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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第六章:覆水を盆に返すバカ
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ラストフェイズ:ダァトの部屋4

 そうして。

「はい……じゃあこっちは20万円でどうだ……」

「いや、安すぎるだろ。金50gが含まれててコレだぜ?舐めてんのか?もっと出せるだろ?ああ?」

「ひぃん……我、もっと縮んじゃう……」

 ……ちっちゃな悪魔がすっかりしおしおになる中、宝物の換金が行われた。

 尚、タヌキは金の器や王冠をそのまま貰っているし、真理奈やヤエは、七香が選んでくれたアクセサリーはそのまま持って行くことにしたらしい。そして七香は、タヌキ用のマントや王杓をそのまま持って行くようである!

 バカも、『キラキラのでっかい石!』とにこにこ顔で、ダイヤモンドのでっかいのを貰っていくことにした。バカにはよく分からないが、これは大層立派な石であるらしいので、会社の応接間に飾ってもらえないか親方に聞いてみる予定だ!

 また、海斗は万年筆を一本、そのまま持ち帰ることにしたらしい。深い青の軸に白銀の象嵌が成されたそれは、シンプルながら品があって、海斗っぽいなあ、とバカは思うのだ。

 ……そして。


「ね、ねえ!?ホントにいいのぉ!?山分けって言ってるのに、これじゃ全然、山分けじゃないじゃないの!」

 五右衛門は、札束を抱えて困惑していた!

 そう!ここに居る多くの人達は、『現物でこれが欲しいけれど、お金は、まあ……そんなには……』とか、『お金を貰っちゃうと面倒なことになるんだよね……』といった具合なのである!

「いいんじゃねえかなあ。俺、仕事でここに来てるだけだしぃ……お金はそんなに困ってねえんだよぉ……。うちの社食、安いしぃ……」

「……僕も似たようなものだな。出所不明の金銭を持ち帰るのは、その、色々と面倒で……親の追及が面倒だという以前に、そもそも、下手すると親の会社にまで迷惑をかけかねないからな……」

「俺や七香さん、タヌキも同じようなものかな。経営者側がいきなり、出所不明のお金を手に入れちゃうのは、ちょっとね……。あはは……」

「俺は別に金が目的じゃねえからな。暮らすのに必要な金は自分で稼げることだし、ま、いいんじゃねえか。必要な奴がもらっときゃ、それで」

 ……ということで、札束の大半は、五右衛門のものになっている。そして、それに異を唱える人は、五右衛門以外に誰も居ない。

「いやいやいや!タヌちゃん!あなた、なんか貧乏人みたいなこと言ってたじゃない!?お金、必要なんじゃないのぉ!?」

「あ、それについては何も言わないでください。私、社長になってるらしいので……ああああーん!考えたくない!考えたくないぃいい!」

 五右衛門がタヌキに話を投げてみるも、タヌキは『ああーん!』と嘆くばかりである。嘆きっぷりが、すごい。さっきまでデュオだった人の体でこれをやっているから、余計に、すごい。バカは『すげえ』と只々、感嘆した!

「彰さんの生活に必要なお金は全て私が出しますから、それは必要ありません」

「あ、そういう……エッ!?七香さん今なんて!?なんかとんでもないことを言いませんでした!?」

「気のせいよ」

「怖い!怖い!五右衛門さあん!私、なんか、怖いことに巻き込まれてます!?ねえ!五右衛門さあん!助けて五右衛門さあん!」

 タヌキは何やら『もしかして私、七香さんに捕まった!?』と今更気づいているようだが、もう遅い。大分遅い。バカは『タヌキ、もしかして俺よりバカなのかなあ……七香がタヌキを見る目、獲物を狙うライオンみてえな目だったぞ……』と、タヌキを心配した!


