歪め、相手方の連中を鋭く睨みつける。
「話にならないな。そんな男を野放しにしていた貴社の責任は重いですよ。双葉……いや、斉藤が受けた心の傷をどう償うつもりだ?」
力也の追及に、元上司たちはさらに体を小さくして震えている。
昨日まで俺にパワハラまがいの説教をしていた連中が、俺の「美貌」と「偽りの恋人」の前に屈服している。
この支配感、たまらない。
哀れな「村永清彦」への引導
「……あの、課長さん」
俺は、すっかり怯えきった様子の元上司に、優しく、それでいて残酷なトーンで声をかけた。
「私、あの人が警察の方に連れて行かれる時の目が忘れられないんです。もし……もしあの人がまた戻ってきたらと思うと、怖くて夜も眠れません」
「ご安心ください、斉藤様! 村永は即刻懲戒解雇にいたしました。二度と、二度と御社、そして貴女様の前に現れることはありませんから!」
「……そうですか。それを聞いて、少し安心しました」
俺は安堵したように微笑んだ。
これで、村永清彦という男の社会的立場は完全に消滅した。
あの中に閉じ込められた「本物の双葉」は、もう一生、日の当たる場所には戻ってこれないだろう。
会議室を出る際、俺は力也の腕にぎゅっとしがみついた。
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会議室を出た後、力也はもっと一緒にいたそうにしていたが、マーケティング部の同僚女子たちが「双葉、大丈夫だった!?」と嵐のように押し寄せてきた。
「力也さん、ありがとう。あとは皆がいるから大丈夫」
「……わかった。何かあったらすぐ連絡して」
名残惜しそうに去る力也を見送り、俺は4人の同僚女子に囲まれてランチへと向かうことになった。
連れて行かれたのは、村永清彦の小遣いではまず縁のなかった、路地裏にある隠れ家風のイタリアン。
白を基調としたテラス席、テーブルにはハーブウォーター。メニューを見れば、パスタ一皿で昨日の俺の飲み代が吹き飛ぶ価格設定だ。
「ここ、予約取れないんだけど、双葉のために頑張っちゃった!」
「本当に災難だったね、あの『ムラナガ』だっけ? キモいおじさん」
(ふん、キモいおじさん、か。今はそのキモいおじさんに、お前らの憧れの双葉様が乗っ取られているとも知らずに)
俺はフォークでサラダのルッコラを上品に巻き取りながら、弱々しく微笑んだ。
「それでさ、実際何されたの? 階段で突き飛ばされたって聞いたけど」
「変なこと、されなかった? 大丈夫?」
彼女たちの目は、心配しているフリをしながらも、ゴシップを期待してギラギラしている。
女の連帯感というのは、実に薄気味悪い。
「……よく、覚えていないの。ただ、あの人の目がすごく濁っていて、私を捕まえて離してくれなくて……。気付いたら下に転がり落ちていたわ」
「うわぁ、マジでホラー。警察では『自分は双葉だ』とか言ってたんでしょ? 完璧に頭イカれてるよね」
(ああ、イカれてるよ。お前らが今話している本物の双葉の精神は、俺の加齢臭のする古い体の中で今も泣き叫んでいるだろうよ)
「本当、怖かった……。でも、みんながいてくれるから、こうして会社にも来れたの。ありがとう」
俺が少し目を伏せて「健気な被害者」を演じると、女たちは「双葉は悪くないよ!」と勝手に盛り上がり始めた。
一通り事件の話題が済むと、女たちの本命――力也の話題に切り替わった。
「それよりさ、さっき力也さんが付き添ってたの、社内騒然だよ? 公認仲だけど、あんなに堂々と守ってくれるなんて王子様すぎ!」
「昨日の夜、力也さんと一緒にいたんでしょ? ……どうだったの? 慰めてもらった?」
下世話な質問が飛んでくる。彼女たちの顔には隠しきれない嫉妬が混じっている。
「……ええ。彼、ずっとそばにいてくれて。昨日は……あまりに不安で、彼の腕の中で泣き疲れちゃって、そのまま朝まで……」
(朝まで「抱きつぶされた」んだけどな。男相手に喘ぐなんて、村永清彦の人生では想定外だったが、あの感触は悪くなかったぞ)
「きゃー! やっぱりお泊まり!?」
「双葉、顔赤いよ? もしかして、いつもより激しかったんじゃない?」
「もう、やめてよ……。今はそんな気分じゃ……」
俺は顔を赤らめ、頬を手で覆った。
男の霊が宿っているとは夢にも思わず、女たちは「双葉って意外とウブなんだからー!」と笑い転げている。
パスタの味なんて正直よく分からない。
だが、こうして「若くて美しい女性」の特権階級に混じり、自分を虐げてきた世界を上から眺める気分は最高だ。
(村永清彦だった頃、お前らは俺が横を通るだけで鼻をつまんでいただろう。今、俺はその輪の中心で、お前らの羨望を一身に浴びている)
「あ、そうだ。午後から企画会議だけど、双葉は無理しないで座ってるだけでいいからね」
「課長にも言っておいてあげる。今日は『お姫様扱い』決定!」
「ありがとう、みんな。……本当に、助かるわ」
俺は心の中で嘲笑を浮かべながら、デザートのティラミスを口に運んだ。
双葉の記憶が馴染むにつれ、彼女の仕事のスキルや人間関係も手に取るように分かってくる。
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午後のマーケティング会議。
議題は新製品のプロモーション戦略だったが、重苦しい空気の中に「被害者」であるはずの私が入室すると、周囲は一斉に同情の視線を送ってきた。
だが、俺はそれをあざ笑うかのように、双葉の記憶と村永としての狡猾さをフル回転させた。
「今回のターゲット層ですが……従来のデータ分析に加え、ライバル企業の動向を精査した結果、このアプローチが最適だと判断しました」
俺は淀みない口調でプレゼンを開始した。
双葉の持つ天性のプレゼン能力に、村永が長年培ってきた「相手の裏をかく」営業的視点を組み込む。
村永だった頃、あのライバル企業で俺が泥水をすするようにして集めていた内部情報。
それを「独自の分析結果」というオブラートに包んで吐き出すだけで、会議室の空気は一変した。
「……素晴らしい。斉藤さん、あんな事件の直後なのに、これほど鋭い視点を持っているとは」
部長が感嘆の声を漏らし、周囲の同僚たちも驚きに目を見開いている。
事件のショックを感じさせないその「強くて優秀な女」の姿は、周囲の尊敬を勝ち取るだけでなく、一種のカリスマ性すら帯び始めた。
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会議を完璧に支配した全能感。
それが俺の身体——いや、双葉の身体を内側から熱くさせた。
「少し、気分が……」
そう言って会議室を後にすると、俺は足早に女子トイレの一番奥の個室へ滑り込み、鍵をかけた。
「……はぁ……っ」
密室になった瞬間、双葉の声で吐息が漏れる。
会議での緊張と、周囲を騙し抜いた征服感が、この若く敏感な肢体をうずかせていた。
俺は便座に座り、まずはピンと張ったタイトスカートをまくり上げた。
淡いベージュのストッキングに包まれた、細くしなやかな脚。
男だった頃には、指一本触れることすら許されなかった聖域が、今は自分の意思で動く。
まずは、ストッキング越しに股間を撫で上げた。
「んん……っ」
薄いナイロンの摩擦が、ダイレクトに脳に響く。指先から伝わる感触は驚くほど柔らかく、そして既に熱を帯びていた。
(すごい……なんて感度だ。ストッキング越しだけで、頭が真っ白になりそうだ……)
我慢できなくなり、俺はストッキングのウェスト部分に指を掛け、無理やり隙間を作って右手を滑り込ませた。
指先が直接、湿り気を帯びた下着に触れる。
「ふふ……っ、いいぞ、双葉。お前の身体は、今こんなに喜んでる……」
下着をずらし、直接その場所に指を這わせる。
中心にある小さな突起——クリトリスを、指の腹で丁寧に、円を描くようにいじり始めた。
「……っ!!」
声を出さないよう、左手で口を強く塞ぐ。
個室の外では、他の社員が手を洗う水の音や、世間話をする声が聞こえる。
すぐそばに人がいる。自分が「優秀な斉藤双葉」だと思われているその裏で、今まさにメスとして自分を弄んでいるというギャップが、狂おしいほどの快感を生む。
(ああ、力也に抱かれた時とは違う……。俺自身の手で、この女を屈服させているような感覚だ……!)
快感に拍車をかけるため、俺はブラウスのボタンを二つ外し、ブラジャーを無理やり上に押し上げた。
露わになった白い胸。
その先端は、既に硬く、熱く怒張している。
そこを親指と人差し指で挟み、じっくりと、時には強くつねるように刺激した。
(くそっ……なんてエロい身体なんだ。指一本で、こんなにビクビク跳ねやがって……っ。村永の時の、あの鈍感な肉体とは訳が違う!)
股間の指をさらに速める。
ヌルヌルとした愛液が指を濡らし、個室の中に微かな甘い香りが漂う。
俺は白目を剥きそうになりながら、双葉の、女としての絶頂の波を必死に受け止めた。
全身が弓なりに反り返り、音のない叫びが口を塞いだ手の中に消えていく。
数秒間の痙攣の後、俺は崩れるように壁に寄りかかった。
「……ふぅ。……っ、ふふ……」
鏡を見るまでもない。今の俺——双葉の顔は、蕩けるような情欲に染まっているはずだ。
身なりを整え、何食わぬ顔でデスクに戻らなければならない。
聖女のような微笑みを浮かべながら、股間を濡らしたまま仕事を続ける。
その背徳感こそが、今の俺にとって最高の蜜の味だった。
393545ae No.2663
退社後、迎えに来た力也の執拗な誘いを「今日はまだ少し心が不安定なの」とやんわり拒絶する。
食い下がる彼を「夕飯の買い物」にだけ付き合わせ、スーパーでは健気な恋人を演じきった。
自宅での夕飯に誘うポーズも見せたが、彼は「買い物までの約束だから」と去る。
計算通りだ。
双葉の住まいは、都心の一等地にある1LDK。
白を基調としたモダンなリビングに、機能的なシステムキッチン。村永時代の薄汚れたアパートとは雲泥の差だ。
「……さて、飯にするか」
俺は独り言を漏らしながら、キッチンに立つ。
面倒だが、この若さと美貌を維持するには村永時代のカップ麺生活は厳禁だ。双葉の記憶にあるレシピをなぞり、高タンパク低カロリーなサラダと鶏胸肉のソテーを作る。
包丁を握る細い指先、エプロンの紐で強調されるくびれ。
鏡に映る「自炊する美女」の姿に悦に浸りながら、俺はこの完璧な人生を維持するための栄養を、優雅に身体へと取り込んだ。
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夕食を終え、食器を片付けた俺は寝室の大きな鏡の前に立った。
トイレでの絶頂はあくまで序道に過ぎない。
この若く、完璧に整った双葉の肉体を自分のものとして再定義するために、俺はクローゼットの奥に眠っていた「彼女の戦利品」を次々と引っ張り出した。
まずは、最もスタンダードな白いコットンの上下セットを身に纏う。
清潔感の塊のようなその姿で、鏡の前でわざと膝を少し内側に入れ、両手を頬に当てる「純真な少女」のようなポーズをとってみた。
ふっくらとした胸の膨らみが、飾り気のない白地に浮き出る。
54歳の男の魂が、この無垢な少女の皮を被っているという事実に、背徳的な快感が走った。
次に選んだのは、先ほどの清楚さとは正反対の、黒の総レースで作られた大胆なセットアップだ。
ブラジャーのカップは深く切り込まれ、肌の白さをこれでもかと強調している。
俺は壁に片手を突き、腰を大きく捻って、突き出した尻のラインを強調する挑発的なポーズをとった。
鏡の中の双葉が、獲物を誘うメスのような瞳で俺を見つめ返す。
そのあまりの妖艶さに、喉の奥が熱くなるのを感じた。
三着目は、淡いピンクのシルク素材に、細かな刺繍が施されたフェミニンなデザインだ。
俺は床に直接座り込み、両膝を抱えて少し上目遣いになる「捨てられた子猫」のようなポーズを試みる。
ストラップから滑り落ちそうな肩のラインと、抱えた足の間から覗く柔らかな太もも。
男を狂わせるツボを熟知したその姿に、俺は双葉という女が持っていた「武器」の恐ろしさを改めて思い知らされた。
四着目に手を伸ばしたのは、真っ赤なフロントホックのブラジャーと、サイドが紐で結ばれただけのショーツだった。
これは間違いなく、勝負どころで着るためのものだ。俺は鏡に向かって背中を向け、振り返りながらブラのホックを外しかけるポーズをとる。
肩甲骨のなめらかな動きと、紐一本で繋がった危うい腰つき。昨夜、力也がこの背中に執着した理由が、今なら手に取るように理解できた。
最後は、彼女がどこで買ったのかも怪しい、透け感の強いベビードールを素肌の上に羽織った。
俺はベッドの縁に腰掛け、髪をかき上げながら首筋を晒す無防備なポーズをとる。
薄い布地を通して、先ほどトイレで執拗に弄った乳首がツンと尖っているのが見て取れた。
鏡の中の美女は、もはや双葉であって双葉ではない。
俺という怪物を宿した、世界で最も贅沢な「玩具」へと変貌していた。
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鏡の中の自分を見つめる視線が、次第に熱を帯び、理性のたがを外していく。
五つのポーズを試している間、ずっと意識の底で燻っていた火種が、この最後のベビードールの薄い布地を介して、一気に燃え上がった。
透け感の強い生地の向こう側に透けて見える双葉の白い肌は、まるで熟した果実のように艶めかしい。
ブラジャーを排した解放感の中で、ツンと尖ったままの乳首が布地を押し上げている。
「……もう、無理。我慢できないっ」
俺は震える手でサイドテーブルの引き出しを開け、彼女の秘密の小箱から、小ぶりだが強力な振動を放つピンク色のローターを引っ張り出した。
スイッチを入れた瞬間、掌に伝わる暴力的なまでの振動。それをまずは、剥き出しの首筋から鎖骨へと滑らせる。
「あぁ……すごい。こんなので毎日楽しんでたのね、双葉……。んっ、ふぁっ!!」
高音で甘ったるい女の嬌声が静かな寝室に響き渡る。
トイレの個室で押し殺していた欲求が、声と共に溢れ出した。
俺は鏡の中の自分の瞳を凝視しながら、ローターの先端を片方の乳首に押し当てた。
「んんっ! あ、あぁっ!! はぁ、はぁダメ、これ……っ、強すぎるっ!!」
鏡の中の双葉は、快楽に顔を歪ませ、恍惚とした表情を浮かべている。
頬は真っ赤に染まり、焦点の定まらない瞳は潤んで、今にもこぼれ落ちそうだ。
俺はもう片方の手で、自由になっている方の胸を力強く揉みしだいた。指
先で乳首を軽く捻り、ローターの振動と指の圧迫を同時に与える。
「ああんっ! いい、いいわよ。私の体、こんなに欲しがってる。ねえ、見て……こんなに硬くなっちゃってっ」
鏡の自分に語りかける言葉は、もはや演技を超えていた。
俺はベビードールの裾を捲り上げ、Tバックの細い紐に指をかけた。
その下にある、秘部。
すでに溢れ出した蜜で、薄い布地は色を変え、ヌラヌラと光を反射している。
Tバックを横にずらし、剥き出しになった中心地へ、容赦なくローターを押し付けた。
「ひゃあぁぁっ!? んんんんっっ!!」
全身が電気を浴びたように跳ね、背中が弓なりに反り返る。
直接的な刺激に、腰が勝手に小刻みに揺れ始める。
鏡の中の女は、口を半開きにして涎を垂らしそうになりながら、激しく腰を振っていた。
俺はさらにローターをクリトリスに強く押し当て、グリグリと円を描くように動かした。
「あああ、あ、あああぁぁぁ……っ!! い、いく、これ、いっちゃう……っ! 誰か、誰か……力也、私を、私をめちゃくちゃにしてぇっ……!!」
羞恥心など霧散した。
自分を「私」と呼び、淫らな言葉を吐き出すたびに、脳内では快楽物質が奔流となって暴れ狂う。クリトリスへの執拗な攻撃。
指を中に滑り込ませ、内側から掻き回すと、自身の熱い吐息が鏡を白く曇らせた。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ。ああ、もう、止まらないっ! 頭が、おかしくなりそう……っ! くる、くるっ! あ、ああぁぁぁぁーーーーっ!!!」
絶叫と共に、全身の筋肉が強烈に硬直した。ロ
ーターの振動が、爆発的な快感となって脊髄を駆け上がる。
視界が白く明滅し、鏡の中の双葉が激しく痙攣する。
蜜が指を伝い、太ももを伝って畳に零れ落ちる。何度も何度も、大きな波が押し寄せ、その度に俺は声を枯らして泣き叫ぶように絶頂を繰り返した。
しばらくの間、俺はベビードールをはだけさせたまま、床に崩れ落ちていた。
荒い呼吸が、静寂を取り戻した部屋に響く。
鏡に映る自分は、髪は乱れ、化粧も涙で少し崩れているが、その表情はこの世のものとは思えないほど淫らで、そして美しかった。
「ふふ。あはははは!」
この快感。この支配感。
男だった頃の自分が、一生かかっても辿り着けなかった領域。
それを今、俺は手に入れたのだ。
俺は、鏡の中の「新しい自分」にキスを贈ると、重い腰を上げて、本当の「お楽しみ」であるバスルームへと向かった。
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鏡の前で繰り広げた狂乱の余韻に浸りながら、俺は重い腰を上げてバスルームの扉を開けた。全身にまとわりつく汗と、自ら引き出した淫らな痕跡を洗い流すためだ。
シャワーを捻ると、勢いよく熱いお湯が噴き出した。
「……っ、あ……っ!」
肌に触れた瞬間、思わず高い吐息が漏れる。
男だった頃、風呂は単なる「汚れを落とす作業」に過ぎなかった。
だが、今のこの双葉の体は、降り注ぐ湯の粒ひとつひとつを過敏に拾い上げ、甘い痺れとして神経の奥へと伝えてくる。
俺はシャワーヘッドをホルダーから外すと、水圧を強め、迷わずその標的を絞った。
「ふあ……っ、すごい……」
真っ白な胸の頂、先ほどまで自分で弄り倒して赤く熟した乳首に、容赦ない水流を叩きつける。
ピンと硬く尖った先端が、水圧に翻弄されて細かく震えるたび、脳髄を直接かき回されるような快感が駆け抜けた。
だが、これだけでは足りない。
俺はさらに腰を落とし、シャワーの狙いを股間の秘部へと移した。
「あああぁっ! んんっ、は……っ!!」
太ももの内側を伝う熱水が、もっとも敏感な一点に直撃する。
男の時には決して味わえなかった、内側から爆発するような激しい衝撃。
水流の刺激がクリトリスを激しく叩き、溢れ出す蜜を洗い流すと同時に、新たな悦楽を際限なく引き出していく。
俺は壁に片手をつき、双葉のしなやかな肢体をくねらせた。
指で割れ目を押し広げ、無防備に晒された粘膜に容赦なく熱い奔流を浴びせかける。
「やばい……これ、止まらない……っ」
自らの体でありながら、自らの意思を超えて震え、悦びに屈していく肉体。
男としての理性が、女としての本能に塗りつぶされていくこの瞬間こそが、何よりも官能的だった。
ようやく火照った体を洗い終え、鏡に向き合う。
湯気の中に浮かび上がるのは、完璧なまでの造形美だ。
頬は上気し、瞳は潤んでいる。だが、この美貌は「維持」しなければならない。
「女としての価値を下げちゃ、台なしだからな……」
俺は双葉の記憶を呼び起こし、手際よくスキンケアに取り掛かった。
高級な導入液を叩き込み、化粧水を惜しみなく肌に吸わせる。
指先に伝わる肌質が、瞬く間に吸い付くようなしっとりとした質感に変わっていく。
かつて俺をゴミのように扱った世間を見返すための、これは最強の武装。
肌の一片、産毛の一本に至るまで、俺は「斉藤双葉」を完璧に作り上げていく。
手入れを終えた俺が袖を通したのは、どこにでもある、あえて地味でゆったりとした綿のパジャマだった。
鏡の中の美女は、飾り気のない格好をしていながらも、その奥から隠しきれない淫靡な色香を放っていた。
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スキンケアを終え、鏡の中の自分に見惚れていたその時、サイドボードに置いたスマホが短く震えた。
画面を見ると、力也からのメッセージだ。
『体調、大丈夫? 今日はゆっくり休んでね。おやすみ』
「……フン、相変わらずマメな男だな」
鼻で笑いながらも、俺はこの男の「良心」が利用価値に満ちていることを知っている。
かつての俺(清彦)なら、こんな優しい言葉をかけられることすら稀だった。
だが今は、指先一つで男を心配させ、翻弄できる。
俺は濡れた髪をわざと少し乱し、パジャマのボタンを上から二つ外して、鎖骨が綺麗に見える角度を探した。
自撮りモードで数枚。
一枚目は、あどけなさを残した微笑み。
二枚目は、少し憂いを含んだ表情。
そして最後の一枚は――。
「これくらいが、一番そそるだろ?」
カメラを少し上から構え、胸元の谷間が影を落とす絶妙なアングルでシャッターを切った。パジャマという日常着だからこそ際立つ、肉体の生々しさ。
『心配してくれてありがとう。もう大丈夫だよ。おやすみなさい』
甘い言葉を添えて送信すると、すぐに「既読」がついた。今頃あいつは、画面越しの俺に鼻血でも出しているに違いない。
翌朝。
双葉の肉体が持つ体内時計は正確だった。
カーテンから漏れる朝日に、俺は女特有の気だるい快感とともに目を覚ます。
ここからは「斉藤双葉」としてのルーティンだ。
白湯を飲み、ヨガマットの上で軽く体を伸ばす。
四つん這いになり、腰を反らせるたびに、薄いパジャマ越しに伝わる自分の曲線に陶酔した。
力也からは『駅まで迎えに行こうか?』と追いメッセージが来ていたが、俺は迷わず断りの返信を入れる。
『一人で大丈夫。仕事モードに切り替えたいから、会社でね』
媚びるだけが女じゃない。
自立した「デキる女」を演じることで、男の征服欲をさらに煽るのが正解だ。
クローゼットを開け、今日の「戦闘服」を選ぶ。
選んだのは、落ち着いたネイビーのタイトスカートに、とろみのあるシルクのボウタイブラウス。
一見すると清楚なオフィススタイルだが、ブラウスのボタンをあえて一つ多めに開け、歩くたびに太もものラインが強調されるよう、インナーの補正にも細工を凝らす。
鏡の前で紅を引き、仕上げに双葉が愛用していた香水を耳裏に忍ばせる。
「よし……完璧だ」
家を出る直前、玄関の全身鏡に映ったのは、誰が見ても非の打ち所がない、知性と色香を兼ね備えた双葉そのものだった。
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出社後の「斉藤双葉」は、非の打ち所がないほど完璧だった。
双葉の若々しく柔軟な発想で午前中のルーティンワークは瞬く間に片付いていく。
周囲の同僚たちは「事件の後なのに、より一層輝いている」と遠巻きに感嘆の視線を送ってくるが、俺はその視線すらも極上のスパイスとして楽しんでいた。
しかし、昼休みの屋上で、一本の電話がその余裕を打ち砕いた。
画面に表示されたのは「ママ」の文字。
(しまった……。一番面倒な相手を忘れていた……!)
