【検証】「兵庫県民は立花氏のデマに騙され斎藤氏を再選させた」は事実か? → 根拠不明
はじめに
2024年、兵庫県の斎藤元彦知事は、パワハラ疑惑、おねだり疑惑、キックバック疑惑などのスキャンダルにより、大きな騒動の渦中に置かれました。
その後、9月には県議会が不信任決議案を全会一致で可決。斎藤知事は自動失職を選択します。
しかし、続く11月の知事選挙において、斎藤氏は再選を果たしました。
この選挙に関連して、「立花孝志氏が拡散したデマにより県民が騙され、その結果として斎藤氏が再選した」という言説が、マスメディアやSNS上で広く見られます。
ですが、この主張には重大な問題があります。
「どのデマが、どのように投票行動に影響したのか」が具体的に示されていないのです。
そこで今回、X(旧Twitter)にて以下の問いかけを行いました。
検証の出発点
当協会によるポスト:
【リプ欄解放】
— 東京ファクトチェック協会(TFA) (@tokyo_factcheck) May 1, 2026
「兵庫県知事選は立花氏のデマで県民が騙され、斎藤氏が再選した」との言説があります。
しかし、どのデマが斎藤氏への投票に影響したのかは示されてません。
「騙されて再選」とする根拠となるデマを具体的に示してください。
※斎藤氏への投票理由は「政策公約」「改革姿勢」など pic.twitter.com/Q0chnWNRFC
検証結果の概要
複数のコメントが寄せられましたが、結論から言えば、以下の3点を満たす主張は一つも提示されませんでした。
立花氏が広めたとされる具体的なデマ(発言の特定)
それを裏付ける一次ソース
そのデマが投票行動に影響したとする因果関係
以下、提示された主張を個別に検証します。
個別検証①:「公約達成率98.8%というデマ」
公約達成率98.8%というデマ
— 兵庫県ディープリサーチ倶楽部 (@hyogo_dr) May 1, 2026
既得権益と戦ったというデマ
学校にクーラーを設置したというデマ
斎藤元彦のデマ選挙は立花孝志のデマに限らないので、「どのデマか?」よりも「どれがデマじゃないか?」をまず問う必要がありそう😹
これは「ツイッター速報」による投稿が発端です。
【悲報】兵庫県斎藤知事の公約実現率、脅威の98.8% https://t.co/IB3AjJadPs
— ツイッター速報〜BreakingNews (@tweetsoku1) September 21, 2024
該当アカウントは、いわゆるデマ投稿で知られるものであり、当該ポストにはコミュニティノートも付与されています。
したがって、
斎藤知事の発信ではない
立花氏の発信でもない
このデマを立花氏と結び付ける根拠は確認できません。
個別検証②:「既得権益と戦ったというデマ」
この主張については、「何がデマなのか」が示されていません。
実際には、
外郭団体への天下り(65歳)の厳格化
県庁舎建て替えの凍結
分収造林事業・地域整備事業など約1,500億円規模の課題対応
といった改革的な取り組みが行われており、「既得権益に切り込んだ」という評価には一定の事実性があります。
個別検証③:「学校にクーラー設置というデマ」
これも同様に、何がデマなのかが不明確です。
神戸新聞の検証記事では、「体育館にクーラー設置」は「ほぼ正確」と評価されています。
したがって、デマと断定する根拠は確認できません。
個別検証④:「10年で10人と不倫」
立花孝志の10年で10人と不倫
— oatkmaaertom (@schnvfvjfseg175) May 1, 2026
高見ちさきの県庁建替1000億
上畠のりひろの外国人参政権
上山信一の清水の票を元彦に付け替え呼びかけ
具体的に挙げさせたからにはこれらが本当に投票に影響したかファクトチェックするんだな?