 ……まあ、何はともあれ。

「じゃ、じゃあ、アタシ、これ、貰っちゃう、けどぉ……」

「あーあーあー、そんな顔すんな。貰っとけ貰っとけ。で、なんか一回ぐらい俺らに飯奢れ。そんでいいだろもう」

 こうして、あの部屋の財宝は無事に多くが換金され、そして、五右衛門のものになった。皆、これでヨシ!とにこにこ顔である。

「あの、ところで五右衛門さん、独立はしないんです?」

「……へ?」

 が、更にそこに話題を持って行くのが、タヌキである。

「メイクさんなんですよね?ご自分でサロンとかスタジオとか運営されてもよいのではないかと思ったんですけどぉ……」

 タヌキが、こて、と首を傾げると、五右衛門はぽかん、として……慌てて、両手を『ないない』と振った。

「いや、お店が無いもの。そんなお金も……」

「じゃあそれ悪魔さんにお願いするのはどうです!?」

「えっ!?いや、それはダメでしょお!?アタシばっかり貰ってばっかりじゃあ……」

「いや、いいんじゃないかな。どうせ皆、カード残り12枚も使わないと思うよ……あはは……」

 デュオがそう言うと、皆、『そうだそうだ』と頷いた。それはそうである。ここにきて皆、『悪魔に損害は与えてやりたいが、よくよく考えるとそんなに叶えたい願いが無い!』と気づいてしまったのだ!

「いや、でも……」

「アッ!だったら私も我儘叶えます!カード残り、12枚ですよね!?ということは、1人1枚使ってもまだ余りますよね!?」

 躊躇う五右衛門の前に、タヌキは元気にやってきて……そして、全員に向けて、朗々と語り始めた!

「……ということで!これはもう、ノルマですよ皆さん!皆さんで!カードを頑張って!使い切りましょう!」

 ……皆、『じゃあ頑張って何か、願い事を捻出するかぁ……』という顔になった。

 ちっちゃい悪魔は、『そんなに頑張らなくても!我、もっとちっちゃくなっちゃう!』と泣いていた!




「ということで……あのーう、悪魔さぁん……私、薔薇を育てるのが趣味なんですけどぉ……その、魔法の薔薇、みたいなのとか、実在しない薔薇、って、お願いできますかねえ……?」

「えっ……?」

「私!青い薔薇を育ててみたくて!サントリーさんが開発したやつよりも更に真っ青なかんじの!コーンフラワーブルーの!薔薇の苗を!ください!」

「えっ……えっ……」

 ……ということで、タヌキは薔薇の苗をお願いしたらしい。悪魔は『こういうのはな!新たに作ることになるんだからな!ものすごく大変なんだぞ!』などと嘆きながら、頑張って何やらやって、そして、薔薇の苗を無事に提出した。タヌキは大喜びであった!悪魔はげっそりしていた!

「やったー!この薔薇、綺麗に咲かせてみせますねー!」

 そうして、タヌキが嬉しそうに薔薇の苗の鉢を抱えてくるくる回っていると……。

「ところで彰さん。あなた、その薔薇を植える場所はあるのかしら」

「……無いです!」

 七香が、水を差した。現実に引き戻した、とも言える。タヌキは『ああーん!それをすっかり!失念していました!』と嘆いていたが……。

「なら、うちのお庭に植えて頂戴。青い薔薇が咲き誇るところ、私も見てみたいわ」

「……えっ、いいんですか!?」

「ええ」

 ……七香が土地を提供したことによって、タヌキは『やったー!』とまたくるくる回り出すのであった!

 バカの横で海斗が、『タヌキ、いよいよ内堀も埋め尽くされたな……』とぼやいていた。が、バカは頭の上に『?』マークを浮かべるばかりであった!




「じゃ、次。俺だな」

 さて。そうしてタヌキと七香がにこにこやっている横に、四郎がやってきた。

 そして。

「まずは一発殴らせろ」

「えっ」

 ……どずむ、と、鈍い音がして、ちっちゃい悪魔はぶん殴られていた!

「ついでにもう何発か殴るからな」

「なっ」

 更に、どず、むぎゅ、もよ、と、ちっちゃい悪魔は殴られ、捏ねられ……散々である!

「な、何をする!」

「こっちのセリフだ」

 が、四郎は容赦が無い。氷のように冷たい目で、ちっちゃい悪魔を見下ろして……言った。

「……テメエが殺したのは、俺の妻だった。テメエが奪ったのは、俺の娘だった。それで十分すぎるだろうがよ」

「えっ……」

「俺は、お前を殺しにここへ来た」

 ……四郎の言葉を聞いて、ちっちゃい悪魔は、さっ、と青ざめた。

「……だが、ただ殺しちゃ、つまんねえよなあ、と思うくらいの余裕はできたんでな。……樺島のおかげだ」

「えっ!?俺ェ!?」

「おう。……娘には会える、と思えば、ま……多少の余裕は生まれるってもんだろ」

 四郎は、嬉しそうにバカに笑ってみせた。バカはそれを見て、『うん!』とにこにこ笑い返した!