俺は慌てて双葉の記憶を検索し、喉の形を整えてから通話ボタンを押した。
「……もしもし、ママ?」
『双葉!? あんた大丈夫なの!? 警察から連絡が来たときは心臓が止まるかと思ったわよ。変な男に襲われたって……怪我はないの!?』
耳元で響く悲鳴に近い声。
(警察、しっかり仕事してんなぁ。おかげでこの「キモいおじさん」は、今頃病院のベッドで拘束具に繋がれてるだろうよ)
俺は心の中で冷笑しながら、声音を一段落として「か弱い娘」を演じた。
「……うん、大丈夫。ちょっと怖かったけど、今は落ち着いてるから。心配かけてごめんね」
『本当に……。お父さんも気が気じゃないのよ。今週末、実家に帰ってくる約束、覚えてるわよね? ちゃんと顔を見せなさい。いいわね?』
(実家だと……? マズい、家族は記憶だけじゃ誤魔化せない「空気感」がある。だが、ここで拒否すれば逆に怪しまれるか……)
「わかってる。楽しみにしてるよ。……お父さんにも、心配しないでって伝えて」
電話を切った後、俺は屋上のフェンスを掴んで深く息を吐いた。
週末、斉藤家の実家への帰省。そこには両親だけでなく、大学生の妹・朱莉(あかり)もいるはずだ。
「フフ……。斉藤双葉のルーツか。いいだろう、まとめて手に入れてやるよ」
数日後の週末。
俺は双葉の記憶にある、郊外の閑静な住宅街に降り立った。
清楚なワンピースに身を包み、少しだけ「守ってあげたくなる」表情を浮かべて、実家の門を叩く。
「ただいま……」
「双葉! お帰り、よく無事で……!」
玄関を開けるなり、母親に抱きしめられた。
54歳の男が、見知らぬ中年女性に抱きつかれる。
本来なら不快感しかないはずだが、双葉の身体が母親の匂いに反応して、胸の奥が勝手に温かくなる。
(おいおい、身体の記憶が強すぎるな。気を引き締めろ、村永清彦……)
「お母さん、苦しいよ……。ほら、お父さんもそんなに暗い顔しないで」
リビングでは、父親が眉間に皺を寄せて座っていた。
「……相手の男は、精神科に入ったそうだな。二度と近づけないように、弁護士とも相談してある」
「ありがとう、お父さん。でも、もう終わったことだから……」
俺は健気に微笑み、お茶を啜った。その時、階段をバタバタと駆け下りる音が響く。
「お姉ちゃん! 遅いよ!」
現れたのは、双葉に似た面影を残す、快活そうな女子大生の妹・朱莉だった。
彼女は俺の隣にドサリと座り、遠慮なく腕を絡めてくる。
「もー、お母さんから聞いたときはビビったんだから。お姉ちゃんがストーカーとか、マンガじゃん。……あれ、お姉ちゃん、なんか雰囲気変わった?」
朱莉の真っ直ぐな瞳が、俺の顔を覗き込む。
(こいつ……鋭いな。だが、女同士の距離感なら、こうすればいいんだろ?)
俺はわざとらしく朱莉の頬を指で突き返した。
「何よ、雰囲気って。ちょっと大人っぽくなっただけじゃない?」
「えー、そうかなぁ? なんか、メイクも上手くなったし……っていうか、なんかお姉ちゃんの体、もっと『オンナ』って感じの匂いがする」
朱莉が鼻をヒクつかせて首筋に顔を寄せてくる。
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(ヤバいな……。女の嗅覚を舐めてた。昨夜、じっくり手入れした成果が裏目に出たか?)
「……やだ、変なこと言わないでよ。朱莉こそ、大学で遊んでばっかりなんじゃないの?」
「失礼しちゃうな! 私はちゃんとお姉ちゃんの心配してたの! ……ねえ、今夜は一緒に寝ようよ。お姉ちゃんが怖くないように、私が守ってあげるから!」
(……ほう。妹と一緒に寝る、か。双葉の記憶によれば、この姉妹は昔から同じベッドで恋バナをするのが恒例だったらしいな)
俺は心の中で、邪悪な笑みを浮かべた。
実の妹ですら欺き、双葉として完全に家族の中に溶け込む。それは、ある種の極限の快感だ。
「いいよ。久しぶりに、二人でゆっくり話そうか」
「やった! お姉ちゃん大好き!」
無邪気に喜ぶ朱莉。
その柔らかい肩を抱き寄せながら、俺はリビングの鏡に映る自分を見つめた。
そこには、愛する家族に囲まれ、幸せそうに微笑む完璧な「斉藤双葉」がいた。
(村永清彦……。お前の人生には一度もなかった、温かくて輝かしい家族の肖像画だ。……これらすべて、俺が美味しく頂いてやるぞ)
その日の夕食。
母親の手料理を頬張りながら、俺は双葉の声で笑い、双葉の癖で髪を耳にかけた。
会話の端々に混じる「双葉の過去の記憶」を、まるで自分の経験であったかのように語るたび、俺の魂はより深く、この美しい肉体と同化していくのを感じていた。
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夕食後、実家の懐かしい香りに包まれながら、俺は浴室へと向かった。
脱衣所の扉を開けると、ムワッとした熱気と共に、石鹸の甘い香りが立ち込めている。
「あ、お姉ちゃん。ちょうど今上がったところ」
不意に声をかけられ視線を向けると、そこには湯気に濡れた全裸の朱莉が立っていた。
(……っ!?)
一瞬、村永清彦としての本能が目を剥きそうになるのを、必死に理性で抑え込む。
「ちょっと、朱莉。隠しなさいよ」
「えー、今さら何を言ってるの。小さい頃からずっと一緒に入ってたじゃない」
朱莉は隠そうともせず、バスタオルで濡れた髪を拭きながら、鏡の前で自分の身体を点検し始めた。
双葉の記憶にある妹の姿よりも、ずっと肉感的だ。
二十歳そこそこの若さが弾ける肌、双葉よりも一回り豊かな胸の膨らみ、そしてキュッと締まったウエストから続く、むっちりとした太もものライン。
(ほう……。双葉が「モデル体型」なら、こっちは「グラビア体型」か。たまらんな……)
「見てよお姉ちゃん。最近、読者モデルの仕事が増えてから、もっと絞れって言われちゃって。これ以上どこを落とせばいいのって感じじゃない?」
朱莉はそう言いながら、俺の方を振り返り、わざとらしく胸を寄せて見せびらかすようなポーズをとった。
「読モねぇ。あんまり調子に乗って、変な男に引っかからないようにしなさいよ」
「分かってるって。でも、スカウトされるのもお姉ちゃん譲りの美貌のおかげかな? ……ねえ、お姉ちゃん。さっきから私のこと、品定めするみたいに見てない?」
(……チッ、視線がオスになっていたか)
「……別に。相変わらず、無駄にいい体してるなと思ってただけ。早く服着なさい。風邪引くわよ」
俺は素っ気なく答えて、浴室に入ろうとした。
背後で朱莉が「お姉ちゃん、冷たいなー」と笑いながら、下着をつけ始める気配がする。
(鏡越しに見てやるか……。これも『姉妹の日常』だろ?)
チラリと鏡に目を向けると、朱莉は片足を椅子にかけ、腰を艶かしく捻りながら、フロントホックのブラジャーを留めているところだった。
その何気ない動作一つ一つに、無意識の、あるいは計算された「エロティシズム」が宿っている。
「ねえお姉ちゃん。力也さんとはどうなの? 事件の時、ずっと支えてくれたんでしょ? ……結婚とか、考えちゃったりして?」
パンティのレースを指先で整えながら、朱莉がニヤニヤとこちらを見てくる。
その、下着を穿き直す際の腰のくねり、ブラジャーのストラップを肩にかける指先の動き。
(この娘も、自分の「武器」を分かってやがる。斉藤家の血筋は、男を狂わせる才能でもあるのか……?)
「……さあね。今はまだ、そこまで考えられないわ」
「えー、勿体ない! 私が力也さんみたいなイケメンに守られたら、即オチしちゃうのにな。お姉ちゃん、贅沢すぎ!」
朱莉はパジャマを羽織ると、俺の肩をポンと叩いて脱衣所を出て行った。
一人残された脱衣所で、俺は鏡に映る双葉の顔を見つめる。
(ふふ……。力也、両親、そしてこの若くて瑞々しい妹。これらすべて、村永清彦という男が人生で最も縁遠かったものばかりだ)
俺は双葉の指で、自分の喉元を愛撫するように撫で上げた。
(すべて俺のものだ。斉藤双葉を演じ、この幸福な環境を文字通り『吸い尽くして』やる)
お風呂の後は、いよいよ朱莉と同じベッドでの「姉妹の語らい」が待っている。
男の魂を宿した姉が、無防備な妹からどんな秘密を引き出せるか。
楽しみで、股間の奥がジリジリと熱を帯びてくるのを感じた。
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浴室は実家ならではの広さがあり、湯気で白く霞んでいる。
「あ、お姉ちゃん、私のシャンプー使っていいよ。読モ仲間の間で流行ってる高いやつなんだから」
去り際に朱莉が指差したのは、いかにも女子大生らしい甘い香りのボトルだ。
俺は一人、広い浴槽に身を沈めた。
(ふぅ……村永だった頃の狭いユニットバスとは大違いだ。この手足の長さ、肌の滑らかさ……何度見ても飽きないな)
朱莉のシャンプーを手に取ると、ベリー系の濃厚な香りが鼻腔を突いた。
豊かな泡で自分の身体をなぞる。指先が乳房の膨らみを滑り、くびれた腰から太ももへと流れるたび、双葉の肉体が敏感に反応する。
(この香り……朱莉もこの匂いをさせてるわけか)
脱衣所で見せつけられた妹の、双葉より一回り肉付きの良い、瑞々しい裸体が脳裏に焼き付いて離れない。
(姉妹揃って、男を狂わせる極上の肉体をしてやがる……)
欲望が抑えられなくなった俺は、指を股間の秘部へと滑らせた。
「ん……っ……」
広い浴室に、双葉の甘い吐息が反響する。
(力也に抱かれるのもいいが、こうして「姉」として実家で、すぐ側に家族がいる状況で自分を汚すのは、格別の背徳感だ……)
朱莉のシャンプーの香りに包まれながら、俺は双葉の指で、双葉の肉体を、村永の欲望のままに弄り倒した。
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「……んっ、んんぅ……っ!!」
歯を食いしばり、声を喉の奥で押し殺す。
広い浴室に音が響かないよう、溢れ出しそうな喘ぎを必死に堪えた。
指先が中心を執拗に抉り、背中が弓なりに反り返る。
双葉の肉体が激しく震え、視界がチカチカと白く明滅した。
男だった頃には想像もできなかった、波のように押し寄せる連続的な絶頂。
数分後。
荒い呼吸を整え、シャワーで淫らな痕跡を念入りに洗い流した俺は、双葉の記憶にある控えめなパジャマに袖を通した。
火照った肌が布地と擦れるたびに、先ほどの余韻がじんわりと脳を痺れさせる。
俺は髪をタオルで拭きながら、リビングの隣にある朱莉の部屋へと向かった。
(確か、双葉は実家に化粧品を置きっぱなしにしていなかったはずだ。……いい口実になるな)
コンコン、と軽くドアをノックする。
「朱莉? ちょっと入るわよ」
「あ、お姉ちゃん。いいよー、入って」
部屋の中では、朱莉がベッドの上でスマホをいじりながら、読モ仲間とのチャットに夢中になっているようだった。
部屋中に漂うのは、さっき俺が使ったシャンプーと同じ、甘酸っぱいベリーの香り。
「悪いわね。化粧水とか、自分の持ってくるの忘れちゃって。朱莉の、ちょっと借りてもいい?」
「えー、いいよ! お姉ちゃん、さっき私が言った高いやつ使いなよ。これこれ」
朱莉は立ち上がり、ドレッサーからいくつかのボトルを俺の手に持たせた。
「これ、モデル仲間の間でも『肌がエロくなる』って評判なんだから」
(肌がエロくなる、か。いい響きだ……)
「ありがとう。……朱莉、そのパジャマ、結構際どいわね」
朱莉が着ていたのは、ショートパンツが極端に短いセットアップだった。
彼女が手を伸ばしてボトルを渡すたびに、豊かな胸のラインが強調され、太ももの付け根まで露わになる。
「えー、普通だよ? 読モやってると、これくらい見られてる方が意識高まるっていうかさ。お姉ちゃん、さっきから本当に私のことジロジロ見るよね。……もしかして、私のこと羨ましい?」
朱莉はいたずらっぽく笑いながら、俺の顔を覗き込んできた。
その瞳には、姉に対する親愛と、ほんの少しの「女としての対抗心」が見え隠れする。
(羨ましい、か。……ククク。お前のその瑞々しい身体も、姉の特権でいくらでも観察してやるよ)
「バカ言わないで。……じゃあ、借りるわね」
俺は朱莉の化粧品を抱え、自分の寝室――今夜は朱莉が「一緒に寝る」と宣言している部屋へと戻った。
朱莉の香りが染み込んだ化粧水を、双葉の白い肌に叩き込む。
(ふぅ……。さあ、そろそろアイツがやってくる頃か。女同士の『秘密の会話』楽しみだ)
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朱莉の部屋を後にし、廊下を渡って自分の部屋の前に立つ。
実家を出て久しいが、両親は「いつでも帰ってこられるように」と、俺の……いや、双葉の部屋をそのままにしてくれていた。
ドアを開けると、そこには懐かしい、だが今の俺にとっては新鮮な光景が広がっていた。
普段は物置代わりにされているはずの空間だが、埃一つ落ちていない。
「……お母さん、わざわざ掃除してくれたのか」
今日俺が泊まることが決まった後、母が急いでベッドメイキングをしてくれたのだろう。パリッと糊のきいた清潔なシーツの香りが、部屋全体に広がっている。
「さて……。家族を相手にするなら、余計な色気は命取りだ」
お風呂上りに着ているパジャマや下着は会社で見せるような計算高い勝負下着や、一人で楽しむための際どいレースではない。
肌馴染みの良い、飾りのないピンクのフルバックショーツ。
その上に、シンプルなキャミソール。
そして仕上げに、母が好む「清楚な娘」の象徴のような、白いキルト生地のパジャマを羽織る。
鏡の中の俺は、どこからどう見ても、都会で働く少しお疲れ気味の、だが清廉な長女そのものだった。
「ふふ……。この厚手の生地の下で、さっきまで自分がどんな淫らな声を上げていたか、誰も想像できないだろう」
トントン、と遠慮のないノックが響く。
「お姉ちゃーん、入るよ!」
返事を待たずに入ってきた朱莉は、自分の部屋で見た時よりもさらに短いショートパンツ姿で、抱き枕を引きずりながらやってきた。
「わあ、お姉ちゃんの部屋、やっぱり落ち着くね。……あ、そのパジャマ、お母さんがお気に入りのやつじゃん。お姉ちゃん、実家に帰るとすぐ『良い子ちゃん』になるんだから」
朱莉はそう笑いながら、俺が座るベッドの上にごろりと横たわった。
シーツの上で大胆に投げ出された、朱莉の若く、肉感的な生足。
「……朱莉、行儀悪いわよ。ほら、少し詰めなさい」
俺は平静を装いながら、妹の隣に腰を下ろした。
キルト生地の厚みが、今の俺にとってはもどかしいほどに、朱莉から放たれる体温と甘酸っぱい香りが、鼻腔をくすぐる。
「ねえ、お姉ちゃん。……本当に、あの男に何もされなかったの?」
朱莉の声が、急に真剣なトーンに変わった。
彼女は横たわったまま、不安げな瞳で俺を見上げてくる。
「……ええ。大丈夫よ。さっきも言ったでしょ」
「嘘だ。お姉ちゃん、たまに……すごく遠くを見て、変な顔してるもん。なんだか、私のお姉ちゃんじゃないみたいに、すごく、こう……ゾクゾクするような目をするんだよ」
(……このガキ、本当に感だけは鋭いな。)
俺はわざとらしく溜息をつき、朱莉の頭を優しく撫でた。
双葉の記憶にある「姉としての慈愛」を込めて。
「考えすぎよ。……そんなことより、朱莉の最近の悩みでも聞きなさいよ。読モの仕事、大変なんでしょ?」
「……うん。実はね、カメラマンの人に、ちょっと無理なポーズをお願いされてて……」
朱莉がポツリポツリと、モデル業界の裏側や、最近気になっている男の話を始めた。
俺は「お姉ちゃん」になりきって相槌を打ちながら、徐々に彼女の心の警戒を解いていく。
夜が更けるにつれ、朱莉の語調は熱を帯び、無意識に俺の腕に抱きついてくる。
キルトのパジャマ越しに伝わる、妹の豊かな胸の感触。
「……ねえ、お姉ちゃん。それ、どんなポーズなの? 私にだけ、こっそり見せてごらんなさい。アドバイスしてあげるから」
俺の口から出たのは、どこまでも優しく、そして底知れない悪意を孕んだ「姉」の誘いだった。
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「……え、ここで? 恥ずかしいよお姉ちゃん」
朱莉は頬を赤らめて身をよじったが、俺の腕を離そうとはしなかった。
その戸惑いさえも、今の俺にとっては計算済みの「獲物の反応」にしか見えない。
「いいじゃない。誰も見てないんだし。……ほら、プロに言われたポーズが自分に合ってるか、客観的に見てあげるから。双葉お姉ちゃんが教えてあげる」
俺はわざとらしく「双葉」の柔らかい微笑みを湛え、朱莉の肩を優しく押し出した。
朱莉は渋々といった様子でベッドの上に立ち上がると、ショートパンツの裾を気にするように少し整え、深呼吸をした。
「……じゃあ、やるよ。今度、夏の新作水着の撮影なんだけど……『もっとこう、背中を反らせて、誘うようなラインを作って』って言われてて。こうかな?」
朱莉は俺に背を向け、腰を大きく突き出すようにして振り返った。
読者モデルとしての意地があるのか、そのポーズは驚くほど様になっている。
厚手のパジャマ越しでもわかる、若く張りのある尻の曲線と、細い腰のくびれ。そして、肩越しにこちらを覗き込む、少し潤んだ瞳。
(ほう……。これは確かに、男の視線を釘付けにする『武器』だな)
俺は双葉の記憶にあるファッション誌のポージング知識を総動員し、値踏みするように彼女を眺めた。
「うーん……惜しいわね。背中のラインは綺麗だけど、肩に力が入りすぎ。もっとこう、自分の身体を愛でるような、柔らかさが足りないわ」
俺はベッドから立ち上がり、朱莉の背後に回った。
「失礼するわよ」と一言添えて、俺の細い指先を朱莉の剥き出しの肩へと這わせる。
「……っ!」
朱莉の身体がビクリと跳ねた。だが、俺は構わずに指を滑らせ、彼女の首筋から肩甲骨、そしてパジャマの生地越しに背中の中心をなぞり下ろしていく。
「お姉ちゃん……手が冷たいよ……」
「我慢して。……ここを、もっとこう、内側に寄せるように意識してごらんなさい」
俺は朱莉の脇に手を差し入れ、彼女の豊かな胸の膨らみを、姿勢を正す名目でそれとなく持ち上げるように触れた。
キルト地のパジャマ越しでも、彼女の肌の熱と、激しく打つ鼓動が掌に伝わってくる。
「あ……ん……」
朱莉の口から、無意識な吐息が漏れる。
俺はさらに踏み込み、彼女の腰を両手で掴んで、より官能的なカーブを描くようにグイと引き寄せた。
「そう、この角度。……朱莉、自分の魅力をもっと自覚しなさい。この身体は、男を狂わせるためにあるのよ?」
耳元で囁くと、朱莉は陶酔したような、それでいて怯えたような複雑な表情で俺を見つめた。
俺は確信した。
この清廉な実家で、姉という盾を使い、この無垢な妹を精神的に、そして肉体的に侵食していく快感。
それは、力也を抱いた時とも、鏡の前で自慰に耽った時とも違う、支配者としての悦びだった。
「……ねえ、お姉ちゃん。なんだか、今日のお姉ちゃん……すごく、ドキドキする」
朱莉が熱い吐息を吐きながら、俺の腕に体重を預けてくる。
俺は「良い子」のパジャマの袖を捲り、新たな獲物の肌の感触を、心ゆくまで楽しむことにした。
df23c84c No.2736
「……もう、お姉ちゃんったら。そんなに熱心に指導されると、モデルの仕事が怖くなっちゃうよ」
朱莉は顔を上気させ、逃げるようにベッドの上に座り込んだ。
俺もその隣に腰を下ろすと、彼女は少し照れくさそうに、俺のパジャマの袖を指先でいじり始めた。
「ねえ、お姉ちゃん……。実はさ、ポーズだけじゃなくて、最近ちょっと悩んでることがあって」
空気が変わった。湿り気を帯びた官能的な沈黙から、どこか幼さを残した「妹の相談」へと。俺は双葉の優しい微笑みを崩さず、彼女の言葉を待つ。
「……彼氏のことなんだけど。大学生の。最近、なんだか、すごく……触り方が強引っていうか」
「強引? どんな風に?」
俺が問いかけると、朱莉は一瞬躊躇したが、意を決したように俺の右手を取った。
「……あのね、二人きりになると、すぐこうやって……」
朱莉は俺の手を自分の胸へと導き、パジャマの上から力強く押し当てた。
手のひらに伝わる、若く、弾力に満ちた肉の感触。
それは双葉のモデルのようなしなやかさとは違う、生命力に溢れた瑞々しい重みだった。
「こんな風に、ぎゅって……。痛いって言っても、『好きだから』って。お姉ちゃん、これって普通なのかな? 力也さんだって、お姉ちゃんにこういうことするんでしょ?」
朱莉の潤んだ瞳が、至近距離で俺を見つめる。
彼女は俺を「頼れる姉」だと信じ切り、完全に心を許している。
だが、その無防備な告白が、今の俺——村永清彦の魂をどれほど昂ぶらせているか、彼女は知る由もない。
「……そうね。男っていうのは、愛しているものを自分の手で確かめたくなる生き物なのよ」
俺は朱莉の手に重ねた自分の指に、わずかに力を込めた。
「でも、朱莉が嫌だと思うなら、それは正しくないわ。……ほら、もっと力を抜いて。私が、本当の『愛し方』を教えてあげるから」
俺は朱莉を引き寄せ、彼女の背中に腕を回して優しく抱きしめた。
