【ファクトチェック】守本豊氏の「公約作成」は事実か?副知事起用をめぐる職務専念義務違反論はミスリード
■はじめに
斎藤元彦知事の副知事人事をめぐり、企画部長・守本豊氏の起用が報じられたことを契機に、過去の行為を問題視する声が一部で再燃している。
その中でも特に拡散しているのが、以下の趣旨の主張である。
企画部長の方の守本は、斎藤元彦の選挙向け公約集を起案してた人物。元県民局長が「勤務時間中に職務に関係のない文書を作成してた」で非難されるのならば、守本豊も非難されなければおかしい。 https://t.co/i0BfDBXlCm pic.twitter.com/UQSSnbUOpW
— 菅野完 (@noiehoie) March 17, 2026
「企画部長の方の守本は、斎藤元彦の選挙向け公約集を起案してた人物。元県民局長が「勤務時間中に職務に関係のない文書を作成してた」で非難されるのならば、守本豊も非難されなければおかしい。」
一見すると公平性を問う主張のように見えるが、この議論は第三者委員会の認定の核心部分を見落としている。
本記事では、報告書の原文を引用しながら、事実関係と評価を整理する。
参考:「文書問題に関する第三者調査委員会」調査報告書
■結論
本件主張は成立しない。
理由は明確で、
守本氏の行為
→ 職務の範囲内と明確に認定されている元県民局長の行為
→ 複数の非違行為(②~④)が明確に認定されている
という、前提の違いが存在するためである。
■① 守本氏の行為の事実関係
まず、「公約作成に関与した」とされる部分について。
第三者委員会は次のように認定している。
「F(守本)氏は、当時、企画県民部ビジョン局長であったことから、令和3年4月ないし5月ころ、O議員から要請を受け、県政全般についての課題や施策、今後求められる取組等についてまとめたWordファイルのデータを作成し、O議員に渡した。同議員は、そのデータを編集し、「さいとう元彦の約束」と題する公約集を作成した。」
この記述から明らかなとおり、
守本氏が議員から依頼を受けて作成したのは、県政全般についての課題や施策、今後求められる取組等についてまとめた資料
公約集は議員側が編集して作成
である。
したがって、「公約を起案した」との表現は正確ではない。
■② 守本氏の行為に対する評価
さらに重要なのは、行為の評価である。
第三者委員会は次のように結論付けている。
「C(井ノ本)氏、D(原田)氏及びF(守本)氏は、前記のとおり、いずれも令和3年知事選挙の告示前から、齋藤氏を支援していた自民党兵庫議員団に所属する兵庫県議会議員らに対し、職務上有していた情報や資料を提供し、それらが齋藤氏の公約を策定するに当たって利用されたことが認められる。しかし、そのような行為は、従来、いずれの立候補者予定者に対しても、要請があれば、それに応じてされていたものであって、兵庫県職員としての職務を逸脱した行為とは言えないし、特に齋藤氏に対してのみ便宜を図り、同氏を支援する目的でした行為であるともいえない。」
ここで明確に否定されているのは以下の3点である。
職務逸脱
特定候補への便宜供与
支援目的
すなわち、守本氏の行為は職務の範囲内であり、非違行為に当たるとは評価されていない。
さらに重要なのは、本件行為が特定候補者への特別な支援ではなく、従来から行われてきた行政実務の範囲内の対応であると認定されている点である。
すなわち、特定の候補予定者に対してのみ便宜を図ったものではなく、要請があれば同様の情報提供が行われていたと評価されている。
そして、これらの資料が結果として公約策定に利用された点についても、当該行為は職務逸脱や便宜供与、支援目的によるものではないと評価されている。
■③ 元県民局長の懲戒処分の構造
一方、比較対象とされている元県民局長の処分は、全く異なる構造を持つ。
処分理由は以下の4点である。
① 文書作成・配布
② 人事データ専用端末の不正利用
③ 職務専念義務違反(私的文書作成)
④ ハラスメント行為
ここで重要なのは、②~④は「非違行為」と明確に認定されている点である。
■④ 核心:②~④は「非違行為」と明確に認定
第三者委員会は、②~④について次のように明言している。
「特に、人事データの不正利用と他の県職員に対するパワハラ行為は、それ自体が見過ごすことのできない非違行為であったと言える。」
「そのパソコン内のデータによって判明した上記3件の非違行為は、いずれも公務員としての非行に該当するものである。」
さらに、
「その内、「人事データ専用端末の不正利用」と「ハラスメント行為」については、県の幹部職員の行為として見過ごすことのできない非行であって、本調査委員会は全ての資料を吟味したものではないが、その行為は懲戒に値すると考えざるを得ない。」
そして最終的に、
「そのパソコン内のデータによって判明した非行も軽微なものとは言えず、程度はともかく懲戒処分は避けられないと言うべきであるから、県が処分理由②ないし④の事象について懲戒権を行使することは、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したとまでは言えず、その処分が違法無効であると言うことはできない。」
と結論付けている。
■⑤ 処分の最終評価
報告書は処分全体について次のように整理している。
「「誹謗中傷文書(本件文書)の作成・配布行為」を処分理由とする部分は効力を有しないが、残りの3件を処分理由として行った部分は無効とは言えない」
つまり、
① → 無効
②~④ → 有効
という構造である。
■⑥ 決定的な違い
以上を踏まえると、両者の違いは明白である。
●守本氏
政策資料の作成・提供
職務の範囲内
非違行為なし
●元県民局長
人事データ不正利用
業務と無関係な私的文書の作成を継続的に行っていた職務専念義務違反
ハラスメント
→ 非違行為あり(明確に認定)
すなわち、公務としての必要性に基づく行為ではなく、職務と無関係な私的行為が問題とされている。
■⑦ 比較が成立しない理由
それにもかかわらず、「勤務時間中に文書を作成した」という一点のみを抽出して両者を比較するのは、評価の前提条件を無視した議論である。
なぜなら、懲戒処分の適否は単なる行為の外形ではなく、
・その行為が職務に基づくものか
・それとも職務と無関係な非違行為か
という点によって判断されるためである。
本件においては、
守本氏 → 職務としての政策資料作成
元県民局長 → 私的行為および複数の非違行為
という根本的な差異が存在する。
したがって、両者を同列に扱うこと自体が、前提を欠いた比較であると言わざるを得ない。
■結論(再掲)
「守本氏も同様に非難されるべき」とする主張は、
第三者委員会の報告書に照らすと成立しない。
本件は、
事実の一部のみを抽出し
最も重要な評価(非違行為の有無)を無視する
ミスリードであると評価できる。
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