「ってことで、俺からの願いは簡単だ」

 が、四郎は嬉しそうな顔を、『にたり』という笑顔に変えて……ちっちゃな悪魔を見下ろした。

「これから毎年、年に一回。俺がお前を許すまでずっと……妻の命日に、俺のところに来い。で……毎年100発ぶん殴らせろ」


「それともここで死ぬか?今のテメエなら、俺が100発ぶん殴るより前に死にそうだけどなあ?どうする?選んでいいぜ?」

「ひぃいん……その願い、受理した……」

 ……こうして、ちっちゃな悪魔は毎年殴られることが決定した。ちょっとかわいそうだが……仕方がない。取り返しのつかないことをしてしまったなら、もう、仕方がないのだ。

 だから、これで四郎の気が済むなら、これでよいのだろう。バカは、『いつか、この悪魔、許してもらえる日が来るといいな……』と、ちょっとだけ思った。




 ……と、いうところで。

「じゃあ次、私から!えーとね……あ、じゃあ、銅の卵焼き用のフライパンちょうだい!」

「えっ」

「えっ……」

 真理奈が、そんなことを言い出したので、燕は絶句してしまったし、悪魔は、目をキラキラさせて、ひし、と、真理奈の手を握ってしまった!

「我、君のこと、好き……」

「えっ、照れるなあ……」

 ちっちゃな悪魔のちっちゃな両手で手を握られた真理奈は、『この子、かわいいねえ』とにこにこしていたが、そんな真理奈と悪魔の間に、燕がぐいっと割って入った。

「真理奈から離れろこの悪魔」

「お前も悪魔なのだぞ!?何を言っている!全く……あっごめんなさい!つまみ上げないで!つまみ上げないで!」

 悪魔は、燕につまみ上げられてしまって、しかもそのままぶんぶん振り回されて、『ひーん!』と泣いていた!


「我、いよいよちっちゃくなってしまった……」

「かわいい……」

「かわいいね……」

 ……そうして、燕にぶんぶん振り回されたちっちゃな悪魔は、いよいよちっちゃくなってしまい……鶏サイズどころか、鳩サブレサイズになってしまった!非常にちっちゃい!

「真理奈……なんで、卵焼き用のフライパン……?」

「え、新しいの欲しかったから……。でも、銅のやつって、高いんだよぉ……」

 悪魔がなんとも哀れな様子になったところで、燕は何とも言えない呆れ顔を真理奈に向けていた。それはそうである。悪魔にお願いするのが、卵焼き用フライパンとは!

「でも、燕、うちの出汁巻き、好きじゃん……?」

 ……が、真理奈にこう言われてしまったら、燕はぐうの音も出ないのである!

「燕が帰ってきたら、出汁巻き作ってあげようと思ってさ。いっぱい練習したから!楽しみにしててね!」

「あ、うん……」

 ということで、結局、燕は『卵焼き用フライパンはやめておけ』と言いそこなったのであった!まあ、しょうがない!




「あの、悪魔さん……私も、一個、思いついたんだけれど……」

「な、なんだ……今度は何だ……ヤマザキ春のパン祭りのお皿とかじゃダメか……」

 そんな悪魔に、ヤエがそっと、進み出る。……そして。

「……うちのお風呂、今、故障してて」

「……うん」

 ヤエの話は、実に身近な……それでいて、素朴なものだ。だが……。

「それで、直してほしいな、っていうのと……あと、そこから温泉、出てきたら嬉しいな、って……」

「……う、うん?」

「だから、その、うちのお風呂、温泉が出てくるようにリフォームしてほしい……」

「ああ、それならついでに、メンテナンス無しでも風呂釜の状態が定期的にリセットされて、かつ、浴室内も汚れやカビがリセットされるような造りにしてもらったらいい。温泉成分が固まったら掃除が面倒だから、そこも悪魔に任せた方がいいと思う」

 ……ヤエの発想が、素朴ながら突飛であり!更に、燕が余計なことを言ったために!

「え、それ、恒常的にコストが」

「お前が風呂掃除に行けば低コストで済む話だろ」

「……ひぃん!」

 悪魔がヤエのお家の風呂掃除をし続けることが決まった!おめでとう!