キルトのパジャマと、朱莉の薄いルームウェアが擦れ合う。
心臓の鼓動が重なり合い、姉妹という名の、あまりにも濃密な境界線が溶けていく。
「……お姉ちゃん。なんだか、お姉ちゃんの匂い、すごく落ち着く。」
朱莉は俺の胸に顔を埋め、子供のように甘えてきた。
かつて、孤独で薄汚れたアパートで一人酒を煽っていた俺が、今、こんなにも美しく輝かしい「家族の絆」の真ん中にいる。
「ええ、ありがとう朱莉。……今夜は、ずっとこうしていましょう」
「うん……。約束だよ。今日はお姉ちゃんと一緒に寝る。……大好きだよ、お姉ちゃん」
朱莉はそう呟くと、安心したように目を閉じた。
俺は彼女の柔らかな髪を撫でながら、暗がりの鏡に映る「斉藤双葉」の顔を見た。
その唇は、誰にも見せることのない、残酷で艶やかな勝利の笑みを浮かべていた。
df23c84c No.2737
深夜。
部屋を照らすのは、窓から差し込むわずかな月光と、加湿器の微かな青い光だけだ。
隣では、完全に俺を……いや、双葉を信じ切った朱莉が、規則正しい寝息を立てている。
「……ふふ、おやすみ、朱莉」
俺は「姉」の声で小さく囁き、ゆっくりと布団の中で手を動かした。
キルト地のパジャマが擦れる音さえ、この静寂の中ではひどく淫靡に響く。
腕の中に預けられた朱莉の身体は、昼間見た時よりもさらに熱を帯び、柔らかい。
(……信じられんな。これが、あの村永清彦が一生拝むことすらできなかった『幸福』の正体か)
俺の右腕には、朱莉の豊かな胸の膨らみが押し付けられている。
読モとして鍛えているとはいえ、その肉感は双葉のモデル体型とは異なり、吸い付くような弾力がある。
腕を動かすたびに、彼女の乳房の重みが二の腕に伝わり、双葉の敏感な肌を通じて脳髄を直接刺激してくる。
俺は自由な左手を、ゆっくりと朱莉の腰へと滑らせた。
極端に短いショートパンツの裾から、剥き出しになった太ももの付け根。
指先がその「白い聖域」に触れた瞬間、あまりの滑らかさに指が震えた。
吸い付くような若さの結晶。男だった頃なら、指一本触れただけで通報ものの犯罪だが、今は「寝相の悪い姉の接触」に過ぎない。
(いいぞ、朱莉……。お前は今、最悪の獣と同じベッドに寝ているとも知らずに、こんなに無防備に晒して……っ)
俺の指は、彼女の太ももの内側の、最も柔らかい部分を愛撫するように這い上がる。
さらに、パジャマのボタンの隙間から、朱莉の胸の頂へと指を忍ばせた。
薄い下着越しに、かすかに触れる突起。
「……っ……」
俺の指先がその「さきっぽ」を掠めるたびに、朱莉が「ん……」と小さく身悶えし、さらに深く俺の身体に密着してきた。
その無自覚な誘惑が、俺の中の「男」を狂わせる。
今の俺には、彼女をこのままめちゃくちゃにする「力」はない。
男のモノを持っていないというもどかしさが胸を締め付けるが、それ以上に、
(この女たちの内側に『俺』がいることに、誰も気づいていない)
という絶対的な優越感が、何にも代えがたい昂ぶりを連れてくる。
「……はぁ、はぁ……っ」
双葉の身体が、再び熱を帯びていく。
股間の奥がジリジリと脈打ち、ピンクのフルバックショーツが、じわじわと不名誉な湿り気を帯びてきた。
妹の体温、ベリーの香り、そして裏切りの背徳感。
俺は朱莉の柔らかな首筋に顔を埋め、彼女には聞こえない音量で、村永清彦の醜悪な、だが歓喜に満ちた笑い声を漏らした。
斉藤双葉の完璧な人生を食い潰し、その妹の純真さまでをも毒していく。
夜はまだ、始まったばかりだ。
df23c84c No.2738
悶々とした一夜だった。
隣り合う朱莉の体温と芳醇な香りに脳を焼かれ、股間の湿り気は引くどころか増す一方だったが、双葉の記憶にある「幼少期の寝かしつけ」の情景を必死に脳内に投射し、自己暗示をかけることでどうにか数時間の眠りにつくことができた。
「お姉ちゃん、朝だよ! 起きて!」
鼓膜を震わせる快活な声と、ベッドの上で跳ねる振動で目が覚める。
重い瞼を押し上げると、そこには朝日を背負って満面の笑みを浮かべる朱莉の顔があった。
「……んっ、朱莉……。朝から元気ね……」
寝起きの掠れた女の声で応えながら、俺は視線を上げた。
その瞬間、一気に脳が覚醒する。
はしゃいで四つん這いになっている朱莉のパジャマは、寝相の悪さと激しい動きのせいで無残にはだけていた。
はだけた胸元からは、昨夜指先で掠めたあの瑞々しい膨らみが、薄いキャミソールの端からこぼれ落ちそうに顔をのぞかせている。
さらに、短いショートパンツは足の付け根までずり上がり、白く眩しい太ももの曲線が、隠すべき場所の境界線まであけすけに晒されていた。
(……っ、朝からこれかよ。斉藤家の女は、毒が強すぎる……)
双葉の身体が、寝起きだというのに反射的に熱を帯びる。
俺はあえて視線を逸らさず、寝ぼけたふりをしてその「眼福」を網膜に焼き付けた。
「お姉ちゃん? また変な顔してるよ。……もしかして、まだこの間のストーカーのこと、怖い?」
朱莉が心配そうに顔を近づけてくる。
はだけた隙間から、ベリーの香りと若い肌の熱気がダイレクトに俺の顔を包み込んだ。
「……いいえ、大丈夫。朱莉が隣にいてくれたから、よく眠れたわ」
俺は「完璧な姉」の微笑みを浮かべ、はだけた彼女の胸元を優しく整えてやるフリをしながら、その柔らかな肌にわざと指先を滑らせた。
「さあ、お母さんの朝ごはん、食べに行きましょうか」
村永清彦のどす黒い欲望を、白いキルトのパジャマの下に深く隠し、俺は幸福な家族の一日を再び演じ始めることにした。
df23c84c No.2739
階段を降りると、香ばしく焼けたトーストと淹れたてのコーヒー、そしてカリカリに焼いたベーコンの脂の香りがリビングに満ちていた。
そこには、タブレットでニュースをチェックする父と、色鮮やかなサラダを盛り付けている母の姿がある。
村永清彦の人生には存在しなかった、雑誌から抜け出したような「洗練された洋食の朝」だ。
「おはよう、お父さん、お母さん」
「おはよう、二人とも。よく眠れた?」
母が柔和な笑みを浮かべる。
俺は朱莉と並んで、木目の美しいダイニングテーブルについた。
キルトのパジャマの袖を少し捲り、双葉の記憶にある「実家での少し抜けた長女」を完璧になぞりながら、厚切りのトーストにバターを塗り広げる。
コーヒーを一口すすり、双葉(俺)はカップを置いて少しだけ視線を伏せて見せた。
「……お父さん、お母さん。今回のことで、本当に心配かけてごめんなさい」
「双葉、それはもういいんだよ。お前が無事だっただけで……」
父がタブレットを置き、痛ましげに俺を見つめる。ここが攻め時だ。
「ううん。あの村永っていう人……警察でも変なこと言ってるみたいだけど。私、なんだかあの人が可哀想に思えてきちゃって。きっと、仕事も上手くいかなくて、孤独で、心が壊れちゃってたのね」
慈悲深い、聖女のような言葉。
自分の正体である「中年男の惨めさ」を、あえて第三者の視点から「壊れた哀れな存在」と定義することで、周囲の憎悪をあちら側へ、同情をこちら側へ完全に固定させる。
「お姉ちゃん、優しすぎだよ! あんなキモいおじさん、一生閉じ込めておけばいいんだよ」
朱莉がスクランブルエッグを頬張りながら、憤慨して声を上げる。
「そうね……。でも、もう私は大丈夫。力也さんも支えてくれてるし、こうして家族の顔を見たら、なんだか力が湧いてきたわ」
「そうか。双葉がそう言ってくれるなら、安心だ」
父の目が細まり、信頼の念が深まるのが分かった。
これで「斉藤双葉」としての実家での地位は、以前にも増して強固なものになった。
「あ、そうだ。お姉ちゃん、今日帰っちゃうの? せっかくの日曜日なんだから、お買い物行こうよ!」
朱莉が俺の腕を揺らす。
はだけたパジャマを直したばかりの彼女は、今や純粋な妹の顔で俺に縋り付いている。
「そうね、いいわよ。朱莉に似合いそうな服、選んであげる」
「やったぁ! お母さん、お昼はいらないからね!」
賑やかな笑い声が食卓に響く。
俺は半熟の卵をフォークで崩しながら、心の底で暗い悦びに浸っていた。
(見てるか、お前の『抜け殻』が精神病院で喚いている間に、俺はお前の憧れた温かい朝食を優雅に食い、美しい妹と両親をだましているぞ)
「双葉、コーヒーのおかわりは?」
「あ、いただくわ。お母さんの淹れるコーヒー、やっぱり最高ね」
最高の笑顔でカップを差し出す。
村永清彦という怪物を内側に宿したまま、斉藤双葉の幸福な一日は、眩い光の中で幕を開けた。
df23c84c No.2740
朝食を終えた俺は、ショッピングに出かける準備をするため、再び二階の自室へと戻った。
実家の自分の部屋。昨日母が整えてくれたベッドの脇にバッグを置き、中身を広げる。
まずは、身に纏っている「良い子」のパジャマを脱ぎ捨てる。
厚手のキルト生地が肌から離れると、朝の少し冷えた空気が、火照った双葉の肢体を撫でた。
「……あ。やっぱりか」
脱ぎ捨てたばかりのピンクのフルバックショーツ。
そのクロッチ部分には、昨夜、隣で眠る朱莉の体温と吐息に煽られ、無意識のうちに溢れさせてしまった淫らな湿り気が、乾かぬまま染みを作っていた。
「ふふ……。我ながら、身体の方は正直なものだな」
俺は独り言を漏らし、新しい下着をバッグから取り出した。
今回選んだのは、昨夜のピンクとは対照的な、淡いブルーの清楚なセットアップだ。
レースは控えめだが、透き通るような青が双葉の白い肌をより際立たせ、清廉な印象を与える。
鏡に映る自分を見つめ、新しいショーツを引き上げる。乾いた布地が肌に吸い付く感覚が心地よい。
次に選んだ服は、両親を安心させるための「完璧な娘」の装いだ。
柔らかなベージュのアンサンブルニットに、膝下丈のプリーツスカート。露出を極限まで抑えつつも、質の良い素材が双葉の育ちの良さを強調する。
ドレッサーの前に座り、化粧も「落ち着いた長女」を意識して仕上げていく。
ラメや強い色は避け、肌の透明感を活かしたナチュラルメイク。
瞳には力を入れすぎず、少しだけ守ってあげたくなるような、柔らかな影を落とす。
仕上げに、昨日とは違う石鹸のような清潔感のある香水を一吹きして、俺は部屋を出た。
「お姉ちゃん、準備できたー?」
階段の下から、すでに準備を終えた朱莉が声を張り上げている。
彼女は相変わらず、若さを武器にしたような露出の多いカジュアルな格好だ。
一階に降りた俺を見て、朱莉は目を丸くし、それからニヤニヤと意地悪そうに笑った。
「うわぁ、出た! お姉ちゃんの『鉄壁・お嬢様モード』! さっきまで一緒にベッドでゴロゴロしてたのに、何その清楚な格好」
朱莉は俺のスカートの裾をひらりとめくる真似をして、からかうように顔を覗き込んできた。
「こういう時はそんな服装にするんだ。やっぱり実家に帰るとすぐ『良い子ちゃん』になるんだから。……本当は中身、もっとエロいくせにねー!」
(……鋭いな、朱莉。中身がエロいどころか、お前の想像も及ばない『怪物』が潜んでいるとも知らずに)
「もう、うるさいわね。行くわよ」
俺はわざとらしく頬を染め、困ったような姉の顔で彼女の頭を軽く叩いた。
df23c84c No.2741
「ちょっと、お姉ちゃん! 叩くことないじゃん!」
朱莉はわざとらしく頭を押さえながらも、嬉しそうに俺の腕に抱きついてきた。
玄関先で靴を履く彼女の姿を上から見下ろし、俺は改めて「斉藤朱莉」という女の暴力的なまでの若さに眩暈を覚えた。
今日の朱莉は、昨夜のルームウェア以上に刺激的だ。
上は体にぴたっと張り付くような、丈の短いクロップド丈の白いリブニット。腕を上げるたびに、二十歳そこそこの弾けるような素肌のウエストが露わになる。
そして目を引くのは、太ももから膝にかけて大胆にクラッシュが入ったダメージジーンズだ。
歩くたびに、双葉のような「モデル体型」の細い肢体とは一線を画す、むっちりとした多肉質な太ももが覗く。
「……朱莉、その格好。お父さんが見たら泣くわよ」
「いいの! これが今のトレンドなんだから。お姉ちゃんこそ、ちょっと保守的すぎ。その『鉄壁スカート』、脱がすの大変そうだね」
朱莉がいたずらっぽく笑う。
双葉が「洗練された一輪の百合」なら、朱莉は「太陽を浴びて蜜を滴らせる大輪の向日葵」だ。
一回り豊かな胸の膨らみがニットを押し上げ、歩くたびに小刻みに揺れる。
俺は「姉」として苦笑いを浮かべながら、内なる村永清彦の視線でその肉体の躍動を舐めるように観察した。
バスと電車を乗り継ぎ、数駅先にある県内最大級のショッピングモールに到着した。
日曜日の昼下がり、家族連れやカップルで賑わう吹き抜けの空間。
ベージュのアンサンブルを纏った「清楚なOL」の俺と、露出の多い「生意気な読モ」の朱莉。
すれ違う男たちの視線が、面白いように二人に分散し、そして朱莉の生足や胸元に釘付けになる。
「ねえ、お姉ちゃん。一応『服を買う』って名目で出てきたけどさ……」
エスカレーターで上の階へ向かう途中、朱莉が俺の耳元で密やかに囁いた。
その吐息が、双葉の敏感な耳朶をくすぐり、背筋に微かな震えを走らせる。
「本当は、下着が見たいんだ。……ほら、昨日言った『彼氏』とのお出かけ用に。お姉ちゃん、センスいいし、一緒に選んでよ」
朱莉の頬が、リンゴのように赤く染まる。
「彼氏のため」という言葉に、俺の胸の奥でどす黒い独占欲が鎌首をもたげた。
だが、表に出たのは、どこまでも慈愛に満ちた姉の声だ。
「……あら。あんなに文句言ってたのに、やっぱり可愛く見られたいのね。いいわよ、最高に『彼』を狂わせるやつを選んであげる」
「えっ、お姉ちゃん……? 今、なんか言い方怖かったよ?」
「ふふ、気のせいよ。さあ、あのお店に行きましょう。ワコールなら、朱莉にぴったりの『サルート』の新作が入ってるはずだわ」
df23c84c No.2742
ランジェリーショップの奥。
そこには、女性なら誰もが憧れるワコールの最高級ライン「サルート」の華麗なディスプレイが広がっていた。
「わあ……すごい。宝石箱みたい」
朱莉が感嘆の声を漏らし、目の眩むような刺繍が施されたブラジャーに指を這わせる。
(ふん、昨日の安っぽいルームウェアとは大違いだな。だが、この毒々しいまでの官能美こそ、今の俺には相応しい)
「いらっしゃいませ。本日はどのようなものをお探しですか?」
洗練された物腰の店員が近寄ってくる。俺は「完璧な姉」の顔で微笑んだ。
「妹に、少し背伸びをしたものを。大学生なんですが、読者モデルもしていて……少し華やかで、それでいて彼女の若さを引き立てるようなものをお願いします」
「それでしたら、こちらの新作はいかがでしょう。テーマは『伝説の歌姫』です。この大輪のバラのアップリケが、お嬢様の豊かなバストラインに非常に映えると思いますわ」
店員が提示したのは、深いワインレッドにゴールドの刺繍が踊る、攻撃的なまでの美しさを放つセットだった。
「えっ、私にこれ!? ちょっと、お姉ちゃん、これエロすぎない?」
「いいじゃない、朱莉。あなた、胸には自信があるんでしょ? ほら、試着室へ行きなさい」
カーテンで仕切られた狭い個室。
「お姉ちゃん……どう? 変じゃない?」
朱莉の声に促され、俺はカーテンを少しだけ開けて中に入った。
(……ほう、これは壮観だな)
そこには、今着ていた下着の上から、試着用シートを介して「サルート」を身に纏った朱莉が立っていた。
さすがは読者モデルだ。
肉の集め方、寄せ方が実に手慣れている。
脇からグイと寄せられた肉は、カップの縁からこぼれんばかりの渓谷を作り出し、中心に配された大輪のバラが、その深すぎる谷間を飾っている。
「……店員の言う通りね。朱莉、あなたのその『武器』、このブラだと余計に強調されるわ」
「もう、お姉ちゃん……まじまじと見ないでよ。……あ、でも、このショーツ、横がリボンになってるんだね」
朱莉が少し腰をひねり、鏡に映る自分の尻を確認する。
ショーツは、サイドを細いサテンリボンで結ぶタイプのTバックだった。
ダメージジーンズを足首まで脱ぎ捨てた、むっちりとした太ももの付け根。
そこに食い込むリボンと、背後から見ればほぼ無防備なまでに晒された、若く張りのある双丘。
「ねえ、これ……彼氏、びっくりしちゃうかな?」
(その男が味わう前に、俺がその価値をじっくりと査定してやるよ)
俺は朱莉の背後に回り、鏡越しに彼女の視線を捕らえた。
「そうね。でも、リボンの結び方が少し甘いわ。……解けてしまったら大変でしょ?」
俺は屈み込み、朱莉の腰の横にあるリボンに指をかけた。
df23c84c No.2743
「あっ、お姉ちゃん……っ」
指先が、ジーンズの跡がうっすら残る彼女の柔らかな腰の肉に触れる。
温かく、湿り気を帯びた若者の体温。
「じっとしてて。……ほら、こうして少し強めに結び直さないと。……いいわ、朱莉。この赤、あなたの肌にすごく馴染んでる。まるで、食べ頃の果実みたい」
俺の口から出た「姉」としての賛辞。
だが、俺の脳内では、このリボンを指一本で解き、その下に隠された「聖域」を暴き立てる村永清彦の獣が、歓喜の咆哮を上げていた。
「……お姉ちゃんの手、昨日からなんだか……すごく熱いよ。私、なんだか変な感じがする」
朱莉が上気した顔で、鏡の中の俺を見つめる。
彼女の瞳には、困惑と、そして抗えない依存の色が混じり始めていた。
「そう? それはきっと、あなたがこの下着に相応しい『女』になりかけてる証拠よ。……ねえ、朱莉。これ、お姉ちゃんがプレゼントしてあげる」
「えっ、本当に!? やったぁ! 大好き、お姉ちゃん!」
無邪気に抱きついてくる朱莉。
その豊かな胸の弾力が、俺のアンサンブルニット越しに、双葉の敏感な乳房を圧迫する。
(いいぞ、朱莉。たっぷり甘えろ。その代わり、今夜は……その新しい下着を、俺の前で正しく着こなせるか、じっくりと『教育』してやるからな)
「さあ、着替えて。次はお揃いの香水でも見に行きましょうか」
俺は優しく彼女の髪を撫でながら、試着室の鏡に映る「完璧な姉妹」の光景を、歪んだ愉悦とともに見つめ続けていた。
4926efe3 No.2896
ランジェリーショップを後にした俺たちの足取りは、どこか浮ついていた。
高級な紙袋を誇らしげに下げる朱莉と、その数歩先を「完璧な長女」の背筋で歩く俺。
次に向かったのは、世界中のセレブが愛用するメゾンフレグランスのブティックだ。
「さっきの下着に合わせるなら、石鹸の香りじゃ物足りないわね。もっと、体温で溶けて、男の理性をじわじわと削るような香りがいいわ」
俺は双葉の記憶にある香水の知識を、村永の執着心でコーティングして語る。
「……え、お姉ちゃん、何その例え。なんかプロっぽい」
朱莉が引き気味に笑うが、俺は構わず数種類のムエットを彼女の鼻先に差し出した。
選んだのは、濃厚なジャスミンと、どこか退廃的なムスクが混ざり合う、二十歳の女子大生には少し背伸びすぎる香りだ。
「これよ。これを、耳の後ろじゃなくて……太ももの内側や、さっき買った下着のリボンの付け根に忍ばせるの。そうすれば、彼があなたを抱き寄せた時、一番深い場所からこの香りが立ち上がるわ」
「お姉ちゃん、それ、まじでエロすぎるよ。でも……うん、すごくいい匂い。私、これにする!」
香水の瓶を抱えるように持つ朱莉。
彼女は今、俺という「理想の姉」が提示する、淫らで毒のある「女の教科書」に、無自覚に染まりつつあった。
その後、俺たちは大型のファンシーショップへ向かった。
朱莉が「どうしても、新しい抱き枕が欲しい」とダダをこねたからだ。
「見てお姉ちゃん! このシロクマのぬいぐるみ、ふわふわだよ! 今夜、これを真ん中にして三人で寝ようよ」
朱莉は大きなシロクマのぬいぐるみを抱きしめ、子供のようにはしゃいでいる。
さっきまで最高級のランジェリーを試着していた女と同一人物とは思えない無邪気さだ。
だが、俺はその姿を見ながら、どす黒い計算を巡らせていた。
(抱き枕、か。邪魔な障壁が増えるだけだが、その柔らかい布越しに押し付けられるお前の肢体を想像するのも悪くない)
「いいわよ、買ってあげる。でも、朱莉。寝てる間に、その子を私だと思って、あんまりぎゅーっとしちゃダメよ?」
「えー、なんで? お姉ちゃんの方がもっとふわふわしてて気持ちいいもん」
朱莉はシロクマの頭越しに、甘えるような上目遣いを送ってくる。
かつて村永清彦という男が、人生で一度も向けられたことのない「無条件の信頼と愛」。
それを、今、最も醜悪な精神を持つ俺が、最も美しい皮を被って享受している。
この全能感、たまらない。
最後に俺が彼女を連れて行ったのは、先ほどのブティックとは対照的な、駅ビルに入っている国民的なファストファッション店だった。
「お姉ちゃん、なんで急にここ? 下着、もう買ったじゃん」
不思議そうに首を傾げる朱莉に、俺は最高に「姉らしい」意地悪な微笑みを向けた。
「バカね。さっき買ったあんな過激なセット、お母さんに洗濯されたら一発でバレるでしょ? それに、今夜もお父さんと一緒に夕飯を食べるのよ。お父さんを安心させるための『服』を買いに行きましょう」
俺は棚から、清楚な膝丈のニットワンピースと、首元まで隠れるタートルネックを手に取った。