結果を楽しみにしている
あと商業雑誌への3500字の投稿も
立花氏が発信したとされるこの件については、一定の検証が可能です。
まず前提として、
元県民局長が10年間に渡る複数の女性との不倫日記を公用PCに保存していた
これは百条委員会において証言されている
という事実があります。
この時点で、「10年間で複数の不倫関係があった」という点には真実相当性が認められます。
では「10人」という人数について:
仮に誤差があったとして
それが投票行動にどのような影響を与えるのか
この因果関係は一切示されていません。
したがって、
デマであることの立証
選挙結果への影響
いずれも確認できません。
個別検証⑤:「パワハラしていないデマ」
この論点は、事実認定ではなく評価の問題です。
行為自体は選挙前から百条委員会で明らかになっていた
問題は、それが「パワハラに該当するか」という評価
第三者委員会はパワハラ認定をしていますが、それは独自基準によるものです。
厚労省基準に基づく評価は現在も確定していません。
したがって、「パワハラではない」という主張を直ちにデマと断定することはできず、またそれが投票行動に影響したという因果関係も明らかにされておりません。
※参考記事
個別検証⑥:「公益通報者保護法違反ではないというデマ」
これも同様に、評価の問題です。
斎藤知事の対応が同法に違反するとする確定的判断は存在しておらず、見解が分かれている段階です。
したがって、「違反していない」という主張をデマと断定することはできません。
実際に事実を法に照らして評価すれば、斎藤知事が公益通報者保護法に違反したとは、評価されません。
個別検証⑦:「黒幕デマ」「浴衣祭りデマ」など
「浴衣祭りデマ」
→意味不明です。
竹内氏がゆかた祭りに関して事実と異なる情報発信を行っていたこと自体は事実であり、「浴衣祭りデマ」というものが何を指し、それがなぜ立花氏のデマとされるのか意味が分かりません。
むしろゆかた祭りに関する情報発信は竹内元県議が行っていたものであり、斎藤氏の失職過程に影響した内容そのものです。
「黒幕デマ」
→竹内元県議が「黒幕の一人である」という主張を指していると考えられます。
しかしこの点についても、「どこがデマなのか」という構造自体が成立しているか疑問があります。
竹内元県議については、斎藤知事失職の過程において政治的に重要な関与があったとされる側面があり、少なくとも「一切無関係な存在」という整理は事実関係と整合しません。
参考:
泣く子も黙る竹内元議員の鬼尋問を集めてみました https://t.co/6CHgeMtF4P @YouTubeより
— 東京ファクトチェック協会(TFA) (@tokyo_factcheck) November 11, 2025
そのため、「黒幕」という表現が比喩・評価・強調を含むものである以上、単純な事実誤認として切り出せる類型ではありません。
また、仮に表現上の誇張や評価の幅が含まれていたとしても、
それがどの程度の投票行動に影響したのか
それがなければ選挙結果がどう変わったのか
という因果関係は一切示されていません。
さらに重要なのは、
竹内元県議が「黒幕」であるか否か
その評価が選挙結果に影響したかどうか
この2つは別問題であり、前者が仮に否定されたとしても後者は自動的には成立しません。
にもかかわらず、それを直結させる論理は提示されていません。
したがって本件は、「デマか否か」の前に、論点設定そのものが検証可能な形になっていないという問題を含んでいます。
その他のコメントについて
寄せられたコメントの多くは、
具体性を欠く抽象的批判
個人的評価や印象論
根拠の提示がない断定
にとどまっており、検証対象として評価できる内容ではありませんでした。
補足:マスメディアと「オオカミ少年」論
投票の際に重視した点のグラフは、斎藤さんに投票した人達が彼の人柄ではなく彼が何を為すかを重視していたと読ませたいようですね。
— パピオン (@ieepie_papion) May 1, 2026
将来何を為すのかは1期目の実績を見て期待の程度が決められたのでしょう。
個人的にはマスコミを狼少年に仕立て上げたことが斎藤さんの再選に寄与したと思います。
一部コメントにあった「マスメディアへの不信が再選につながった」という指摘については、
おねだり疑惑
キックバック疑惑
などに関して、後に事実誤認だと分かった報道も多々存在しており、メディア側の情報発信に問題があったことは否定できません。
この点については、一定の説明力を持つ要素と考えられます。
結論
今回の検証では、26件のコメントが寄せられましたが、以下のいずれも確認できませんでした。
立花氏が拡散したと特定できるデマ
その裏付けとなる一次ソース
それが投票行動に影響したとする因果関係
したがって、
「兵庫県知事選は立花氏のデマで県民が騙され、斎藤氏が再選した」という主張については、現時点では具体的根拠が示されていません。
このため本件は、
現時点では真偽不明の言説(未検証の主張)
と評価するのが妥当です。
おわりに
本検証にご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。
引き続き、具体的根拠(一次ソースおよび因果関係)を伴う情報提供があれば、検証を継続していきます。
この「兵庫県民は立花のデマに騙されて投票した」といった言説については、根拠が示されていないまま拡散されており、県民の判断を不当に矮小化するものだと考えられます。
111万人が示した民意を、安易な決めつけで踏みにじるような言い方は許されるべきではない。その思いを共有する声も少なくありません。
マスメディアは、この111万人の民意を冒涜することなく、真摯にファクトに向き合ってほしい。
強くそう要望します。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
チップやコメントなどで応援してくださる方もいて、とても励みになっています。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。



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