 それから、五右衛門が『あ、じゃあ、アタシはお店開きたいんだけど……あ、土地とかお店そのもの貰おうとするとなんか厄介なことになりそうだわ。うん。現ナマで頂戴』と言い出してしまい、悪魔はまた泣いた。

 また、海斗はなんだかバカにもよく分からない本をお願いして、悪魔を泣かせた。なんでも、『絶版本の完全なるレプリカ』というやつをお願いしたらしい。よく分からないが大変そうである。海斗は、ちょっと頬を紅潮させて喜んでいた!バカは『よかったなあ!』と我が事のように喜んだ!

 続いて、デュオが『じゃあ俺は、蛍丸を返還してもらおうかな』と言い出した。

 ……『蛍丸』というのは、日本刀らしい。国宝だったのだが、第二次世界大戦終戦後、アメリカに没収された挙句、適当に捨てられてしまったのだとか。

 まあ、つまり……太平洋に沈んでいるか!アメリカのどこぞにあるか!どこに現存しているのか……或いはそもそも現存していないのかすらも分からない代物なのである!

 デュオは、『悪魔に悪魔の証明をさせるのは楽しいだろうと思って』ととんでもないことを言っていたが……ちっちゃい悪魔はもう、さめざめと泣いているばかりである!やっぱりちょっとかわいそうな気がしてきた!


 ……そうして。

「残り5枚……ええと、樺島。お前は何か無いか」

「ん?俺?うん!無い!」

「そうか……まあ、お前は無いだろうな……」

 バカは考えたのだが、悪魔に叶えてほしいお願いは無かった。というのも……。

「うん!俺、海斗と遊びに行きたいんだけど、それは悪魔じゃなくて海斗にお願いすることだろ?」

「……そ、そうか。うん、まあ、その通り、だな……」

「あと、皆で飯食いたい!でもそれも悪魔にお願いすることじゃねえもんな!」

 ……バカのお願いを叶えてくれるのは、悪魔ではないのだ!よって、悪魔の出る幕ではない!




 が、そんなことをしていると……。

「ふふふ……ふははははははあ!」

 唐突に、悪魔が笑い出した。ちょっと元気が出たからか、ほんのりとだけ、大きくなった気がする。バカは『おお!膨れた!』とにこにこした!

「燕ぇえ!欲をかいて、なんとも愚かなミスをしたものだなあ!」

 悪魔は笑いながら、燕を嘲笑う。……そして。

「残りのカードは5枚!つまり……もう、お前は脱出できないということだ!それどころか、ここに居る人間達も、どんなに多くとも5人しか脱出できんぞ!ふはははははは!」

 そう言って、悪魔は楽しそうにぴょこぴょこ飛び跳ねた。

「いやはや、これなら大儲けだ!お前らの魂は実に美味そうだからなあ!特に、宇佐美光の魂!これが何より……」

「いや、残り5枚も別のことに使うけど」

「……えっ?」

 ……が、悪魔は『何か聞き間違えした気がする』と、動きを止めた。

「……なんだと?」

「だから、カード残り5枚も、脱出には使わないけど」

 燕がキッチリ答え返すと、悪魔はちょっと天井を見つめて、考えて……『いやいやいや待て待て待て』と頭を振った。

「いや……それ、どうなのだ……?その、止めはせんが、その、いいのか?お前ら全員、一生ここで過ごすのか……?」

 が、悪魔がそうして『それは流石に駄目じゃないか……?』という顔をし始めたところで……。

「……さっき、ちょっと話してたんだけど」

 燕が、にや、と笑う。

「戦車は悪魔じゃないし、人間でもないから、ここの出入り自由だって聞いた」

「……え?いや……まあ、そうだが……戦車だけ出たところで、どうする……?」

 ちっちゃな悪魔が不思議そうな顔をしている中、バカはにこにこ笑顔で頷いた。

「うん!戦車には手紙を預けてあるんだ!」

 ……そう。

 既に、戦車は出発している。

 戦車は出口から、普通に外に出ており……そして今頃、もう、預けた手紙が、届いているはずだ。

 即ち。


「『解体開始!ご安全に!』って!」




 ……その時だった。

「な、なんだ!?何が起きている!?」

 ごごごごごごご、と地面が揺れる。

 振動はより一層強くなって……そして遂にそれは、現れた。

 それは、不死鳥の如く燃え上がる……ブルドーザーである。


「おい樺島!海斗!お前ら無事か!?」

『火炎武装』で作ったファイアーブルドーザーに乗って、全てを破壊しながらやってきた……ヒバナのお出ましだ!

 バカは大いに喜んだ!悪魔は、泣いた!


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