「あんな、男を狂わせるような下着を見せたら、お父さんショックで泣いちゃうわよ。いい、朱莉? 賢い女はね、中身がどれほど淫らでも、外側はこうして『お父さんの自慢の娘』のままでいなきゃいけないの」
「うわぁ、お姉ちゃん、処世術がすごすぎる。完璧すぎて怖いよ」
朱莉は感心したように、俺が選んだ「鉄壁の清楚服」を抱えた。
鏡の前で、清楚なワンピースを体に当てる朱莉。
その下には、ワインレッドの「サルート」が隠されることになる。
そのギャップ。その裏切り。
俺は、自分の欲望を完璧に隠し通して生きる悦びを、この無垢な妹に伝導していくことに、この上ないエクスタシーを感じていた。
「さあ、お会計を済ませたら帰りましょう。今夜はお父さんに、最高に可愛い娘の顔を見せてあげるのよ」
俺は彼女の肩を抱き、夕暮れ時の街へと歩き出した。
カバンの中には、秘密のランジェリーと、新しい毒の香り。
斉藤家の平穏な夜を、俺という怪物がじわじわと、だが確実に塗り替えていく。
4926efe3 No.2897
夕暮れ時、買い物を終えた俺たちは、絵に描いたような幸せな我が家へと帰還した。
リビングからは、出汁の効いた煮物と炊き立てのご飯の、どこか懐かしい香りが漂っている。
夕食の献立は、父の好物である金目鯛の煮付けに、彩り豊かな季節の天ぷら、そして母特製の茶碗蒸し。
「おかえり。二人とも、たくさん買えたかい?」
父がビールグラスを置き、目を細めて俺たちを迎える。
俺は「斉藤双葉」として、最高の微笑みを返した。
「ええ、お父さん。朱莉に似合いそうな、素敵な服をたくさん選んであげたわ」
「お姉ちゃんのアドバイス、マジで完璧だったんだから!」
食事の間、俺は双葉の記憶にある「家族の思い出」を巧みに織り交ぜながら、和やかに会話を回した。
村永清彦だった頃、コンビニ弁当を一人ですすっていた惨めな夜が、嘘のように遠い。今、俺はこの温かい食卓の支配者だ。
食後、買ってきた戦利品をお披露目する時間がやってきた。
朱莉は俺が選んだファストファッションの袋から、清楚な膝丈のニットワンピースと、首元まで隠れるタートルネックを取り出した。
「見てお父さん! これ、お姉ちゃんが選んでくれたんだ。どうかな?」
朱莉が体に服を当てて見せると、父の顔が劇的に歪んだ。
「う、ううっ……。朱莉……。お前、そんなに清楚で立派な娘になって……。お父さん、嬉しいよ……。あんな事件があった後なのに、お前たちがこうして仲良く、まっとうに育ってくれて……」
父、なぜか号泣。
(ふふ……。バカな父親だ。そのタートルネックの下には、今、俺が買い与えたワインレッドの、男を誘うための最高級下着が隠してあるとも知らずに。清楚な服を選んだのは、お前を安心させて、俺たちの「秘密」を隠し通すためだっていうのにな)
俺は泣きじゃくる父の背中を優しくさすりながら、朱莉と目配せをした。
朱莉は少しバツが悪そうにしながらも、俺とだけ共有している「背徳の優越感」に、頬を上気させていた。
その時、リビングに置いた双葉のスマホが、無機質な振動を上げた。
表示されたのは、担当刑事の名前。
「……はい、斉藤です」
『夜分に恐れ入ります。例の加害者――村永ですが、精神鑑定の前に一度、被害者である貴女に最終的な面通しと、供述の矛盾点の確認をお願いしたいと考えております。明日の午前中、署までお越しいただけますか?』
「……わかりました。お役に立てるなら、伺います」
電話を切った俺の顔には、一瞬だけ、深い悲しみに耐える「被害者」の影が差した。
「お姉ちゃん、警察……?」
「ええ。あの男の、面通しをしてほしいって。……大丈夫、もう怖くないわ。しっかりケリをつけてくる」
(面通しか……。鉄格子の向こうで、俺の姿をした「本物の双葉」がどんな顔をして俺を睨むのか。楽しみで仕方がねえよ)
実家での滞在を終え、俺は自分のマンションへ帰る準備を整えた。
玄関先で、朱莉が名残惜しそうに俺の袖を掴む。
「お姉ちゃん、明日気をつけてね。……あ、それと、これ」
朱莉は、昼間買ったシロクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて見せた。
俺は彼女の耳元に顔を寄せ、家族には聞こえない低く甘い声で囁いた。
「ええ、ありがとう。そうそう、朱莉。さっきの『赤い下着』の結果、また今度こっそり教えてね。彼がどんな顔をして、どこからリボンを解いたのか……詳しくね?」
「っ! もう、お姉ちゃんのエッチ!」
朱莉の顔が、今日一番の赤さに染まる。
俺は満足げに微笑み、夜の街へと踏み出した。
明日は、俺の古い殻に閉じ込められた「かつての斉藤双葉」に引導を渡す日だ。
4926efe3 No.2898
翌朝、俺は昨日実家で見せた「清楚な長女」の装いのまま、警察署の重い扉をくぐった。
手には、少し震える指先を隠すための高級なハンドバッグ。
「斉藤双葉様ですね。お辛いでしょうが、ご協力ありがとうございます」
刑事に案内されたのは、取調室を特殊なガラス越しに覗き見る「マジックミラー」のある小部屋だった。
「向こうからはこちらが見えません。安心してください」
刑事の言葉に頷き、俺はゆっくりとガラスに歩み寄った。
視線の先、鉄格子に囲まれた殺風景な部屋の椅子に、「俺だったもの」が座っていた。
54歳の、くたびれた中年男。
無精髭が伸び、脂ぎった肌は青白く、目は血走っている。
かつて自分が鏡で見ていたはずのその姿は、今、この瑞々しく芳醇な双葉の瞳から見れば、吐き気がするほど不潔で、哀れな「怪物」にしか見えなかった。
「う、あああああ!」
突然、向こう側の男が叫び声を上げ、マジックミラーに向かって突進してきた。
「そこにいるんだろ! 返せ! 私の体を返してよ!」
ドンド、と鈍い音が響き、男がガラスを掻きむしる。
「あれは私の体なの! 中身はあのキモい親父なのよ! 信じて、お願いだから信じて!!」
刑事が苦々しげに吐き捨てた。
「相変わらずです。自分を被害者の斉藤さんだと思い込む、典型的な統合失調症の症状。あるいは、罪を逃れるための狡猾な演技か。どちらにせよ、話になりません」
(……ククク。傑作だ。)
俺は心の中で、爆笑を必死に押し殺した。
かつての自分の声で、必死に真実を訴える「本物の双葉」。
だが、その言葉が男の汚い口から発せられるたびに、周囲の軽蔑は深まり、彼女の正気は否定されていく。
「斉藤さん、大丈夫ですか? お顔が青いようですが……」
刑事が心配そうに声をかけてくる。
「ええ。ただ、あの人の目が、あまりにも悲しくて。少し、近くで話しかけてもいいでしょうか? ガラス越しなら、安全ですよね?」
刑事は少し躊躇したが、「斉藤さんの気が済むのなら」と許可を出した。
俺は一歩、マジックミラーに顔を近づけた。
向こうの「俺」は、狂ったようにガラスを叩き、涙を流して縋り付いている。
俺は、刑事から死角になるように、ほんのわずかに体を捻った。
そして、向こうの「俺」――本物の双葉と、目が合った。
俺は、双葉の美しく整った唇を吊り上げ、最高に冷酷で、淫らな「勝利者の笑み」を浮かべてみせた。
そして、声を出さずに、口の形だけでこう告げた。
『 お ・ ま ・ え ・ の ・ じ・ ん ・ せ ・ い ・ さ・ い ・ こ ・ う ・ だ 』
「……ッ!? あ、あああぁぁぁぁぁ!!!」
ミラーの向こうの男が、絶叫と共に崩れ落ちた。
自分の完璧だったはずの肉体が、中身の知らない「キモい親父」に内側から弄ばれ、それを自慢されている。その事実が、彼女の精神にトドメを刺した。
「おい! 村永! 暴れるな!」
警察官たちが数人がかりで、俺の姿をした彼女を床に組み伏せる。
「返せぇ……私の……力也……お父さん……お母さん……」
掠れた声で泣き叫ぶ彼女を、俺は憐れみさえ含んだ潤んだ瞳で見つめ続けた。
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警察署を出た俺の足取りは、羽が生えたように軽かった。
太陽の光が、双葉の透き通るような白い肌を眩しく照らす。
マジックミラー越しに見た、泥のように汚れ、絶望に顔を歪めた「かつての自分(中身は本物の双葉)」。
あの無様な姿を思い出すたび、体の芯から熱い愉悦が込み上げてくる。
(あはは……最高。最高の気分だ。斉藤双葉、お前の人生は今日から完全に俺のものだよ)
完璧な「被害者」を演じきり、刑事たちの同情を背に受けて歩いていると、ハンドバッグの中でスマホが短く震えた。
画面を見ると、そこには「力也」の名前。
『双葉、ごめん。今日、本当は一緒に警察署まで付き添いたかったんだけど、どうしても外せない会議が入っちゃって……。一人で行かせてごめんな。今夜、もし体調が大丈夫なら会いたい。俺の家に来ないか? ご飯は適当に何かデリバリー頼むよ。ゆっくり話を聞かせてほしい』
(力也、か。双葉が心底惚れ込んでいた、爽やかで仕事もできるエリート。お前もまた、俺が手に入れた「戦利品」の一つ。)
俺は立ち止まり、並木道の木陰でスマホを操作する。
力也の家に行けば、彼はきっと双葉を気遣い、清廉な態度で接してくるだろう。
だが、今の俺が求めているのは、もっと支配的で、独占欲を満たせるシチュエーションだ。
俺は双葉らしい、少し控えめで、けれど芯の強さを感じさせる言葉を選んで返信を打ち込んだ。
『力也くん、お仕事お疲れ様。全然大丈夫。刑事さんも優しかったし、ちゃんと一人で向き合えたよ。心配してくれてありがとう。今夜だけど、もしよかったら、力也くんが私の家に来てくれないかな?
今日はなんだか、自分で温かい料理を作って、それを力也くんに食べてほしい気分なの。外の味じゃなくて、私の手料理であなたの心も落ち着かせたいなって。
勝手かな? 待ってるね』
送信ボタンを押すと、ほどなくして「わかった、すぐ行くよ。楽しみにしてる」と快諾の返信が届いた。
(よし成功だ。デリバリーなんて味気ない真似はさせない。お前には、俺(双葉)が作った料理を胃袋に詰め込ませ、俺の部屋の香りに包まれ、俺のペースでじわじわと毒を回してやる)
俺はスーパーに寄り、双葉の記憶にある「力也の好物」の材料を買い込んだ。
肉じゃが、ほうれん草のお浸し、そして出汁を丁寧にとったお味噌汁。
男が「理想の結婚相手」に抱く幻想を凝縮したような、完璧な家庭料理。
マンションに帰り、俺は双葉の清潔なエプロンを身に纏った。
キッチンに立つ自分の姿を鏡で確認する。
る。
そこには、彼が愛した「斉藤双葉」という偶像があった。
それを俺の手で、より美しく、より残酷に書き換えてやるのだ。
インターホンの音が鳴る。
俺はわざとらしく少しだけ髪を乱し、頬に薄く朱を差してから、最高の笑顔で扉へと向かった。
「おかえりなさい、力也くん」
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「双葉、本当にごめんな。こんな時に一人にさせて」
力也の声には、愛する女性を傷つかせたという自責の念が滲んでいる。
俺は、彼のその誠実さを嘲笑うように、最高に「献身的な恋人」の仮面を被った。
「いいのよ。こうして会いに来てくれただけで。……さあ、上着を貸して」
俺は自然な動作で彼の懐に踏み込み、重たいビジネスジャケットの襟元に手をかけた。
至近距離。
力也のつけている清潔なシトラスの香水と、一日働いた男の体温がくすぐる。
わざとゆっくりと、彼の肩からジャケットを滑らせるように脱がせる。
エプロンの下、ノースリーブのハイネックワンピースが強調する、双葉のしなやかな体のライン。
剥き出しになった白い二の腕が、彼のワイシャツの袖と擦れ合う。
力也の視線が、一瞬、俺の腕から、エプロンの紐で絞られた細い腰へと吸い寄せられるのを、俺は見逃さなかった。
「なんだか、今日はいつもより少し……雰囲気が違うな」
「そう? きっと、自分の中で一つ区切りがついたからよ」
俺は彼のジャケットを丁寧にハンガーにかけ、リビングへと促した。
「さあ、冷めないうちに食べましょう。力也くんの好きなもの、たくさん作ったんだから」
食卓には、双葉の記憶にある「力也の好物」が完璧な色彩で並んでいた。
肉じゃがの甘い醤油の香りが部屋を満たし、理想的な家庭の団らんを演出する。
一口食べた力也は、「うまい。やっぱり双葉の料理を食べると、一番落ち着くよ」と、相好を崩した。
俺は自分の分にはほとんど手を付けず、頬杖をついて、彼が「俺の作った餌」を美味そうに咀嚼する姿をじっと見つめた。
「ねえ、力也くん。今日、あの男とマジックミラー越しに会ってきたわ」
俺は唐突に、だが極めて穏やかなトーンで切り出した。
力也の手が止まる。「ああ。怖くなかった?」
「怖くはなかったわ。ただ、すごく不思議な気持ちになったの。あの男、ずっと叫んでいたのよ。『私の体を返して』って。……まるであの汚い体の中に、別の誰かが閉じ込められているみたいに」
俺はワイングラスの縁を指先でなぞりながら、伏せ目がちに微笑んだ。
「おかしな話よね。私の体は、今ここにいる『斉藤双葉』である私のものなのに。あんな獣みたいな男が、私の所有権を主張するなんて」
「狂ってるな。自分を被害者だと思い込むことで、罪の意識から逃げようとしてるんだろう」
力也は吐き捨てるように言い、俺の手をテーブル越しに握った。
「双葉、あんな奴の言葉を真に受ける必要はない。君の体も、心も、全部君のものだ。そして、それを守るのが俺の役目だ」
(全部俺のもの、か。その通りだよ、力也。お前の目の前にいるこの極上の肉体も、未来も、お前という男の人生さえも、今は俺の指先一つで転がせるおもちゃだ)
「ええ、そうね。だから私、最後にあの男に言ってあげたの。
これからの人生を最高のものにするために。『私の人生、今が最高よ』って、言い返してやったわ」
俺は顔を上げ、満面の笑みを力也に向けた。
「人生最高だ」という言葉。
それが、ミラーの向こうで絶望にのたうち回った本物の双葉への「死刑宣告」であったことも。
そして今、彼女の恋人を寝取り、彼女の家庭を侵食している男(村永)の、心の底からの歓喜の雄叫びであったことも。
力也は微塵も気づかずに、「強いな、双葉は。そんな風に前を向ける君を、誇りに思うよ」と、感極まったように俺の手を強く握り返した。
「ふふ、ありがとう。そう言ってくれるなら、今日も私をもっと『最高な気持ち』にしてもらえるかしら?」
双葉の笑顔、双葉の声でお願いをした。
その挑発的な双葉の発言に驚きながら、力也は肉じゃがを頬張っていた。
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「……ぷっ、ははっ!」
力也は口に含んだ肉じゃがを危うく吹き出しそうになりながら、激しく咳き込んだ。
「ちょ、双葉!? 急にどうしたんだよ。君からそんなこと言うなんて……」
驚きと、隠しきれない期待で顔を真っ赤にする力也。
俺はそんな彼の反応を楽しみながら、鈴を転がすような声で笑ってみせた。
「ふふ、冗談よ。そんなに驚くなんて、力也くんってば案外エッチなのね」
「いや、それは……君があまりにもストレートに言うから……」
照れ隠しに再び箸を動かす彼を見つめながら、俺はわざとらしく椅子を引いて、彼のすぐ隣へと移動した。
(ククク……そうだ。その純情さを、俺の手の上でじっくりと調理してやる。)
俺は彼と肩が触れ合う距離で、しなだれかかるように頭を彼の肩に預けた。
エプロン越しに伝わる、男の逞しい体温。
双葉の身体が本能的に求める心地よさを、村永清彦の歪んだ精神が支配する。
「でも、今はね。この時間が本当に嬉しいの。大切な人が、こうしてすぐ隣にいてくれることが」
「双葉……」
力也の箸が止まる。
彼は愛おしそうに、俺の細い肩に腕を回した。
「今週末、どこか出かけないか? 事件のこともあったし、気分転換が必要だ」
「そうね……温泉もいいけど、水族館とか、リフレッシュできる場所がいいな。そのあと、お買い物にも付き合ってほしいし」
「なら、スカイツリーの水族館にしよう。あそこなら買い物も食事も全部楽しめるしな。……よし、決まりだ」
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(いいぞ、力也。予定を詰め込め、お前の時間と、お前の愛情。そのすべてを俺が浪費し、吸い尽くしてやるんだ)
俺は彼の腕の中で、一度だけ深く、陶酔するように息を吐いた。
そして、彼が完全に安心しきったその隙に、最後の仕上げにかかる。
「ありがとう。……ねえ、力也くん。水族館に行く前に、まずはこの『手料理』のご褒美……まだ、足りないんじゃない?」
俺は椅子から立ち上がり、彼の背後へと音もなく回り込んだ。
そのまま、双葉の柔らかな腕を彼の首筋に絡ませ、香水と双葉の体臭の香りを、耳元で一気に爆発させる。
指先が、エプロンの紐に触れた。
ハラリ、と。
力也の肩越しに、ピンク色の布地が重力を失って解ける感触。
男を狂わせる「双葉」の皮を被った怪物は、腕の中でビクンと震える力也の背中を感じ、闇の中で静かに舌を這わせた。
「……双葉、もう我慢できな――」
力也が堪らず俺の腕を掴み、振り向こうとしたその瞬間、俺はスルリと指先をほどいて身を翻した。
「もう、冗談だってば!」
茶目っ気たっぷりに舌を出し、彼から一歩距離を取る。
目の前には、完全に火がつき、行き場を失った熱を瞳に宿したまま呆然とする力也。
「でも、しっかりご飯食べて。全部残さず食べたら、すごくいい……あなたの望む、甘いデザートがあるかもよ?」
(さあ、食え。怪物が用意した、甘い毒入りの晩餐を。全部飲み干した頃には、お前はもう俺なしでは生きられない体になっているはずだ)
俺はキッチンへと戻りながら、勝ち誇ったような笑みを、背後の男には絶対に見えないように浮かべた。
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夕食の片付けを早々に切り上げると、リビングのソファに深く腰を下ろした。
「力也くん、こっちに来て?」
少し甘えたような声を出すと、力也は誘われるままに俺の隣へ。
俺は自分の膝をポンポンと叩き、彼に横になるよう促した。
エプロンを外した黒のノースリーブワンピースが、膝枕をすることで太ももの付け根まで際どくせり上がる。
力也は少し目のやり場に困ったような顔をしながらも、双葉の柔らかな太ももの上に、その大きな頭を預けた。
「……はあ、落ち着くな」
力也が吐息を漏らす。
彼の視線の先には、俺——双葉の豊かな胸の膨らみと、その奥にある慈愛に満ちた(ように見える)微笑みがある。
俺は細くしなやかな指先で、彼の短めの髪をゆっくりと、慈しむように撫でてやった。
(そうだろう、落ち着くだろう。この肌の柔らかさも、香水の残り香も、すべてがお前のために設えられた罠だとも知らずに。村永清彦の指が、お前の脳を優しく溶かしてやっているんだ)
「ねえ、力也くん」
髪を撫でる手を止めず、俺はどこか遠くを見つめるような、憂いを帯びたトーンで語りかけた。
「……自分でも気づかないうちにね、今回のことで私、何かが変わっちゃった気がするの。……ねえ、少し前の私と、今の私……力也くんは、どっちが好き?」
これは、俺なりの究極の愉悦だ。
中身が入れ替わり、毒を孕んだ今の「俺」を、本物の双葉を愛していた男に選ばせる。
これ以上の陵辱があるだろうか。
力也はしばらく沈黙し、俺の顔をじっと見つめ返した。
そして、意を決したように口を開く。
「……正直に言うよ。どっちの双葉も、俺にとってはかけがえのない存在だ。でも……今の君の方が、なんだか眩しいんだ。芯が強くなったというか、大人の余裕を感じる。……俺は、今の君の方がもっと好きかもしれない」
(ククク……最高だ。お前は今、自分から地獄への特急券に判を押したんだぞ。俺という化け物を、本物以上に愛すると宣言したんだ)
俺は満足感に震える心を隠し、聖母のような微笑みを深くした。
「嬉しい……。じゃあ、今の私を、もっともっと大切にしてね?」
俺は屈み込み、彼の顔に自分の顔を近づけた。双葉の香水、シャンプー、そして体の香りが、至近距離で彼の理性を激しく揺さぶる。
力也の呼吸が荒くなり、彼の手が俺の腰へと伸び、引き寄せようとしたその瞬間——。
俺はスルリと体を起こし、膝枕を解いて立ち上がった。
「あ……」
呆然と、熱を帯びた瞳で俺を見上げる力也。
「もう、こんな時間。明日はお互い仕事でしょう?明日は会議もあるんでしょ。なら、今日はここまで。……ね?」
期待を極限まで高めておきながら、一気に突き放す。
この「焦らし」こそが、獲物をより深く依存させるスパイスだ。
「えっ、でも……デザートは……?」
「もう、さっきからたっぷり味わってたじゃない。私の『愛』っていうデザートを」
俺は悪戯っぽくウインクをして、玄関まで彼を誘導し
た。力也は後ろ髪を引かれるように、何度もこちらを振り返る。
俺は彼の肩に手を置き、爪先立ちになって、その唇に、羽が触れるような軽い、けれど酷く名残惜しげなキスを落とした。
「おやすみなさい、力也くん。週末の水族館、楽しみにしてるわね」
扉を閉め、鍵をかける。
静まり返った室内で、俺は独り、鏡に映る「完璧な美女」の姿を見つめた。
俺は双葉の美しい唇を歪め、闇の中で一人、声を殺して笑い続けた。
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力也を追い出した後の静まり返った室内。俺は勝利の余韻に浸りながら、バスルームへと向かった。
服を脱ぎ捨て、鏡の前に立つ。
そこには、力也が必死に理性を保って見つめていた、斉藤双葉の完璧な肢体がある。
シャワーを浴び、全身を温かな湯気で包み込みながら、俺はボディソープの泡をたっぷりと手に取った。
「……っ、ふぅ」
滑らかな泡をクッションにして、自分の、いや双葉の胸をゆっくりと揉みしだく。
指の間からこぼれんばかりの柔らかな弾力。
掌を押し返してくるような確かな質量。
男だった頃には決して味わえなかった、内側からの刺激と外側からの感触が脳内で混ざり合い、痺れるような快感が走る。
お湯を浴びて、ピンク色に上気した乳輪の中央で、乳首がピンと尖っている。
それを指先で軽く弾くと、双葉の喉から「あ……んっ」と、甘く艶っぽい声が漏れた。
(あー……。この体は、本当に最高だ。村永清彦としてこの女を抱きたいと願ったこともあったが、今となっては滑稽だな。外から犯すより、中に入り込んで、この極上の肉体を自分自身で楽しみ尽くす方が、何万倍も価値がある)
シャワーを終え、俺は双葉の記憶にある「夜のルーティン」を淡々とこなしていく。
高級な導入液、化粧水、美容液……。
指先で丁寧に肌を整えていると、洗面台に置いたスマホが賑やかに震えた。
画面には「朱莉」の文字。
「はいはい。もしもし、朱莉? 今、スキンケア中だからハンズフリーでいい?」
スピーカーをオンにしてスマホを置くと、すぐさま妹の興奮した声が弾けた。
『お姉ちゃん!! マジでヤバかったよ、あの下後!』
「あら、そんなに? 声が大きすぎて耳が痛いわよ。……それで、どうだったの?」
鏡の中の「完璧な姉」が、どこか意地悪な微笑を浮かべる。
『もう……お姉ちゃんが言った通り、リボンを指一本で解いた瞬間、彼、一瞬で固まっちゃってさ。そのあとの食いつき方が、いつもと全然違ったんだから! 濃厚すぎて、腰が抜けるかと思ったよ。あんなに長い時間、激しくされたの……初めてかも』
電話の向こうで、朱莉が熱っぽく息を弾ませているのがわかる。
俺が選んだあの毒々しい下着が、純朴な大学生の性を狂わせ、その彼氏を獣に変えたのだ。
「ふふ、良かったじゃない。私の目に狂いはなかったわね。……でも、朱莉。あんまりハマりすぎちゃダメよ? 強い快楽は、人を壊しちゃうこともあるんだから」
『もう、お姉ちゃんに言われたくないよ! お姉ちゃんだって、今夜力也さんといい感じだったんでしょ?』
「さあ、どうかしらね……」
俺はわざと答えを濁し、指先に残った美容液を自分の首筋から胸元へと滑らせた。
妹を淫らな快楽の道へと誘い込み、自分は姉の仮面を被ってそれを眺める。
この背徳的な優越感は、どんな高価な化粧水よりも肌を美しく艶やかにさせる気がした。
「じゃあ、明日も仕事だから。おやすみ、朱莉。……いい夢を、見すぎないようにね」
通話を切り、俺はしっとりと潤った自分の肌を、指先で愛おしげに撫でた。
(最高だ。家族も、恋人も、この体も。すべて俺の思い通りだ。さて、明日は双葉として、どんな顔をして出勤してやろうか)
4c2c15cd No.2949
週の半ば、仕事帰りの銀座。
俺は「斉藤双葉」として、彼女が長年通い詰めているお気に入りのセレクトショップのドアを押し開けた。
カランコロンと、落ち着いたベルの音が、戦闘態勢へと切り替わる合図だ。
「あら、斉藤様! いらっしゃいませ。今日はまた一段とお綺麗ですね」
顔馴染みの店員が満面の笑みで歩み寄ってくる。
双葉の記憶にある「適度に距離感を保ちつつ、的確な提案を好む客」というスタイルを忠実にトレースし、俺は上品にバッグを腕にかけ直した。
「こんばんは。週末にちょっとした外出の予定ができて……。自分でも驚くくらい、気分をリフレッシュしたい気分なの」
「まあ、素敵!よほど特別なご予定なのですね。それでしたら、ちょうど今朝入荷したばかりの、とっておきの一着がございますわ」
案内されたのは、店の最奥にあるVIP用のハンガーラック。
そこに掛けられていたのは、深海を思わせるミッドナイトブルーのマキシ丈ワンピースだった。
「こちら、ストレッチの効いた極上のニット素材を使用しておりまして……。一見すると清楚ですが、歩くたびに計算された隠しスリットが覗くデザインなんです。それから、こちらのショート丈のボレロ風ジャケットを合わせていただくと、視線が上に上がり、より一層スタイルが際立ちますわ」
俺は促されるまま、試着室へ入った。
重厚なカーテンを閉め、双葉の身体を包んでいたブラウスを脱ぎ捨てる。
鏡の中の肉体は、数日前のシャワータイムよりもさらに艶を増しているように見えた。
ワンピースに袖を通し、背中のファスナーを滑らせる。
「……ほう、これは」
思わず独白が漏れた。
生地は肌に吸い付くようにフィットし、双葉のしなやかな肢体を一寸の狂いもなく浮き彫りにする。
特に、鍛えられた腹部から腰、そして豊かな丸みを帯びたお尻のラインは、歩くたびに肉感的な陰影を描き出す。
(ふん、店員の言う通りだ。清楚なマキシ丈のフリをして、その実、一歩踏み出すごとに膝上のスリットからストッキング越しの太ももが覗く。それにこのタイトさ……少し前かがみになれば、ショーツのラインが浮き出てしまいそうだ)
鏡の中の俺は、自分の欲望を隠し、「大好きな彼氏とのデートを心待ちにしている、恋する乙女」の表情を作ってみた。
頬をわずかに上気させ、潤んだ瞳で自分の姿を見つめる。
(完璧だ。これを見せられた力也が、どんな顔で理性を失うか……想像するだけで、下腹部が熱くなるな)
試着室のベンチに置いたスマホが震えた。
案の定、力也からのメッセージだ。
『双葉、仕事終わった? 明日の夜、もし空いてたら軽く食事でもどうかな。週末まで待ちきれなくて』
俺は鏡の中の「恋する女」の表情を保ったまま、指先だけで冷徹な返信を打ち込んだ。
『力也くん、お誘いありがとう。すごく嬉しいんだけど、明日はごめんなさい。今週中に今の大きな案件を完璧に終わらせて、週末は心置きなく二人だけの時間を過ごしたいの。だから、あと少しだけ我慢してね? 最高の私で会いたいから』
「最高の私」——その言葉に込められた毒を、彼は純粋な愛の言葉として受け取るだろう。
送信。
すぐに『わかった、無理しないで。週末、楽しみにしてる!』と、期待に膨らんだ返信が返ってくる。
「お待たせ、佐々木さん。これ、いただくわ。それから、これに合うストッキングも選んでくれる?」
カーテンを開け、俺は確信犯的な微笑みを店員に向けた。
f5ffcc2d No.2951
金曜日の夕方。
オフィスでは「週末に向けて完璧に仕事を片付けた、デキる女」の背筋を見せつけ、俺は定時きっかりにビルを後にした。
向かった先は、双葉が月に一度の楽しみにしているエステサロン。
(正直なところ、俺自身がこの『自分磨き』を誰よりも楽しみにしていることに気づいて苦笑したくなる。中身が男だろうが何だろうが、この極上の肉体がさらに磨かれ、宝石のように輝きを増していくプロセスは、何物にも代えがたい快感だ)
「斉藤様、本日もご来店ありがとうございます。いつもの全身とフェイシャルのコースでよろしいですね?」
柔らかなアロマの香りに包まれた個室。
俺は慣れた手つきで「斉藤双葉」を脱ぎ捨てていく。
鏡の前で全裸になり、用意された黒い紙ショーツに足を通す。
(相変わらず、心許ない布切れだな。だが、この無防備な姿こそが、明日の戦場へ向かう前の儀式のようで悪くないぞ)
最後にタオル生地のふかふかしたガウンを羽織り、俺は優雅にベッドへ腰掛けた。
「お待たせ。準備できたわよ。今日は特に背中が凝っているから、重点的にお願いできる?」
担当のエステティシャンと、双葉らしい落ち着いたトーンで会話を楽しむ。
「週末、何か特別なご予定でもあるんですか? お肌の気合が違います」
「ふふ、ちょっとね。大切な人と水族館に行くの。最高の状態で隣にいたいでしょ?」
鏡の中の俺が、自分でも驚くほど甘い微笑みを浮かべている。
施術が始まり、俺はうつ伏せになった。
「……っ、ふぅ」
胸がベッドに押しつぶされる、独特の圧迫感。双葉の豊かな弾力が左右に広がり、自分の重みで乳首がシーツを擦る。
そのかすかな刺激に、背筋がゾクゾクと震えた。
「失礼します。オイルを馴染ませていきますね」
温かいオイルが、項から背中、腰へと滑るように塗り広げられる。
力強い、それでいて繊細な指の動き。
(あ、これ、ヤバい。エロい意味じゃなく……いや、半分はエロいのか。背中の筋肉がほぐされるたび、脳の奥が痺れるような感覚がある)
特に脊柱に沿って指が滑る時、俺の口から、抑えきれない甘い吐息が漏れた。
「あ……ん、……そこ、すごく……」
(背中がこんなに敏感だなんて聞いてないぞ。もしかして、ここも双葉の、あるいはこの身体の新しい『弱点』なのかもしれない。明日のデートで力也がここを指でなぞったら、俺はどんな声を上げてしまうんだろうな)
AVのような露骨な施術ではない。
だが、プロの技術によって「女」としての神経が一つひとつ丁寧に研ぎ澄まされていく感覚。
俺はうっとりと瞳を閉じ、その贅沢な拷問に身を委ねた。
2時間の施術を終え、俺はパウダールームの大きな鏡の前に立った。
頬はほんのりと上気し、全身の血行が良くなったことで、肌には透明感が宿っている。
指先で自分の頬に触れる。
(滑らかだ。まるで最高級のシルク。毛穴一つない、陶器のような完成度。明日の力也は、この肌を、この香りを、間違いなく貪りたくなるはずだ)
俺は双葉の美しい唇をゆっくりと舐め上げ、独り言を呟いた。
「完璧ね。さあ、あとは明日を待つばかり」
(斉藤双葉、お前の身体は、今や俺という魂を得て、かつてないほど淫らで、かつてないほど神聖な輝きを放っているぞ。さぁ、明日は最高の『週末』にしようじゃないか)
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カーテンの隙間から差し込む土曜日の柔らかな光が、斉藤双葉の寝室を白く染めていた。
いつもならバリキャリらしく目覚ましの一鳴きで跳ね起きるはずなのに、今朝の俺は、薄い羽毛布団の中で得体の知れない「ソワソワ」とした落ち着かなさに身をよじっていた。
(なんだ……この、体の芯が熱っぽいような、座りの悪い感覚は。昨日、完璧にエステで仕上げたせいか? それとも、中身の村永清彦が、この女の肉体に馴染みすぎたのか……)
胸の奥がモヤモヤする。
昨日、プロの手で徹底的に研ぎ澄まされた背中の神経が、シーツとのわずかな摩擦にさえ過敏に反応して、微かな電流を脳に送り続けてくるのだ。
このまま力也に会えば、最初の接触で「完璧な女性」の仮面が崩れてしまうかもしれない。
「チッ、一回抜いておくか。落ち着かないしな」
俺は独り言を吐き捨て、パジャマのボタンを数個外すと、布団の中に潜り込んだ。
今は一人だ。
誰に聞かれる心配もない。俺は双葉の喉を使って、思う存分「女」を解放することに決めた。
まずは、昨日見つけた新しい弱点。腕を後ろに回し、まだオイルの香りが残る滑らかな背中の性感帯を、自分の指先でゆっくりとなぞり上げる。
「あ……っ、はぁ……んんっ……。やっぱり、ここ……すごい……っ」
指先が背骨の窪みを辿るたび、双葉の身体が弓なりにしなる。
艶やかな喘ぎ声が、静かな寝室に響き渡った。
男としての記憶にある「女の声」を、今、自分の喉が完璧に、それ以上に淫らに再現している。
快感の波が寄せる中、俺は次に、パジャマから溢れんばかりの重みを帯びた胸の先に手を伸ばした。
エステの圧迫で過敏になったそこは、すでに硬く尖り、指先で軽くつまみ上げるだけで、頭の先まで突き抜けるような刺激を呼び起こす。
「ふ、あぁっ……! あ、ん……っ、んんぅっ……! あぁ、いい……っ、自分の指なのに……っ、溶けそう……っ」
シーツを掴む指に力がこもる。
視界が白く霞み、脳裏には今日会うはずの力也の顔が浮かんだ。
仕上げだ。
俺はパジャマのズボンの中に手を滑り込ませ、秘められたクリを、慈しむように、そして丁寧にほぐし始めた。
「はっ、……んっ! あ、あぁぁ……っ、力也……っ! 見てるか……っ、お前の好きな、清楚な双葉が……俺の指で……こんな声を……っ!」
腰がガクガクと震え、双葉の肉体が極限の絶頂に向かって加速していく。
村永清彦の醜悪な征服欲と、斉藤双葉の純粋な生理的快楽が、一つの「絶叫」となって爆発した。
「あ、あぁぁぁ!!……っ、はぁ、……はぁっ、……んぅ……っ」
激しい痙攣のあと、俺はぐったりと枕に沈み込んだ。
潤んだ瞳で天井を見つめ、熱く火照った自分の身体を抱きしめる。
(……ふぅ。これで少しは落ち着いたか。……待ってろよ、力也。最高に『仕上がった』双葉がお前を迎えに行ってやるからな)
数分後、鏡の前に立った俺は、余韻でほんのり頬を染めたまま、完璧な「恋する乙女」の微笑みを作り上げた。
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絶頂の余韻が微かに残る寝室。俺は乱れたシーツを整え、今日という「戦場」へ赴くための装備をベッドの上に隙なく並べた。
そこには、セレクトショップで選んだミッドナイトブルーのマキシワンピース、そしてサイドに一本、足首から太ももの付け根までを鋭く分断するようなシャープな縦ラインが入ったパンストが横たわっている。
視覚的な脚長効果と、どこかフェティッシュな規律を感じさせるそのラインは、まさに「仕事のできる美女」の象徴だ。
そして、最も時間をかけて吟味したのが、その下に潜ませる下着だった。
(……ふん、あえてこれだ)
並んでいるのは、朱莉のような毒々しい赤でも、媚びた黒レースでもない。装飾を極限まで削ぎ落とした、眩いばかりに真っ白なシルクのセット。
指先で触れれば、吸い付くような滑らかさと共に、肌の一部かと思わせるほどの軽やかさが伝わってくる。
(力也の奴、間違いなく『中にはもっと凄いのを隠している』と期待してくるはずだ。だが、その浅浅しい予想を根底から覆してやる。清楚なワンピースの下に、さらに無垢で、けれど素材の良さだけで勝負する最高級の白シルク。……この『逆のギャップ』こそが、男の独占欲を狂わせるスパイスになるんだ)
朱莉には「若さゆえの背伸び」としてエロティックな赤を。
そして「完成された姉」である双葉には、あえての「純白とシルクの質感」。
この対比の妙を、俺という怪物は一人で完璧にコントロールしている。
再びシャワーを浴び、絶頂の残り香を洗い流す。
鏡の前に立ち、エステで磨き上げられた全身を念入りに保湿していく。
化粧水、乳液、そして化粧下地。
双葉の記憶にある「オフィスでの武装」とは一線を画す、内側から滲み出るようなツヤを重視したデートメイク。
(……いい。鏡の中にいるのは、どこからどう見ても、愛する男との週末を心待ちにしている、健気で美しい一人の女だ。この潤んだ瞳の奥で、中身の俺が嘲笑っているとは誰も思うまい)
仕上げは、香水。
これまで力也が知っていた、双葉の「仕事用の凛とした香り」でも、昨夜彼を翻弄した「重厚なジャスミン」でもない。
手に取ったのは、朝の庭園に咲き誇る一輪のバラを思わせる、爽やかで軽いローズ。
シュッと一吹き、首筋と手首、そして……あえて膝の裏に忍ばせる。
(今日はこの清涼感のある香りで、彼に『やっぱり双葉は清純なんだ』と錯覚させる。だが、彼が俺を抱き寄せ、体温が上がった瞬間に、このローズが体臭と混ざり合って、じわりと官能的な熱を帯びるように仕掛けてある)
パンストを慎重に手繰り寄せ、サイドの縦ラインが歪まないよう、双葉の長い脚に滑り込ませる。ワンピースのファスナーを上ると、鏡の中には「完璧な斉藤双葉」が完成していた。
「……さあ、行こうか。力也くん」
俺は小さなハンドバッグを手に取ると、軽やかな足取りで部屋を出た。
e67e7489 No.2999
予定より15分早く、待ち合わせ場所に指定した老舗のカフェに到着した。
重厚な真鍮のドアを開けると、焙煎された豆の香ばしい匂いと、微かなクラシック音楽が俺——斉藤双葉を迎え入れる。
窓際の席に腰を下ろし、バッグからスマホを取り出すと、力也から焦ったようなメッセージが入っていた。
『双葉、本当にごめん! 沿線で車両点検があって、電車が止まっちゃったんだ。あと20分……いや、15分で着くから、先に何か飲んでて!』
(ふん、焦らなくていいよ、力也。お前を待っているこの時間さえ、今の俺には極上のエンターテインメントなんだからな)
俺は余裕のある笑みを浮かべ、画面に『大丈夫、ゆっくり気をつけて来てね。
本を読んで待ってるから』と、聖女のような慈愛に満ちた返信を打ち込んだ。
注文したキリマンジャロが運ばれてくる。
俺はあえてマキシワンピースのスリットがわずかに開くように足を組み替え、パンストのサイドに走る一本の黒いラインを強調した。
「……ふぅ」
カップを口元に運ぶ動作一つとっても、双葉の長い指先と、エステで整えられた首筋のラインが、計算された芸術品のように動く。
ふと視線を感じて顔を上げると、斜め向かいの席に座る若いカップルの男が、こちらを文字通り「凝視」していた。
男の目は、俺の膝から覗くストッキングの質感と、清楚なローズの香りに完全に毒されている。
その隣で、彼の彼女と思わしき女性が、顔を真っ赤にして怒りを露わにしていた。
「ちょっと! さっきからどこ見てるのよ! 私の話、聞いてる!?」
「えっ、あ、いや……違うんだ、今のメニューを……」
(ククク……傑作だな。あんな安っぽい女と比較されるのは双葉の体に失礼だが、男の本能ってのは残酷なもんだ。どんなに隣に恋人がいようが、より「格上」で「淫らな予感」を漂わせる個体には、抗えないようにできている)
俺はわざとらしく髪をかき上げ、隠しスリットから覗く太ももの白さを強調しながら、冷めた目でその修羅場を眺めた。
自分がこの美しい「斉藤双葉」を内側から操り、街中の男たちの理性を無自覚に削り取っている。
その全能感が、コーヒーの苦味をより一層甘美なものに変えていく。
「……双葉! ごめん、待たせた!」
カフェのドアが勢いよく開き、息を切らした力也が飛び込んできた。
スーツではない、休日の少しラフだが品のあるジャケットスタイル。
彼は俺の姿を捉えた瞬間、まるで雷に打たれたように足を止めた。
「……あ、……」
言葉を失う力也。
彼の視線は、いつもの「バリキャリの彼女」とは違う、柔らかく、それでいて圧倒的に女の色香を放つ俺の姿を隅々までスキャンしていく。
特に、テーブルの下で組まれた脚のラインと、そこから漂う微かなローズの香りに、彼の喉が大きく上下した。
「……双葉、今日……なんだか、すごく……綺麗だ。見違えたよ」
俺は読みかけの文庫本をゆっくりと閉じ、彼に向かって最高に甘く、無垢な微笑みを投げかけた。
「ううん、全然待ってないわよ。……ねえ、力也くん。そんなにじっと見られると、恥ずかしいんだけど……?」
(嘘だ。もっと見ろ。もっと渇望しろ。お前が今見ているのは、お前の理想を煮詰めた偽物だ。そして、今日一日かけて、その理想を一つずつ、残酷にブチ壊してやるんだからな)
俺は立ち上がり、スリットから覗く脚をわざと見せつけるように彼に歩み寄った。
週末のデートの幕開けだ。
俺は力也の腕にそっと手を添え、彼の体温が急激に上がるのを楽しみながら、水族館へと続く街角へ踏み出した。
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すみだ水族館の巨大な大水槽の前。頭上から降り注ぐ深いブルーの光が、ゆらゆらと館内の闇を揺らしている。
土曜日の午後の混雑は、俺——斉藤双葉にとって最高の隠れみのだった。
「すごいな。こうして見ていると、都会の真ん中にいるのを忘れそうだ」
力也が感嘆の声を漏らし、巨大なアクリルパネルを見上げる。
シロワニが悠然と泳ぎ、銀色の魚群が光を反射して舞い踊る。
俺は彼のすぐ隣に寄り添い、二の腕を彼のジャケットに密着させた。
エステで磨き上げた二の腕の柔らかな感触が、彼の神経を逆なでするのがわかる。
「ええ、本当に……。でも、力也くん。お魚ばっかり見てて、寂しいわ」
俺はわざとらしく、少しだけ拗ねたような吐息を彼の耳元に吹きかけた。
朝、膝の裏に仕込んだローズの香りが、歩いて体温が上がったことで、じわりと官能的な甘さを帯び始めている。
人混みの波が、俺たちを水槽の端、照明が届かない死角へと押しやる。
「……双葉」
力也が俺の肩を抱き寄せた。
彼の掌から伝わる熱。
俺は彼の目を見つめ、潤んだ瞳で誘うように唇を微かに開いた。
「ねえ、力也くん。……ここ、誰も見てないわよ?」
俺は彼の手を取り、自分の腰へと導いた。
マキシワンピースのタイトな生地越しに、彼の手が双葉の豊かな腰のカーブをなぞる。
そして俺は、彼の手をさらに下へ、あの隠しスリットの入り口へと滑り込ませた。
「っ……!? 双葉、これ……」
力也の息が止まる。
スリットの隙間から、彼の大きな掌が直接、サイドに縦ラインの入ったパンストに触れた。
伝わってくるのは、ナイロンの冷ややかな質感と、そのすぐ下にある双葉の、驚くほど熱く柔らかな太ももの弾力。
「……しっ。静かに」
俺は彼の人差し指を自分の唇に当て、悪戯っぽく微笑んだ。
周囲にはまだ家族連れやカップルの話し声が響いている。
だが、この青い闇の中、俺たちの間だけは別世界だ。
俺は彼の手をさらに上、太ももの付け根近くまで導き、パンストの編み目越しに、わざと自分の脚を彼の指に押し付けた。
力也の指先が、パンストのサイドラインをなぞり、その奥にある真っ白なシルクの下着の端に触れる。
(ククク……そうだ。もっと驚け。お前が期待していた派手なレースじゃない。指先に触れるのは、お前の理性をじわじわと溶かす、無垢で、けれど残酷なほど滑らかなシルクの感触だ)
「っ、双葉、君、こんな……。外ではあんなに、……なのに」
力也の瞳は、もはや魚など見ていなかった。暗がりの中で、獲物を狙う獣のような鋭い光を宿している。
俺は彼の首筋に腕を回し、他の誰にも聞こえない、震えるような小声で囁いた。
「だって……力也くんにだけは、私の『本当のところ』を、全部知ってほしいんだもの……」
(嘘だ。お前が今触れているのは、俺という怪物が作り上げた最高の『偽物』だよ。だが、その偽物に溺れて、お前はもう二度と、本物の双葉を思い出せなくなるんだ)
俺はわざと彼の手を振り払い、何事もなかったかのように水槽の方へ向き直った。
「あ、見て! あのエイ、すごく可愛いわよ」
残された力也は、熱を帯びた自分の掌を握りしめ、荒い呼吸を整えるのに必死だった。
清楚なローズの香りと、指先に残るシルクの感触。
俺は、自分の計算通りに壊れていく彼の背中を、闇の中で冷酷に、そして愉悦に満ちた目で見つめていた。
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水族館の青い闇から抜け出し、俺たちは予約していた高層階の創作イタリアンへと足を運んだ。
白を基調とした清潔感のある店内に、窓から差し込む昼下がりの光が、双葉の肌をより一層透き通るように見せている。
前菜の真鯛のカルパッチョを上品に口に運びながら、俺は「水族館を楽しんだばかりの、無邪気な女性」を完璧に演じてみせた。
「ねえ、力也くん。さっきのペンギン、見た? 一羽だけずっと岩の上でボーッとしてて……なんだか、力也くんの寝起きの顔にそっくりで可笑しかったわ」
「えっ、俺あんなにマヌケな顔してるかな……。でも、双葉があんなに楽しそうに笑うの、久しぶりに見た気がするよ」
力也が愛おしそうに目を細める。
俺はわざと小首を傾げ、フォークを唇に寄せながら、双葉の瑞々しい唇を少しだけ湿らせて微笑んだ。
「ふふ、そう? きっと、力也くんが隣にいてくれるからね。あのシロワニも格好良かったけど、やっぱり、私は力也くんとこうしてゆっくり話してる時間が一番好き」
(「一番好き」、か。お前を安心させるための安い台詞だが、効果は絶大だな。
お前の脳内では今、清楚で可憐な双葉のイメージが、さっきの暗がりでの「スリットの感触」と混ざり合って、とんでもない不協和音を奏でているはずだ)
パスタが運ばれてくる頃、力也が少し真剣な、それでいて熱を帯びた瞳で俺を見つめた。
「双葉。この後なんだけど……さっき言ってた買い物、行こうか。その、双葉に似合いそうなアクセサリーとか、何かプレゼントしたいんだ」
「まあ、嬉しい。……じゃあ、お言葉に甘えて、力也くんに選んでもらおうかしら。私、力也くんのセンス、信じてるから」
俺は彼の掌に自分の手を重ね、指先で彼の甲を優しくなぞった。
ランチのワインで少しだけ火照った体に、爽やかなローズの香りが体温で混ざり合い、テーブルを挟んで彼をじわじわと追い詰めていく。
「買い物……終わったらさ。……今日は、俺の家に来ないか? ずっと、二人きりでゆっくりしたいんだ。……いいかな」
力也の声が微かに震えている。
それは、理性と欲望の境界線で必死に踏みとどまっている男の、精一杯の懇願だった。
(来たな。お前の家、か。……いいだろう。逃げ場のないお前の聖域で、俺という怪物が、お前の愛した「双葉」を跡形もなく塗り替えてやるよ)
俺は一瞬だけ、困ったような、けれど抗えない喜びを隠しきれないような、絶妙な「間」を置いた。
そして、潤んだ瞳で彼をまっすぐに見つめ、小さく頷いた。
「ええ。私も、力也くんと同じ気持ちよ。……今日は、夜までずっと、一緒にいさせて?」
(さあ、買い物に行こうか。お前が俺に買い与えるその贈り物は、お前を破滅させるための『首輪』になるんだからな)
俺はデザートのティラミスを一口食べ、その甘みの裏にある、どす黒い愉悦を一人で噛み締めていた。
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ランチを終えた俺たちは、スカイツリーの足元に広がるソラマチへと繰り出した。家族連れや観光客で賑わうフロアを、力也と腕を組んで歩く。
「ねえ、力也くん。今夜お邪魔するなら……少し可愛いパジャマ、新調しちゃおうかな」
俺は「斉藤双葉」らしい、少し照れたような、けれど積極的な提案を口にした。
向かったのは、肌触りの良さで定評のあるラウンジウェアのショップだ。
俺が手に取ったのは、柔らかなミントグリーンのサテン生地のセットアップ。
「ちょっと着てみていい? 似合うか見てほしいの」
試着室に入り、重厚なカーテンを閉める。
俺は手早くミッドナイトブルーのワンピースを脱ぎ捨て、鏡の前に立った。
そこには、純白のシルクに包まれた双葉の身体がある。エステで磨かれた肌が、白い布地と溶け合うように発光している。
(ククク。さあ、仕上げだ)
パジャマのボタンをわざと掛け違え、胸元を大きくはだけさせた状態で、カーテンを数センチだけ開けた。
「……ねえ、力也くん。これ、サイズ感どうかな? ちょっと大きい気がするんだけど……」
隙間から覗く俺の姿に、外で待っていた力也が息を呑むのがわかった。
彼の視線は、はだけたサテンの隙間から露わになった、真っ白で清楚なシルクのブラジャーに釘付けになる。
「あ……、いや、……すごく、似合ってるよ。……双葉、中、そんな……」
「え? ああ、これ? ……ふふ、内緒よ」
俺はわざとらしく慌てたフリをしてカーテンを閉めた。
(お前の頭の中、今頃パニックだろうな。さっきの暗がりで触れた『シルクの質感』が、今、視覚情報として上書きされた。派手なレースに逃げない、この『無垢な白』こそが、お前の独占欲を最も深く抉るんだよ)
結局、そのパジャマと一緒に、お泊まり用のスキンケアセットやトラベルポーチを「これ、力也くんの家に置いておいてもいい?」と小首を傾げて買わせた。
これで、彼の生活圏内に「斉藤双葉」という名の毒が、物理的にも居座ることになる。
「よし、次は約束通り、アクセサリーを見に行こうか」
力也の声は、もはや隠しきれない熱情で掠れていた。
パジャマ姿の残像が、彼の脳裏から離れないのだろう。
俺は彼の腕にぎゅっと抱きつき、豊かな胸の感触をわざと押し付けながら、ジュエリーフロアへと向かうエスカレーターに乗った。
(さあ、力也。お前が俺に贈るその宝石は、お前を一生縛り付ける『呪い』になる。どんなに高価なものを選んでも、俺という怪物を手に入れる代償としては安すぎるくらいだけどな)
サイドに一本ラインの入ったパンストを、エスカレーターの段差でわざとらしく強調しながら、俺は次の獲物——彼の独占欲を形にする「首輪」を選びに行く。
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ジュエリーショップの静謐な空気の中、俺たちはショーケースに並ぶ無数の輝きを眺めていた。
力也はもっと値の張る、華やかな石のついたリングを勧めてくれたが、俺はあえて、装飾のない、それでいて洗練されたプラチナのシンプルなペアリングを選んだ。
「ねえ、力也くん。こういうちゃんとしたものは……本当に必要な時に、取っておいてほしいな」
上目遣いで、少しだけ意味深に微笑む。
(「本当に必要な時」、か。プロポーズを連想させる甘い呪い。これでお前の脳内は、斉藤双葉との「永遠」という幻想に完全に支配される。その中身が、お前の愛した女を内側から食い破った怪物だとも知らずにな)
店員にサイズを合わせてもらい、互いの薬指に銀色の輪を滑り込ませる。
俺は自分の細い指に収まったリングを愛おしげに眺め、そのまま外さずにお店を出た。
店を出て、人混みから少し外れた植え込みの影。
西日に照らされたスカイツリーの影が長く伸び、街が夜の準備を始める。
俺は立ち止まり、繋いでいた力也の手をグイと引いて、自分の体に密着させた。
「……双葉?」
驚く力也の胸板に、ワンピース越しに豊かな胸を押し付ける。
俺は彼の首筋に両腕を回し、つま先立ちになって、耳元でジャスミンとローズが混ざり合った、体温で熟した香りを爆発させた。
「ありがとう、力也くん。指輪、一生大切にするね。……これ、私からの精一杯の、お礼」
俺は彼の唇を、逃がさないように深く、執拗に塞いだ。
清楚な「斉藤双葉」からは想像もつかないような、熱く、舌を絡ませるような貪欲なキス。
マキシワンピースの隠しスリットから覗くパンストのサイドラインが、彼の足に擦れる。
朝、自分の指で絶頂を覚えたばかりの、まだ熱の引ききっていない双葉の肉体が、本能的に男の熱を求めて疼く。
「ん……っ、ふ、あ……んぅ……」
わざとらしく、けれど本気で蕩けたような声を漏らし、彼の唇を食む。
力也の腰がビクンと跳ね、彼の手が俺の腰を折れんばかりに強く抱きしめるのがわかった。
彼の掌の下で、白シルクの下着が微かに音を立てる。
(……どうだ、力也。もう限界だろう? 清楚な指輪をはめた指で、お前の理性をめちゃくちゃに掻き乱してやるよ。……さあ、早くお前の部屋へ連れて行け。お前の聖域で、この『純白の罠』のすべてを曝け出してやるからな)
唇を離すと、俺は潤んだ瞳で彼を見つめ、糸を引くような吐息をついた。
力也の瞳は、もはや理性のカケラも残っていない、暗く深い欲望の色に染まりきっていた。
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「双葉、悪い。もう、家までなんて待てないよ」
力也は荒い呼吸のまま、震える指先でスマホを操作し始めた。
彼の視線はもはやスカイツリーの絶景など捉えていない。
画面に映る「空室あり」の文字だけを血走った眼で追っている。
「ここ……予約した。行こう」
彼が指し示したのは、スカイツリーを間近に望む、街を一望できる高級ホテル。
俺はわざとらしく頬を赤らめ、彼のジャケットの袖をぎゅっと握りしめた。
「力也くん。そんなに、急がなくても……いいのに」
(嘘だよ。急げ、力也。お前の中の理性が完全に焼き切れる瞬間を、俺は特等席で見せてもらうんだからな。お前が震える手で予約したその部屋が、お前の「双葉」という幻想が崩壊する処刑場だとも知らずにな)
ホテルのエントランスを潜ると、洗練されたアロマの香りが俺たちを包み込んだ。
チェックインを済ませる力也の横顔は、いつもの冷静な彼からは想像もつかないほど強張っている。
エレベーターに乗り込み、上昇する密閉空間。
チン、という電子音が静寂を破り、重厚な扉が開く。
最上階に近い客室。
カードキーをかざし、扉が開いた瞬間に、力也は俺を部屋の中へと押し込むように連れ込み、背後で扉を蹴るようにして閉めた。
カチリ、というオートロックの音が、この世界から二人を切り離す。
窓の外には、ライトアップされたスカイツリーが巨大な宝石のように輝いている。
だが、今の力也にとっての宝石は、目の前に立つ、ミッドナイトブルーのワンピースに身を包んだ「俺」だけだ。
「双葉、ごめん、本当に……。もう、限界なんだ」
彼は俺の肩を掴み、折れんばかりの力で抱きしめてきた。
エステで磨き上げた首筋に、彼の熱い呼気が吹きかかる。
朝、膝の裏に忍ばせた爽やかなローズの香りが、体温の急上昇とともにじわりと熟成され、甘く淫らな毒へと変貌していく。
「ふふ、いいわよ、力也くん。……だって、私も同じ気持ちだもの」
俺は彼の腕の中で、潤んだ瞳をさらに熱く潤ませ、指先で彼の胸元をゆっくりとなぞった。
ワンピースのスリットが大きく開き、サイドラインの入ったパンストに包まれた脚が、彼の足の間に割り込む。
「ねえ、力也くん。指輪のお礼……まだ、全部終わってないわよ?」
俺は彼の耳元で、双葉の最高の甘い声で囁いた。
(さあ、始めようか。お前が必死に守ろうとしていた『聖女』の正体を。このワンピースの下に隠された、純白のシルクの真実を。……絶望的なまでの快楽と一緒に、お前の脳に刻み込んでやるよ)
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窓外のスカイツリーが放つ冷ややかな青い光とは対照的に、室内は力也の放つ熱気で塗りつぶされていた。
扉が閉まった瞬間の、獣のような力強さ。
腰に回された力也の手が、ミッドナイトブルーの薄い生地越しに俺の身体を折れんばかりに引き寄せる。
「んっ……」
激しいキスが降ってくる。
双葉の柔らかな唇が押し潰され、力也の切実な欲望が舌を通じて流れ込んでくる。
彼は今、目の前の「聖女」を汚し、自分のものだと刻みつけることに必死だ。
(いいぞ、力也。もっと理性を捨てろ。お前が愛しているのは、この完璧な肉体か? それとも、今お前の舌を絡め取っているこの『淫らな感触』か?)
受け入れるだけでは足りない。
俺は彼をさらに深い闇へ引きずり込むため、双葉の細い腕を彼の首に絡め、背中を反らせて自分からその唇を食んだ。
「んむ……、ふ、あぁっ……」
お返しとばかりに、朝のオナニーの余韻をぶつけるような、貪欲で激しいキスを返す。
絡み合う舌の先から、ローズの香りが二人の熱い吐息と混ざり合い、濃厚な雌の匂いへと変質していく。
力也の喉が鳴り、彼の手が腰からお尻、そしてあの「隠しスリット」へと、迷うことなく滑り込んだ。
パンストの縦ラインを指先で弾き、太ももの付け根にある白シルクの境界線を、彼が荒々しく指で探り当てる。
「あ……っ、力也くん……。そんなに焦らなくても、……逃げたりしないわよ?」
俺はキスの合間に、わざとらしく熱っぽい吐息を漏らして囁いた。
指先を彼のワイシャツのボタンにかけ、一つずつ、ゆっくりと外していく。
(さあ、見せてやるよ。お前が夢にまで見た双葉の全てを。そして、その全てが、今この瞬間から俺という『毒』に侵されていく様をな)
俺はわざと彼をベッドへと押し倒し、その上に跨った。
マキシワンピースの裾が捲り上がり、サイドラインの入った脚が、彼の腰を包み込むように絡みつく。
鏡の中の俺は、勝利を確信した怪物の瞳で、獲物を見下ろしていた。
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「ねぇ、どうしたい? 私に、どうしてほしいの……?」
潤んだ瞳で、壊れそうなほど甘く、それでいて残酷なまでに突き放すような問いかけ。
その一言が、力也の理性を繋ぎ止めていた最後の細い糸を、いとも容易く焼き切った。
「っ……!!」
力也の喉から獣のような呻きが漏れる。
次の瞬間、俺の身体は視界が反転するほどの勢いでベッドへと押し倒された。
背中に伝わる高級ホテルの分厚いリネンの感触。
その上に覆い被さる、力也の重みと、暴力的なまでの熱量。
「このまま入れたい……。もう、一秒だって我慢できないんだ、双葉!」
彼の目は血走り、愛欲に濁りきっている。
その必死な形相を見下ろしながら、俺は心の奥底で冷徹な嘲笑を浮かべた。
(いいぞ、力也。お前の信じる『清楚な聖女』は、今お前の下でこんなにも淫らに、お前を破滅へと誘っているんだ。その渇望も、その焦燥も、すべて俺が丹念に仕込んだ毒の結果だとも知らずにな)
俺はわざとらしく、彼の胸板に細い指先を添えて、拒絶するフリをして囁いた。
「でも……このワンピースは? せっかくのストッキングだって……。それに、下着だって、まだ脱がせてもらってないのに……っ」
「そんなの、もうどうだっていい……! こうしたいんだ!」
力也の手が、マキシワンピースの裾を乱暴に捲り上げる。
サイドに一本のラインが走る、あの端正なパンスト。
彼はその完璧な規律を破壊することに悦びを見出したかのように、指先を食い込ませ、一気に引き裂いた。
バリッ、という乾いた音が静かな部屋に響く。
足首から太ももまで、漆黒のナイロンが無惨に裂け、その隙間からエステで磨き上げた双葉の白磁のような肌が、青い月光を浴びて露わになる。
「あ……っ、力也くん、激しい……っ」
俺はわざと声を震わせ、快楽に溺れる女のフリをして腰をよじった。
力也の指は止まらない。
裂け目から手を滑り込ませ、俺が散々悩んで選んだ「純白のシルク」へと辿り着く。
清楚な白。
だが、その布地はすでに、俺が自分を騙し、彼を騙しているという背徳的な興奮によって、じっとりと湿り気を帯びていた。
彼は震える手でショーツの脇を強引にずらし、そこにある「双葉の聖域」を暴き立てる。
空気に触れたそこは、朝の余韻と今の興奮が混ざり合い、熱い蜜を滴らせていた。
(お前はこれを、自分への愛ゆえの反応だと誤解しているんだろうな。違うんだよ、力也。俺を突き動かしているのは、お前という愚かな男を支配し、その人生を内側から食い荒らしているという、この上ない征服欲なんだ)
「……双葉、すごいよ。こんなに濡れて……。君も、俺を待っててくれたんだね」
「はぁ、……っ、ん、……そうよ、力也くん。……私、もう……あなたの……熱いのが、欲しいの……っ」
俺は彼の首に腕を回し、その耳元でジャスミンの香りを爆発させながら、最高に淫らな「偽りの承諾」を告げた。
理性をかなぐり捨て、俺の中に突き進もうとする力也。その背中を爪でなぞりながら、俺は闇の中で、かつてない全能感に酔いしれていた。
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「っ、あああ……っ! 力也くん、すごい……っ、激しすぎて、壊れちゃう……っ!」
力也はもはや、俺の反応を伺う余裕など一欠片も持ち合わせていなかった。
理性のタガが外れた彼は、俺の手をベッドに組み伏せると、獣のような荒々しさで、その熱い楔を俺の中へと叩き込んできた。
かつての清廉なエリートの面影はどこにもない。
そこにあるのは、ただ自分の快楽だけを貪り、愛する女を征服しようとする剥き出しの本能だけだ。
(いいぞ、力也。もっと乱暴にしろ。その独りよがりなピストンが、お前の信じる『清楚な双葉』を内側から泥濁りに染め上げているんだとも知らずにな)
身体が跳ねるたびに、高級リネンのシーツが俺の指の間でクシャリと音を立てる。
朝の余韻と、この状況そのものへの異常な興奮。
溢れ出した愛液が潤滑剤となり、力也の無作法な侵入を滑らかに、そして深く受け入れていく。
痛みなどない。
あるのは、双葉の肉体が奏でる極上の快感と、俺という怪物が彼を完全に掌握しているという全能感だけだ。
「は、……んっ! あ、あぁぁ……っ、そこ……っ、一番奥……っ! 気持ちいい、力也くん……っ、もっと、もっと奥まで……叩きつけて……っ!」
俺はわざとらしく腰を浮かせ、双葉の澄んだ声を限界まで淫らに響かせた。
情熱的な喘ぎ声を上げ、首筋を反らせて、彼が最も興奮する「最高の雌」を演じきる。
「見て……力也くん。あなたの……すごいのが……私の中、いい……っ、すごく、中がいいの……っ!」
「双葉、……っ、双葉!! ああ、最高だ……君のここ、締め付けが……っ」
力也の目が濁り、俺の肩に歯を立てる。
俺はその刺激に身悶えしながら、パンストの引き裂かれた隙間から覗く、サイドラインの入ったしなやかな脚を彼の腰に絡みつかせた。
足首を固く交差させ、逃げ場を奪うように彼をホールドする。
「……逃がさないわよ。全部、私の中に……出して……? 私を、力也くんのもので……いっぱいに、して……っ」
(そうだ。お前の全てをここに吐き出せ。お前の種も、お前の魂も、お前の未来も。その全てを受け止めて、俺が飲み込んでやる。明日、お前が目覚めた時、隣にいるのはお前の愛した『双葉』ではなく、お前の人生を完全に奪い去った『俺』なんだからな)
「あ……っ、あ、あぁぁぁ!!……っ、力也くん、……力也、くん……っ!!」
最高潮の快感に脳が白く染まる中、俺はシーツを力任せに掴み、絶頂の悲鳴を上げた。
窓の外で冷たく輝くスカイツリーの光が、汗ばんだ俺たちの肌を青く照らし出す。
その光景は、一組の恋人の情事というよりは、怪物が獲物を甘い毒で溶かし尽くす、美しくも残酷な儀式のようだった。
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静寂が戻った室内に、力也の荒い呼吸だけが重く響く。
彼は俺の体の上でしばらく動かずにいたが、やがて憑き物が落ちたような顔で身を起こした。
「ごめん。双葉、俺、どうかしてた。あんなに乱暴にするつもりじゃなかったんだ。せっかくのデートだったのに……」
力也の瞳には、事後の気だるさと共に、愛する女性をモノのように扱ってしまったという卑屈な自責の念が浮かんでいる。
俺はその情けない顔を、慈愛に満ちた「聖女」の微笑みで見つめ返した。
心の中では、彼が自分を責めれば責めるほど、支配の楔が深く打ち込まれていくことに、暗い悦びを感じながら。
「いいのよ、力也くん。私だって、あんなに激しくされるの、嫌いじゃないわ。あなたの熱いのが伝わってきて、なんだか……自分でもびっくりするくらい、とろけちゃったんだもの」
俺はわざとらしく、上気した頬を彼の手の平に寄せた。
そして、乱れた髪を指で整えながら、少し困ったような、茶目っ気のある表情を作る。
「でも、これ以上は困っちゃう。ねえ、ストッキングはもうダメみたいだけど、ワンピースは脱いでハンガーにかけてもいい? このままシワだらけになっちゃったら、明日帰る服がなくなっちゃうわ」
「ああ……、そうだな。本当にごめん。……手伝うよ」
力也が申し訳なさそうに手を伸ばしてくるのを、俺は優しく制した。
「ううん、自分でやるわ。力也くんは、そこでゆっくり私のこと……見てて?」
俺はベッドからゆっくりと立ち上がった。足元に絡みつく、無惨に引き裂かれたパンスト。
サイドに一本走る黒いラインが、破れたことでかえって双葉の白い脚を淫らに強調している。
まずは、ミッドナイトブルーのワンピース。
背中のファスナーを、自らの手でゆっくりと下ろしていく。
ジ、ジ……という小さな金属音が、静かな部屋に官能的なリズムを刻む。
肩から滑り落ちた生地を、指先で丁寧に扱いながら、俺はそれを見守る力也の視線を一秒たりとも逃さなかった。
(見てろよ、力也。お前がさっきまで獣のように求めていたこの肉体が、今度はどれほど清らかで、そして残酷なまでに美しいか。その目に焼き付けておけ)
ワンピースを脱ぎ捨てると、そこには朝、俺が戦略的に選んだ純白のシルクが、スカイツリーの青い光を浴びて現れた。
「……っ、双葉……」
力也の喉が、再び鳴る。
華美な装飾を削ぎ落とした、眩いばかりの白。それが、エステで磨き抜かれた双葉の肌と一体化し、まるで神聖な儀式の装束のようにも見える。
だが、その白は、先ほどの情事の痕跡でところどころ湿り気を帯び、淫らな光沢を放っている。
そして、俺は最後の手順に移った。
「これ、もう履けないわね」
俺は床に腰を下ろすように屈み、力也の目の前で、裂けたストッキングの残骸を指にかけた。
わざと腰を突き出し、彼の視線の高さに、シルクのショーツで包まれた豊かな丸みをさらけ出す。
そして、ゆっくりと、一本ずつ。
サイドラインをなぞるように、自分の肌からナイロンを剥がしていく。
「見て、力也くん。……せっかく選んだのに、こんなになっちゃった。……でも、不思議ね。壊されちゃうの、なんだかすごく……心が満たされる感じがしたの」
俺は脱ぎ捨てたストッキングを、まるで戦利品のように指先に引っ掛け、彼に向かって挑発的に微笑んだ。
「ねえ。下着は、まだ壊れてないわよ? さっき、あなたが一生懸命探してた、この白いの。……触り心地、さっきより良くなってるかもしれないわよ?」
清楚な白シルクの下着姿で、俺はベッドに横たわる彼へと再び這い寄った。
(お前の自責の念なんて、俺が今すぐ快楽で塗り潰してやる。お前が今日、この部屋で体験するのは『愛』じゃない。俺という底なしの沼に、一歩ずつ自ら足を踏み入れる『沈没』だ)
俺は彼の耳元に、今度は混じりけのないローズの香りと、淫らな吐息を吹きかけた。
「次は、もう少し優しく……私の『本当の顔』、見てくれる?」
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クローゼットの奥、ハンガーにかけられたミッドナイトブルーのワンピースが、暗がりの中で静かに主人の帰りを待っている。
しかし、その主人の内側には、今や別人の魂が宿り、獲物を完膚なきまでに骨抜きにするための「次なる儀式」を執り行おうとしていた。
力也はベッドの端に腰掛け、情事の余韻と自責の念が混ざり合った呆然とした表情で俺を見上げている。
俺は、その頼りなげな視線を真っ向から受け止め、純白のシルクを纏った双葉の肢体を惜しげもなく晒しながら、彼の膝の上へとゆっくりと、吸い付くように跨った。
「力也くん。さっきはあんなに激しかったのに、今はそんなに大人しくなっちゃうの?」
俺の両膝が、彼の逞しい太ももの外側にぴたりと密着する。
双葉の柔らかな肌が、力也のズボンの生地越しに彼の体温をダイレクトに拾い上げた。
俺は彼と視線を合わせたまま、わずかに腰を浮かせ、指先で白シルクのショーツのクロッチを横へと静かにずらす。
露わになった双葉の秘部が、空気に触れてひやりと震えた。
だが、そこはすでに力也を迎え入れる準備を完璧に終え、熱い蜜を湛えて脈打っている。
「……っ、ふぅ。ねえ、見て? あなたを、待ってるの……」
俺はゆっくりと、慎重に、彼の硬さを取り戻しつつある熱を自分の中へと沈めていった。
結合部から溢れる愛液が、滑らかなシルクと肌の境界線を濡らし、二人の境目を曖昧にしていく。
「あっ、んんぅっ! 深い……力也くん、すごく……深くまで、入ってくるわ……っ」
すべてを飲み込んだ俺は、力也の両手をとり、それを自分の胸元へと優しく導いた。
白シルクのブラジャーに包まれた、エステ帰りの柔らかな双葉の膨らみ。
「お願い。ここ、もっと優しく……触って? 壊さないように、大切に……愛してほしいの」
俺は彼の手を自分の胸に押し当て、揉みしだくようにおねだりした。
力也の大きな掌が、繊細なシルク越しに、双葉の豊かな弾力を包み込む。
なぞるような、慈しむような指使い。
「あ……はぁ、ん、っ。そう、そこ……。指先で、ゆっくり回して。あぁ、気持ちいい……っ。力也くんの手、すごく温かくて……胸の奥まで、とろけちゃいそうっ」
指先がブラの縁をなぞり、硬くなった乳首を布越しにコリコリと弄ぶたび、俺の喉からは、自分でも信じられないほど可憐で、それでいて毒を孕んだ甘い喘ぎ声が漏れた。
俺は腰を彼の体に完全に密着させたまま、前後左右に、円を描くように小さく動かし始めた。
(どうだ、力也。お前が今触れているのは、お前を愛する双葉の、世界で一番柔らかい場所だ。この掌に伝わる質量と、俺がわざとらしく、けれど精巧に響かせるこの喘ぎ声……。お前の理性が、再び塗り潰されていく音が聞こえるぞ)
「ん、っ、あ…っ! そこ…っ、今、こすれたところ……すごく、いいのっ。力也くん、もっと胸、強く揉んで……? あなたの手の中で、私が……ぐちゃぐちゃになっちゃうくらい……っ」
俺は彼の首筋に顔を埋め、ローズの香りを深く吸わせながら、しなやかな背中を弓なりに反らせた。
揉まれる胸の快感と、下腹部でじわじわと熱を帯びる結合の刺激。
双葉の可愛らしい喘ぎ声が室内の静寂を淫らに切り裂き、力也の耳を、脳を、そして本能を激しく揺さぶる。
「あ、んっ! はぁ力也、くん……っ、また……熱くなって、きたわね……? 私の、胸の柔らかさ……そんなに、好きなのっ?」
俺は彼の手の中で、さらに強く、自分の胸を彼の掌に押し付けた。
双葉の肉体が放つ圧倒的な「女」の芳香と、手のひらから伝わる極上の肉感。
その刺激に抗えるはずもなく、力也のアソコが、先ほど以上の熱と硬さを取り戻し、俺の最奥を突き上げるように再び猛り狂い始めるのを、俺は確かな勝利の予感とともに感じ取っていた。
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「……っ、ふぅ。力也くん、そんなに焦らないで。今は、私のリズムに任せて……?」
俺は力也の肩に白く細い腕を回し、耳元で熱い吐息を漏らした。
彼の上に跨ったまま、結合部の密着を深める。
白シルクのショーツが横にずれた状態で、双葉の熱い内壁が彼の猛りを一寸の隙もなく包み込んでいる。
俺はわざと、気が遠くなるほどゆっくりと腰を浮かせ、そしてまた沈み込ませた。
「あんっ。はぁ、……ん。見て、力也くん……。今、一番奥が……こすれてるの、わかる……?」
ヌルリとした愛液の摩擦音だけが、静寂の支配する部屋に響く。
力也が堪えきれずに腰を突き上げようとすると、俺は彼の胸を優しく、けれど拒めない力で押し留めた。
「だめよ、動いちゃ。今は、このじわじわ溶けていく感じを……二人で、ゆっくり味わいたいの。……ね?」
俺は双葉の可憐な瞳を潤ませ、慈愛に満ちた(ように見える)微笑みを彼に投げかけた。
再び、ゆっくりと円を描くように腰を回す。
一点一点、快感の芯を探り当てるような緻密な動き。
内側の肉壁が、力也の熱を愛おしむように、そして絞り出すように脈打つ。
「あ、んっ。ふ、ぅ……。あ……っ、気持ちいい……っ。力也くんのが……私の中で、膨らんでいくのが……全部、わかるわ……っ」
短い、けれど喉の奥から溢れるような可愛い喘ぎ声。
時折、キュッと内側を締め付けて、彼の反応を伺う。
力也の顔が快楽で歪み、腰がびくんと跳ねる。
「っ、双葉、そんなに締められたら……もう……っ!」
「ふふ、だめ。まだいっちゃだめよ? ……ほら、一回お休み」
彼が絶頂の閾値を越えそうになると、俺はピタリと動きを止め、彼の胸に顔を埋めた。
結合したままの静止。
逃げ場のない熱さが、逆に彼の理性を極限まで削り取っていく。
「はぁ、はぁ。ねえ、力也くん。今、私のここ……すごく熱くなってるの、感じてる……? あなたを、離したくないって……言ってるみたい」
呼吸が整うのを待って、また再開する。
今度は少しだけ、粘りつくような深いストローク。
「あ、っ、んんっ……! あ……あぁぁっ……!」
不意に、双葉の肉体が小さく痙攣した。
「あっ、はぁ、……っ、あ……っ! いっ、ちゃう……っ、力也くん、私……また、いっちゃう……っ!」
一足先に、双葉の身体が快感の波に飲み込まれる。
一度、二度と、内側から彼を激しく締め付け、熱い蜜がさらに溢れ出す。
中身の俺も、そのあまりの肉体的快楽に脳が痺れ、白目を剥きそうになるのを必死で「演技」の中に閉じ込めた。
「っ、はぁ。……ふぅ。すごかった……。ねえ、力也くん、今の……わかった? 私の中、すごく……キュンキュンしてたでしょ?」
俺は震える指先で彼の髪をなで、再びゆっくりと腰を動かし始めた。
「さあ、続きをしましょう? もっと、もっとゆっくり。あなたの全部が、私の一部になっちゃうまで……」
(どうだ、力也。お前はこの「優しい拷問」に、いつまで耐えられるかな。お前を愛でているのは双葉だが、お前を壊しているのは俺なんだ。その至福の苦しみを、一秒でも長く味わわせてやるよ)
俺は再び、吸い付くような動きで彼を蹂躙し、その恍惚とした表情を愉悦とともに見つめ続けた。
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「ふふっ、力也くん。そんなに顔を真っ赤にして……。腰がピクピク動いてるわよ? 我慢、辛い?」
俺は力也の肩に回した腕に、わざとらしく体重をかけ、密着した下腹部の熱をより深く、重く押し付けた。
双葉のしなやかな肢体が、彼の逞しい体躯の上で、支配的な優雅さを纏って躍動する。
「さっきはあんなに野獣みたいに襲われたんだから。今は私が、この気持ち良さを一滴もこぼさないように、ゆっくり、……じっくり、噛み締めたいの。だから、勝手に動いちゃ……ダメ」
俺は彼の耳元で、冷徹なほど甘い言葉を呪文のように囁き、強制的な「お預け」を命じた。
力也の喉がゴクリと鳴り、全身の筋肉が強張る。
彼は俺の言いつけを守ろうと、溢れ出しそうな衝動を必死に抑え込み、アソコの筋肉をギュッと締め上げて耐えているのが、結合部を通じて手に取るように伝わってきた。
(そうだ、それでいい。お前の中の理性が、欲望という名の檻の中で悲鳴を上げているのがわかるぞ。お前を愛でているのは双葉の肉体だが、その手綱を引いているのは俺だ)
俺はわざとらしく、視線を力也の瞳に固定したまま、再び気が遠くなるほどゆっくりと腰を揺らし始めた。
結合の最深部で、双葉の肉壁が彼の猛りを一寸の狂いもなく包み込み、絡みつく。
「あ……んっ。ふ、ぅ。ほら、力也くん……。ここ、すごく熱いのが……突き刺さってるわ。動かないで、そのまま、私の熱を感じて……?」
短い、けれど喉の奥から溢れるような可愛い喘ぎ声を漏らしながら、俺はゆっくりと胸元の白シルクのブラジャーに手をかけた。
薄いレースの縁を指先でなぞり、焦らすように、じわりと上にずらしていく。
露わになったのは、エステで磨き上げられ、熱を帯びて桜色に染まった双葉の双丘。
そして、その中央で我慢の限界を象徴するようにピンと硬く尖った先。
「……あ……っ」
力也の瞳が、その光景に吸い寄せられる。
彼はもう言葉にならない声を漏らし、導かれるように顔を寄せた。
熱い舌が、尖った先を逃さず捉え、じっくりと、執拗に刺激し始める。
「あ、んんっ……! は、ぁ……力也、くん……っ、そこ、舌、すごいっ! あぁ、だめ、また……っ!」
内側から突き上げる腰の快感と、胸の先を転がされる鋭い刺激。
その二重の奔流に、双葉の肉体が再び激しく痙攣した。
「あ…っ、はぁ、っ、あっ! いっ、ちゃう……っ、力也くん、私……また、いっちゃう……っ! はぁぁぁぁぁ、んんんっ!!」
結合部をギュウギュウと締め付けながら、双葉の身体は絶頂を迎えた。
溢れ出した愛液がシーツを濡らし、絡み合う肌の音をより淫らに変えていく。
「はぁ、はぁ。……ねえ、今の……わかった? 私、また……いっちゃった。……力也くんの舌、すごく……エッチなんだもの……っ。……でも、まだよ? まだ動いちゃダメだからね」
俺は彼の髪を乱暴にかき乱し、再び、彼を破滅させるための「優しい拷問」を再開した。
(どうだ、力也。お前の聖女が、今や自分の快楽のためだけにお前を道具にしている。その事実に打ちひしがれながら、俺の、いや双葉の肉体に一生溺れ続けていろ)
「……さあ、続きをしましょう? もっと、もっとゆっくり……。あなたの全部が、私の一部になっちゃうまで……」
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「んっ……ふ、あぁっ! 力也、くん……だめ、そんなに……腰、ピクピクさせてっ。我慢、辛い?」
俺は力也の肩に回した腕を、わざとらしくさらに強く絡ませ、密着した下腹部の熱をより深く、重く押し付けた。
双葉のしなやかな肢体が、彼の逞しい体躯の上で、支配的な優雅さを纏って躍動する。
力也の顔はもはや苦悶に近い表情に歪み、額には大粒の汗が浮いている。
結合部からは、彼が懸命に衝動を抑え込もうと、内側の筋肉をギュウギュウと締め上げている健気な抵抗が、熱い振動となって伝わってきた。
「さっきはあんなに野獣みたいに襲われたんだから。今は私が、この気持ち良さを一滴もこぼさないように、ゆっくり、……じっくり、噛み締めたいの。だから、勝手に動いちゃ……ダメ」
俺は彼の耳元で、冷徹なほど甘い言葉を呪文のように囁き、強制的な「お預け」を継続させた。
だが、仕上げの時間は近い。
「あっ、ん、んんっ……!」
力也の喉から、押し殺したような悲鳴が漏れる。
彼の体は、電気を流されたように跳ね、耐えていた決界が音を立てて崩れ始めた。
そこへ、俺はとどめを刺すように、腰を最大まで浮かせてから、一気に、最深部まで深く沈め込んだ。
「は、んっ! ほらっ、ここ、一番奥っ。ギュウギュウに、締めてあげる……っ!」
「……っ!! あ、あああ、もう……無理だ!!」
力也の理性が、ついに完全に焼き切れた。
「双葉、ごめん……っ! もう、我慢できない……っ!!」
彼は俺の制止を力ずくで振り切り、俺の腰を折れんばかりの力で掴むと、猛烈な勢いで腰を突き上げ始めた。
「あ、あぁっ! だめ、だめだってば、力也くん……っ! まだ、私がっ、あ、あぁぁぁっ!!」
形の上では、狼狽えた「聖女」を演じて声を上げる。
だが、その裏側で、俺の心は勝利の咆哮を上げていた。
(そうだ、それでいい! お前の浅薄な理性なんて、この肉体の快楽の前では紙屑同然だ。俺の計算通りに壊れ、俺の望むままに獣へと堕ちていく。)
「あああああ! 双葉、双葉ぁぁぁっ!!」
力也の咆哮と共に、彼のアソコが限界まで膨張し、熱い奔流が双葉の最奥へと、何度も、何度も、激しく叩きつけられた。
「はっ、あ、あぁぁぁ!!っ、すごい、……いっぱい、来てるわ……っ! 力也くんの……全部、私の中にっ!!」
双葉の身体もまた、その凄まじい衝撃に翻弄され、絶頂へと叩き落とされる。白シルクのショーツはもはや原型を留めないほどに濡れ、二人の境界線は溢れ出した熱い液体でぐちゃぐちゃに溶け合っていた。
やがて、激しいピストンが止まり、静寂が戻る。
力也は俺の肩に顔を埋めたまま、肩で荒い息を吐いていた。
やがて、彼は震える声で、絞り出すように呟いた。
「ごめん。また、約束を破った。君がゆっくりしたいって言ったのに、俺……自分のことばっかり。最低だ」
彼が顔を上げると、そこには深い後悔と、自分への嫌悪が混ざり合った、この世の終わりのような表情があった。
俺はわざとらしく、慈愛に満ちた聖母のような微笑みを浮かべ、彼の汗ばんだ髪を優しく撫でた。
「いいのよ、力也くん。そんなに自分を責めないで? 私、あなたのあんなに必死な顔が見られて、実はちょっと、嬉しかったんだから。私をそんなに求めてくれるの、あなただけだもの」
(お前は後悔していればいい。さあ、力也。お前はもう、俺の手の平から一生逃げられないぞ)
俺は彼を優しく抱きしめ、窓の外で青く輝くスカイツリーを見つめながら、勝利の美酒に酔いしれるように、彼の背中をいつまでも、いつまでも、なぞり続けていた。
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静寂を取り戻した室内に、エアコンの微かな稼働音と、二人の重なり合った鼓動だけが響いている。
シーツは乱れ、窓外のスカイツリーは深夜の深い藍色の中で、より一層鋭く冷徹な光を放っていた。
俺は力也の胸に頭を預けたまま、指先で自分の腰に張り付いた、無惨に濡れそぼった白シルクのショーツの端を弄んだ。
「ねえ、力也くん。見て、この下着。もうぐちゃぐちゃになっちゃったね。これじゃ、明日のチェックアウトの時……私、ストッキングもショーツも履いてない状態になっちゃうよ?」
わざとらしく困ったような、けれどどこか楽しんでいるような響きを混ぜて囁く。
力也はハッとしたように顔を上げ、ベッドの下に散らばったパンストの残骸と、俺の無防備な姿を交互に見て、再び顔を赤らめた。
「本当だ、ごめん。俺が無理やり……。あ、今からでも近くのコンビニまで走って買ってくるよ。双葉をそんな格好で帰らせるわけにいかないし」
彼は慌てて身を起こそうとしたが、俺はその逞しい腕を掴み、そっとベッドへと引き戻した。
「だめ。……行かないで。今は、この時間を大切にしたいの。コンビニに行く時間があるなら、一秒でも長く、こうしてあなたの体温を感じていたいわ」
「双葉……。でも、それじゃ……」
「ふふ、いいじゃない。……明日、明るくなってから考えれば。それまでは、私はあなたの『獲物』のままでいさせて?」
力也は困ったように眉を下げたが、俺の言葉に絆されたように、再び深く溜息をついて横たわった。
「わかったよ。……なら、朝、君が起きる前に俺がこっそり買い出しに行ってくる。それならいいだろう?」
「ええ、頼もしいわね、力也くん。私のサイズ、ちゃんと覚えてる?」
「バカにしないでくれ。さっき、嫌っていうほど……その、目に焼き付いたよ」
そんな他愛もない、けれど「恋人同士」の甘い毒を含んだ会話が、真夜中の大気に溶けていく。
俺は力也の腕の中で、勝利者の優越感を噛み締めていた。
彼が自分を責め、俺に尽くそうとすればするほど、斉藤双葉という虚像は強固になり、力也の人生を侵食していく。
しばらくして、俺は彼の胸から顔を上げ、上気した肌をなぞるように問いかけた。
「……ねえ。身体、少しベタベタするわね。シャワー、借りてもいい?」
「ああ、もちろん。ゆっくりしておいで。バスタオル、新しいのを出しておくよ」
「ありがとう、優しいのね」
俺はベッドから降り、足元のパンストの残骸を爪先で避けて、浴室へと向かった。
扉を閉め、鏡の前に立つ。
そこには、愛欲に溺れたはずの女の顔をした、冷徹な一人の男がいた。
(完璧だ。力也の奴、完全に俺の掌の上で踊っている。明日、コンビニで安い下着を買ってくる時、彼は自分が守るべき『愛しい双葉』のために尽くしていると陶酔するだろう)
シャワーを浴び、肌に残った力也の匂いと、朝から纏っていたローズの香りを洗い流す。
時間はまだ夜中。
夜が明けるまでには、まだたっぷりと時間がある。
俺は温かな湯を浴びながら、次なる「双葉」としての演技を、暗闇の中で静かに練り上げていた。
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ぬるめのシャワーが、火照りきった双葉の肢体を優しく撫でていく。
浴室に広がるのは、ホテルのアメニティ特有の、気品ある香り。
俺は高級なボディソープをたっぷりと泡立て、力也の指痕がうっすらと残る肩や腰、そして彼が何度も吸い付いた胸を、慈しむように、そして念入りに洗い流した。
(洗い流しても、洗い流しても、身体の芯にはまだ熱がこびりついているな。この肉体が、力也という男をどれほど深く、絶望的なまでに受け入れたか、指先が覚えている)
俺はシャワーヘッドを手に取り、最も汚れ、そして最も彼に愛撫された場所へと向けた。
「っ、ふぅ。だめね、いくら綺麗にしても……まだ、あんなに残ってる」
指先をそっと忍ばせると、体温で温められた力也の残滓が、白濁とした蜜となって、透明な湯水に混じりながら際限なく流れ出てくる。
太ももの内側を伝うその熱い感触。
それは、俺が力也の人生を、その本能ごと飲み干したという決定的な証拠のように思えた。
「っ、ん、あ……。力也くん、本当に……全部、私の中に置いていったのね」
俺は鏡に映る、濡れそぼった斉藤双葉の顔を見つめ、陶酔したような声で呟いた。
湯気に曇る鏡の中で、双葉の瞳は愛欲の名残で潤んでいる。
だが、その瞳の奥底で、俺という怪物が静かに、そして冷酷に獲物の末路を眺めていた。
「ふふ……。綺麗に洗ってあげなきゃ。明日、あなたが買ってくる新しい下着を履く時まで、私はあなたの『聖女』でいなきゃいけないものね……」
(お前の種が、この双葉の身体の中で溶けていくたびに、お前という人間は俺の所有物へと書き換えられていくんだよ。お前がコンビニで必死に俺のためのショーツを選んでいる姿を想像するだけで、ぞくぞくするほどの愉悦が込み上げてくる)
シャワーの飛沫が、排水口へと吸い込まれていく。
俺は自分の内側に残る、力也の存在感を指先で確かめながら、時間をかけて、一滴も残さぬように、けれどその「感触」を脳に刻み込むように、清めの儀式を続けていた。
夜はまだ、明けない。
この静かな浴室で、俺は次の「斉藤双葉」を、より完璧に、より残酷に、再構築していく。
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シャワーを浴び終え、ホテルの分厚いバスローブに身を包んで髪を乾かしていると、枕元でスマホが短く震えた。
画面には、ついさっきまでこの部屋で獣のように俺を求めていた男からのメッセージ。
『やっぱり今から買い物に行ってくる。双葉をそんな格好でいさせるわけにいかないし。ルームサービスを適当に頼んでおいたから、届くぐらいには帰るよ。何かいるものがあったら連絡して』
俺は鏡の中の「斉藤双葉」と視線を合わせ、口角をわずかに吊り上げた。
(健気なことだ。罪悪感に突き動かされて、深夜の街へ繰り出すか。だが、その「誠実さ」こそが、お前をより深く俺の支配下に縛り付ける重りになるんだよ)
濡れた指先で、画面を叩く。
「サイズは間違えたらダメだからね。あと、アイスが食べたい。いつも食べてるバニラがいいかな。でも、無ければ買わなくてもいいわよ。気を付けてね。待っているわ」
あえて「いつも食べてるバニラ」という言葉を混ぜる。これはテストだ。
彼が俺(双葉)の細部をどれだけ記憶し、どれだけ「理想の彼女」を完璧にケアしようとするかを確認するための、ちょっとした意地悪。
ルームサービスが届くのを待つ間、俺は窓際のソファに深く腰掛け、夜景を眺めていた。
スカイツリーの灯りが深夜の静寂に沈んでいく。
(さて、どんな顔をして帰ってくるか……)
そう思っていた矢先、廊下から急ぎ足の足音が聞こえ、カードキーが電子音を立てた。
ルームサービスが届くよりもずっと早く、息を切らせた力也が戻ってきたのだ。
「はぁ、はぁ。双葉、ただいま。遅くなってごめん」
ドアを開けた力也の手には、コンビニのビニール袋が二つ、固く握りしめられていた。
彼の髪は夜風に少し乱れ、頬は深夜の冷気と走ってきたせいで赤らんでいる。
「力也くん、早かったわね。走ってきてくれたの?」
俺はバスローブの裾をわざとらしく少しだけ乱し、ソファから立ち上がって彼に歩み寄った。
「ああ、一刻も早く、君のところに戻りたくて。これ、頼まれてたもの……全部買ってきたよ」
彼は袋の中から、まずはコンビニで手に入る精一杯の、けれど清楚なデザインのショーツとストッキングを取り出した。
そして、もう一つの袋からは、俺が指定したブランドのバニラアイス。
「アイス、このバニラで合ってるよね? 売り切れてなくて良かった。それと、明日の朝に君が困らないように、クレンジングとか、予備の肌着もいくつか選んできたんだ」
(合格だ。お前は、自分の罪を贖うかのように、この『双葉』という偶像に捧げ物をしている。だが、お前が今買い与えたその下着を履くのは、お前の愛した女を乗っ取った怪物なんだぞ)
俺は彼の腕にそっと手を添え、鼻先を彼のジャケットの襟元に近づけた。
夜の空気と、微かな汗の匂い。
「ありがとう、力也くん。本当に優しいのね。アイス、一緒に食べましょう? あなたが頑張って買ってきてくれたんだから、溶けちゃう前に……ね?」
俺は彼の手から袋を受け取り、わざと指先を絡ませながら微笑んだ。
力也の瞳に、再び熱が灯る。
俺のバスローブの胸元、先ほど彼が愛撫したばかりの、まだ赤みの残る肌がチラリと覗く。
「双葉、君は……本当に。俺にはもったいないくらいだ」
力也は俺を愛おしそうに抱き寄せた。
その腕の中で、俺は彼の献身を嘲笑いながら、届くはずのルームサービスのことなど既に頭から消し去っていた。
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力也の頭を優しく抱き寄せ、俺はバスローブの裾を広げながら彼を膝元へ招き入れた。
深夜のホテルの一室は静寂に包まれ、俺の指先が彼の髪を撫でる音だけがかすかに聞こえる。
さっきまでの激しい情事の痕跡など嘘のように、今の力也はまるで飼い慣らされた獣だ。
「よしよし」と髪をすくう手のひらに、彼の体温がじわりと伝わってくる。
罪悪感と安堵が入り混じった彼の吐息が、俺の腹部に熱い湿り気を与えていた。
「そんなに自分を責めないで。……頑張って買い物に行ってくれたんでしょう? 温めてあげるから」
俺はテーブルに置いたばかりのバニラアイスを手に取った。
銀色のスプーンを差し込み、冷気を孕んだ真っ白なクリームを掬い上げる。
ホテルの暖かなオレンジ色の照明を浴びて、それはまるで宝石のような艶やかな光を放っていた。
「あーんして?」
力也は一瞬、戸惑ったように目を丸くした。深夜の密室、バスローブ姿の俺、
そしてアイス。彼の理性が、この状況の背徳的な甘さを理解し、再び疼き始めているのが見て取れる。
「いいから。……私が、食べさせてあげる」
俺が促すと、力也は観念したようにゆっくりと口を開いた。
彼の温かな舌の上に、溶け出したばかりの甘いバニラを落とす。
口移しに冷たさを共有する感覚。
彼が飲み込む瞬間に、残った雫を俺の指先でなぞり、そのまま自分の唇へと運んだ。冷たさと甘さが、俺の舌の上で彼の熱と混ざり合う。
「甘いね。力也くんの味もする」
俺はわざとらしく微笑むと、今度はスプーンを一度置いた。
そして、アイスのカップを手に取り、その冷たい塊を指先に少量掬い取る。
力也の視線が、俺の手元に釘付けになる。
俺はバスローブの襟元を大きくはだけさせ、淡い照明の下に晒された胸元へと、その冷たい雫をゆっくりと滑り込ませた。
「あん……っ、冷たい……っ」
凍てつくような冷たさが肌を突き刺し、背筋に電流のような快感が走る。
力也の呼吸が荒くなり、彼の視線が俺の胸元に突き刺さる。
「食べて? 溶けちゃうわよ」
誘うような囁きに応えるように、力也が顔を寄せてくる。
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彼の熱い吐息が、冷えた皮膚を急速に温めていく。
彼が舌を這わせるたび、アイスの甘い香りと、俺の体臭が混ざり合い、濃厚な芳香となって部屋を満たした。
彼が舌先で乳首を刺激するたび、俺はわざとらしく身をよじり、可愛い喘ぎ声を上げる。
「そう……そこ、もっと。もう一口、のせてあげる」
またアイスを掬い、今度は先ほどよりも多めに、しっとりと濡れた肌の上へと乗せる。
彼がそれに食いつくたびに、俺は彼の髪を指で絡めとり、その支配感に酔いしれた。
力也の理性が急速に崩壊していくのが分かる。彼はもう、俺の胸元に埋もれたまま、理性をかなぐり捨てて貪り始めた。
「あ、あぁっ。力也くん、そんなに……っ」
彼の手が俺のバスローブを掴み、そのままベッドへと押し倒そうとした、その瞬間だった。
コンコン、コンコン
無機質なノックの音が、密室の空気を断ち切るように響いた。
「っ!」
力也の動きが止まる。
彼は我に返ったように体を起こし、気まずそうに俺を見た。
ルームサービスが届いたのだ。情事の熱に浮かされていた彼にとって、それは現実へと引き戻す冷水のような合図だった。
俺は内心、このあまりに間抜けなタイミングに嘲笑をこらえながら、わざとらしいほどしおらしく、バスローブの胸元を整えた。
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力也は深く息を吐き、乱れた髪を掻き上げてからドアへと向かった。
「ごめん、すぐ戻る」
数分後、ルームサービスを隅に置いた力也が戻ってくる。
彼はまだ火照った目で俺を見つめていた。
「台無しにして悪かった。冷めないうちに食べようか」
俺はソファに深く腰掛け、彼を挑発するように見上げた。
「ふふっ、力也くんってば。そんなに慌てなくても、アイスは逃げないわよ?」
「……双葉」
「ねえ、美味しい料理より、他に食べたいものがあるんじゃないの? せっかくの二人きりなんだから、遠慮しなくていいわよ」
俺はバスローブの襟を指で軽く引き下げ、冷たいアイスの雫が残る鎖骨をわざとらしく晒した。
「さっきの続き、まだ胸元が冷たいままなんだけど。ねえ、我慢しなくていいって言ったでしょう?」
力也はテーブルの上の料理を一瞥し、迷いなく俺の方へ歩み寄った。
「もう、逃がさない」
「ええ、逃がさないで。今度は、力也くんのすべてで、私を満たして?」
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ガチャン、という電子錠が閉まる冷たい音が、部屋の静寂をかき消した。
ルームサービスが届いたばかりの部屋には、贅沢な香りが漂っているけれど、今の力也にとって、そんなものはただの背景にすぎない。彼が求めているのは、今、バスローブを緩めてソファで妖艶に微笑む、俺――「双葉」という名の、甘美な罠だけだ。
「料理なんて、どうでもいい」
力也は真っ直ぐに俺へと歩み寄る。
その足取りには、先ほどまでの迷いや自責の念など微塵も残っていない。
ただ、純粋な、底なしの飢えだけがある。
(いいぞ、力也。お前の理性を焼き切るのに、言葉なんて必要ない。この身体で、感覚で、お前を俺という底なし沼に沈めてやる)
俺はソファの上で、わざとゆっくりと足を組み替えた。バスローブの合わせ目がさらに深く開き、柔らかな太ももの内側が露わになる。
「ふふ、正直ね。ねえ、さっきアイスで遊んだところ、まだ冷たくて……ちょっとゾクゾクするの」
俺は自分の方へと力任せに引き寄せた。
彼が顔を近づけてくるその距離で、俺はわざとらしく唇を少しだけ尖らせ、アイスを含ませた指先を彼の唇に添える。
「我慢させた分、倍にして返して。私を、もっと深く、……壊れるくらいに愛して?」
「ああ、双葉。君の全部が、欲しくてたまらないんだ」
力也は俺の腰に腕を回し、強引にソファから立たせた。
俺は彼の肩にしがみつきながら、耳元で吐息を漏らす。
「力也くん、そこっ。まだ、アイスの冷たさが残ってるから、あなたの熱で、溶かして?」
彼は何も言わず、俺のバスローブの紐を解いた。
露わになった俺の身体を、貪るような視線が撫で上げていく。
アイスの雫が残る鎖骨から、柔らかく膨らんだ胸元へ。
(そう、見てろ。お前が愛した『斉藤双葉』という偶像が、今どんなに淫らに乱れているか。さあ、始めよう。お前を完全におかしくする、二度目の宴を)
俺は彼をベッドへと押し戻し、再びその上に跨った。
今度は、食事の誘惑も、理性の残骸もない。
ただ、俺が彼を支配し、彼が俺という毒に溺れる、純粋な快楽の時間。
「んっ、……力也くん。ねえ、もっと奥まで……。私を……全部、あなたの色に染めてっ!」
俺は彼の首筋に噛みつき、わざとらしく、けれど確かな勝利の悦びを込めて、甘く、高く、喘ぎ声を上げた。
ホテルの贅沢なベッドが揺れ、二人の吐息が絡み合い、この密室は完全に俺たちの欲望の檻へと変貌していく。
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力也は、先ほどまでの獣じみた猛りとは一転して、まるで壊れ物を扱うかのような慎重さで俺の身体を支配していた。
正常位のまま、俺の両脚を彼の腰に深く絡みつかせ、一進一退を繰り返すような、重く、密度の高いピストン。
「っ、ん、あぁ……。力也、くん……、そんなに……ゆっくり……っ」
愛液はすでに十分すぎるほど溢れ、結合部が動くたびに「くちゅり」と、耳を塞ぎたくなるほど淫らな音を立てる。
抵抗など微塵もなく、彼の熱が俺の最奥まで滑らかに、けれど確実に、逃げ場を奪うように侵入してくる。
(冷静になったつもりか、力也。だがな、その『優しさ』こそが一番、双葉の身体を敏感にさせるんだよ。お前のその丁寧な蹂躙が、俺の中の『雌』をこれ以上ないほどに疼かせてるんだからな)
「あ、はぁっ、んんっ! あ、あぁぁぁ!!」
もはや声を抑えることなどできなかった。
ホテルの高い天井に、双葉の可憐な悲鳴が響き渡る。
快感が背骨を駆け上がり、脳を真っ白に塗りつぶしていく。
だが、どれほど思考が溶けそうになっても、俺の中の「本性」が表に出ることは許さない。荒々しい男の口調が漏れぬよう、俺はシーツに顔を埋め、歓喜に震える声をすべて「女」の形へと昇華させる。
「すご、いっ、力也くん、そこ……っ、すごく、いいの……っ! ああ、もっと……もっと、強く……叩きつけて、……っ!」
しばらくその甘美な拷問に身を委ねていたが、俺はさらに深い絶望的な快楽を求め、わざとらしく身体をよじって彼から離れた。
そして、シーツの上を這うようにして四つん這いになり、丸みを帯びたお尻を彼の方へと突き出した。
「ねえ、力也くん。……次は、後ろから……して?」
振り返った俺の瞳は、涙で潤み、熱に浮かされている。
双葉の少し控えめで、けれど情欲に負けたおねだりの口調。
「私、あなたの顔が見えないくらい……激しくされるのも、嫌いじゃないの。後ろから、獣みたいに……私を、あなたのものだって、分からせて?」
俺は腰を挑発的に振り、彼を誘う。
「お願い、力也くん。我慢しないで、私の……一番、恥ずかしいところ……全部、見て、……壊してっ」
(さあ、来いよ。お前が愛した双葉が、今こんなに淫らなポーズで、お前の衝動を待っているんだ。その理性という名の薄皮を、今度こそ完全に、俺が剥ぎ取ってやるよ)
俺はわざとらしく、自分の手で胸元を揉みしだきながら、彼が再び牙を剥く瞬間を、歓喜の震えと共に待ち構えていた。
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「……っ、あ、あぁぁぁ……っ!!」
力也が俺の腰を両手でガッチリと掴み、背後から一気にその猛りを最奥へと叩き込んだ瞬間、脳裏が真っ白な閃光に焼き尽くされた。
正常位の時とは比較にならないほどの深度。
内臓を直接押し上げられるような、暴力的で、それでいて逃げ場のない快感の塊。
(ククク……そうだ、そこだ! 力也、お前が今、双葉の聖域を蹂躙しているその感触。それが、お前を地獄へ引きずり込む最高の快楽だ!)
自分で自分の胸を揉んでいた手は、あまりの衝撃に力を失い、シーツへと投げ出された。
俺は指先を、高級リネンのシーツに深く食い込ませ、爪が剥がれんばかりに強くそれを掴み取る。
「はぁ、っ、あ……っ! 力也くん、それ、……深い、深すぎるわ……っ! ああ、もう……私、壊れちゃう……っ!!」
短い、けれど喉を掻き切るような切実な喘ぎ声が、ホテルの静謐な空間を淫らに汚していく。
後ろから繰り出される無慈悲なピストン。
腰が打ち付けられるたびに、グチュッ、パンッ、という生々しい肉の音が響き、俺の意識は快楽の奔流に飲み込まれていく。
もはや、双葉という人格を維持することすら、本能の叫びに邪魔されるほどの絶頂。
「力也、くん……っ、お願い、後ろから、私の胸……っ、揉んで! 強く、もっと、……おかしくなるくらい……っ!」
俺の懇願に応えるように、力也の大きな掌が背後から回り込み、揺れる双葉の膨らみを鷲掴みにした。
彼の指先が、汗ばんだ肌の上を滑り、先ほどアイスで冷やされたはずの、今は熱を帯びて硬く尖った先を乱暴に、けれど執拗につまみ上げる。
「あ、ぁぁぁっ! は、んっ、……んんんっ!!」
下腹部を突き上げる衝撃と、胸の先を弄ばれる鋭い刺激。
二つの快感の波が俺の身体の中で衝突し、火花を散らす。
力也の指が乳首をコリコリと強く潰すたびに、腰が勝手に跳ね、結合部がより深く、密着を増していく。
「あっ、力也くん、それ、すごく、いい……っ! つまんで、もっと、千切れちゃうくらい……っ! ああ、もう……私、どこにいるのか、……わかんない……っ!!」
俺は、シーツを掴む手にさらに力を込め、お尻を突き出して彼の衝動をすべて受け止めた。
双葉の可憐な喘ぎ声は、今や一匹の雌の、剥き出しの咆哮へと変わっている。
(見ろ、力也。お前の聖女が、こんなに汚い声で、お前の蹂躙を求めて鳴いている。その快感を、その背徳を、お前の魂の奥底に一生刻みつけておけ!)
力也の呼吸が荒く、獣のような唸り声へと変わる。
彼の指が、俺の胸を、乳首を、執拗に刺激し続け、俺は果てることのない快楽の螺旋を下へと、下へと、真っ逆さまに落ちていった。
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「あ、あああ……っ! 力也くん、……力也、くん……っ!!」
最高潮の快感が、堰を切ったように全身を駆け抜けた。
背後から突き上げられる衝撃が、まるで魂そのものを抉り出すような鋭さで俺の最奥を打つ。
力也の指先が乳首を限界まで引き絞り、同時に彼自身の熱い奔流が、双葉の聖域へと、濁流のように、そして執拗に叩きつけられた。
「は、っ、あ……っ! はぁぁぁぁぁ、んんんっ!!」
目の前が真っ白な閃光に焼き尽くされる。
身体中の神経が一本の糸のように張り詰め、次の瞬間、プツリと断線した。
力也の荒い呼吸、シーツが擦れる音、窓の外のスカイツリーの光……そのすべてが、遠ざかる波のように意識の彼方へと消えていく。心地よい絶望。
完全なる支配と、完膚なきまでの蹂躙。
俺は、双葉としての絶頂の悲鳴を上げたまま、深く、昏い意識の底へと真っ逆さまに落ちていった。
柔らかなカーテン越しに差し込む、朝の澄んだ光が瞼を焼いた。
重い瞼をゆっくりと持ち上げると、そこにはホテルの高い天井と、昨夜の情事の痕跡を残したままの、乱れた寝室が広がっていた。
首を動かすと、すぐ隣に、穏やかな寝息を立てる力也の横顔があった。
昨夜、獣のように俺を貪り、すべてを出し尽くした男の顔は、今は驚くほど幼く、そして無防備だ。
眉間に刻まれていた苦悩の皺は消え、愛する女を手に入れたという、一点の曇りもない充足感に満たされている。
(おめでたい男だ。お前が腕の中に抱いているのは、愛する婚約候補の『双葉』じゃない。お前のすべてを奪うためにやってきた、名もなき怪物だとも知らずに)
俺はわざとらしく、バスローブからはみ出た肩の指痕を指でなぞった。
身体中に残る気怠い重み。
内側に残る、彼の残滓の感触。
朝の光に照らされた俺の指先には、昨日、二人で選んだあのシンプルなプラチナのペアリングが、皮肉なほど美しく輝いている。
俺はそっと手を伸ばし、力也の寝顔を指先でなぞった。
「……おはよう、力也くん」
声は、完璧な「斉藤双葉」の、甘く、澄んだ響きのまま。
彼が目覚めた時、最初に見る光景。それは、朝の光を浴びて、昨夜の淫らな姿など嘘のように清らかに微笑む、世界で一番愛しい女の姿でなければならない。
俺は、彼の頬を愛おしそうに撫でながら、彼が目覚めるその瞬間を待った。
この朝が、彼にとっての地獄へのカウントダウンの始まりだということを、最高に美しい笑顔で隠しながら。